春夏秋冬〜神に愛された男〜

アリス

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ベネディクト 2


ベネディクトは昔、第十二騎士団団長レオン・ハーデンベルギアに助けられたことがある。

あれはレオン達が店を訪れた一週間後の日のこと。

ベネディクトはある強盗達に拉致された。

理由は簡単だった。

強盗達はある貴族の屋敷から宝石を盗みそれがバレ捕まえるよう騎士達に国王から命じられていた。

強盗達は捕まれば処刑は確実で逃げる為に魔法石が必要だった。

魔法石を買うお金も正体がバレているので売ってくれる者もいなかった。

それなら人質をとって魔法石を手に入れよと決めて、一番品質の良いベネディクトの祖父が経営している店に目をつけた。

最初は母親か祖母を拉致する予定だったが、ベネディクトを見つけ拉致する相手を変更した。

ベネディクトが誘拐された事を知り強盗達の目的が魔法石だと両親と祖父母が気づくと犯人が誰か気づき絶望する。

貴族の屋敷から宝石を盗み国王から絶対に魔法石を売るなと命じられた者達だと。

国王の命を無視したら処刑は免れないし、魔法石を渡さなければベネディクトの命がない。

例え自分達が死ぬとしてもベネディクトは大切な宝物。

助ける以外の選択肢は無かったが魔法石を渡した後必ず帰ってくると保証がない以上本当に渡していいものなのかわからなかった。

助けを求めようにも今ユエル団長率いる第七騎士団の殆どは魔物討伐の遠征に出ている為どうしようもできない。

強盗達もそれを知っていて犯行に及んだのだろう。

誰にも助けを求められず時間だけが過ぎていく恐怖と焦りから四人は頭がおかしくなりそうだった。

そんな時誰かが「すみません」と店の中に入ってきた。

ベネディクトが拉致された事で頭がいっぱいで閉店の看板をかけるのを忘れていた。

「申し訳ありませんが今日は私用でお休みさせ……」

ていただきたいのです、と続けようとしたが入ってきた人物とその人物の腕の中にいる者を見て声が出なくなる。

祖父が急に声を出すのをやめたので三人は何事だと扉の方に目を向ける。

「ーーベネディクト!」

母親が一番最初に我に返りベネディクトを受け取り力強く抱きしめる。

ベネディクトは母親の腕の中の温かさを感じもう大丈夫なのだと安心し大声で泣き出す。

「あの、本当にありがとうございます。何かお礼をさせてください」

祖父が近づくお礼を言う。

父親と祖母はベネディクトに近寄り抱きしめていた。

「いえ、俺は騎士として当然の事をしただけです。気にしないでください」

「そんなそれでは我々の気持ちがおさません。これを受け取ってください」

今この店で一番価値のある魔法石を渡そうとする。

「いえ、受け取れません」

「どうしてですか。気に入りませんでしたか?」

「いえ、そうではありません。私はお礼をしてもらいたくて少年を助けたわけではありません。少年を大切な家族の元に帰してあげたかっただけなんです。それに先程の言葉だけで充分お礼になっています」

最初に祖父がお礼を言った事で満足していた。

「ですが、それでは……」

自分達の気持ちが治らない。

何かしたかった。

ベネディクトは自分達にとって掛け替えのない存在。

そんなベネディクトを助けてくれたのだから感謝してもしたりなかった。

「でしたら彼女にしてあげてください。私は彼女に助けを求められなければ少年を助ける事ができなかったので」

外で中の様子をずっと見ていた少女の方を見る。

「レイリン。どうしてここに?」

外にいたのはベネディクトとよく遊ぶ少女だった。

レイリンは急に自分に視線が集まり急いで隠れるが「入っておいで。彼のこと心配だったんだろう」とレオンに声をかけられ中に入る。

「レイリン。君があの人に助けを求めてくれたって本当なのかい?」

「うん。そうだよ。ベネディクト!良かったよ!心配したんだから」

ベネディクトに抱きつき目から大粒の涙を流しながら叫ぶように馬鹿馬鹿馬鹿と殴る。

「あの、もし時間があるのでしたら何があったか教えていただけませんか」

父親がレオンに頼む。

「はい。わかりました」

レオンは頷きレイリンに助けを求められた時のことを思い出しながら話す。



「うーん。しまった。迷ったな」

団員達と一緒に町に降りたが人混みが多く流されるまま歩いていたら、皆と逸れて一人になっていた。

ここはどこでどっちに行ったら戻れるんだと周りを見ていたら「騎士様!助けてください!」と泣いている少女に抱きつかれた。

レオンは突然の事で驚いたが直ぐに少女の目線まで腰を下ろした。

「わかった。必ず助けると約束しよう。何があったか話してくれるか」

少女が落ち着くよう背中を撫でながら優しい声で問う。

「本当にベネディクトを助けてくれますか?」

「ああ。約束する」

ベネディクトという言葉でその子に何かあったのだと直ぐにわかったが少女が落ち着くのを待つ。

「ベネディクトが男達に拐われたのです。お願いです、騎士様。ベネディクトを助けてください」

「どこで拐われたか場所を教えてくれるか」

ーー拐われた。

その言葉を聞いた瞬間レオンは最悪の未来を想像してしまう。

ベネディクトが殺されてしまう未来を。

急いで助けださなければいけない。

「ここを左に曲がって真っ直ぐいって赤い屋根の建物を右に曲がったところです」

少女は必死に道を思い出しレオンに伝える。

「その男達はどんな格好でどっちに行ったか覚えているか」

「森に行きました。格好は……すみません。よく思い出せません」

ベネディクトを拐った男達の姿を思い出せず、そのせいで助けられなかったらと思うと涙がまたこぼれ落ちていく。

「大丈夫、落ち着いて。必ず助けると約束するから」

ね、と優しく微笑む。

「後は俺に任せて君は家に帰りなさい。ここは危ないから。必ず人通りが多いところを通るのだぞ」

「……はい」

「いい子だ」

レオンは少女の頭を撫でるとベネディクトを助ける為走り出す。

本当は少女を家まで送ってあげたかったが、一刻の猶予も許さないので一人で帰ってもらう事にした。
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