No morals

わこ

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第二部

77.根付く色欲、交わす情

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「誘ってる」

 何が。と聞き返す間もなく上から口付けられている。
 人の服を脱がすだけ脱がしておいて、涼しい顔で俺を見下ろすこいつ。その首に腕を巻きつけてキスに応えた。ゆっくり舐め合う。
 この男は余裕の含み笑いだ。下の唇を舌先でなぞって、挑発するように目を覗き込んでくる。

「ほら」
「……うるせえよ」

 引き寄せ、竜崎の唇に噛み付いた。押し入るために口を開いたのに、反対に迫られている。

「ん……」

 舐め合って、しゃぶりつかれる。舌先をちゅくっと吸われるのが気持ちいい。
 そんなのを言葉に表せるはずがないから、行動で示す。この男が感じるように。唇を食んで、舌を絡めた。

「っ……は、……」

 唇が何度も触れる。合せては離れる小さなキスを、飽きずに何度も繰り返す。
 互いに唇をついばみながら、竜崎の服に手をかけ、シャツのボタンをプチッとひとつ。さらにもうひとつ。そうやってはだけさせていく。

 服が邪魔でしかないのはこうなるとこの男も同じことで、乱雑にシャツを脱ぎさり、それを適当に放り捨てた。その動作を下から見上げながらあたたかい肌にそっと触れる。腕から肩へと上らせて、こっちにゆっくり引き寄せた。
 素肌が合わさる。ゾクゾクする。すべすべした体温を抱いて、ねだるように背中を撫でた。

「やっぱ誘ってる」
「るせえ」

 毒づきながらこの男の首横に舌を這わせる。ねっとり舐め上げ、チュッと吸いつき、耳元に唇を寄せた。

「分かってんならさっさと来い」

 ピタッと、そこで竜崎が止まった。

「待たせるな」
「…………」

 こいつに弱点があるとするなら、おそらくはこれ。スルスルと背中を撫でた。くすぐるようにしてあからさまに誘えば、この男はバッと身を離し、不機嫌そうな目で見下ろしてくる。
 その顔に手を伸ばした。髪にサラッと差し入れた指を、梳くようにしてゆっくり触れる。

「なあ、竜崎……」

 呼びかけながら引き寄せて、キスする。すぐに返ってきたそれは、少しだけ荒っぽくなって俺の口の中を犯した。
 駆り立てた。自殺行為だ。分かってる。これでいい。

「ん……」

 唇が首元へ下り、性急な動きのまま鎖骨から胸に舌を這わせてくる。指先はスリッと乳首を撫でた。ほんの少しいじられただけで、敏感に尖るそこはピチャリと、口に。

「ぁ……」

 舌先でつついて転がし、しゃぶりついて、ちゅくっと吸い上げて。
 脇腹を撫でる竜崎の手に、自分の手をぎゅっと重ねた。されるがまま少しずつ、呼吸を乱してその動きを感じる。

「っ……ンッ」

 突起にカリッと歯を立てられ、広がるのは痛みではない。甘いしびれが全身に伝わる。

「ぁっ……ッ……ん」

 一番気持ちいい甘噛みの加減。つまむように歯で撫でられて、そうやって何度もかじった後にはチュクッと音を立てて吸い上げられた。
 ピクンと跳ねたこの体。ジンジンする乳首から唇が離れ、そっと脇腹をなぞっていく。かぷっと肋骨の下を強く噛まれた。さっきのとは違ってちょっと痛くて、けれどすぐ舌先に慰められる。くすぐったいだけなのとは違う、じれったい感覚に身をよじった。

 大きな手のひらはゆっくり下に。膝を立てさせられ、素直に従う。太ももの内側をゆっくりともみながら、いやらしく這い回っているその手は付け根を焦らすようにして撫でた。

「はぁ……っ……竜崎……」

 腰が揺れそう。体の上を撫でていた唇で太ももの内側に吸いつかれ、足が震える。それをやんわり開かされて、パクッと、咥えられたのは上向いたそれ。

「っ……ぁ、ッ……」

 ゆっくり舌で舐め上げてくる。根元からてっぺんにかけて何度も。ちゅっとカリに口付けてから、先端を口の中でもごもごと舐めまわされれば、つま先まで力が入る。なのに体からは力が抜ける。

