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ワーム
「それで、一体何があったんだ?」
全員が椅子に座るとレオンがアスターに尋ねる。
「順を追って説明するよ。最初俺達は団長の命で魔物退治でフランメの森に向かって出発しただろ」
「ああ、そうだな」
レオンは自分がアスターに頼んだので覚えている。
リヒトとアジュガもアスター達を見送ったのでそうだなと頷く。
「フランメの森にいた魔物は大したことなく任務はすぐ終わったんだ。すぐ帰ろうとしたが夜も遅かったし近くの町で休んでから朝一で帰ることにしたんだが、その町で奇妙なことを言う少年にあったんだ」
ーー奇妙なこと。
その言葉に三人はなんとも言えない嫌な予感がした。
「その少年はなんて言ってたんだ」
レオンが早くその奇妙なことが何か聞きたくて尋ねる。
「それが、ワームが現れたんだと」
「ワームだと!?」
「ワームってあのワームか!?」
「ワームが現れただと!?」
上からレオン、リヒト、アジュガの順にはワームという言葉に反応する。
ワームとは蛇のような体で顔をドラゴンにした魔物の姿をいう。
体の長さは強さによって異なるが今まで確認された中で一番大きかったのは、ここから東南にある遥か遠い国で全長百五十七メートルのワームだと言われている。
「それ本当なの?少年の勘違いではなく?」
アジュガがアスターに尋ねる。
「ああ、間違いない」
そう断言したアスターの顔は血の気がなく真っ白な顔で体が震えていた。
「アスター、そのワームを見たのか」
リヒトは最後の悪あがきと言わんばかりにそう尋ねる。
もしかしたら違うと言ってくれるかもしれないという希望を込めて。
アスターはリヒトのその問いにゆっくりと頷き「遠目だったが、あれは間違いなくワームだった」と。
アスターの報告に三人は頭を抱える。
アスターはさっき帰ってきたばかりだからレオン達、第十二騎士団が王命でカメリアの森に行かないといけないことを知らない。
どうしたらいいのかと。
「アスター。そのワームは俺達の管轄のどこにいたんだ?」
王命も大事だが、ワームを放っておくことはできない。
最悪の場合町が十個壊滅してもおかしくない状況になるかもしれない。
レオンはとりあえず今すぐワームを確認しにいくべきだと考えそう尋ねた。
「いえ、我々の間隔区域ではなく第五騎士団のウーアの森で見ました」
第五騎士団の場所は第十二騎士団の場所と一番離れたところにある。
「なら、第五騎士団にはもう報告したのか」
レオンがそう言うとアスターの表情が険しくなる。
レオンはただ確認のつもりで聞いたのだが、アスターの表情で何か面倒なことが起きていると察した。
「はい。報告しましたが……それが、第五騎士団は知っていてワームを放置しているみたいなのです」
アスターの言葉に三人は「は?」と間抜けな声が口から出た。
「知っているって、ワームがいるってことを?第五騎士団は知っていて何もしてないと?」
アジュガは同じ騎士として第五騎士団の騎士達が何もしていないと聞いて信じられなかった。
ワームは若い女性を好んで食べる。
第五騎士団の管轄区域はレオン達の半分しかないが活発な町が多く人口は三倍近く違う。
そんな場所なのにワームを放っておくなどあり得ない。
それにワームの住処は日に日に広がっていく。
ワームの息は毒だからなるべく早く倒さないと倒すのが難しくなる。
アジュガはアスターの顔から相当強いワームだと予想していたので放置している第五騎士団が許せなかった。
「アスター。詳しく話してくれ。何故少年がワームのことを知っていたのかから」
レオンは自分の管轄区域ではないので首を突っ込むのはよくないと分かっているが、第五騎士団が何もしないいま放っておくのは危険だと判断し、アスターの報告内容次第では最終手段にでるしかないと思った。
「はい。俺達がその少年からワームの話を聞いたのは食事をしている時でした。正確に言えば少年の話を聞いた女性から聞いたんですが。その女性は俺達の格好から騎士だとわかりその話を聞かせてくれたのです。本当にワームがいるのかと」
アスターが女性のことを話した瞬間、リヒトとアジュガは直ぐに話しかけるきっかけにしただけだろうなとわかった。
二人の予想は当たっていてその日女性はアジュガをナンパして一夜を共に過ごそうと狙っていた。
ただ、残念なことにアジュガはそういうのには疎く一夜を共にすることはなかった。
二人は女性に同情した。
狙った男が悪かったと。
アジュガは二人に何故か哀れられている気がしたが理由はわからず無視することにした。
レオンはただ一人だけ何もわかっておらず話の続きが気になっていた。
「俺は団長からそんな報告は聞いていなかったので女性から話を詳しく聞こうと思ったら、その話をしたのは別の人物だと近くにいた男性が教えてくれたのです。俺達は念のためその人物から話を聞こうと男性にその人物がいるとこまで案内して欲しいと頼みました」
リヒトとアジュガはアスターの話を聞きながら、途中途中話す内容に苦笑いしてしまう。
知らない間に恋敵として認識されていたアスターに男性がどんな態度をしていたのか目に浮かび少し同情してしまう。
アスターは顔がいいのでよく女性達から声をかけられる。
勿論レオンの次にだが。
「その後、男性に案内されこの少年が言っていたと言われその少年からワームの話を聞きました」
アスターはその少年との会話を思い出し、その後の出来事も思い出したせいで背中に冷や汗が流れた。
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