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ゼインの料理
「お疲れ様、団長」
部屋から出ると外で待機していたリヒトが声をかける。
「ああ、でも……」
「大変なのはこれから、だろ」
レオンが言おうとしたことを言う。
「ああ。全くだ。これで本当に第五騎士団との関係は終わったな」
元々、嫌われていたが今回のことで完全に仲が修復不可能になる。
民の命に比べたら大したことではないが、今回のことで自分達の守る区域が大変なことになるのは避けたい。
貴族の団長に喧嘩を売った以上は損害ゼロはあり得ないだろうが……。
「人命に比べたらあれだが……まぁ、あとはそのとき次第だな」
言葉を濁したが、リヒトも自分達が守る区域が心配になる。
十一騎師団だけが狙われるならいいが、自分達のせいで関係ない人達が巻き壊れるのはさけたい。
だが、それは難しいとわかっていた。
「そうだな。とりあえず、一旦そのことはおいて王命の方をなんとかしよう。本当はアスターも連れていくつもりだったが、この件で各団に報告しないといけないだろうから、そっちに専念してもらおう。リヒト、今すぐ行くメンバーと出発日を決めよう」
嫌なことが立て続けに起きていて、何とも言えない不安に襲われる。
王命を早く片付けないといけない。
何故かわからないが本能がそう言っていた。
そう、遠くない未来で最悪なことが起きると。
このままでは、前回の二の前になる!
何としてでもそれは回避しないといけない!
もうあんな思いをしないためにも、レオンはリヒトと夜遅くまで話し合いをし大体のことを決めた。
三日続けての団会議になるが、明日そこで他の幹部達の意見も聞いて最終決定にしようと決め解散する。
レオンはその後残りの仕事を片付けてから家へと戻る。
「ごめん、ゼン。遅くなった。今からご飯作るよ」
家の中に入ると同時に声をかける。
「おかえり、レオン」
レオンの声が聞こえ、玄関まで迎えに行く。
「……ただいま」
おかえり、その言葉がどれほど幸せな言葉なの か改めて感じ目頭が熱くなる。
「それと、ご飯なら心配ない。私が作った」
ふふん、と得意げに言うとレオンの手を引っ張っる。
「すごい!!これ、全部ゼンが作ったのか!?すごい美味しそうだ!!」
机の上に並べてある料理を見て感動する。
「美味しそうじゃなくて美味しいんだ。ほら席に座って」
席に座るよう背中を押す。
レオンはわかった、と言って席に座ろうとするが、ふと視線が台所に向かう。
その瞬間、ゼインがまな板を真っ二つにしたことを思い出し手を掴んで怪我がないか確認する。
「レオン?どうした?」
いきなり手を掴まれ、じっくりと観察され困惑する。
「いや、その、怪我はしてないかと思ってな」
ゼインの言葉で我に返り、自分がどれだけ恥ずかしいことをしているのか気づき慌てて手を離す。
「大丈夫だ。どこも怪我をしていない」
「そうか」
「ほら、早く食べよう」
「ああ」
レオンが席につくとゼインは柄にもなく緊張した。
レオンが「どれから食べるか迷うな」と言いながらフォークをとり肉を口に運ぶと、ゼインはゴクンと唾をのみ感想をまった。
十秒にも満たないほど短い時間だったが、ゼインにはその十秒が物凄く長く感じた。
「うまい!!ゼン、物凄くうまい!ほら、ゼンも食べろ!」
そう言うと物凄い勢いで他の料理も食べはじめる。
どの料理を食べても「うまい!うまい!」と絶賛するので、頑張って作って良かったと安堵する。
ようやく緊張から解放されて、料理が喉を通る。
ゼインは自分の作った料理を食べるも、昨日一緒に作ったシチューの方が美味しいな、と感じた。
「はぁ、本当に美味かった!ありがとうな、ゼン」
料理を全て平らげると幸せな顔をする。
「気に入ってもらえて良かったよ」
「それにしても、ゼン料理なんてできたのか?昨日の感じからできないのだとばかり思っていた」
「私は昨日初めて料理した。一人でしたのは今日が初めてだ」
淡々と言うが、その言葉にレオンは驚きすぎて言葉を失う。
「(嘘だろ……昨日が初めてで、今日が二回目。実質初めてであんな高度な料理を作ったのか。すげぇな)」
レオンはヴァイオレットと初めて料理した時のことを思い出した。
初めて一人で作った料理は味は問題なかったが見た目は……うん、まぁ、よくできた方だ、と言葉を濁すレベルだった。
「もし、嫌でなければこれからは私が作ろう。夏の間、世話になるわけだしな」
美味しそうに食べるレオンの顔を思い出し気づけばそう言う。
ハッと我に返り、慌てて口を塞ぐも既に遅い。
「え、いいのか?俺は助かるが迷惑にならないか?それに俺が勝手に連れてきたわけだし、そこまで気にしなくてもいいんだぞ」
「嫌だったら言わない。だから、やらせて欲しい。それに、レオンはいくら言っても宿代も食費も全然受け取ってくれないだろ。これくらいやらないとバチがあたる」
神であるゼインにバチがあたるなどあり得ないと本人もわかっているが、そうでも言わないとレオンは気にすると思い嘘をつく。
「わかった。なら、お願いする。実を言うと毎日食べたいと思ってた」
あまりにも美味しすぎて本当にそう思っていた。
それに、自分の為だけに作られた料理は久しぶりで嬉しかったというのもある。
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
ゼインは心の中で夏の妖精達に感謝する。
料理は全て一人で作ったが、美味しい料理をつくれたのは傍で指示を出してもらったお陰である。
ゼインは今朝レオンを見送り夏を呼び起こした後、屋敷へと戻りベルに自分がいなくても問題ないか確認しに行くついでに料理のことを聞いた。
人間は世話になったものに料理を振る舞うことがあるとシグレが言っていたのを思い出し、レオンに作ろうと思ったから。
だが、知識はあっても作れるかは別。
神の力を使えば簡単に美味しいものができるが、ゼインは力を使わず作ったものを食べて欲しかった。
それで、ベルにどうしたらいいか相談しにいった。
ベルはゼインの相談に泣きながら「お任せください」と言い、すぐに料理長の妖精を呼びに行った。
料理長はアリアと名を名乗ると、男が好きそうな料理を教えた。
その中からゼインが作るのを選ぶ。
そこまで決まると材料を妖精達が持ってきてベルとアリアに見守られながら料理をした。
何度か失敗したが、レオンが帰ってくるほんの数分前には完成した。
味見もし、二人も美味しいと絶賛した。
ゼインは二人にお礼を言い、神の力で急いでレオンの家へと帰る。
さっきまでの出来事を思い出し、レオンと出会う前の自分なら絶対にしなかった行動につい笑ってしまう。
「そろそろ、寝るか。ゼインはどうする?」
「私も寝る」
ゼインはベットに横になるとベルとアリアに神の力で話しかけ、今日のお礼と明日の朝ご飯の作り方を教えてくれと頼み眠りについた。
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