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第一章 マゼンタ王国~皇女の守護魔獣に転生編~
目覚め
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「おい、なんかいるぞ」
「赤い狐か?珍しいな。高く売れるかもしれねーぞ」
「しっ、寝てるみたいだ。捕まえるぞ」
遠くで声がする。テレビをつけっぱなしで寝たようだ。
うるせーなぁと思いながら、寝返りを打つとチクチクするものが指に触れた。葉っぱ? 掴もうとするが、上手く掴めない。
何度か挑戦するが、指が思うように動かない。薄目を開けて確認しようとしたら、突然、体が宙に浮いた。この感覚にデジャヴを覚えた。そして、体中の細胞が警告を発する。
足首を持たれ、逆さ吊り状態になる。そんな馬鹿な。俺は仮にも男子大学生で175cm、60kgあるんだぞ。決してデブではないけれど、片手で宙ずりされる玉ではない。
とにかく、この状況を打破しようと手足をばたつかせた。緩急ある攻撃が功を奏したのか、相手が手を離した。
振り返ると、青い軍服に身を包んだ二人組の若い兵士が立っていた。小馬鹿にしたようにニヤケながら、手にしている槍を俺の足目掛け放った。
俺は片足を華麗にあげ避けた。次々に放たれる足元への連打攻撃を華麗によける。
『ヨーロレイヒッーー』
心の中で絶叫しながら、コサックダンスばりに足を動す。俺のふざけたダンスが兵士たちのイライラを誘い、一瞬隙ができた。
この機を逃すまいと、ディ〇ニーキャラのように飛びあがった。体を大きく反らせ助走をつけて、手足を回転させながら逃げる。
兵士達は(所詮野生動物だと)、諦めたらしく追って来なかった。しばらく走っていると、湖へと出た。茂みに身を隠し、辺りに誰もいないことを確認する。
緊張の糸が切れ一息つくと、急激な喉の乾きに襲われた。
湖の水を飲もうと畔に、歩みを進める。敵に出くわさぬように。ゆっくり、慎重に。
手で水を救おうとした瞬間、ギョッとした。
そこには、毛でフサフサに覆われた可愛いらしいおててがあったのだ。
顔をあげる。目をつぶる。ゆっくり、三十秒数えた。そして、手を見る。
「ティーーーーン!! 」
あまりの衝撃に、我を忘れて「手ーーーー! 」と叫んでいた。実際には、虚しい動物の鳴き声が響いただけなのだが。
動揺しすぎて自分の声にヒビってしまい、また、茂みに飛び込んだ。
目を閉じて深呼吸する。少し冷静になれた。
外敵にバレないよう、場所を移動し水面に顔をうつす。
そこに、大学生の柊僚はいなかった。というか、ヒトさえもいなかった。
赤い獣がちょこんと佇んでいる。狐を小さくしたような風貌だった。
記憶を手繰り寄せる。柊僚とは何者か。そうだ、大学生だ。そして、化学を学んでいた。確か、先輩に頼まれて反応を仕込んだんだった。
そして、謎の大爆発。そこまでは、思い出せた……。
死んだのか?流行りの異世界転生ってヤツか。
そこで考えるのをやめた。水面に口を近づけ、勢いよく喉を潤す。
どうせ結論は出ないのだ。どうしようもないことを悩むのは性にあわない。獣になったのなら、勉強も仕事も要らないのだ。本能のまま、気楽に過ごせばいい。と、考えてると、ワクワクしてきた。
気分も良くなった。鼻歌を歌いながら、寝床でも探そうと、歩み出す。
また、体が宙に浮かぶ。
本日二度目のデジャヴである。体中の細胞が本日二度目の警告を発する。
「ティーーーーン」
辺り一帯に俺の断末魔が木霊した。
「赤い狐か?珍しいな。高く売れるかもしれねーぞ」
「しっ、寝てるみたいだ。捕まえるぞ」
遠くで声がする。テレビをつけっぱなしで寝たようだ。
うるせーなぁと思いながら、寝返りを打つとチクチクするものが指に触れた。葉っぱ? 掴もうとするが、上手く掴めない。
何度か挑戦するが、指が思うように動かない。薄目を開けて確認しようとしたら、突然、体が宙に浮いた。この感覚にデジャヴを覚えた。そして、体中の細胞が警告を発する。
足首を持たれ、逆さ吊り状態になる。そんな馬鹿な。俺は仮にも男子大学生で175cm、60kgあるんだぞ。決してデブではないけれど、片手で宙ずりされる玉ではない。
とにかく、この状況を打破しようと手足をばたつかせた。緩急ある攻撃が功を奏したのか、相手が手を離した。
振り返ると、青い軍服に身を包んだ二人組の若い兵士が立っていた。小馬鹿にしたようにニヤケながら、手にしている槍を俺の足目掛け放った。
俺は片足を華麗にあげ避けた。次々に放たれる足元への連打攻撃を華麗によける。
『ヨーロレイヒッーー』
心の中で絶叫しながら、コサックダンスばりに足を動す。俺のふざけたダンスが兵士たちのイライラを誘い、一瞬隙ができた。
この機を逃すまいと、ディ〇ニーキャラのように飛びあがった。体を大きく反らせ助走をつけて、手足を回転させながら逃げる。
兵士達は(所詮野生動物だと)、諦めたらしく追って来なかった。しばらく走っていると、湖へと出た。茂みに身を隠し、辺りに誰もいないことを確認する。
緊張の糸が切れ一息つくと、急激な喉の乾きに襲われた。
湖の水を飲もうと畔に、歩みを進める。敵に出くわさぬように。ゆっくり、慎重に。
手で水を救おうとした瞬間、ギョッとした。
そこには、毛でフサフサに覆われた可愛いらしいおててがあったのだ。
顔をあげる。目をつぶる。ゆっくり、三十秒数えた。そして、手を見る。
「ティーーーーン!! 」
あまりの衝撃に、我を忘れて「手ーーーー! 」と叫んでいた。実際には、虚しい動物の鳴き声が響いただけなのだが。
動揺しすぎて自分の声にヒビってしまい、また、茂みに飛び込んだ。
目を閉じて深呼吸する。少し冷静になれた。
外敵にバレないよう、場所を移動し水面に顔をうつす。
そこに、大学生の柊僚はいなかった。というか、ヒトさえもいなかった。
赤い獣がちょこんと佇んでいる。狐を小さくしたような風貌だった。
記憶を手繰り寄せる。柊僚とは何者か。そうだ、大学生だ。そして、化学を学んでいた。確か、先輩に頼まれて反応を仕込んだんだった。
そして、謎の大爆発。そこまでは、思い出せた……。
死んだのか?流行りの異世界転生ってヤツか。
そこで考えるのをやめた。水面に口を近づけ、勢いよく喉を潤す。
どうせ結論は出ないのだ。どうしようもないことを悩むのは性にあわない。獣になったのなら、勉強も仕事も要らないのだ。本能のまま、気楽に過ごせばいい。と、考えてると、ワクワクしてきた。
気分も良くなった。鼻歌を歌いながら、寝床でも探そうと、歩み出す。
また、体が宙に浮かぶ。
本日二度目のデジャヴである。体中の細胞が本日二度目の警告を発する。
「ティーーーーン」
辺り一帯に俺の断末魔が木霊した。
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