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プロローグ

プロローグ-1

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どうしてこうなったんだろう。俺は死なせないための冒険者だっていうのに。

「ごめんな皆。絶対生きて帰るから」

「ジルク!止め―」

悲痛な叫びと同時に、パーティーのリーダーの声は魔法陣の中に消えていった。









「今度の探索先だ」

ルダクノと呼ばれる人間の都市、その一角には冒険者たちが集まる酒場がいくつもある。その一つである会縁亭で彼ら冒険者4人は話し合っていた。

パーティーのリーダーである、カルザが地図を開き目的地へと指をさす。ルダクノから西北西に数kmほど行ったところだ。

「ここだ」
「そこは岩山だったはずだ。隠されてるということか?」
「そうだ。地下に何か見つけたやつがいてな、そいつからの依頼だ」

威圧的にすら見えるファトスの言葉にカルザは答えた。

サブリーダーであるファトスは魔物の攻撃を受け止める役割だ。カルザは身長こそ高いが軽快な動きをするため重い身体はしておらず、逆にファトスは目を向けさせるために重い身体をしている。
それなりに対等な付き合いのパーティーであっても、その身体の大きさの差から威圧的に見えることは日常茶飯事だった。

「依頼の危険度は?」
「Bクラスだ。俺たちのランクと同じ、適正なものだ」

魔術使いの紅一点、ヤヴォールが更に質問を重ねる。パーティーで一人一つずつ質問を回し、質問が無くなって承諾が下りたら依頼を受ける。このパーティーの依頼の受け方はそうなっていた。

このパーティー「未踏無」は冒険者が評価するところではベテランのBクラスに位置する実力者だ。ベテランだからこそ依頼の際に情報を共有する大切さを知っていた。

「……本当に適正か?」

だから俺、パーティーでは回復魔術を担当するジルクもその情報が本当なのか疑ってかかる。杖を使い癒しの魔術が使える俺はパーティーの命綱のような役割を持っている。もしもになれば短剣で護身も行う立ち回り役だ。その役割上、死の危険性を感じ取れば排除するのは当然だ。

そして聞いた疑問は依頼には偽装されているものも多いからだ。Dクラス依頼が実際はCクラスだった、なんてこともあり得、そうなれば死ぬ危険性は格段に上昇する。
死ぬのは誰だってごめんだ。

「依頼主は適正だと言っている。だが……それに先行して調べた冒険者曰く、地下に潜るタイプらしい」
「それだとランクは不明じゃないか。ファトスはどう思うんだ?」
「怪しいな。先行したやつらはどこまで調べてんだ?」
「少し地下に潜り、階段を見つけたところまでとのことだ」

階段、という言葉に俺と他2人は口角を上げる。人工物であることを示しており、他の種族との接触などといった可能性が格段に上昇するためだ。

地下に潜むのは知能を持っているが未発達な種族が多く、Bクラスの冒険者なら殲滅が可能だ。
とはいえ未発達な種族でなく知能をそれなりに持った魔物という可能性もあり、危険性は最大では対種族クラスのものになることも考えられた。仮にそうなればBクラスという危険性を超えている。

だが地下に潜む種族は総じて知能の成長速度が遅い。階段を作るというのも外に何かがいる可能性を考慮せずに作ることが多いのだ。

その知識をベテランである俺たちは当然知っていた。それ故に選択肢は絞られる。

「情報はそれだけ?。罠……いやあり得る?、全部燃やし尽くせば簡単に終わりそう」
「いや、罠の可能性も考える必要はあるだろう。その辺はどうなんだ?」

カルザはファトスの疑問に首を横に振る。情報はないのだと分かりやすく示していた。これらの情報から推測して依頼を受けるかの判断をするのだが、今回は中々判断が難しいところだ。

「肝は罠を破れるかどうかというところか?」
「一度で解決ならそうなるだろうな。安全をとるなら一度行って帰ってきて対策してもう一度行けばいいだけだ」
「それならヤヴォールが階段下に最大威力の魔術打ち込めば安全に進めるか判断がつく。依頼を達成できるかはそれ次第ってことにすればいいんじゃないか?」

カルザが俺の言葉にコクリと頷いた。納得がいったようだ。

「それでいこう。依頼者には俺から言っておく。そこで判断するからそこまでの食糧とかの移動賃は前払いってことで」
「分かった」「了解」「悪くない」

何の問題もなく、依頼を受けるための話し合いは進んだ。安全と危険のバランスを考えれば妥当だったと言える。

危険性を重要視する俺でさえそう思った。だから何一つ間違いはなかったんだ。
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