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50.リスペクトⅣ
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今日のバイトを終える頃、七瀬さんが一人で帰って来た。二人で出掛けたと聞いていたのだが中川さんは別に寄る所があったそうだ。
七瀬さんにはリストの作業報告をして、そこからもう少々雑用を引き受け、一足お先に帰る前に渋さ緩めで淹れてきたお茶。
それを比内さんの部屋にも持って行った。トレーの上にはまだもう一つカップがあるのをチラリと視線で捉えられる。今日の夕飯の予定だけ伝えてそそくさと退室し、そのまま奥の有馬先生の部屋へ向かった。
「ありがとう」
「いえ。お疲れ様です」
お茶を置いたらすぐに出るつもりだった。しかし軽く会釈したその時、有馬先生にそれとなく尋ねられた。
「さっきの聞いてた?」
「え?」
「給湯室で」
「あ……」
しまった、バレてた。俺にはコソ泥もできない。
となると比内さんにも多分バレていただろう。特に何も言われなかったが、やっぱり猫より人間の方が好奇心のリスクは高かったようだ。
「あの……すみません」
「ううん、ごめんね。見苦しい所ばっかり」
「いえ……」
こちらこそ盗み聞きなぞはしたない真似をいたしまして。
「裁判はしないんですか……?」
「たぶんね」
「…………」
ホワイトボードでおおよその経緯は掴めた。さっきの二人の喧嘩を盗み聞きして、依頼人の女性がつらい立場にあるのだろう事も見当がついた。
この国に限った問題じゃなくても先進国の中で日本は遅れているらしい。なんなら良くてなんなら悪いのか、境界は曖昧だが常に張りつめている。
「……男とか女とか俺もつい言っちゃうことあるので、やっぱ気を付けないとなって」
聞かれてもいないのに言い訳みたいに喋ってる。煩わしいかもしれないそれは、ふふっと笑って受け取られていた。
「そうだね。相手の感じ方を自分で想像してみるのは大事」
「はい……」
「気を付けようって風潮が今はあるし、昔に比べればだいぶ進んだ。子供の教育現場でも先入観を植え付けないように配慮がされてきてるから、これからの若い子たちは少なからず私達の世代とは変わっていくんだと思う」
デスクのそばでトレーを持ったまま、言葉は見つからないのでうなずいた。
口元でカップを傾けた有馬先生の表情は、やりきれないとでも言うようだ。
「でも彼の言ってることは間違ってない。綺麗事だけじゃどうにもならないんだよね」
「…………」
かつて、比内さんの前の住居に男が侵入してきた騒動の翌日、それを知らされて誰よりも一番激怒したのは有馬先生だったそうだ。
中川さんにその当時の話をあれからまた聞く機会があった。事実に憤り、怒りを露にさせて、警察署にいる被疑者の所に殴り込む勢いだったのを周りが抑え宥めたのだとか。
刑事事件による被害者の相談にも元より熱心だったらしいが、男性被害者の支援に力を入れるようになったのはそれがきっかけだったようだ。
弁護士とは言え相手が女性だと打ち明けづらい依頼人もいるはず。けれど大勢に信頼されるのは、それが有馬先生だからだ。
綺麗事にはたぶん、種類がある。それが綺麗事であるのだと、理解しているか否かは大きい。
理解しようともせずただ気持ちよく誰かがそれを言ったとき、一瞬にして反発が起こる。お前の目と耳は飾りなのかと憤りだけが込み上げてくる。
泥をかぶりたい人なんていない。なのに自分の綺麗な部分だけを見せとようとするのは卑怯でこずるい。それを卑怯だと思う自分が汚れているのだと追いつめられるようで、そのため余計にそいつの本心を暴き出してやりたくなる。
けれど有馬先生を見ていてそうはならない。有馬先生の言う理想はきっと多くを考えた結果で、いろんなことを考えるから悩んで、それでも言う。いくら苦しんででも。
葛藤を背負いながら吐き出す綺麗事は綺麗事とは言えないだろう。今だってそう。だからここにいる。有馬先生が守りたいのは、綺麗な事を言える自分じゃない。