「あ……ん、ぁ…くち、ダメ……ぁ、あっ……」

 しゃぶられて体が仰け反る。くびれの部分で唇が動いた。

「アっ……ッ……」
「お前が悪い」
「だ、っめ……しゃべるな……っ」

 快感が強すぎる。口の中には出さないようにこっちはどうにか堪えているのに、この男は唇でスルスル撫でさすりながら先端をちゅくッと舌で吸った。

「ンンッ……っ……」

 男にしゃぶられた経験なんてなかった。この男と会うまでは。竜崎だって男を相手にした事なんてなかったと言うが、こいつはいつも的確に攻めてくる。そしてやるたびに上手くなる。

「んっ、あっ、ぁ……りゅうッ……ダメ……っ」

 口全体でサオを上下にこすってくる。しつこく舌を絡めて吸い上げ、絶妙な強弱の加減でそこにしゃぶりついていた。
 その手は再び太ももへ。内側を撫でて、揉んで、そのせいで快感がせり上がる。身震いしながらシーツを掴んだ。握りしめ、耐える。イキそう。

「ぁ……はぁ、あっ……ん……」
「誘っといて我慢してんなよ」
「ッ……のっ……おぼえてろッ……」

 忍耐との勝負だがすぐにでも負けられる。引き出される快感によって隅から隅まで醜態をさらす。
 プライドなんてもうズタズタだけれど、そんなこと以上に、すごく、気持ちいい。

「んっ……ふ、ぁ……ッ」

 チュクッと濡れた音が目立ち、顔半分を枕に埋めた。先走った液体をこの男の舌が掬い取り、こすり付けるようにサオを舐め上げている。恥ずかしいのにもっとされたくて、太ももに添えられたその手に開かされるのも喜んで応じる。
 全部見せてる。何もかも。そこが震えて、そういうのも見られた。

「あっ、ぁ……ッ」
「すげえ濡れてる。分かるか。ずっと出てる」
「ぅ……っく……バカ、ぁ…」

 チロチロとヤラしく舐め取り、反り立ったそれに舌を這わせる。先端を口に含まれ、陰茎に添えたその手が上下にそっと動かされた。
 限界も近い。ビクビクしてる。長く骨ばった指が裏筋をくすぐるようになぞり、ぴくっと俺の肩が揺れると、先っぽを軽く歯がこすった。

「あぁッ、……っ……はあ、っ……」
「かわいい」
「ッ……」

 カッと熱くなる顔を苦し紛れに片腕で覆い、手の中で固く握りしめたシーツには力を込めてしわくちゃにさせた。
 張り詰めたそこを絶えずなぶられる。熱い舌の感触。声も隠せない。

「んぁっ……ぁ、あッ……ダメ、っも……」
「イけ」
「んっ、は……ンンッ……」

 追い詰めるように口いっぱいに頬張る。動き回るその舌に翻弄されて、全身に走ったしびれでビリビリしてくる。頭をグッとのけぞらせ、限界を感じてきつく目を閉じた。

「っ……ッ……ぁあッ」

 ビュッと、出る。それをこの男は口で。
 なんの躊躇もなく吸い上げて、最後の一滴まで舌の上に乗せた。

「ん……ン、ぁ……ふ……」

 ずっと舐めてる。吸い付いてくる。ダメって言ってもどうせやめない。
 しつこくねっとり舌を這わせて、しばらくすると足の付け根にまで来た。なんでもないそんな場所でも感じる。呼吸は乱れたまま整わない。

