ウィンドウと共にレベルアップ

アリス

文字の大きさ
10 / 28

職業 王?

しおりを挟む

「お前、今まで何で無視した!一体どこで何をしていたんだ!聞きたいことが山ほどあったと言うのに!」

強くなると誓った日から声の主は一度も話しかけてこなかった。

実が何度か話しかけたが全く反応がなかった。

『うるさいぞ。こちらにも用があるのだ。お前の都合ばかり優先はできん。それで何が聞きたいんだ?』

実は声の主の話し方に若干イラッとくるもそれを言ったところで意味もない。

聞きたいことを聞こうと頭を切り替える。

「呪いのことについて聞きたいんだ。俺はダンジョンの呪いにかかっていたと診断されたらしい。でも俺は二週間で目覚めた。呪いにかかって目覚めたことあるのは俺だけらしい。俺はどうして呪いに打ち勝てたのか知りたい。教えてくれ」

『教えるも何もさっきお前、自分で答えに辿りついていただろ。もう忘れたのか?』

声の主にそう言われ実は自分が言ったことを思い出す。

「え?本当に職業が関係してるのか?」

『そうだ。お前の職業は特別でな。呪いは一切きかん。そのためダンジョンの呪いも聞かず目が覚めたのだ』

「なるほど、そういうことか……ちょ、まってくれ。それじゃあ、いくら俺のことを調べても呪いを解く方法はないってことか?」

木村の娘の事を思い出す。

娘の目を覚まさせようといまも必死に調べているのに。

それも全て全部無駄なのか?

いや、そんなはずはない。

実はいま頭の中で浮かんだことを消し去るように首を横に振り声の主に縋るように尋ねる。

だが、そんな想いなど踏み躙るように声の主『そうだ』と認める。

'そんな……'

全て無駄だったのかと思い知らされ言葉を失う。

誰にも助けることができないのだと諦めかけていたとき、声の主がこう続けた。

『だが、一つだけ全ての呪いを解く方法がある』

「それはどんな方法だ!」

実は諦めかけていた心に希望の光が蘇り、誰もいない天井に向かって叫ぶ。

『お前が本物の強者になることだ。そうすれば、呪いを解くスキルが手に入る』

実はその言葉を聞いてゴクンッと喉を鳴らして唾を飲み込む。

「つまり、俺次第ってことか……」

『そうだ。全てはお前次第だ。どうした。怖気ついたか?今ならやめれるぞ。引き返すか?』

「いや、余計にやる気が湧いた。俺にしかできないことなんだろ。だったらやってやる。俺はたった一人のハンターに助けられた。その人に助けて良かったと思ってもらえるように。たった一人の養父を捜すためにも、俺は強くなる」

実は続けてこう宣言する。

「俺は万人を救う!」



その言葉を聞いた声の主は何度も瞬きをした。

我に返ると声を出して笑った。

久しぶりにこんなに笑ったとお腹を抱える。

笑いすぎたせいか涙がこぼれ落ちた。

ようやく落ち着きを取り戻し声の主は実に話しかける。

笑い声は実には届いていなかったので、なぜ何も言わないのかと不思議に思い、そんなおかしなことを言ったかと首を傾げる。

『そうか。よく言った。その言葉を決して忘れるな。約束だ。お前は万人を救うのだ』

実は声の主の声からいままでにない喜びを隠しきれない、そんな弾んだ声に驚く。

ずっと冷たい口調だったのに一体どうしたんだと怖くなる。

実が何も言えずに固まっていると声の主はそんな実を放ってこう言った。

『では、今からお前の職業を教える。これを見ろ』

声の主がそう言った瞬間、実の目の前にウィンドウが表示された。

「これは……」

いきなり表示されたウィンドウに驚き、重心が後ろに傾いてしまいそのまま倒れる。

ドンッ。

ベットの上だったおかげで大した痛みもない。

実はお尻をさすりながら立ち上がり、ウィンドウに何が書かれてあるのかみる。

'どれどれ……スキル、自己治癒能力……これってもしかして、俺の現在の能力が記載されているのか?なら、職業は?職業欄はどこに……'

声の主がなかなか職業を教えてくれないのでずっと気になっていた。

他の欄にも色々書かれてあるが、あとでじっくりみればいいと判断し違うとわかるとすぐに違う欄をみる。

'あった!'

職業と書かれた欄を見つける。

早くみたいような、みたくないような、どっちとも言えない感情が湧き上がり欄を見ないよう目を閉じる。

声の主の言葉で期待が上がりすぎて、もし大した職業ではなかったらと想像するだけで悲しくなる。

時間の無駄だとわかっていてもなかなか勇気がでない。

『おい。みないのか?なら、消すぞ』

'えい!どうにでもなれ!'

声の主に急かされ覚悟を決め目を開ける。



[職業:王?]



'王?……なぜハテナがついているんだ?'

想像の斜め上の職業に喜びもガッカリもしない。

むしろ困惑しすぎてどうしたらいいか落ち着こうと湯を沸かす。

「ふぅ……美味しい」

飲んでる物はただの白湯だが体はあったまるし、心も落ち着く。

もう一口飲もうと白湯を口に含むも、職業が王と書かれてたことを思い出しすぐに吹き出してしまう。

ゲホッゲホッ。

「おい!王ってなんだ!王って!それより何でハテナがついてる!説明しろ!」

実の声はとても大きく部屋の外にまで聞こえた。

外にいた人達は何事だ、と実の部屋を凝視してしまう。

『説明も何もそのままの意味だ。王は王だ。ハテナがついているのは、まだお前が完成に王と認められたわけではないからだ。王になる資格を手に入れただけだ。お前はこれからダンジョンとゲートに入り経験値を積む。そして、スキルと臣下を手に入れる。それと別にミッションもある。万人を救うのだろう。なら、頑張れるな」

「ちょっと、まってくれ!臣下とは何だ?ミッションって何だ?そもそも王に関しての説明が何一つされてない!ちゃんと説明してくれ!王にも色々種類があるだろう!」

『……説明はあとだ。誰かくる』

声の主はそう言うとウィンドウを消し何も言わなくなる。

「は?誰かって誰だ!話は終わってない!戻ってこい!」

実が声の主に向かって叫んでいる途中で扉が開き誰かが入ってくる。

実は文句を叫んでいる途中だったが、慌てて手で口を塞ぐ。

'聞こえてないよな……'

この部屋には実しかいない。

それなのに大声で独り言を叫んでいるのはおかしい。

頭がおかしくなったと思われ気味悪がれる。

実には声の主の声が聞こえるが、他の人達には聞こえない。

声の主のことを説明しても信じてもらないとわかっているので言う気はない。

それに言ったところで余計に頭がおかしい奴と思われるだけだ。

実は聞かれていませんようにと祈りながら誰が入ってきたのかと近く足音に耳を澄ます。

「花王さん」

入ってきたのは般若のような顔した看護師長だった。

実は看護師長だとわかると「あーっ」とどこから出したのかわからない声を出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...