上 下
103 / 124
第四章 エロー学術都市~20年越しのざまぁ編~

復活祭からの~

しおりを挟む
「ハッピバースデイ ピロルー ♪  ハッピバースデイ――♪  」

 はい、お察しの通り料理長室。
 皆が、俺の復活祭を催してくれたのだ。

 いや、俺、死んでないし……。
 十字架にも張り付けられてない……。
 手術台には二回も張り付けられたようだけれども……。

 ……なんでも、お祝いが2回目だから、復活なんだと。お祝いの復活?  祭??

 テーブルにはシマさんの豪華な手料理がズラリと並んでいる。

「あれっ、これ?  チタニアの魚じゃないですか?  」

 マゼンタ王国にも海はあるのだが、ルブルム城から距離があるため、食卓に並ぶ魚は大抵湖で捕られた淡水魚だった。
 テーブルにはチタニアで見た海の魚達が並べられている。なんと、お刺身まであるではないか!

「そうなのっ!  ミョージンさんが届けてくれたのよ。ルブルム城では、なかなか食べられない海のお魚よ」

 シマさんが、興奮気味に言った。

 俺のことを心配した教帝聖下が、お見舞いにミョージンさんと魚達を派遣してくれたらしい。

「美味いっ!  」

 日本人に生まれてよかったー!……って違うな。
 ついつい、前世の血が騒ぐ。

「チタニアで頑張った甲斐があったなぁ、ピロルくん!  」

 俺の心を読んだように、話しかけてくる博士。

「おいしーっ!  」

「自分もいただくっすーって!  あっ!?  」

「いっただっきー! ぎゃははははは 」

「ドン兄、ひどいっすーーっ!  」

 相変わらず、元気そうなスネーク兄弟。

「久しぶりだが、美味しいな」

「喜んでいただけたようで、よかったです!  」

 俺達が口々に感想を呟いていると、ミョージンさんが嬉しそうに破顔した。

「そういえば、どうやって運んできたんですか?  」

 ルブルム城から海より、ルブルム城からチタニアの方が明らかに遠い。

「シロリーにお願いしましたっ!  ちょうど、シロリーもピロルさんに会いたそうだったので」

「シロリーも会いに来てくれたのか。ありがとうな」

 なるほど、その手があったか。

 スラリーと並んで、気持ちよさそうに樽の中をプカプカ浮いているシロリーが、嬉しそうにふるふるっと揺れた。

「あっ、そうだ。ゴンが俺を助けてくれたんだってな!  ありがとなっ!  」

「ピロ兄が無事でよかったっすよ。ピロ兄は可愛くなるし、ドン兄はヒモっ!? あーーっ!! それ、自分のッスよ!!  」

「いっただきーっ!!  」

「待つっすー!!  」

 またもや、ドンがゴンの皿のモノを奪った。
 追いかけっこが始まる。
 相変わらず、騒がしい奴らだ。

 ところで、ヒモっ!?ってなんだ?
 俺がそんな疑問を抱えていると、ハクがケーキを運んできた。

「みてみてー、ピロルのために作ったんだよ!」

「おおっ!!  すごっ!!  」

 完璧な見た目のケーキが、目の前に置かれた。
 上からフォークを挿し入れ、1口で食べる。

 そうそう、これこれ。

 イチゴとスポンジ、そしてクリームの薄い層が、口の中でひとつに纏まり、絶妙なハーモニーを奏でるのだ。

「ハク、すっごく美味しいっ!!  」

 俺の言葉に凄く嬉しそうなハク。

「ハクくん、あなた達がエローに行っている間、何度も何度も作って、練習していたのよ。2人が帰ってきたら、ビックリさせるんだって」

 シマさんがハクの傍にやってきて、抱き寄せながら言った。

「えへへっ、ピロルが美味しそうに食べてる姿を見るだけでも幸せだったけど、やっぱり、言葉で伝えられると、もっと、嬉しいっ!  
 ピロル、戻ってきてくれて、本当にありがとう」

 ハクが俺を抱きしめる。
 俺も抱きしめ返した。

「俺の方こそ、こんなに美味しいケーキを頑張って作ってくれてありがとう。そして、こんなに、俺のことを思ってくれて、嬉しい」

 やばい、前世より幸せかも……
 前世では、恥ずかしてく絶対言えなかったであろう言葉が、すっーと出てきた。
 やっぱり、狐だからだろうか?

「ハク、ピロルの次はラヴォアを祝ってやれ。
 おっと、呼び捨ては失礼だな。ラヴォア次期エロー国家元首殿」

「「「「「へっ!?  」」」」」

 ピロロの爆弾発言に、一瞬で静寂に包まれる料理長室。
 皆の視線が博士に集中する。

「私も先程、父上から聞かされたのだ。
 ぜひ、詳しくお話していただこうか」

 俺の視線を受けて、ピロロはそう言うと、博士を見ながらニヤリと微笑んだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪徳令嬢はヤンデレ騎士と復讐する

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:241pt お気に入り:257

【完結】元男爵令嬢と荒れた庭園の子爵様

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:23

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:977

獣人の恋人とイチャついた翌朝の話

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:29

突然訪れたのは『好き』とか言ってないでしょ

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:24

あなたの妻にはなれないのですね

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:36,708pt お気に入り:393

You're the one

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:61

処理中です...