「はあ、っは、っ……んの……ばか……」

 とうとう顔面は両腕で覆った。上から降ってくるのは小さな笑い声。
 焦った姿が見たかっただけなのに、自滅して終わった。いつもこうなる。シーツに沈んだままゆっくりと呼吸を整え、腕をどけて竜崎を見上げると勝ち誇ったような顔が飛び込んでくる。
 腹立つ。何度負ければ気が済む。

 ベッドにキシッと肘をつき、気だるい体を無理やり起こした。竜崎のしっかりとした肩を押す。向かい合って座った。その首にカプリと噛み付いた。

 顔はいつまでも余裕そのものだが、分かってる。ズボン越しに見て取れる。
 両手でファスナーに手をかけた。明らかに窮屈そうなそこから断りもなくブルンッと取り出す。
 興奮してるクセに。こんな勃起してる。涼しげな表情とは裏腹に熱く猛ったそこに手を添え、撫でるようにしてゆるく握った。

「っ……」

 低く、詰めたようなその声。チラリと見上げる。眉間を寄せていた。自分から少し後ろに下がって、顔を埋めるようにして上体を伏せた。

「裕也……」

 ぱくりと口に入れたら、呼ばれた。男にしゃぶられるのも男のをしゃぶるのも当然ながら未経験だったが、しゃぶる方についてはいまだにそうだ。しょっちゅうやっているのはしゃぶられる方だけ。こいつはいつもしてくるばかりで、しゃぶれと言ってきたためしはない。
 これは俺がしたくてしている。そうではあるが、どうしていいかが正直なところ分からない。
 口の中が熱い。大きく咥え込んでいる。そうかいつも、これに犯されているのか。

 若干の躊躇はありつつもそっと口を動かしてみる。なんか、変な感じ。けど、悪くない。
 グッと顔を押し出してもっと奥に飲み込もうとすれば、この男の手がそれを止めるように俺の頬に触れてきた。

「いいよ、お前はそんなことしなくて……」

 そんなことと言うようなことを俺にやりまくってんのはお前だろ。
 舐めろとかしゃぶれとかイかせろとかなんだとか、こいつのこの性格を考えればいつ言ってきてもおかしくなかったのに。
 一度だって言われた事がない。それどころか今は止められた。
 まさかだ。なんでだ。何が不満だよ。女の口なら慣れているだろうから俺だっておんなじようなもんだろ。

「…………」

 自分で考えてみてイラッときた。やんわり引き剥がそうとする手には従わず、意地でも離さない。そのうちに布地が邪魔になってきて、下着ごと強引にずり下げてやった。

 こいつはいつも、俺にどうしてる。思い起こしながら口を動かした。
 ちゃんと満足できているのか。男でもいいのか。俺で、大丈夫か。抱かれながらも時々よぎる。俺だけよくても意味がない。

 気持ちいいって、思ってほしくて、もごもごしながらチラッと見上げる。目が合った。ちょっと、目元は赤い気がする。こんなヘタクソな舌づかいでも、感じてる。それが嬉しくて、喉まで押し込みしゃぶりついた。

「ッ……裕也……っ」

 戸惑ったような、いくらか乱れたその声。竜崎の手は俺の頭に触れた。押さえつけないように耐えるみたいな、そんな手つきに気分が良くなる。
 ぎこちないフェラは息も上手くは続かない。はふはふと漏らしながら、口の中を占める昂りに舌を這わせ、顎を動かす。

 意外と、いやこんなことは本来なら知らなくても良かったのだが。思ったよりも難しい。
 こんなに顎がつらいものなのか。こいつのじゃなかったら死んでもやりたくない。

「ン、ふ……」
「裕也……もう、いいから。放せ……」

 誰が放すかバカ野郎。気持ちいいならそれっぽいこと言えよ。
 意地になって口を動かし、さらに喉の奥へと詰め込む。歯を立てないようにかぶりつき、やんわりと吸いつきながら、下からてっぺんにかけて舐め上げた。
 ぅ、っと小さな呻き声を聞く。裏筋にもそっと舌先で触れた。

