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ワーム 5
「この木から確認するか。望遠鏡を出してくれ」
魔法石が中に組みこまれているので余程強力な魔力で守られている結界以外ならどんなものでも見通せることができる仕組みになっているので、あの紫の霧の中もこの望遠鏡を通せば簡単にワームを見つけ出せる。
「はい」
「望遠鏡はいくつあるのか?」
「二つあります」
二つか。
一つは自分が使うとしてもう一つは誰に使わせるか考える。
騎士達を見て「キース。俺と一緒にワームを探すぞ。残りの者は辺りを警戒してくれ」と指示を出す。
アスターとキースは望遠鏡を手に取り一番高い木に登り森の中を覗く。
望遠鏡から見れば紫の霧が消えるので捜すのは難しくない。
ただ、範囲が広く見つけるのに五分くらいかかった。
「……おい、あれのどこが十五メートルなんだ。どこからどうみても余裕でその五倍近くあるぞ……」
望遠鏡から確認できたワームは約百メートルだった。
最初に確認されたのが四ヶ月前。
それでも大きくなるのが早すぎる。
つまり、このワームは最初からこの大きさでアレンが勘違いしていたということになる。
アスターはこの瞬間最悪な未来を想像してしまった。
このワームは早くて三週間、遅くても二ヶ月後には確実にこの森から出て町を襲う。
そうなれば、ワームはそこにいる人間を全て喰い殺すだろう。
アスター達に力があればワームと戦うことができるが、このワームの等級は間違いなく絶。
絶を倒せるのはこの国では二人だけ。
今はこのことを一刻も早く第五騎士団に伝え各団長達の耳に入れなければならない。
そう思って木から降りて報告しに行こうとした瞬間、自分の首が飛ぶ未来が見え反射的にキースを掴み木から飛び降りた。
キースは一瞬のことで何が起きたかわからず落下していく途中でアスターの名を呼ぼうと口を開けたら、さっきまで自分達がいた木が一瞬で消えていてそれどころではなくなった。
ドゴーンッ。
物凄い音がした瞬間アスターとキースは地面につき、残りの者たちは木を見て上半分が消えていることに驚き動けなくなる。
ーー今何が起きた?
考えるのを放棄しようとしたらアスターが大声で「全員馬に乗れ!撤退するぞ!ワームに気づかれた!」と叫ぶ。
その言葉に全員顔の血の気が引き急いで馬に跨りその場から離れる。
全員一言も話さず馬を走らせることにだけ集中する。
山を降りて漸く我に返ったように息をする。
アスター以外ワームを見ていなかったがアスターの表情を見ればどけだけ危険な状況だったのかは察せれた。
アスターはあのとき望遠鏡でワームを見つけたとき、余りの巨大さに恐怖で体が震えた。
震える手で何とか望遠鏡を持ちワームの大きさを把握した。
これ以上は危険だと撤退しようと指示を出そうとしたとき、ワームに気づかれたと望遠鏡から目を離していたが視線を感じた。
ここにいたら自分の首とキースの首が飛ぶのが見え気付いたら体が動きキースを抱えながら飛び降りていた。
アスターはあのときワームの目を見ていなくて良かったと心から思っていた。
もし、見ていたら金縛りにあったみたいに体が動かなくなり死んでいただろうから。
「……アスターさん。あの、ワームは……」
キースは息が整うとアスターに声をかける。
皆が聞きたいことを代表して聞いた。
「……あれは絶だ。急いで団長に知らせないといけない。第五騎士団から通信機を借りよう」
これはもう自分達の手には負えなくなっていた。
レオンかユエルでなければ倒せない相手。
「あの、第五騎士団ってワームのこと知らないんですかね」
騎士の一人が呟いた言葉に全員、そんなこと許されないが充分あり得ると思った。
貴族達は手柄を欲しがるのが多く事後報告する者が多い。
何度か合同で魔物退治をしたことがあったが、毎回事後報告だった。
酷い時は二日遅れで知らされ上手く連携が取れず最悪な雰囲気で魔物退治をしたこともあった。
そんな者が多くいる団は例え仲間でも出し抜こうとして魔物の報告をせず偶然合って退治したということにする。
今回のワームもそんなのではないかとアスター達は考えていた。
だからワームを放っているのだろう、知っていたらそんなことはしないだろう、とそう思って急いで第五騎士団の建物に行き報告した。
だがアスター達はワームの報告をした瞬間、第五騎士団の団員達の表情を見て「こいつら知ってたな」と。
アスターが「お前達はそれでも騎士か」と問おうと口を開こうとしたが、それより先に第五騎士団の幹部の一人レミリアが声をだした。
「本当にワームはいましたか?貴方達の勘違いでは?」
一人だけ涼しい顔をして言う姿はなんともいえない不気味さがあった。
「我々が嘘をついていると?」
「ええ。私はそんな報告を受けた覚えがないので信じられません」
「今受けたではありませんか」
「……確かにそうですね。ですが、貴方達の話を信じる理由にはなりません」
一刻の猶予もないというときにこんな下らない話をしている暇はない。
茶番だ。
わざと本題に話が入らないようにするレミリアに腹が立つ。
「見にいけばいいのでは?それで嘘か本当かわかりますので」
アスターのその一言で部屋の空気が更に重くなる。
見にいくことなど第五騎士団の者達はしたくなかった。
そんなことをすればワームがいることを団長に報告しないといけない。
自分達の勝手な行動がバレ処罰を受けることになるかもしれない。
どうにかして団長にばれずに処理したかったのに、こいつらの勝手な行動のせいで。
レミリアは目の前の男達を殺したいのを必死に我慢する。
「……もういいです。知っていて何もする気がないのなら一生椅子と友達でいればいい。俺達はこれで失礼させてもらう」
レミリアが何か言っていたが、もう話すこともないので無視してさっさと部屋から出て行く。
第五騎士団の団員達が止めようとするが、意にも介さずそのまま進んでいき建物から出て行く。
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