春夏秋冬〜神に愛された男〜

アリス

文字の大きさ
33 / 47

遊び場

「なぁ、リヒト」

「どうした、団長」

レオンがどこか緊張した声で話しかけてくるので他にも何かあるのかと身構えてしまう。

「話は変わるんだが、子供達の遊べる場所を作らないか」

本当に変わったな、とさっきまでの暗い話からよくこの話をもってこれたなと感心してしまう。

「ーーいいじゃないか。子供達も喜ぶだろう」

自分達の件と子供達のことは別。

同時進行でどちらもやろうとするレオンを尊敬する。

自分ではできない。

自分だったら子供達のことを考えられただろうか。

復讐のことしかきっと考えられなかった。

片方は剣を持ち敵を倒す力をもち、もう片方は思いやりの心をもつ。

そんなレオンだからこそリヒトはついていくと決めたのだ。

「本当か!?リヒトもそう思うか!?」

子供のように喜ぶ。

「どんな遊び場がいいと思う?」

「団長はどんなのを考えてるんだ?」

リヒトにそう聞かれ自分が考えた遊び場を説明する。

リヒトはレオンの説明を聞きその遊び場を想像する。

レオンが考えた遊具。

保護者が見守れる場所。

花が咲き誇る磯鮮やかな場所。

最高だ。

その一言に尽きる。

自分の子供の頃にあれば毎日そこで遊んだだろう。

「……って感じなんだがどう思う?」

不安そうに尋ねる。

リヒトは「最高だ!作ろう!」そう言おうとしたが、「最高だよ!団長!素敵なアイディアだ!きっと皆喜ぶよ!」とレオンに抱きつく男。

「ーーアジュガ!?」

いきなり抱きつかれ後ろを振り向く。

二人が待っていた男がいた。

いつ来たのかわからず驚きを隠せない。

「アジュガ、いつここにきた?」

リヒトが尋ねる。

「んー?たしか、『本当か!?リヒトもそう思うか!?』って団長が言ったときかな」

結構前からいた。

話しに夢中になりすぎて全くアジュガの気配に気づかなかった。

「いや、そんな前から居たんなら話しかけろよ」

「かけたよ。ノックもしたけど二人共話しに夢中で全然俺に気づかないんだもん」

仕方ないから待ってた、と。

これは自分達が悪いと謝る。

「でもさ、団長のアイディアいいけど何か物足りなくないか」

「アジュガもそう思うか?」

「ってことは、団長もそう思ってたのか」

「ああ。でも、何が足りないのかわからなくて」

三人で何が足りないのか考えるもわからない。

「よし!こういうことは本人達に聞こう」

「「本人達?」」

リヒトとアジュガはレオンの言っている意味がわからず首を傾げる。

「ああ、使うのは子供達だろう。勿論大人が使ってもいいが、目的は子供たちの為だ。大人目線でわからないのなら、子供目線になるしかない。今更子供目線になるのは難しいだろう。なら、本人達に聞くのがいいと思ってな」

