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異世界転生
新たな人生
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「ハニー!この子はハニーに似てとっても可愛いね。僕、嬉しくて泣いちゃってるよ」
(何だ、このキモイおっさんは?いや、顔はイケメンだが。言ってることがキモすぎる)
起きて、そうそう、知らないおっさんの気持ち悪い言葉を聞くというのは、正直なところ不快でしかない。
うんざりしながら、あの状況で死ななかったことに感謝していると、見ないように全力で視界から消していたゴリラがいきなり入ってきた。
(うわっ!……ビックリしすぎて心臓止まるかと思ったわ)
ゴリラを睨みつけながら、物凄い速さで動く心臓を落ち着かせようとしていると、ある違和感に気づいた。
(ん?あれ?なんで、ゴリラが服着てんの?)
見間違いか、それとも目がおかしくなったのか。
そう思いながら目を閉じ、もう一度目を開けると、やっぱりゴリラが服を着ていた。
(目はおかしくないな。ということは、世界がおかしくなっているんだな)
寝ている間に、世界に何が起きたのだろうか?
どのくらいの間、寝ていたのか?
そもそも、このゴリラと男は誰なのか?
助けた少年の両親か?いやでも、片方はゴリラだから、それはきっとないな。
私は一人質疑応答をして気を紛らわそうとしたが、この状況に自分だけが馴染めていないことに戸惑いを隠せなかった。
どうしたものかと焦っていると、この状況よりも、もっと恐ろしい言葉が耳に届いた。
「念願の娘がハニー似で本当によかったよ。ペオニア。君もハニー似で嬉しいだろう」
「もう、ダーリンったら。そんな嬉しいこと言って私をこれ以上幸せにして、どうするつもりよ」
「どうして欲しいんだい?」
「いやん!もう!ダーリンったら!」
(……)
私はいったい何を見せられているのだ。
それよりも聞き間違いか?
うん。きっと聞き間違いだ。
そうだ。そうでなければ困る。
じゃないと、私がこの二人の子供で、しかも、見た目がゴリラということになる。
それだけは勘弁してほしい。
(いや、ちょっとまって……もしかして、このゴリラ。人間なの!?)
ゴリラに見える人物を、ジーッと見つめていると、バチッと目が合った。
(やっぱり、ゴリラにしか見えないな)
どうみても、ゴリラが服を着て人語を離しているようにしか見えない。
「うん?どうしたんでちゅか。ペオニアちゃん。ママの顔に何かついてますか?」
「きっと、ハニーの顔が美しすぎて見惚れているのさ。さすが、僕の娘だ」
「やだ!ダーリン!そんな、本当のことを!」
もういや、と恥ずかしそうに男の肩をバシバシと見た目がゴリラの自称母親は叩きはじめた。
(ちょ、まっ、やめろ!風圧で……風圧で顔が!)
いったいどれくらいの力を込めて叩けば、近くにいるだけの私の顔と首が外れそうなるほどの痛みに襲われるのだろうか。
「あ!ハニー!ストップ。ペオニアの顔が!」
男はようやく娘の顔が悲惨なことになっているのに気付いたのか、慌てて妻に静止の言葉をかける。
「あら、やだ。どうしましょう。癖で、いつも通りの力加減でやっちゃったわ」
女はよっぽど後悔しているのか、顔色が一気に悪くなった。
いつもなら気にしなくて大丈夫ですよ、と声をかけるが、今回ばかりは本気(マジ)で反省しろと思って何も言わなかった。
というか、疲れて声を出す気力がなかったというのもある。
「大丈夫だ、ハニー。さすがは僕たちの子さ。見て。笑ってる」
(なに言ってんだ、こいつらは。とうとう頭だけじゃなく、目までいかれたのか。この状況で笑えるわけないだろ!)