だから知りたくなる。ここにいる大人たちが何と向き合っているのか、聞きたい。
「依頼人の女性は、どんな人ですか……?」
「え?」
「…………すみません」
いささかの躊躇いとともに聞き、聞き返されてやはり躊躇った。
有馬先生に初めて会った時、厳しくて冷たいような印象を受けた。あの時の冷たいイメージはとっくに払拭されている。今でも厳格な雰囲気は強いが、有馬先生は色んな笑い方をする。
今はまた少し、ふんわりと。それだけで一瞬で柔らかくなった。
「いいえ。守秘義務の意味をあなたが正確に理解している事はここにいる全員が分かってる」
顔を上げた。ニコリと返される。有馬先生は静かにカップを置いた。
「彼女はそうだね……ハイヒールを強制されるのが嫌いな人かな」
「ハイヒール……?」
有馬先生の足元を思わず見下ろした。デスク越しなので全く見えないけれど、いつもどんな靴を履いているかは見ているためよく覚えている。
「あ……女の人ってもしかして、そういう格好嫌いなんですか?」
あんなので良く歩けるなと思う事なら俺にも多々ある。ずっとつま先立ちしているみたいだ。痛いとか疲れるとかクラスの女の子が話しているのも聞いたことがあった。自分で履いたことはなくても見ていて大変そうには思える。
素直な感想を疑問に変えれば、今度は楽しげに笑われた。
「私は好きだよ。ハイヒールもお化粧も。私の場合はこの格好してる時が一番気合入るから」
初めて会った時も今も隙があるような瞬間を見たことがない。いつもキリッとして見える。
そう思っていたのだが、気合が入ると本人が言うからには俺の印象も間違いではなかったようだ。
「誰かにこうしろと言われてやってるわけじゃない。こういう靴が嫌いな人も多いけど、だからってハイヒールを履く文化そのものを否定するのは違うでしょう?」
頭をコクッと前に傾けた。依頼人の女性がハイヒールを履けと言われたのかどうかは知らないけれど、これはきっとそういう話だ。
ハイヒールを履いた方が女性らしい。女なら女らしくハイヒールを履け。そんな言い方をずっとされてきたから、女性らしさという言葉が嫌われるようになる。その象徴が忌避される。
男らしく逞しくなれ、などというのも同様に。そのせいで言ってはいけない言葉だけが増える。
侮辱を意図していない事まで、差別とは異なるはずの部分まで、全部最初からまとめて否定しておく。だって危ないから。間違えるかもしれないから。男女の固定観念を助長する恐れがある物や言葉や文化は消し去る。
そんな思想に覆いつくされるようになったら本物のディストピア小説の世界だ。たとえ正常な細胞であってもガン化するリスクは常に孕んでいるからエラーを起こす前に殺しておこう。そう言っているのと何が違うのか。平等を切実に訴える人達だってそんな事態は求めていない。
「だからね、私たちが本当に言いたいのは多分こっち」
「こっち……?」
「お前らに上から決めつけられる筋合いはないんだよ黙ってろ」
清々しく言い切って、有馬先生は笑みを深めた。
「これは男とか女とかの問題じゃない。それくらいシンプルだったらまだ少しは楽なんでしょうけど」
こういうふうに言え。これは言うな。こうするのが当然。こんな事はしないのが普通だろ。
これらがどこかで引っかかるのは、男だから、女だから。それだけに限った事ではない。
「あとはもちろん相手と状況にもよるかな。コミュニケーションは難しいね」
清々した言い方はほんの一瞬。すぐにまた困ったような笑みに戻った。
気持ちを正確に言語化できても伝わらないなら打つ手はもうない。だから俺達はおそらく未だに、言葉を使いこなせていないのだろう。
自分達で扱いきれないものを作り出すのが人間だ。言葉を持っていないライオンや狼が群れの中で無意味な殺し合いを始めることは早々ないのだから、俺達よりよっぽど賢くできている。
「目の前にあるものをただそっかって単純に受け取れるようになったら一歩先に進むと思う。でも私達はそこまで素直じゃない。これはコンプラ的にまずいから言わないでおこうなんていちいち考えなきゃならないのが残念ながら今の限界なんだろうね」
「……なんか、今のこれって……」