「さすが団長!それがいいよ」

アジュガがレオンを褒め、リヒトも「それがいいだろうな」と同意する。

「なら、善は急げだ。早速聞きに行こう」

アジュガが部屋を飛び出す。

「あっ、おい、待て。その前に報告だろう」

リヒトが慌てて声をかけるがアジュガの耳には届かなかった。

「仕方ない。話は後で聞こう」

リヒトの肩に手を置き諦めよう、と。

二人はアジュガの後を追うように部屋を出る。

一階に降りると何故か団員達が集まっていた。

何事かと近づくとアジュガがレオンが子供達のために遊び場を作ろうと考えているので、全員意見を出すようにと頼んでいた。

団員達もレオンの考えに賛同し協力させてほしいとアジュガに申し出ていた。

勿論今は仕事中なので、それ以外の時間のときに手伝いたいと。

まずは、遊び場がどんな風だったらいいか自分の意見を紙に書いて提出するようお願いする。

「仕事が早いな」

「だな」

二人はそっとその場を離れ、外でアジュガが来るのを待つ。

「お待たせ~。じゃあ、行くこうか~」

御尾を伸ばしながら今にもスキップをしそうな勢いだ。

「お!そこの少年達いいところに」

五人の少年が座って何かをしているのを見つけると声をかけ近づいていく。

「アジュガさん」

一人の少年がアジュガに抱きつく。

「相変わらず元気でよろしい。お前達も来るか」

両手をバッと広げると四人の少年もアジュガに抱きつく。

「ここはアジュガに任せて俺達は親の意見を聞くとしよう」

子供の相手は間違いなくアジュガが一番上手い。

大人三人だと少年達も緊張するだろうからとその場を離れる。

「俺はこっちに行く。リヒトはそっちをお願いしてもいいか」

「ああ、問題ない。二時間後に集合でいいか」

「それがいいな。アジュガはここにいるだろうから集合場所はここにしよう。じゃあ、二時間後に」

「わかった」

二人は反対方向に進む。

レオンはとりあえず、よく買い物をする人達から話を聞くことにした。

「あれ?レオン団長。どうしたんすか、こんな時間に。珍しいですね」

この時間のレオンは大抵団で書類仕事か鍛錬をしている。

休みの日も基本この時間には来ない。

「ハイデか。ちょうどいい。意見を聞かせてくれないか」

「いいすっよ」

きょとんとした顔で担いでいた米を地面に置きながら了承する。

レオンの頼みなら聞かないわけにはいかない。

「実は……」

レオンは子供達が楽しく遊べる場所を作ろうと考えているが、どういったのがいいのか意見を聞きたい、と。

今考えている遊び場がどういう感じか説明する。

自分達だけでは見えていない部分もあるから何か有れば意見があれば言って欲しい、と。

「……最高っす。何すかその遊具!!俺が遊びたいくらいっすよ!!」

興奮してレオンの肩をガッと掴み激しく揺する。

「そう言ってもらえて嬉しいよ」

揺すられながら礼を言う。

暫くされたままの状態だが、ふと何か気づいたのか動きを止める。

「レオン団長。今気づいたんすけど、遊び場の周りに柵を作ったらどうっすか?」

「柵を?」

何故柵を作るのかわからず首を傾げる。

「そうっす。ここはよく馬車が通るっしょ。子供達は楽しいことに夢中になりすぎると周りのことが目に入らなくなるじゃないっすか。俺もそうだったんで、よく親に怒られてたんすよ」

何故か堂々と誇らしげに言う。

「だから、危ないんじゃないかな~って思ったんすよ。柵があればどんなに夢中になっても馬車とぶつかる可能性は低くなると思うんすよ」

ーー確かにその通りだ。

ハイデの的を射た発言に感心する。

馬鹿っぽい話し方で馬鹿だと思われがちだが頭は良い。

よく、年寄り達にどうしたらいいか意見を求められているし頼りにされている姿を見かける。

「ハイデ。ありがとう。その考えは思いつかなかったよ。仕事中に邪魔して悪かったな。後でまた買いにくるよ」

「大したことしてないっすよ。遊び場ができるの楽しみにしてますね。俺も遊びたいんで大人ができるのも作ってください」

ハイデと別れた後もレオンはいろんな人に声をかけられ、ついでに遊び場のことを尋ねた。

皆遊び場ができるのを楽しみにしてくれいろんな意見を出してくれたが、ハイデ以外は自分達が考えたのと大して変わらなかった。

「そろそろ、二時間経つか。戻るか」

アジュガのいる場所まで戻ろうとすると後ろから声をかけられる。

「団長、面白いことを思い付きましたね」

フードを深く被って顔が見えない。

体もマントで隠れている。

誰が見ても怪しい男がそこにいた。

周りの人達は誰だ?と不審な目で二人の動向を見守る。

「アスター!帰ってきたのか!」

レオンがアスターに嬉しそうに近づくのを見て大丈夫そうだと思った町の人達は仕事に戻っていく。

「ああ、ついさっきな」

フードを外す顔を晒す。

団に行ったがレオンは今町にいると聞いて捜しにきた。

「そうか。無事で何よりだ」

見た限り怪我はしていない。

「ああ、問題ない。どこも怪我していないからな。今団長達がしようとしていることの話を詳しく聞きたいところだが、それより今すぐ報告しないといけないことがある」

険しい顔でそう告げるアスターの顔からただ事ではないと察し、急いで団に戻る。

リヒトとアジュガも一緒に話を聞く為団長室についてくる。
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

恋をあきらめた美人上司、年下部下に“推し”認定されて逃げ場がない~「主任が笑うと、世界が綺麗になるんです」…やめて、好きになっちゃうから!

中岡 始
BL
30歳、広告代理店の主任・安藤理玖。 仕事は真面目に、私生活は質素に。美人系と言われても、恋愛はもう卒業した。 ──そう、あの過去の失恋以来、自分の心は二度と動かないと決めていた。 そんな理玖の前に現れたのは、地方支社から異動してきた新入部下、中村大樹(25)。 高身長、高スペック、爽やかイケメン……だけど妙に距離が近い。 「主任って、本当に綺麗ですね」 「僕だけが気づいてるって、ちょっと嬉しいんです」 冗談でしょ。部下だし、年下だし── なのに、毎日まっすぐに“推し活”みたいな視線で見つめられて、 いつの間にか平穏だったはずの心がざわつきはじめる。 手が触れたとき、雨の日の相合い傘、 ふと見せる優しい笑顔── 「安藤主任が笑ってくれれば、それでいいんです」 「でも…もし、少しでも僕を見てくれるなら──もっと、近づきたい」 これは恋?それともただの憧れ? 諦めたはずの心が、また熱を持ちはじめる。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる(第12章終了しました)

ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。