春夏秋冬〜神に愛された男〜

アリス

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昔の記憶 2

「これが、ひまわり……」

レオンの身長より遥かに高い花を見て驚く。

花なのにこんなに大きいのかと。

レオンは花とは小さいものだと思っていた。

自分の両手に収まるくらいか少しはみ出るくらいの大きさだと。

ひまわりと呼ばれる花は顔を余裕で隠せるくらい大きい。

これは、花なのかと固まってしまう。

「そうよ。近くで見るととても大きいでしょう」

ヴァイオレットやサルビアの頭の中上にひまわりの花が見える。

「はい」

丘の上で見たときとは違う美しさを感じる。

「おーい、二人共せっかくだから中を歩こう」

少し離れたところから叫ぶサルビアのところに「はーい」と元気よく言う。

二人の後をキョロキョロ周りを見ながら、ひまわり畑の真ん中にある道を歩く。

風でゆれるひまわり、太陽の光で美しく輝くひまわり、地面に映る影のひまわり。

ここに来てまだ数分しか経ってないが、レオンはここを気に入った。

この国ではひまわりは六月から八月までしか咲かない。

たった三ヶ月しかこの光景を見られないのは残念だが、それがまたひまわりの価値を高めている気がする。

夏の季節しか見れないから美しく恋しく想うのだろう。

「あれ?あの場所はどこじゃたかのう?ヴァイオレット、あの場所はどこか覚えとるか?」

暫くひまわりの中を歩いていたが、ふと立ち止ったサルビアが頭をかきながら困った顔で笑う。

「あれはもう少し先のところよ。そこから中に入っていけばあるはずよ」

「おお、そうじゃった、そうじゃった。あれは、ひまわりの中にあるんじゃった」

ガハハッ、と大口を開けて笑う。

「あれとは何ですか?」

二人が何のことを話しているのかわからずヴァイオレットに尋ねる。

「んー、それはついてからのお楽しみよ」

悪戯っ子がするような笑みをして内緒とあれについて教えようとしない。

レオンはむぅ、とほっぺを膨らませるがヴァイオレットに頬をツンツンとされ笑われる。

こうなったヴァイオレットは絶対に教えてくれない。

今教えるより自分の目で見たほうがいいだろと。

今からレオンを連れていく場所はサルビアとヴァイオレット、二人にとって思い出の場所。

「おおー、ここじゃ、ここからじゃった。二人共、はよ、こーい」

気付いたら二人がおらず後ろを振り向くと離れた場所にいた。

手を振りながら大声で叫ぶ。

「二人共、今から中に入るがわしの後をちゃんとついてくるんじゃぞ」

サルビア、レオン、ヴァイオレット、という順でひまわりの中に入っていく。

サルビアが先頭で道を作ってくれたので、後ろの二人は何の障害もなく進めた。

暫くひまわりの中をサルビアが急に立ち止まり背中にぶつかってしまう。

ーー痛い。

鼻を押さえる。

どうしたんですか?とレオンが尋ねようとする前に「お!あった!ここじゃ!」と子供のようにはしゃぎながら言う。

レオンはサルビアの後ろにいるので何を見つけたのか見えない。

ヴァイオレットは何がそこにあるのか知っているので、幸せそうに微笑んでいる。

それに思い入れがあるのだろう。

そんな目をしていた。

「サルビアさん」

見えないよ、と袖をクイッと引っ張る。

「おお、すまん、すまん。ほれ、自分の目でみてみ」

サルビアが横にずれ、レオンに見えるようにする。

そこには、今の自分と同じくらいの高さの白い椅子があった。

風で座るところが揺れている。

椅子の周りにはひまわりの花が咲いてなく、そこだけポツンとあった。

「白い椅子?」

これは椅子なのか?と不思議そうに椅子を見る。

「これはブランコって言うんじゃ。レオン、せっかくだから座ってごらん」

座るところを叩いて座るよう促がす。

「はい」

促されるままブランコに深く座る。

深く座ったせいかレオンの足は地面につかず浮いてしまう。

初めてブランコに乗ったが意外にもしっかり安定していて、思っていたのと違っていた。

何でこんな変な椅子?を作ったのかな、とレオンの頭では理解できなかった。

「よし、座ったな。では、揺らすぞ。落ちないようしっかり捕まっておくのじゃぞ」

サルビアがそう言うとゆっくりブランコを揺らし始める。

ーーはい、わかりました。

そう返事しようとして、ん?揺らす?、と思いどういう意味か聞こうと口を開く前にブランコが揺れた。

ブランコが大きく揺れ前に出るたび生暖かい風が顔に当たる。

レオンはサルビアに背もたれを押され、前に出たり後ろにいったりを繰り返す内にブランコというものがどういうものか理解した。

気付いたら笑っていた。

楽しくて嬉しくて幸せだった。

あの頃の自分には想像もできない幸せな日々を過ごしていた。



この町は他の町と比べ人は少なく貧乏で荒れていた。

このひまわり畑は別だが、殆どの場所は五年前に絶の等級の魔物に襲われたせいで人が住めなくなった。

王はこの町を見捨てたのだろう。

魔物に襲われたあの日から一向に町は変わらない。

魔物はユエルによって退治されたが、王宮からの支援は一切なかった。

それでも、この町で人が生きていけたのは正体不明の一人の金持ちが月に一度大量の食料を町に届けてくれたからだ。

金でなかったのはそれだと盗まれる恐れがあったからだ。

そのおかげで何とか今まで生きてこれた。

町の人達だけで復興させようと頑張るも人手が圧倒的に足りず中々元通りにはならない。

そんな生活が嫌な者達は早々にこの町を出て行き、他の町で暮らしていくのを選択した。

レオンの親もその選択をした者達だった。

ほとんどの親は子供がいると邪魔だからといって、この町に捨てていった。

ほとんどの子供は親に捨てられたショックからか生きていく気力をなくし死んでいった。

レオンも他の子供達同様死を望んでいたが中々死ねず、ただ自分の死が来るのを子供達の死体を見ながら待っていた。

そんなとき、たまたま自分のことを見つけたサルビアに「私達のところにおいで」と抱き抱えられ連れて行かれてから人生が変わった。

温かい食べ物、温かい人肌、綺麗な服、雨が入ってこない家。

二人の優しさが最初は信じられず警戒していたが、いつの間にか失いたくない大切な存在になっていた。

感謝してもしきれない程の恩がある。

今の生活は昔に比べたら天国だが、二人の恩返しの為にもこの町を元通りに、いや、それ以上の町にしてみせると決めていた。

二人の思い出が詰まった大切な町を復興させることができれば、これ以上ない恩返しができるのではないかと。



「楽しいか、レオン」

「うん。すごく、楽しいよ」
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