「ッ……っ裕也、はなせ……もういい…っ」

 ちょっと怒ったような声。しゃぶったままチラリと見上げる。
 眉間を寄せて、苦悶して、困ったような顔をしている男。はぁっと深く息をついたこいつは、見上げる俺の髪をゆっくり撫でた。
 その目がやめろと言っている。やめてくれって。勘弁しろと。優しいけどわずかに強張った指先で、感じているのも伝わってくる。

「裕也……」

 制止の声と手に逆らい、追い詰めたくて舐め続けた。
 さっさと出せグズ。思いながら先端のくぼみを舌先でチロチロつつく。無駄にデカいから顎も痛いし。悪くないならイケばいいのに、こいつはなかなかイッてくれない。

「ぅ……っ…」

 苦しそう。いつまで耐える気だよ。ていうかなんで耐えるんだよ、出しちまえばいいだろ。
 ここまですればむしろ押し込んでくるくらいはするだろうと思っていたが、全然。困り果てたようなその顔をちらりと見上げ、舌を動かす。目が合った。艶っぽく、その眉間が寄せられた。
 かと思えばサッと視線を外され、その態度に少々イラッとしつつもちゅぷちゅぷとしつこくしゃぶり続けた。

 顎がもう本当に疲れる。これがどれだけ疲れることか世界中の野郎どもに教えてやりたい。
 口の中でデカいブツをもごもご舐めて、ちゅぷっと、先っぽにまた吸いついた。

「はっ……く、……」

 髪に差し込まれた指先に力が入る。じっと見上げる。その顔、すっげえ色っぽい。

「なあ……ほんと、ヤバいって……ッ……」

 張り詰めた声を耳にする。それでも構わず下半身に顔を埋めた。なかなか強情なこの男を、なにがなんでもイかせたい。
 自分の唾液とこの男の先走りが、口の端からツツッと零れた。淫猥。そんな単語を当てはめたい気分。それはこいつも同じだろうか。

 いつもされていることを真似して、下で舐め上げ、唇で擦り。口の中でビクビクする昂りに、俺までつられて呼吸が乱れた。
 まとわりつかせた舌をサオに当て、歯列で撫でるようにしてしゃぶった。チュッと吸い上げ、それで立つ、水音。

「ん……ッ……」

 低くくぐもった竜崎の声。鼻に抜けるようなそれは妙に色気づいていて、俺の興奮を煽ってくる。
 腰が揺れそう。自分の性器を今にもシーツに擦り付けたくなるのを抑え、衝動に誘われるまま口を押し付けて愛撫する。
 かぷっと痛くしないようにやんわりと食いつけば、その指先には一際力が入った。それを感じながら、脈打つ昂りを吸い上げる。ズズッと、一気に。

「ッ……くっ……」

 大きく弾けた。口の中で溢れる。舌の上にもビュクビュクと乗った。勢いよく飛び出てくるそれを余すことなく口内で受け止め、全部出しきるまで吸いついた。

 知らなくても良かった質感やら何やら。それをコクリと飲み下す。流し込んだ。初めて経験する男の味だった。この男の、精液の味を知った。
 ちゅぷっとソレから唇を離し、のろのろと身を起こした。べたべたする口の周りを手の甲で拭いながら目を向ける。

「お前も少しは思い知れ。屈辱だろ、男にされんのは」
「…………本気でそれ言ってんのか。なんなんだよマジで、やめろよもう……」

 そっと手をとられ、引き寄せられた。困ったようなその顔。ああなんかやっぱ、悪くねえな。

「ダメだって……お前にされんのは……」

 覚えずにはいられない優越感に浸っていると、熱のこもった男の声と、その視線にじっと見つめられた。
 キスしたい。けど、さっきの今だし。思っていたらトサッと押し倒された。顔が近づく。上から、ためらいなく。

「あ、待っ…」

 自分の味なんて知りたくないだろうと思ってのささやかな配慮だったが。
 そっちからしてくるんじゃ意味がない。チュッと一度唇に口付け、そこをキレイにでもするかのようにこの男の舌にペロペロ舐められた。
 くすぐったい。口を開いて、そうすれば舌をねじ込んでくる。口の中のお掃除が始まった。残っていた精液が、お互いの舌の間で絡まる。

