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ビュッ!
シュッタッ!
指輪から飛び出したミズタンが、アクヤをだき抱え後方へと退避した。アクヤ着きの魔政婦達が守るように取り囲む。
「きゃっ!? 」
すかさず、死霊ノ王が巻き付く触手を引っ張り、ビーナを引き摺り倒した。
「アクヤッ! 大丈夫かっ? 」
オニオーが、アクヤの元へと駆け寄る。当然、返事は得られなかった。
首元の切り傷からは、大量の血が吹き出している。
「くっっそっ! 血を止めねーと……って、あれっ、傷が塞がっていく? 」
出血は激しいものの徐々に傷が塞がりつつあった。
「ふふふっ。私の毒はね、キズを付けてからが本番なの」
死霊ノ王からの攻撃から脱出したビーナが、浮遊しながら言った。
「ぁあっ? てめぇ、どういうことだっ? 」
「特別に教えてあげるわ。どうせ、あなたもすぐ後を追うのだしね。
私の毒は、超回復毒なの。毒を体内に摂取させた後、相手に傷を負わせることで発動するわ。
回復と言えば聞こえは良いけれど、要は細胞分裂を促進して傷を塞ぐの。
でも、それだけでは止まらない。塞がったあとも細胞は分裂し続けて、ついには、体が追いつかなくなる。それでも、死んだ細胞の増殖は止まらない。
ふふっ、それからどうなると思う?
傷口から壊死していき、身体中に広がるの。そして、命を落とす……」
「なんだとっ! てめぇ、さっさと解毒しやがれっ! 」
オニオーが叫びながら、ビーナに向かっていく。
「そんなのある訳ないじゃな~い?
ああ~、素敵。死にゆく大切な女を救うために、必死になるその表情。
私、大好きよ? 」
オニオーの攻撃をひらりと躱したビーナが恍惚の表情で言った。
「てめぇ、ぶっ殺すっ! 」
何処からともなく現れたボスモフがオニオーを背中に乗せ、ビーナに飛びかかった。
死霊ノ王も反対側から斬りかかる。
蛮刀と長剣が交錯した。
ふっ。
ビーナが嘲笑し、その隙を縫うように通り抜けた。
「加護のないあなた達の攻撃なんか、私の敵ではないわ」
「おわっ!」 「……っ!?」
絡まり会いながら落ちてゆく3匹に対して、ビーナが満足気に言い放った。
その向こう側では、シェフと魔執事が死闘を繰り広げていた。
相変わらず、シェフが押されている。
それを打開するかのように、シェフが動いた。
突如として、覆面ミイラ小人集団が現れる。その真っ白な指先から糸を自在に吐き出し空中を縦横無尽に駆け回りながら、魔執事へと襲いかかった。
魔執事が、シェフとの剣戟の合間をぬってそれに対処する。
銀盆でシェフを叩きのめし、カトラリーを投げつけて糸を切りつつ、火炎魔法で燃やし尽くすその姿は、流石は、上位悪魔であった。
シェフが更に、骸骨戦士を投入した。
ゴォォォォォォォオッ!
その瞬間。凄まじい突風が巻き起こる。
敵味方関係なく、吸い込まれ始めた。
向かい側の壁際で、箒に跨った六体の魔家政婦が、巨大な六角形を描きながら浮遊していた。ゆっくり、回転している。
「やっと、発動準備が整いましたか」
魔執事が赤いオーラを迸らせながら浮上し、六角形の中心で止まった。彼を中心に、渦を描くように漆黒の闇が広がり始める。
「お休みの時間です」
魔執事が、わざとらしく懐中時計を取り出し宣言した。
「暗黒牢獄」
そして、静かな呟やきと共に、何もかもが呑み込まれて行く。
その刹那、指輪は瞬き、影ノ獣魔が自ら広がりゆく闇に飛び込んだ。
気配すらも呑み込む暗闇に、術者の上位悪魔ですら、呑まれた瞬間であった。
シュッタッ!
