春夏秋冬〜神に愛された男〜

アリス

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ひまわり畑

「ご馳走様、また来るよ」
 
「すごく美味しかったです。また来ます」

会計を済ました二人はハルとリリーにまた来ると言って店をでていく。

「うん、また来てね」

ほら、あんたも、と言って肘でハルをつつく。

「待ってる」

小さな声で早口にそう言う。

二人に見送られながら来た道を戻っていく。

「レオン。本当に美味しかった。連れてきてくれてありがとう」 

「ああ、また行こう。今度は昼じゃなくて夜に行くのもいいかもな」

昼と夜では料理が違うので夜の料理も食べさせたいと思いそう提案する。



「そういえば、ゼンは馬に乗ったことはあるか?」

ここからひまわり畑まで馬に乗らないと行けない距離。

ゼインとは出会ったばかりなので何ができて何ができないのかよく知らない。

「ああ、大丈夫だ。乗れる」

そう言ったゼインだが、馬に乗ったことは一度もない。

だが、ゼインは神なのでできて当然。

馬に乗るくらい大したことではない。

「そうか、なら大丈夫だな」

もし、乗れなかったら一緒に乗ろうからと考えていたが乗れるなら大丈夫だな、と馬を二頭連れてくる。

二頭の馬はゼインを視界にいれた瞬間頭を下げ敬意を示す。

夏の王、ゼインは四季の神の中で一番動物に好かれている。

馬達は流石にゼインが夏の王だということに気付いてはいないが一瞬で好きになる。

馬の反応に驚くも自分もそうだったからわかるなと思い暫くその光景を見守る。

「じゃあ、行こうか」

レオンの掛け声でゼインは馬に跨がり、ひまわり畑に向かう。

流石、神。

初めてなのにレオンに難なくついていく。

二人はひまわり畑に着くまで一言も発さなかったが、お互いに同じことを感じていた。

二人の立場は違うが、今はただの人間として神としてなににも縛られることなくありのままの自分でいられた。



「あれが、ひまわり畑か。ここからでも綺麗だな」

少し離れた崖の上から見る。

「ああ、そうだな。あとはこの道を降りればいいだけだ。ここからは、ゆっくり行かないか?」

レオンの提案に「ああ、そうしよう」と返事する。

ひまわりの花が太陽の光で輝き遠くから見たら黄金の海のように見える。

「ここに馬を繋いでおくか」

二人は馬から降りて暇を近くの柵に括り付けると、ひまわり畑に近づいていく。

「ああ、本当に美しいな」

近くから見ると遠くから見たのとは全然違った。

自分よりも高い位置に咲いている花を眺める。

最後にひまわりを見たのはいつだろか。

思い出せないが、四百年前なのは確かだ。

人間界にある屋敷の近くにも天界にもひまわりは咲いていない。

久しぶりに見るとこんなに美しい花だったかと驚いてしまう。

「ゼン、中を歩こう」

少し歩いたところに道がある。

レオンがそこで手を振ってこっちに来てとよぶ姿が可愛くてつい微笑見ながら「ああ、そうしよう」と返事する。

ひまわり畑の中の道は大人三人が横に並んでも大丈夫なくらいの広さだ。

歩きながら、ひまわりのトンネルの中を歩いているみたいだ、とゼインは思ってしまう。

所々、太陽の光がひまわりの隙間から漏れて二人を照らす。

「ひまわりの花はこんなに大きかっただろうか。私の顔より大きくはないか?」

「ゼン。ひまわりの花を見るのは初めてなのか?」

小さい頃の自分も初めて見たとき同じことを言っていたのを思い出した。

「いや。でも、随分と前に見たからか記憶が曖昧なんだ」

首を横に振る。

「そうか。ゼンはひまわりは好きか?」

「好きか嫌いかと言われれば好きだが、そんな風に考えたことはなかったな。レオンは好きなのか?」

「ああ、好きだよ。いろんな思い出があるし。それに、毎年ここに訪れてるから」

最後の方はどこか寂しげな感じで、なんて声をかけるべきかわからず暫く二人の間に沈黙が流れる。

「ここにくる人は結構いるのか?」

漸く口を開くもどうでもいいことを聞いてしまう。

言った本人でさえ驚いて、えっ、という顔をしてしまう。

「いや、あまりいないな。町から離れているし、そもそもこの場所にひまわりが咲いていることを知っている者も少ないからな」

「そうなのか。こんなに綺麗なのにあまりこないのか。皆、ひまわりは好きではないのか」

夏に咲く花なので、あまり好かれていないと思うと少し寂しくなる。

「そんなことはないと思うぞ。皆、見たことがないからどんな花か知らないだけだ。この国でひまわりが咲いている場所なんて滅多にないし、こんなに咲いているのはここだけだ。一度ここを見たら皆きっとひまわりを好きになるさ。見たことがないからそう思うだけだと思う。俺も全ての花をしっているわけでも見たことあるわけでもないからな」

確かにその通りだとゼインは思う。

神である自分ならまだしも人間には無理だろうと。

「でも、俺はひまわりが大好きなんだ」

レオンのその一言で寂しいと思っていた感情が一気に吹き飛んだ。

「そうか」

「ああ」

大抵の人間は春の花を好きになるものが多い。

この国は一年中夏みたいな季節なのでほかの季節の花が咲くことはほぼない。

レオンは他の国にはここに咲かない花がたくさんあると商人達から聞いたことがあった。

一度見てみたいと思いながらもそんな日は一生こないとわかっていた。

それに、この国に咲く花も美しいので好きだった。

特にひまわりと蓮の花が好きだった。

暫く二人はひまわり畑の中を何も話さずただ一緒に歩いていた。

だが、少しすると何を思ったのか突然レオンがおかしなことを言った。

「なぁ、ゼン。かくれおにしないか?」
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