10 / 47
絵本
「…そうして今の世界ができた。おしまい」
ゼインが最後のページを読み終わり本を閉じると、パチパチパチと拍手がおこる。
「次、次も読んで」
ゼインの読み聞かせを気に入った子供達がもっと読んで欲しいとせがむ。
「いいよ」
子供達が嬉しそうに笑っているのが嬉しくてもう一つの絵本に手を伸ばそうとしたとき思い出した。
その本は自分のことが書かれている「夏の王ゼイン」の本だと。
「(しまった。これは私の本だった)」
自分のを読まないようにさっきそこに置いたのに自分で取ってしまうなんてと項垂れる。
どうしようかと悩んでいると「皆何してんだ」と声をかけられる。
「レオン」
一人の子がレオンの名を呼ぶと子供達が一斉にレオンに抱きつく。
「もう、話は終わったのか?」
「レオンも一緒に遊ぼう」
「ゼンお兄ちゃん、絵本読むの上手だった」
一斉にレオンに話しかける。
流石に全員のを聞き取ることはできなかったが数人のだけ聞き取れた。
「(助かった)」
レオンの登場で自分の本を読まなくてもいい雰囲気になり安堵する。
「ねぇ、レオン遊ぼうよ」
ルイがレオンの手を引っ張り向こうに行こうとする。
「ごめんな。これから団会議があるんだ。また今度遊ぼう」
ルイの頭を撫で無理だと伝える。
「えー、やだ。レオン遊ぼう」
子供達が一斉に遊ぼうと駄々をこねる。
久しぶりにレオンと会ったのに大人達と話すからと言ってどっかいくし、漸く遊べるとおもったら団会議があるから無理だと言われる。
子供達は自分達とも少しぐらい遊んで欲しいと訴える。
「いい加減におし、あんた達。レオンはこの町を国を守るために一生懸命働いているんだよ。自分達の我儘ばかり言うんじゃないよ。会いに来てくれただけでもありがたいと思いな」
ミレーユの叱咤に渋々と納得したわけではないが「はい」と返事する。
「ごめんな、レオン。子供達は私がみとくから気にしないで。さぁ、行きな」
二人に早く行くよう言う。
ミレーユ自身も本当はまだ一緒にいたいと思っているがレオンにはやることがあるとわかっているので笑顔で見送る。
「ありがとうミレーユさん」
「気にしないで。ゼン、また来てね」
「はい。また来ます」
二人はミレーユと子供達に手を振り別れる。
「ごめんな。付き合わせて」
今朝、町を案内すると言ったが仕事が今日に限って山程あり案内するどころじゃなくなった。
自分で案内するとか言ったのに申し訳なさでゼインの顔を見れない。
本当は美味しい店や服屋、珍しい物を売っている店、色んな所に連れて行きたかったのに。
もちろん子供達にもいつか合わせたいとは思っていたが今日ではなかった。
家を出てすぐに馬車がとまっているのを見つけすぐに今日の予定を思い出した。
ゼインは気にしないでいいと言ってたくれたが約束をすぐに破ることになったことがどうしても許せない。
「何がだ?」
レオンが何故謝るのかわからないゼイン。
「いや、町を案内すると言ったのに、子供達の相手をさせたりしたし、今からも団会議でまた待たせてしまうから」
「ああ、そんなことか。気にしないでいい」
ゼインの大したことじゃないという反応にえっ、と目を見開くレオン。
「子供達と一緒にいるのは楽しかったし、それにレオンの働いている所を見るのは面白そうだし。退屈はしないよ」
人のために一生懸命働いている人を尊敬すると言う。
ゼインはそういう人間が好きだった。
だから、レオンの働く姿を見てみたいと思ったのだ。
「それに謝らないといけないのは私の方だ」
「何故だ?ゼンは何も悪い事はしてないだろ。悪いのはどう考えても俺だ」
ゼインが続きの言葉を発するより早くそう言う。
「それは違うよ。皆に頼られ好かれている君を独り占めにしているし、何より忙しい君を私のせいでもっと忙しくさせている。すまない」
頭を少し下げ謝るゼイン。
神が人間に頭を下げるなど誰が予想出来ただろうか。
きっと、秋の王のシグレ以外誰も信じないだろう。
「それこそ違う。俺がしたくてそう言ったし、やっている。提案したのは俺だ。俺が勝手にしてるだけだ。上手くできてないけど」
最後の方はごにょごにょと何言っているかは普通の人なら聞こえなかっただろうが、ゼインは人の何倍も耳がいいのでしっかりと聞こえた。
「だから、謝らないでくれ」
ゼインの目をしっかりと見つめて謝らないで欲しいと頼む。
「わかった。ありがとう、レオン」
ゼインがお礼を言うとさっきまでの暗い顔が嘘だったかのような気がするくらい元気になる。
あなたにおすすめの小説
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
恋をあきらめた美人上司、年下部下に“推し”認定されて逃げ場がない~「主任が笑うと、世界が綺麗になるんです」…やめて、好きになっちゃうから!
中岡 始
BL
30歳、広告代理店の主任・安藤理玖。
仕事は真面目に、私生活は質素に。美人系と言われても、恋愛はもう卒業した。
──そう、あの過去の失恋以来、自分の心は二度と動かないと決めていた。
そんな理玖の前に現れたのは、地方支社から異動してきた新入部下、中村大樹(25)。
高身長、高スペック、爽やかイケメン……だけど妙に距離が近い。
「主任って、本当に綺麗ですね」
「僕だけが気づいてるって、ちょっと嬉しいんです」
冗談でしょ。部下だし、年下だし──
なのに、毎日まっすぐに“推し活”みたいな視線で見つめられて、
いつの間にか平穏だったはずの心がざわつきはじめる。
手が触れたとき、雨の日の相合い傘、
ふと見せる優しい笑顔──
「安藤主任が笑ってくれれば、それでいいんです」
「でも…もし、少しでも僕を見てくれるなら──もっと、近づきたい」
これは恋?それともただの憧れ?
諦めたはずの心が、また熱を持ちはじめる。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる(第12章終了しました)
ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。