針子の私に精霊の加護が付与されることになりました

 さく、さく、ひと針通すたび、淡く小さな光の粒がふわんと布に浮かぶ。木枠にはめられた絹のハンカチに刺繍糸の花が咲く。
 ――これを使う人が、きっと、悲しくならないように。
 私は願いながら手を進める。
 魔力は素直だ。
 心に迷いがあると色が濁る。だから、それだけを考えながら手を動かすのだ。そうして仕上がった刺繍を、必要としてくれる人の元へ届けよう。

「魔力は『想いの力』なの」

 母の口癖だった。
 この世界は、心を込めて作ったものにはそれがなんであれ魔力がこもる。込められた魔力は光の粒となって私たちを照らすんだ。

 針仕事で生計を立てているルチアーナ・カフィ。ある日いつも通り仕事をしていると見えないはずの妖精が現れて――。

※カクヨムさん、小説家になろうさんでも掲載しています。
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