嫌われ王女は死んで英雄になる

アリス

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プロローグ

処刑

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※※※



王宮の敷地内はどこも手入れがいきとどいており煌びやか世界に包まれている。

だが、ある王女が住むところだけは別だ。

家はボロボロで今にでも崩れてしまいそうだ。

中はもっとひどい。カビだらけで、入っただけで悪臭がする。

まともな人間ならここで済むのは無理だろう。

誰だってわかることだ。

だが、王女の家族は彼女が四歳の頃から一人でここに住まわした。

何故、彼らは愛する家族になぜそんなことをするのか?

いや、できるのか?

答えは簡単だ。

愛していないからだ。

王女はこの家に連れてこられた日に、そのことに気づいた。

なぜ自分は愛されないのか?なぜこんなことをするのか?

考えても答えは出なかった。

だからか、いつしか考えなくなった。

それがいけなかったのか?

それとも、生まれてきたことじたいが間違いだったのか?

王女は目の前にいる兄弟の言葉が信じられなくて「今なんて……」と聞き返した。

「だから、あんたは明日国民の前で処刑されるって言ったの」

あー、やだうだ、こんな簡単なことも聞き取れないなんて、と妹はうんざりした表情をする。

「なんだ、その顔は」

王女の驚いた表情を見て、兄は目を吊り上げ睨みつけた。

「当然だろ。お前のせいで、我が国がどれだけの被害にあったと思ってるんだ。責任を取って死ぬのが当然だろ」

(被害?責任?そもそも誰のせいでこうなったと思ってるんだろ。自分たちのことは棚に上げてよく言えるわ。無能なくせに)

王女は兄の言葉に苛立ちながらも、自分が死ねば国民が苦しむと思い、なんとか処刑をやめるよう説得しようと口を開いたそのとき、妹の口から発せられた言葉に頭が真っ白になった。

「そうよ。みーんな、あんたが死ぬことを願ってるのよ。お父様も、お母様も、騎士たちも、国民達も。あんたを殺してくれってね。ほら、これが国民たちの声よ」

妹は魔力の籠った水晶を取り出し、王宮の前で抗議をする国民たちの姿を見せる。


「人殺しを殺せ!」

「あんな女に王女でいる資格はない!」

「俺の息子を返せ!」


「……!」

憎悪に満ちた彼らの目と自分を殺せと叫ぶ国民の姿を見て王女は言葉を失う。

(どうして?どうして、私にそんな言葉が言えるの。今までどれだけ私がこの国のために身を粉にして戦ってきたと思うの。誰よりも最前線で戦い国を、民を守るために命を懸けた。本来であれば国王や王妃の仕事も私がやった。それなのに、人殺し?王女でいる資格がない?)

王女は国民の心ない言葉に傷つき、涙が零れた。

「あんたに泣く資格なんてないから」

妹は王女の肩を押す。

いつもだったら肩を押されたくらいなんでもないが、今は体に力が入らずそのまま後ろに倒れてしまう。

王女は何も考えられず、抵抗もせず牢屋まで連れていかれた。

日が沈み、星がちらほらと出てき始めた頃、王女は覚悟を決めた。

(私はこの国から出ていくわ!)

そうと決めてからの王女の行動は早かった。

まず、手錠を壊した。

この手錠は魔法が使えないよう特別な細工がされているものだったため、力づくで、壊した。

大きな音はしたが、見張りが誰もいないことは知っていたので問題はない。

いたとしても、手錠が外れた以上問題はない。

王女はこのまま牢屋から脱出して、逃亡しおうとしたが、ふとこのまま逃げたら一生追いかけっこをしないといけないのでは、と嫌な未来が頭をよぎった。

それと同時に、その未来を回避する妙案も思いついた。



※※※



「これより、エリカ・ノイマール王女の処刑を始める。罪人を連れてこい」

兄の声で衛兵たちが、王女を引き連れてくる。

王女の姿が見えると国民たちは罵声を浴びせ、石を投げつけた。

ある者は、「息子を返せ」と泣き叫び。

またある者は、目を血走らせながら「旦那を返してよ」と石を投げつけた。

ここにいる誰もが王女の死を望んでいた。

「エリカよ。お前は多くの罪を犯した。それは決して許されないことだ。命をもって償わないといけない。だが、最後に、父として何か言い残したい言葉くらいは温情として言わせてやろう」

国王は眉間にしわを寄せ、自分はとてもつらく、悲しいのだという表情を作りながら、優しいふりをする。

だが、王女は何も言わない。

いや、言えない。

舌を斬られたから。

朝早く、兄が騎士を引き連れ、王女を殴らした。

王女は殴られても、呻き声すら上げないため、それに苛立った兄が舌を斬った。

それでも声は出さなかったが、痛みで顔が歪む王女の顔を見て兄は満足し、そのまま騎士を引き連れ出ていった。

もちろん、国王はそのことを知っている。

知っていて、わざと言ったのだ。

「そうか。それが、お前の答えか。お前には失望した。例え、いまこの場で死に、命で罪を償ったとしても、誰もお前を許さない」

国王の言葉に国民たちは「そうだ!その通りだ!俺たちは絶対にお前を許さない!」と各々が叫ぶ。

「例え、慈悲深い神々がお前を許そうとも、私たちはお前を絶対に許さない。二度とこの国に足を踏み入れることは許さない。父として、王として絶対に認めない!」

国王が高らかに宣言すると、国民は歓声を上げた。

その光景に国王は気分をよくし、処刑人に合図を送る。

処刑人は斧を手に取り、王女に近づいた。

斧を高く上げ、一気に振り落とす。

一瞬で王女の首は落ちた。

処刑人は落とされた頭を高く掲げ、国民に王女の頭を見せた。。

国民は自分たちを苦しめていた王女が目の前で死に、喜びのあまり叫んだ。

そして、その光景を王女は少し離れた建物の屋上から眺めていた。



「私はこんなにも彼らから嫌われていたのね」

魔法で作った身代わりの自分の死を見て、王女は自分が彼らにとって必要とされない人間だったのだと知った。

どれだけ尽くしても、どれだけ頑張っても、その対価が死なら……

「この国にいる理由はない」

「いいわ。喜んでその条件をのむわ。契約は成立よ」

国王が言った言葉、それに賛同した国民。

そして、それを了承した王女。

王女以外誰も知らないうちに、魔法契約は交わされた。



※※※
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