「うん?」
「……誰が得するんでしょうか」
「うん……さあ……どうだろうね。もしかしたら誰かには都合がいいのかも」
「…………」
「そうとでも思ってなきゃやってられない」
ネットでもテレビでも毎日のように何かしら騒いでいる。その多くは正義の名の下にある。
けれど問題提起と見せかけて対立をいたずらに煽るだけ煽り、その果てに複雑だとか難しいなどと勝手に締めくくる一部のメディアにはどうしても違和感がある。争いを強調した表現のありようは解決を目指しているようにはとても思えない。
対立は多くの物事で起こる。表があれば裏もあるし、下があれば上もあるし。誰かにとっての不利益が、誰かにとっての得になることも。
だがそれ以上にもっと悲惨なのは、誰も望んでいないのに、皆でしてしまっているときだ。
「私の父方の親戚に六つ下の従妹がいるんだけどね、その子昔から肉が嫌いなの」
「え……にく?」
「ええ、肉。牛も豚も鳥もダメ。ヒツジなんかは問題外」
唐突に始まった肉の話。ここで意味のない話を有馬先生はしないだろう。
「これは単なる彼女の好みで、アレルギーがあるとかじゃないし信仰上の問題でもない。でも肉が無理って言う人この国では結構珍しいじゃない?」
「ええ……野菜嫌いならいますけど」
「そうそう。大人になっても一定数いる。それに比べて肉嫌いは数がはるかに少ないせいか、周りからは事あるごとになんでって聞かれるらしい」
「なんで……」
「嫌いなものがピーマンだったらなんでとは絶対聞かないだろってあの子しょっちゅううんざりしてる」
「たしかに……でも、そうですね。俺もそうかもしれません。友達から焼肉は無理って言われたらなんでって聞いちゃうと思います」
「私もだよ。あの子とはたまたま小さい時から一緒にいて好みを知っているけど、そうじゃなかったらきっと聞いてた」
肉なんて誰でも好きだと思っていた。好きか嫌いかを気にする以前に、好きか嫌いかという疑問がそもそも頭に浮かばない。
「しかも最近はペスカタリアンとかエシカルヴィーガンとかなんでも名前ついてるでしょう? 彼女は魚も卵もチーズも食べるし市販のお菓子も大好きだから保存料なんかの添加物に過敏な訳でもないんだけど、人前で肉を食べないって言うのはなるべく避けるようにしてるんだって。相手がもしその辺を毛嫌いしてるとあからさまな態度を取られる事もあるから。あーそういう感じの人ねみたいに」
「そういう……」
「ええ。物事に名称と定義を付ける事による功罪ね」
名前があるのはとても便利だ。けれどラベルを貼り付ける事で偏見も生まれやすくなる。この人はヴィーガンだからこう。そうやって簡単に決めつける。
「……肉食を悪者扱いしてくるヴィーガンが許せないって言う人は結構いますもんね」
「あの子もそれほんと良く言ってる。豊かな国で何を食べて何を食べないかは自由だと思うけど、他人に自分の思想を押し付けるのだけはやめておけって」
自分で決めて自分のために自分が菜食主義になった人達にとっても、押しつけがましい過激な言動は迷惑なものに違いない。
ただの肉嫌いの人にまで飛び火してくるのだから迷惑どころの騒ぎじゃないか。ピーマンが嫌いでもピーマン農家さんから恨まれる事はないだろうが、嫌いな食べ物が肉類だと生活するのも大変そうだ。
「そういう出来事に至る所で出くわすから、なんで肉食べないのって聞かれる度にモヤモヤしちゃってるみたい。ヴィーガンを敵視してる人じゃなくても最初に口をついて出てくるのはやっぱり大抵なんでってなるから」
「ただ好きじゃない食べ物があるだけなのに……」
「ねえ。でも彼女ももう諦めてる。いちいち説明するのも疲れるだけだから何も言わずに無理して食べるか、ごく親しい人としか食事には行かなくなったんだって。これが原因で実家にも帰りたがらない」
「あ……ご家族まで……?」
「ううん、両親は二人とも優しい人達だよ。私も子供の頃からお世話になってきたし、肉が嫌いなの知ってて食べろって勧めるのは純粋にあの子を心配してるだけ。本人もそれを分かってるからこそなおさらかな」
「それもなんだか悲しいですね」