指輪から飛び出したミズタンが、アクヤをだき抱え後方へと退避した。アクヤ着きの魔政婦達が守るように取り囲む。
「きゃっ!? 」
すかさず、死霊ノ王が巻き付く触手を引っ張り、ビーナを引き摺り倒した。
「アクヤッ! 大丈夫かっ? 」
オニオーが、アクヤの元へと駆け寄る。当然、返事は得られなかった。
首元の切り傷からは、大量の血が吹き出している。
「くっっそっ! 血を止めねーと……って、あれっ、傷が塞がっていく? 」
出血は激しいものの徐々に傷が塞がりつつあった。
「ふふふっ。私の毒はね、キズを付けてからが本番なの」
死霊ノ王からの攻撃から脱出したビーナが、浮遊しながら言った。
「ぁあっ? てめぇ、どういうことだっ? 」
「特別に教えてあげるわ。どうせ、あなたもすぐ後を追うのだしね。
私の毒は、超回復毒なの。毒を体内に摂取させた後、相手に傷を負わせることで発動するわ。
回復と言えば聞こえは良いけれど、要は細胞分裂を促進して傷を塞ぐの。
でも、それだけでは止まらない。塞がったあとも細胞は分裂し続けて、ついには、体が追いつかなくなる。それでも、死んだ細胞の増殖は止まらない。
ふふっ、それからどうなると思う?
傷口から壊死していき、身体中に広がるの。そして、命を落とす……」
「なんだとっ! てめぇ、さっさと解毒しやがれっ! 」
オニオーが叫びながら、ビーナに向かっていく。
「そんなのある訳ないじゃな~い?
ああ~、素敵。死にゆく大切な女を救うために、必死になるその表情。
私、大好きよ? 」
オニオーの攻撃をひらりと躱したビーナが恍惚の表情で言った。
「てめぇ、ぶっ殺すっ! 」
何処からともなく現れたボスモフがオニオーを背中に乗せ、ビーナに飛びかかった。
死霊ノ王も反対側から斬りかかる。
蛮刀と長剣が交錯した。
ふっ。
ビーナが嘲笑し、その隙を縫うように通り抜けた。
「加護のないあなた達の攻撃なんか、私の敵ではないわ」
「おわっ!」 「……っ!?」
絡まり会いながら落ちてゆく3匹に対して、ビーナが満足気に言い放った。
その向こう側では、シェフと魔執事が死闘を繰り広げていた。
相変わらず、シェフが押されている。
それを打開するかのように、シェフが動いた。
突如として、覆面ミイラ小人集団が現れる。その真っ白な指先から糸を自在に吐き出し空中を縦横無尽に駆け回りながら、魔執事へと襲いかかった。
魔執事が、シェフとの剣戟の合間をぬってそれに対処する。
銀盆でシェフを叩きのめし、カトラリーを投げつけて糸を切りつつ、火炎魔法で燃やし尽くすその姿は、流石は、上位悪魔であった。
シェフが更に、骸骨戦士を投入した。
ゴォォォォォォォオッ!
その瞬間。凄まじい突風が巻き起こる。
敵味方関係なく、吸い込まれ始めた。
向かい側の壁際で、箒に跨った六体の魔家政婦が、巨大な六角形を描きながら浮遊していた。ゆっくり、回転している。
「やっと、発動準備が整いましたか」
魔執事が赤いオーラを迸らせながら浮上し、六角形の中心で止まった。彼を中心に、渦を描くように漆黒の闇が広がり始める。
「お休みの時間です」
魔執事が、わざとらしく懐中時計を取り出し宣言した。
「暗黒牢獄」
そして、静かな呟やきと共に、何もかもが呑み込まれて行く。
その刹那、指輪は瞬き、影ノ獣魔が自ら広がりゆく闇に飛び込んだ。
気配すらも呑み込む暗闇に、術者の上位悪魔ですら、呑まれた瞬間であった。
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