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「レイラ王妃陛下、教皇聖下が謁見にお越しです」
控えめにノックして入ってきた侍女が、報告する。その顔に表情はなく、能面のように冷たかった。
(来るんなら、事前に言っとけよ)
「わかったわ。雷鳥の間にお通しして」
レイラがため息をつきながら答えた。
と、同時に扉が開く。
「上手くやっているようだな」
ずかずかと入ってきた教皇が、ソファにどっかりと座りながらいった。
「教皇聖下っ! 城内を勝手に歩き回られては困ります! 」
事務机から立ち上がったレイラが、叫ぶ。
「ほぅ。私に意見するとは、随分と、偉くなられたものだな、王妃陛下どの も」
「いえ、そんな……。近衛兵に襲われても困りますし」
「ふんっ、既に人心掌握しきっているのだろう。お前のスキル【極楽浄土】で」
「……」
「まぁ、いい。して、首尾はどうなのだ」
「仰る通り、城内は手中に収めましてございます。国王陛下にはご退位頂き、ジョゼフ様に王位を譲って頂きました。余生はゆるりと過ごされ、そのまま、極楽浄土へと旅立たれることでしょう」
「ジョゼフ様は? 」
「私にご執心でございます」
「それは結構なことだ。しっかり御心を掴んでおけ。正気を取り戻されて、王権を発動されたら厄介だからな」
「大丈夫かと。私の体しか見えておりません」
「ふんっ。せいぜい、骨抜きにしておけ。暫くは使えるコマだ。頃合いを見て始末することにしよう」
教皇が仄暗い顔でわらった。
「お前との婚儀はいつだ? 」
「婚約は済ませました。正式な婚儀は、もう少し先になるかと」
「何か問題でもあるのか」
「ランデンブルグ辺境伯が軍備を整えております。ミランダ様には、上手く逃げられてしまいました。クレイ公爵ご夫妻も、ご一緒に……」
レイラの顔が、不覚にも歪められた。
今思い出しても腸が煮え繰り返る。あの騒動のどさくさに紛れた、華麗な逃亡劇について。
絶対逃げられないと、鷹を括っていたのも間違えだった。
「なにっ!? あの脳筋には、お前のスキルが通じなかったのか。
まぁいい。圧倒的な力でねじ伏せてやれ。なんと言っても、ヘテプ正教は、もはや、国中の軍備を手中に収めているのだからな。
女王陛下の即位式は、その後、盛大に行うとしよう」
「仰せのままに」
「これでやっと、目障りだった王家を排除できる。手塩にかけてお前を育てて来た甲斐があったというものだ」
深々と頭を下げるレイラを一瞥した教皇が、嬉しそうに呟いた。
豪華な刺繍の施された白装束を翻し、さっそうと部屋をでていく。
(あの古狸、絶対に許さない。必ず、消してやる。
折角、この世界に来れたんだ。今度こそ、ゼフリードルートを探し当て、攻略してみせるっ! )
その醜く歪んだ微笑みには、清楚さなど、微塵も残されていなかった。
控えめにノックして入ってきた侍女が、報告する。その顔に表情はなく、能面のように冷たかった。
(来るんなら、事前に言っとけよ)
「わかったわ。雷鳥の間にお通しして」
レイラがため息をつきながら答えた。
と、同時に扉が開く。
「上手くやっているようだな」
ずかずかと入ってきた教皇が、ソファにどっかりと座りながらいった。
「教皇聖下っ! 城内を勝手に歩き回られては困ります! 」
事務机から立ち上がったレイラが、叫ぶ。
「ほぅ。私に意見するとは、随分と、偉くなられたものだな、王妃陛下どの も」
「いえ、そんな……。近衛兵に襲われても困りますし」
「ふんっ、既に人心掌握しきっているのだろう。お前のスキル【極楽浄土】で」
「……」
「まぁ、いい。して、首尾はどうなのだ」
「仰る通り、城内は手中に収めましてございます。国王陛下にはご退位頂き、ジョゼフ様に王位を譲って頂きました。余生はゆるりと過ごされ、そのまま、極楽浄土へと旅立たれることでしょう」
「ジョゼフ様は? 」
「私にご執心でございます」
「それは結構なことだ。しっかり御心を掴んでおけ。正気を取り戻されて、王権を発動されたら厄介だからな」
「大丈夫かと。私の体しか見えておりません」
「ふんっ。せいぜい、骨抜きにしておけ。暫くは使えるコマだ。頃合いを見て始末することにしよう」
教皇が仄暗い顔でわらった。
「お前との婚儀はいつだ? 」
「婚約は済ませました。正式な婚儀は、もう少し先になるかと」
「何か問題でもあるのか」
「ランデンブルグ辺境伯が軍備を整えております。ミランダ様には、上手く逃げられてしまいました。クレイ公爵ご夫妻も、ご一緒に……」
レイラの顔が、不覚にも歪められた。
今思い出しても腸が煮え繰り返る。あの騒動のどさくさに紛れた、華麗な逃亡劇について。
絶対逃げられないと、鷹を括っていたのも間違えだった。
「なにっ!? あの脳筋には、お前のスキルが通じなかったのか。
まぁいい。圧倒的な力でねじ伏せてやれ。なんと言っても、ヘテプ正教は、もはや、国中の軍備を手中に収めているのだからな。
女王陛下の即位式は、その後、盛大に行うとしよう」
「仰せのままに」
「これでやっと、目障りだった王家を排除できる。手塩にかけてお前を育てて来た甲斐があったというものだ」
深々と頭を下げるレイラを一瞥した教皇が、嬉しそうに呟いた。
豪華な刺繍の施された白装束を翻し、さっそうと部屋をでていく。
(あの古狸、絶対に許さない。必ず、消してやる。
折角、この世界に来れたんだ。今度こそ、ゼフリードルートを探し当て、攻略してみせるっ! )
その醜く歪んだ微笑みには、清楚さなど、微塵も残されていなかった。
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