「どこぞの目つきの悪い弁護士じゃないけど、周りを変えるのって実際にほとんど不可能な事なんだよね。そうなると自分で自分の感情を守っていくしかない」
「…………」
なんでとか、どうしてとか、そういう疑問が湧いてくるのはそれを自分が知らないからだ。ただ自分が知らないだけなのに、あたかもそれ自体がおかしい事のように感じる。
不思議でなければなぜとは聞かない。自分の知らない事はなんでも否定したがる人もいるけど、深海で生きるエビに向かってお前はなんでエビなんだと問い詰める人間はいないだろう。
疑問を抱き、不思議に思うのは相手に興味を示した証拠で、それはつまり敵意や悪気があるばかりでは決してないが、それ自体はただただ自然にその状態でいるのだとしても、自分が知らないという理由だけでそれそのものが奇妙でおかしい事のように感じる。
きっと仕方のない事だ。たとえどんなに注意したとしてもどこかに必ず限界はある。
自分の知っている事の多くは、自分という個を中心に少しずつ作られていく。自分の周りに知らないものがあると知らなければ視界にも入らない。自分で入れようと、しなければ。
「……こういうとき比内さんなら……」
どうするか。ふと、想像したくなった。肉嫌いだろうと野菜嫌いだろうと。深海のエビでも。もちろん、男でも女でも。
なんでもそうだ。比内さんなら、たぶん。きっと。
「そうかって、言いそうですね」
あまりにも自然に、すぐに浮かんだ。肉は食わないと誰かが言ったとき、そうかと言う。きっと比内さんは言う。
なんでとは聞かない。どうしてと問い詰めない。健康のために肉は食った方がいいなどと頼まれてもいないアドバイスはしない。美味しいのに勿体ないなんて、自分の好みでものを言うのでもなく。
そこに疑問を抱く理由がない。ただ空気を吸うみたいに、そうである事をそうと受け取る。
比内さんはそういう人だ。視界に入るのを否定しない。それ自体をそのまま認める。
俺より長く比内さんと一緒にいるここの人達ならば、何度もそれを見ているだろう。
まるで根負けしたかのように、有馬先生はそこで笑った。
「ええ。そうね。あの男ならそう言う」
そうか。ただ一言。
本当にそう思っているだけかもしれない。だがそれで救われる人もいる。黙って聞いて、黙って受け入れるのは、誰にでもできる事じゃない。
それができてしまう比内さんを、ここから挑発でもするみたいに有馬先生はもう一つ付け足した。
「ただし中川くん以外なら」
フンと澄ましてきっぱり言われた。今度は俺が笑わされる番。
もしも相手が中川さんなら、何抜かしてんだ食えとでも言って無理やり口に突っ込みそうだ。
言われて、されて、言動を制限されて気になる事もあれこれあれば、見かけは全く同じなのに不快感とは無縁の出来事だってある。
相手と状況。その人の性格。態度なんかも。築き上げた関係性でも変わる。そこにズレがあるとき、火種ができる。
だから分からない事を前提として向き合っている人だけは、ただ、そっかって言うのだろう。そうなのかと、ただ知るのだろう。
喧嘩ばっかりしている弁護士同士が同じ事務所で働いている。口汚く言い合う大人達の、息だけはどうしてか合っている。
この理由にも名前がついているはずだ。呼び方にはいくつかあると思う。きっと名前は色々あって、簡単に括れるものではない。その中の一つを俺達は時々、もしくは幸運にも頻繁に感じ取る。
堅苦しい敬語表現とは違う。言い合えるのはむしろ健全な証拠だ。靴の脱ぎ方だの魚の食い方だのお茶の飲み方だのお辞儀の角度だの、形式だけを重視するような礼儀作法とも全く異なる。
上辺じゃない。そんなものとはむしろ対極。紛い物には決して真似できない、何かだ。
七瀬さんにはリストの作業報告をして、そこからもう少々雑用を引き受け、一足お先に帰る前に渋さ緩めで淹れてきたお茶。
それを比内さんの部屋にも持って行った。トレーの上にはまだもう一つカップがあるのをチラリと視線で捉えられる。今日の夕飯の予定だけ伝えてそそくさと退室し、そのまま奥の有馬先生の部屋へ向かった。
「ありがとう」
「いえ。お疲れ様です」