私は殺意を込めて睨みつけるが、何故か二人は顔を綻ばせた。
「今度はキリッと凛々しい顔つきになったわ!」
「ああ。0歳でこれなら、間違いなく将来は大物になるな。それも、私たち以上の」
「ええ。きっと、この子ならなれるわ」
二人は私をおいて、大いに盛り上がった。
0歳とはどういうことだ、と抗議しようとするが口から出た言葉は「だぁ、だぁ」だった。
起きて初めて声を出したが、自分の口から出てきた間抜けな言葉が信じられず放心していると、私の新たな声を聞いた二人は大いに喜んだ。
「今パパって言ったわ」
「いや、きっとママって言ったんだよ」
いや、違いますけど。
おいって言ったんですけど。
聞いてますか。
タオルに包まれ、二人に抱き抱えられているので動くことができないので、目で訴えかけるが「パパ」「ママ」口論で気づいてくれない。
仕方ないので、もう一度声を出すと「やっぱり、パパ/ママって言った」と自信満々に勘違いを大声で言う。
(いや、だから、おいって言ったんだって。そもそも、そんなことはどうでもいいし。ていうか、0歳って何?0歳って。私、やっぱり死んだの?そこのところ誰か説明してくれない?いや、本当に誰でもいいんで)
目を覚ましてから、すぐにイカれた二人に気を取られたせいで、自分の体が違う事に全然気づかなかった。
165センチの女子高校生の体と赤ん坊の体に気づかないとか……
(アホすぎるでしょ、私)
自分の間抜けさに悲しくなる。
だが、今更嘆いたところで過去に戻れるわけでない。
だが、この両親の元に生まれたことは嘆きたい。
せめて、普通の両親のところに生まれたかった。
誰がみても、これから大変な日々をおくるのは間違いないのだから。
悲しすぎて涙を流したいのに、未だに見当はずれな言い合いをする二人がうるさすぎて悲観することもできない。
(いや、もう、まじで、本当にいい加減言い合いやめてくれないかな)
私は両親を止めるために止めろという意味を込めて「だぁーだぁ、だぁーだぁ」と言った。
だが、どういうわけかこの二人はまたしても自分たちにいいような解釈をした。
「今絶対パパ、ママって言った」
「今絶対パパ、ママって言ったわ」
(うん。もう、それでいいから。いい加減解放してくんないかな)
(何だ、このキモイおっさんは?いや、顔はイケメンだが。言ってることがキモすぎる)
起きて、そうそう、知らないおっさんの気持ち悪い言葉を聞くというのは、正直なところ不快でしかない。
うんざりしながら、あの状況で死ななかったことに感謝していると、見ないように全力で視界から消していたゴリラがいきなり入ってきた。
(うわっ!……ビックリしすぎて心臓止まるかと思ったわ)
ゴリラを睨みつけながら、物凄い速さで動く心臓を落ち着かせようとしていると、ある違和感に気づいた。
(ん?あれ?なんで、ゴリラが服着てんの?)
見間違いか、それとも目がおかしくなったのか。
そう思いながら目を閉じ、もう一度目を開けると、やっぱりゴリラが服を着ていた。
(目はおかしくないな。ということは、世界がおかしくなっているんだな)
寝ている間に、世界に何が起きたのだろうか?
どのくらいの間、寝ていたのか?
そもそも、このゴリラと男は誰なのか?
助けた少年の両親か?いやでも、片方はゴリラだから、それはきっとないな。
私は一人質疑応答をして気を紛らわそうとしたが、この状況に自分だけが馴染めていないことに戸惑いを隠せなかった。
どうしたものかと焦っていると、この状況よりも、もっと恐ろしい言葉が耳に届いた。
「念願の娘がハニー似で本当によかったよ。ペオニア。君もハニー似で嬉しいだろう」
「もう、ダーリンったら。そんな嬉しいこと言って私をこれ以上幸せにして、どうするつもりよ」
「どうして欲しいんだい?」
「いやん!もう!ダーリンったら!」
(……)
私はいったい何を見せられているのだ。
それよりも聞き間違いか?
うん。きっと聞き間違いだ。
そうだ。そうでなければ困る。
じゃないと、私がこの二人の子供で、しかも、見た目がゴリラということになる。
それだけは勘弁してほしい。
(いや、ちょっとまって……もしかして、このゴリラ。人間なの!?)