「ん……」

 顔の角度を変えながら何度も唇を触れ合わせた。キスしたままベッドに肘をついて立たせる。お互いの体の位置をトサッと入れ替えるのだって、今日は無抵抗に受け入れられたこいつ。
 狭いベッドの端の方すれすれで竜崎の体を組み敷いた。上から舌を抜き差ししてゆっくりと誘い込む。見上げてくる目は獣のようで、それにたまらなく煽られる。

 腰に回された手が背骨をなぞった。それが下へと動くのを感じつつ、竜崎の喉元へと寄せた唇。チュッと吸いつき、噛みつくように舐め上げた。そうしている間もじれったく動いていた指先が、後ろのその場所をスッと撫で、期待を抱きながら一度目を閉じた。
 どうせ余裕をなくすのは俺の方。竜崎の顔を見下ろせば、笑ってる。なんて腹の立つ男か。

「ぁっ……」

 長い指がツプッと入ってくる。探るように、少しずつ。

「痛い?」
「ン……っ」

 ふるふると小さく首を横に振る。無遠慮な行為とは反対に労わられ、俺の反応を見たこの男は根元まで中に埋めた。

「ガラでもねえことして……俺の咥えて興奮した?」
「ッるせ……」

 あんなデカブツを長々としゃぶってたら興奮くらいするだろ、悪いか。
 睨みつけるも、そこで狙ったように、中の指がグッと奥を突いた。

「アッ……」

 ピクンと揺れる。反射的に。引っ掻き回すようにくりくり動かされ、徐々に力が抜けていく。
 立たせていた腕は力なく崩れた。竜崎の肩に顔を埋めるとぽんぽんと頭を撫でてくる。あやすように抱きとめる一方、下半身で動かす指は卑猥だ。中のその動きに焦らされた。今にも腰を打ち付けたくなるのを、こらえるだけでも精一杯。

「あ、ぁ……竜崎っ……」

 指じゃ足りない。分かっているはず。こんな動きはもどかしい。
 ねだるみたいに指をぎゅうぎゅうに締め付け、一本から二本三本と増えたところでまだまだ足りない。こんなんじゃない。もっとちゃんとほしい。抑えきれない欲情で、体の奥がうずいてならない。

「はぁ……ぁっ、りゅう……」

 その顔をじっと見下ろし、右手はこの男の中心へ。硬く上を向いたそれを緩く握って、一度だけじっとり腰を動かし内壁を指先に擦り付けた。

「ンっ……なあ……こっち……」

 張り裂けそうなこの男のオスを、根元からそっと撫で上げた。その表情がピシリと固まる。そんな男の頬に触れ、誘うように唇を落とした。

「はやく……」
「ッ……」

 もう待てない。ちゅっと唇にキスしたら、中からクチュリと指が引き抜かれた。直後にはこの肩にグッと掴みかかられている。

「今日は悪いのお前だからな」

 バフッと、ねじ伏せられていた。いつものごとく痛みはないが何が起こったかは理解できない。
 気づいた時には竜崎の下。見上げる。その顔が、俺を狙ってる。

「むやみに誘うな」
「ぁっ……」
「抑え効かねえよ」

 両足をぐいっと大きく開かされ、押しつけられたのは猛ったオスだ。息をつく間もなく、ほとんど力任せにぐぐッと突き進んできた。

「ぁっ……あ、っ……」
「くッ……」

 受け入れたくてずっとうずうずしているのに体の機能は正常だから、無理に入って来たそれを押し出そうとする。それでも押し込まれ、シーツを握る。熱いし、大きい。

「んんッ…あ、ぁ……っ……」
「息吐け……」
「んっ、……はぁ、はっ……んん……ッ」
「……ッ裕也」

 苦しい。けど、ほしい。すぐに。
 竜崎の肩につかまって、ぎゅっと抱きしめ、ゆっくり息を吐く。足をめいっぱいに開かされたまま、この男を感じたくて必死だった。
 少しずつズプズプ埋まっていく。ようやく根元まで飲み込むと、見下ろされる。獣じみた目。胸を上下にハアハアさせて、その背にきつく腕を回した。それを合図に腰を打ちつけられている。