お茶を置いたらすぐに出るつもりだった。しかし軽く会釈したその時、有馬先生にそれとなく尋ねられた。
「さっきの聞いてた?」
「え?」
「給湯室で」
「あ……」
しまった、バレてた。俺にはコソ泥もできない。
となると比内さんにも多分バレていただろう。特に何も言われなかったが、やっぱり猫より人間の方が好奇心のリスクは高かったようだ。
「あの……すみません」
「ううん、ごめんね。見苦しい所ばっかり」
「いえ……」
こちらこそ盗み聞きなぞはしたない真似をいたしまして。
「裁判はしないんですか……?」
「たぶんね」
「…………」
ホワイトボードでおおよその経緯は掴めた。さっきの二人の喧嘩を盗み聞きして、依頼人の女性がつらい立場にあるのだろう事も見当がついた。
この国に限った問題じゃなくても先進国の中で日本は遅れているらしい。なんなら良くてなんなら悪いのか、境界は曖昧だが常に張りつめている。
「……男とか女とか俺もつい言っちゃうことあるので、やっぱ気を付けないとなって」
聞かれてもいないのに言い訳みたいに喋ってる。煩わしいかもしれないそれは、ふふっと笑って受け取られていた。
「そうだね。相手の感じ方を自分で想像してみるのは大事」
「はい……」
「気を付けようって風潮が今はあるし、昔に比べればだいぶ進んだ。子供の教育現場でも先入観を植え付けないように配慮がされてきてるから、これからの若い子たちは少なからず私達の世代とは変わっていくんだと思う」
デスクのそばでトレーを持ったまま、言葉は見つからないのでうなずいた。
口元でカップを傾けた有馬先生の表情は、やりきれないとでも言うようだ。
「でも彼の言ってることは間違ってない。綺麗事だけじゃどうにもならないんだよね」
「…………」
かつて、比内さんの前の住居に男が侵入してきた騒動の翌日、それを知らされて誰よりも一番激怒したのは有馬先生だったそうだ。
中川さんにその当時の話をあれからまた聞く機会があった。事実に憤り、怒りを露にさせて、警察署にいる被疑者の所に殴り込む勢いだったのを周りが抑え宥めたのだとか。
刑事事件による被害者の相談にも元より熱心だったらしいが、男性被害者の支援に力を入れるようになったのはそれがきっかけだったようだ。
弁護士とは言え相手が女性だと打ち明けづらい依頼人もいるはず。けれど大勢に信頼されるのは、それが有馬先生だからだ。
綺麗事にはたぶん、種類がある。それが綺麗事であるのだと、理解しているか否かは大きい。
理解しようともせずただ気持ちよく誰かがそれを言ったとき、一瞬にして反発が起こる。お前の目と耳は飾りなのかと憤りだけが込み上げてくる。
泥をかぶりたい人なんていない。なのに自分の綺麗な部分だけを見せとようとするのは卑怯でこずるい。それを卑怯だと思う自分が汚れているのだと追いつめられるようで、そのため余計にそいつの本心を暴き出してやりたくなる。
けれど有馬先生を見ていてそうはならない。有馬先生の言う理想はきっと多くを考えた結果で、いろんなことを考えるから悩んで、それでも言う。いくら苦しんででも。
葛藤を背負いながら吐き出す綺麗事は綺麗事とは言えないだろう。今だってそう。だからここにいる。有馬先生が守りたいのは、綺麗な事を言える自分じゃない。
だから知りたくなる。ここにいる大人たちが何と向き合っているのか、聞きたい。
「依頼人の女性は、どんな人ですか……?」
「え?」
「…………すみません」
いささかの躊躇いとともに聞き、聞き返されてやはり躊躇った。
有馬先生に初めて会った時、厳しくて冷たいような印象を受けた。あの時の冷たいイメージはとっくに払拭されている。今でも厳格な雰囲気は強いが、有馬先生は色んな笑い方をする。
今はまた少し、ふんわりと。それだけで一瞬で柔らかくなった。
「いいえ。守秘義務の意味をあなたが正確に理解している事はここにいる全員が分かってる」
顔を上げた。ニコリと返される。有馬先生は静かにカップを置いた。
「彼女はそうだね……ハイヒールを強制されるのが嫌いな人かな」
「ハイヒール……?」
有馬先生の足元を思わず見下ろした。デスク越しなので全く見えないけれど、いつもどんな靴を履いているかは見ているためよく覚えている。