ゴリラに見える人物を、ジーッと見つめていると、バチッと目が合った。
(やっぱり、ゴリラにしか見えないな)
どうみても、ゴリラが服を着て人語を離しているようにしか見えない。
「うん?どうしたんでちゅか。ペオニアちゃん。ママの顔に何かついてますか?」
「きっと、ハニーの顔が美しすぎて見惚れているのさ。さすが、僕の娘だ」
「やだ!ダーリン!そんな、本当のことを!」
もういや、と恥ずかしそうに男の肩をバシバシと見た目がゴリラの自称母親は叩きはじめた。
(ちょ、まっ、やめろ!風圧で……風圧で顔が!)
いったいどれくらいの力を込めて叩けば、近くにいるだけの私の顔と首が外れそうなるほどの痛みに襲われるのだろうか。
「あ!ハニー!ストップ。ペオニアの顔が!」
男はようやく娘の顔が悲惨なことになっているのに気付いたのか、慌てて妻に静止の言葉をかける。
「あら、やだ。どうしましょう。癖で、いつも通りの力加減でやっちゃったわ」
女はよっぽど後悔しているのか、顔色が一気に悪くなった。
いつもなら気にしなくて大丈夫ですよ、と声をかけるが、今回ばかりは本気(マジ)で反省しろと思って何も言わなかった。
というか、疲れて声を出す気力がなかったというのもある。
「大丈夫だ、ハニー。さすがは僕たちの子さ。見て。笑ってる」
(なに言ってんだ、こいつらは。とうとう頭だけじゃなく、目までいかれたのか。この状況で笑えるわけないだろ!)
私は殺意を込めて睨みつけるが、何故か二人は顔を綻ばせた。
「今度はキリッと凛々しい顔つきになったわ!」
「ああ。0歳でこれなら、間違いなく将来は大物になるな。それも、私たち以上の」
「ええ。きっと、この子ならなれるわ」
二人は私をおいて、大いに盛り上がった。
0歳とはどういうことだ、と抗議しようとするが口から出た言葉は「だぁ、だぁ」だった。
起きて初めて声を出したが、自分の口から出てきた間抜けな言葉が信じられず放心していると、私の新たな声を聞いた二人は大いに喜んだ。
「今パパって言ったわ」
「いや、きっとママって言ったんだよ」
いや、違いますけど。
おいって言ったんですけど。
聞いてますか。
タオルに包まれ、二人に抱き抱えられているので動くことができないので、目で訴えかけるが「パパ」「ママ」口論で気づいてくれない。
仕方ないので、もう一度声を出すと「やっぱり、パパ/ママって言った」と自信満々に勘違いを大声で言う。
(いや、だから、おいって言ったんだって。そもそも、そんなことはどうでもいいし。ていうか、0歳って何?0歳って。私、やっぱり死んだの?そこのところ誰か説明してくれない?いや、本当に誰でもいいんで)
目を覚ましてから、すぐにイカれた二人に気を取られたせいで、自分の体が違う事に全然気づかなかった。
165センチの女子高校生の体と赤ん坊の体に気づかないとか……
(アホすぎるでしょ、私)
自分の間抜けさに悲しくなる。
だが、今更嘆いたところで過去に戻れるわけでない。
だが、この両親の元に生まれたことは嘆きたい。
せめて、普通の両親のところに生まれたかった。
誰がみても、これから大変な日々をおくるのは間違いないのだから。
悲しすぎて涙を流したいのに、未だに見当はずれな言い合いをする二人がうるさすぎて悲観することもできない。
(いや、もう、まじで、本当にいい加減言い合いやめてくれないかな)
私は両親を止めるために止めろという意味を込めて「だぁーだぁ、だぁーだぁ」と言った。
だが、どういうわけかこの二人はまたしても自分たちにいいような解釈をした。
「今絶対パパ、ママって言った」
「今絶対パパ、ママって言ったわ」
(うん。もう、それでいいから。いい加減解放してくんないかな)
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