「あッ……」

 擦られた。硬い。形が分かる。ギチギチに締め付けながら、激しくなっていく動きとともに窮屈な内壁が擦られた。

「あぁッ、んっ……っあ……っ……」
「はっ……スッゲ……、締めすぎ……」
「んんっ……あっ……ぁッ」

 ジュプジュプ擦られてひきつれる。全身が痺れて意識が飛びそう。
 完全に勃っている俺の中心はお互いの腹の間で時々こすれる。腹から下がドロドロだった。それが余計に興奮を煽る。
 俺に腰を打ち付けるこの男は指と唇でも触れてくる。鎖骨をかじって舐めまわし、スルスルと肩の線をなぞった。
 器用な指先は胸元に。突起をクリクリ押し潰されて、時々は引っ掻かれ、摘まみ上げてくる。屈辱でしかないし、恥ずかしいのに。

「はぁ、はっ……ぁ、あっあ……」

 奥からせり上がってくる。肌の上も、体の中も、触られるところ全部が気持ちいい。舌も指先も優しいけれど、中の熱には容赦がない。
 本当に、獣みたいだ。違うのは感情が、先にくること。

「……っ裕也」
「あ、ぁっ……んっ」

 している時は顔が見たくなる。俺を抱いているこの男を見ていたい。
 竜崎の頬を両手でそっと挟んで下から目を合わせると、肩を荒く上下させながら眉間を険しく寄せていた。欲情してる。俺にだ。俺を感じてる。俺を抱きながら快感に酔っている。

 少し怖いくらいの顔をしていても俺を呼ぶ声は必ず優しい。その声を聞くたびに、体中が熱くなる。
 引き寄せ、半開きの口でキスをした。入ってくる舌に触れて思いのまま求めれば、何倍にもして返してくれる。

「んっ、ん……んん……ッ」

 満たされている。全身で感じる。口の端からツツッと零れた唾液を舌先で辿られて、温かく湿った感覚に目を閉じ、頭を上向かせて晒した喉元。
 そこに甘ったるく噛みつかれ、ちゅくっと吸われる。跡、残された。その場所を舌先が這って往復し、ぞくぞくする。ぎゅっと抱きしめた。

「あぁ……ん、っ……」
「っは……ッ……」
「ン、ぁ……」

 グチャグチャに攻めてくる。その動きに合わせて俺の腰も揺れていた。ぴったりと体を重ねて同じペースで腰を動かし、いい場所を掠めるとその直後、一気にグッと突き上げてくる。
 背に立ててしまう爪に気づいてはいるが、腕は放したくない。きつく抱きしめた。
 こんなに熱いし、こんなに気持ちいい。この男も感じているのが分かる。大事そうに抱いて俺を犯しながら、恍惚の表情を浮かべている。

「裕也……っ」

 いつもこうやって、呼んでくれる。普段よりも艶っぽい声で。
 絶対こいつ、分かってない。ニブいとか自覚が足りないとかこいつは俺に言うけれど、この男こそ、全然分かってない。
 呼ばれるたびに死にそうになる。俺にとっての特別だ。こいつじゃなきゃ、こうはならない。

「んんっ……あ、あぁッ……」

 所有者曰く安物のベッドが、男二人の重みにキシキシと悲鳴を上げていた。加減のないセックスだ。この時だけは必ず一つで、お互いの存在を確かめられる。
 竜崎の顔が俺の肩に埋まった。浮かされているのはどちらも同じ。たまらなく声が聞きたくなって、その頭を両手で抱えるようにして髪にサラッと指をさし入れた。