「あ……女の人ってもしかして、そういう格好嫌いなんですか?」
あんなので良く歩けるなと思う事なら俺にも多々ある。ずっとつま先立ちしているみたいだ。痛いとか疲れるとかクラスの女の子が話しているのも聞いたことがあった。自分で履いたことはなくても見ていて大変そうには思える。
素直な感想を疑問に変えれば、今度は楽しげに笑われた。
「私は好きだよ。ハイヒールもお化粧も。私の場合はこの格好してる時が一番気合入るから」
初めて会った時も今も隙があるような瞬間を見たことがない。いつもキリッとして見える。
そう思っていたのだが、気合が入ると本人が言うからには俺の印象も間違いではなかったようだ。
「誰かにこうしろと言われてやってるわけじゃない。こういう靴が嫌いな人も多いけど、だからってハイヒールを履く文化そのものを否定するのは違うでしょう?」
頭をコクッと前に傾けた。依頼人の女性がハイヒールを履けと言われたのかどうかは知らないけれど、これはきっとそういう話だ。
ハイヒールを履いた方が女性らしい。女なら女らしくハイヒールを履け。そんな言い方をずっとされてきたから、女性らしさという言葉が嫌われるようになる。その象徴が忌避される。
男らしく逞しくなれ、などというのも同様に。そのせいで言ってはいけない言葉だけが増える。
侮辱を意図していない事まで、差別とは異なるはずの部分まで、全部最初からまとめて否定しておく。だって危ないから。間違えるかもしれないから。男女の固定観念を助長する恐れがある物や言葉や文化は消し去る。
そんな思想に覆いつくされるようになったら本物のディストピア小説の世界だ。たとえ正常な細胞であってもガン化するリスクは常に孕んでいるからエラーを起こす前に殺しておこう。そう言っているのと何が違うのか。平等を切実に訴える人達だってそんな事態は求めていない。
「だからね、私たちが本当に言いたいのは多分こっち」
「こっち……?」
「お前らに上から決めつけられる筋合いはないんだよ黙ってろ」
清々しく言い切って、有馬先生は笑みを深めた。
「これは男とか女とかの問題じゃない。それくらいシンプルだったらまだ少しは楽なんでしょうけど」
こういうふうに言え。これは言うな。こうするのが当然。こんな事はしないのが普通だろ。
これらがどこかで引っかかるのは、男だから、女だから。それだけに限った事ではない。
「あとはもちろん相手と状況にもよるかな。コミュニケーションは難しいね」
清々した言い方はほんの一瞬。すぐにまた困ったような笑みに戻った。
気持ちを正確に言語化できても伝わらないなら打つ手はもうない。だから俺達はおそらく未だに、言葉を使いこなせていないのだろう。
自分達で扱いきれないものを作り出すのが人間だ。言葉を持っていないライオンや狼が群れの中で無意味な殺し合いを始めることは早々ないのだから、俺達よりよっぽど賢くできている。
「目の前にあるものをただそっかって単純に受け取れるようになったら一歩先に進むと思う。でも私達はそこまで素直じゃない。これはコンプラ的にまずいから言わないでおこうなんていちいち考えなきゃならないのが残念ながら今の限界なんだろうね」
「……なんか、今のこれって……」
「うん?」
「……誰が得するんでしょうか」
「うん……さあ……どうだろうね。もしかしたら誰かには都合がいいのかも」
「…………」
「そうとでも思ってなきゃやってられない」
ネットでもテレビでも毎日のように何かしら騒いでいる。その多くは正義の名の下にある。
けれど問題提起と見せかけて対立をいたずらに煽るだけ煽り、その果てに複雑だとか難しいなどと勝手に締めくくる一部のメディアにはどうしても違和感がある。争いを強調した表現のありようは解決を目指しているようにはとても思えない。
対立は多くの物事で起こる。表があれば裏もあるし、下があれば上もあるし。誰かにとっての不利益が、誰かにとっての得になることも。
だがそれ以上にもっと悲惨なのは、誰も望んでいないのに、皆でしてしまっているときだ。
「私の父方の親戚に六つ下の従妹がいるんだけどね、その子昔から肉が嫌いなの」
「え……にく?」
「ええ、肉。牛も豚も鳥もダメ。ヒツジなんかは問題外」
唐突に始まった肉の話。ここで意味のない話を有馬先生はしないだろう。
「これは単なる彼女の好みで、アレルギーがあるとかじゃないし信仰上の問題でもない。でも肉が無理って言う人この国では結構珍しいじゃない?」
「ええ……野菜嫌いならいますけど」
「そうそう。大人になっても一定数いる。それに比べて肉嫌いは数がはるかに少ないせいか、周りからは事あるごとになんでって聞かれるらしい」
「なんで……」
「嫌いなものがピーマンだったらなんでとは絶対聞かないだろってあの子しょっちゅううんざりしてる」
「たしかに……でも、そうですね。俺もそうかもしれません。友達から焼肉は無理って言われたらなんでって聞いちゃうと思います」
「私もだよ。あの子とはたまたま小さい時から一緒にいて好みを知っているけど、そうじゃなかったらきっと聞いてた」
肉なんて誰でも好きだと思っていた。好きか嫌いかを気にする以前に、好きか嫌いかという疑問がそもそも頭に浮かばない。
「しかも最近はペスカタリアンとかエシカルヴィーガンとかなんでも名前ついてるでしょう? 彼女は魚も卵もチーズも食べるし市販のお菓子も大好きだから保存料なんかの添加物に過敏な訳でもないんだけど、人前で肉を食べないって言うのはなるべく避けるようにしてるんだって。相手がもしその辺を毛嫌いしてるとあからさまな態度を取られる事もあるから。あーそういう感じの人ねみたいに」
「そういう……」
「ええ。物事に名称と定義を付ける事による功罪ね」
名前があるのはとても便利だ。けれどラベルを貼り付ける事で偏見も生まれやすくなる。この人はヴィーガンだからこう。そうやって簡単に決めつける。
「……肉食を悪者扱いしてくるヴィーガンが許せないって言う人は結構いますもんね」
「あの子もそれほんと良く言ってる。豊かな国で何を食べて何を食べないかは自由だと思うけど、他人に自分の思想を押し付けるのだけはやめておけって」
自分で決めて自分のために自分が菜食主義になった人達にとっても、押しつけがましい過激な言動は迷惑なものに違いない。
ただの肉嫌いの人にまで飛び火してくるのだから迷惑どころの騒ぎじゃないか。ピーマンが嫌いでもピーマン農家さんから恨まれる事はないだろうが、嫌いな食べ物が肉類だと生活するのも大変そうだ。
「そういう出来事に至る所で出くわすから、なんで肉食べないのって聞かれる度にモヤモヤしちゃってるみたい。ヴィーガンを敵視してる人じゃなくても最初に口をついて出てくるのはやっぱり大抵なんでってなるから」
「ただ好きじゃない食べ物があるだけなのに……」
「ねえ。でも彼女ももう諦めてる。いちいち説明するのも疲れるだけだから何も言わずに無理して食べるか、ごく親しい人としか食事には行かなくなったんだって。これが原因で実家にも帰りたがらない」
「あ……ご家族まで……?」
「ううん、両親は二人とも優しい人達だよ。私も子供の頃からお世話になってきたし、肉が嫌いなの知ってて食べろって勧めるのは純粋にあの子を心配してるだけ。本人もそれを分かってるからこそなおさらかな」
「それもなんだか悲しいですね」
「どこぞの目つきの悪い弁護士じゃないけど、周りを変えるのって実際にほとんど不可能な事なんだよね。そうなると自分で自分の感情を守っていくしかない」
「…………」
なんでとか、どうしてとか、そういう疑問が湧いてくるのはそれを自分が知らないからだ。ただ自分が知らないだけなのに、あたかもそれ自体がおかしい事のように感じる。
不思議でなければなぜとは聞かない。自分の知らない事はなんでも否定したがる人もいるけど、深海で生きるエビに向かってお前はなんでエビなんだと問い詰める人間はいないだろう。
疑問を抱き、不思議に思うのは相手に興味を示した証拠で、それはつまり敵意や悪気があるばかりでは決してないが、それ自体はただただ自然にその状態でいるのだとしても、自分が知らないという理由だけでそれそのものが奇妙でおかしい事のように感じる。