「竜崎っ……ぁっ、なあ……言えよ……」
「……うん?」
「はぁ、ぁっ……好きって……」

 見下ろしてくる。揺さぶりながら。限界は近い。声、聞きたい。

「ン……言って……っ」

 なんでも良かった。そんな言葉じゃなくても。ただ声が聞きたくて、うわ言のように懇願が口から勝手に零れている。

「ん……ぁあっ、りゅうざき……ッ」

 悩まし気に、見つめてくる。その目は鋭く、でも、熱っぽい。

「裕也……」

 色気しかない声を耳にしながら、その目に射抜かれて、受け入れたそこがきつく締まった。

「ッ……好きだ、裕也……好きだ…」
「ぁっ……ッ」

 びくりと震え、弓なりにしなる。お互いの腹の間で待ちわびたように精液を放ち、ほとんど同じくらいのタイミングでこの男も俺の中でイッた。
 ビクビクしてる。痙攣するみたいに。はぁはぁとお互い息は荒く、気が狂いそうな高揚感だ。

 あり得ないはずのことだった。こんなこと、許せるはずがなかった。それが今では求めてる。
 この男にかかったら、プライドくらいいくらでも、ぶっ壊せる。粉々に。








***








 翌日。



「好き」
「…………」
「すっげー好き」
「…………」
「好きで好きでたまんなく好きでどうしようもなく大好きで」
「…………」
「地球一億個分くらい好きだ」
「…………」
「信じらんねえくらい大好…」
「うるせえよ!!」

 竜崎のクソ野郎がいらねえ芸を覚えやがった。

「同じこと何度もうぜえ! 時間ねえんだよ、お前もバイトだろッ」
「俺に好きって言ってほしいくせに」
「るせえっつってんだろうがッ、いつまでも湧いてんじゃねえぞコラっ!!」

 目覚めた瞬間からこの調子。事あるごとにくっついてきては好きだ好きだと連呼してくる。
 夕べのアレが悔やまれる。言わなきゃよかった。なんであんなことを。盛り上がりすぎた。それだ。クソだろ。

「朝んなったらこれだもんなぁ。夕べのお前はどこに行ったよ。もう一回かわいく言ってみ? 好きって言ってって…」
「死ね、クズッ」

 背後を振り返りグーパンを繰り出す。しかし体にはキレがない。余裕でかわされ、反対に腕を掴まれた。
 続けざまにバッと払われたこの足。バランスを崩し、そこを狙ってしっかり抱きとめられてしまった。俺の腰に添えたその手はスルッと下に伸び、ジーンズの上からそっと掴むように。尻を揉んだ。

「やッ……!」

 変な声が出た。カッと赤面。クスクスと笑われてワナワナと震え、このクソ野郎の頬を思いっきりつねった。

「いたたたたたっ」
「放せアホ!」
「分かった、分かったって」

 即座に避難。一定の距離を取って竜崎をギッと睨みつけた。朝っぱらから男の尻なんて揉むな。

「……先出るぞ。お前に構ってると遅れる」
「あっ、待てよ俺も行く」

 犬みたいにダッシュで鍵を取ってくると俺に続いて部屋を出てきた。戸締り中のアホを放って一人でズンズン歩き出す。
 腰に響く。ああもう。ちくしょう。
 人の気も知らねえこいつはすぐに追いついてきて隣を歩いた。

「朝からそんなカリカリすることねえだろ」
「朝からカリカリさせんじゃねえクソが」
「まったくもう。一晩経ったら後悔しかねえよ。あんなの早々あることじゃねえんだし俺の目線から動画撮っとけばよかった」
「は?」

 肩にガシッと腕を回された。馴れ馴れしいこいつの顔をジトッと睨むと、晴れやかな笑顔が返って来た。

「えっろい顔して俺のしゃぶってる裕也の顔思い出しただけでイける」
「なっ……」
「最強においしいオカズだろ?」
「ッ……!」

 顔面が裂けそうなほどにヒクッと頬がひきつった。竜崎の顔面に俺の拳がぶち当たったのは、直後の出来事。
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王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

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