きっと仕方のない事だ。たとえどんなに注意したとしてもどこかに必ず限界はある。
自分の知っている事の多くは、自分という個を中心に少しずつ作られていく。自分の周りに知らないものがあると知らなければ視界にも入らない。自分で入れようと、しなければ。
「……こういうとき比内さんなら……」
どうするか。ふと、想像したくなった。肉嫌いだろうと野菜嫌いだろうと。深海のエビでも。もちろん、男でも女でも。
なんでもそうだ。比内さんなら、たぶん。きっと。
「そうかって、言いそうですね」
あまりにも自然に、すぐに浮かんだ。肉は食わないと誰かが言ったとき、そうかと言う。きっと比内さんは言う。
なんでとは聞かない。どうしてと問い詰めない。健康のために肉は食った方がいいなどと頼まれてもいないアドバイスはしない。美味しいのに勿体ないなんて、自分の好みでものを言うのでもなく。
そこに疑問を抱く理由がない。ただ空気を吸うみたいに、そうである事をそうと受け取る。
比内さんはそういう人だ。視界に入るのを否定しない。それ自体をそのまま認める。
俺より長く比内さんと一緒にいるここの人達ならば、何度もそれを見ているだろう。
まるで根負けしたかのように、有馬先生はそこで笑った。
「ええ。そうね。あの男ならそう言う」
そうか。ただ一言。
本当にそう思っているだけかもしれない。だがそれで救われる人もいる。黙って聞いて、黙って受け入れるのは、誰にでもできる事じゃない。
それができてしまう比内さんを、ここから挑発でもするみたいに有馬先生はもう一つ付け足した。
「ただし中川くん以外なら」
フンと澄ましてきっぱり言われた。今度は俺が笑わされる番。
もしも相手が中川さんなら、何抜かしてんだ食えとでも言って無理やり口に突っ込みそうだ。
言われて、されて、言動を制限されて気になる事もあれこれあれば、見かけは全く同じなのに不快感とは無縁の出来事だってある。
相手と状況。その人の性格。態度なんかも。築き上げた関係性でも変わる。そこにズレがあるとき、火種ができる。
だから分からない事を前提として向き合っている人だけは、ただ、そっかって言うのだろう。そうなのかと、ただ知るのだろう。
喧嘩ばっかりしている弁護士同士が同じ事務所で働いている。口汚く言い合う大人達の、息だけはどうしてか合っている。
この理由にも名前がついているはずだ。呼び方にはいくつかあると思う。きっと名前は色々あって、簡単に括れるものではない。その中の一つを俺達は時々、もしくは幸運にも頻繁に感じ取る。
堅苦しい敬語表現とは違う。言い合えるのはむしろ健全な証拠だ。靴の脱ぎ方だの魚の食い方だのお茶の飲み方だのお辞儀の角度だの、形式だけを重視するような礼儀作法とも全く異なる。
上辺じゃない。そんなものとはむしろ対極。紛い物には決して真似できない、何かだ。
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兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
【完結】それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。
するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。
だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。
過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。
ところが、ひょんなことから再会してしまう。
しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。
「今度は、もう離さないから」
「お願いだから、僕にもう近づかないで…」
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
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