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ルーク
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「旦那様。お帰りなさいませ」
公爵が屋敷に着くと執事が出迎えた。
いつもとは表情が違い、少し困っている様子だ。
執事の言いにくそうな雰囲気から公爵はリナリアがまた屋敷にきたのかと察した。
妻の身勝手な行動に公爵はなにもいう気にもなれず、部下を集めて戦争をさせないための会議をしようと屋敷の中に足を踏み入れた瞬間、妻とリナリアにで迎えられた。
まるで自分を待っていたかのような二人の態度に公爵は眉を顰める。
「あなた。お帰りなさい」
「閣下。お帰りなさいませ」
リナリアのまるで自分が次期公爵夫人かのように振る舞う姿があまりにも滑稽で、公爵は気づけば「また来たのか」と冷たくあしらった。
そのまま二人を通り過ぎて自室に向かっていると、後ろから妻の罵声が耳に届いた。
自室の扉を開けると既に最も信頼している部下であり、長年の友である男、ルークがいた。
ルークは侯爵家の三男で家族とは絶縁している。
男以外この部屋にはいないので、主人の部屋にいるとは思えないほど、ソファーに深く腰掛け膝の上に足を乗せて、出された茶菓子を食べていた。
ルークが公爵に気づくと慌てて立ち上がるが入ってきたのが自分だけだとわかるや否や「なんだよ。お前だけか。焦って損した」とまたソファーに深く腰掛けて座った。
「それよりなんかあったのか?」
ルークは茶菓子を食べながら尋ねる。
公爵の顔が今朝よりもげっそりとしていたからだ。
国王に会いにいく時点でそうなることは予想していたが、それでも長年の付き合いから様子が変だと気づいた。
「国王が戦争を始めると……」
ルークは深くため息を吐き、また魔物との戦争をしないといけないのかと頭が痛くなる。
ようやく訪れた平和も長くもたなかったか、と落胆していると公爵が振り絞るように出した声から聞こえた言葉を聞いて持っていた茶菓子を落とし、目を見開いた。
「隣国と」
「嘘だろ」
人間と魔族、魔物との戦争は仕方ないと諦めているが、人間同士の戦争ほど愚かなものはない。
先代国王がせっかく築き上げた平和を壊すことを命じるなんて頭がおかしいとしか思えない愚かな行為だ。
「どうするつもりだ」
ルークは友として、部下として尋ねた。
「どうにかして戦争を止めるしかないだろう。戦争を始めた瞬間、魔物たちが襲いかかってくるだろう」
「だろうな」
ルークは今の国王はなにもわかってないと憤りを感じる。
剣を持ったこともない男にその重みを感じることなどできるはずがない。
魔物がどれだけ恐ろしく、魔族がどれだけ狡猾で残虐非道な生き物か知らないのだ。
先代国王はそれをよく知っていた。
そして、そんな恐ろしい生き物と戦う全ての者に敬意を示していた。
あの国王の息子がその跡を継いでいたら、この状況も違っていただろうと思うが、死んでしまった以上たらればを言ったところで無意味だ。
ルークは髪をガシガシとかき、どうにか苛立ちを抑えようとした。
「そもそも、あの馬鹿王はどこと戦争するつもりなんだ?」
ルークは肝心の相手を聞いていなかったと思い尋ねる。
それに公爵は首を横に振ってから「俺もわからない」と言ってから、少し考えてからこう続けた。
「多分だが、サルシューア国だと思う。あそこは昔から水が豊かだ。何よりよ近年、目覚ましい発展をしている。あの男ならそれを疎ましく思っているだろう。先代国王のときは様々な分野で他の追随を許さなかったからな。今は軍事力以外は他国と同等、いやもしかしたら追い越されているかもしれない状況だからな。子供の頃からなんでも一番でなければ気が済まない性格だったからな。許せなくて、戦争などと愚かなことをしようとしているのかもしれんな」
公爵は冷静に分析したことを口にする。
それを静かに最後まで聞いていたルークは「なんてはた迷惑なクソガキだよ!」と思わずにはいられなかった。
「よりにもよって先代国王が最も有効的だったサルシューア国かよ」
ルークは額に手を当てる。
「もうこうなったら反乱起こすか?」
ルークは笑いながら言うが、本気だった。
馬鹿なことを言うな!と、怒鳴られると思ったが、「それもいいかもな」と肯定され、ルークは驚いて硬直してしまった。
「本気か?」
あの生真面目で融通が効かない、家族よりも国を守ることを第一に考えていた男が反乱に賛同するなんて、明日は空から槍が降ってくるのかと変な心配をしてしまう。
「いい策が思いつかなかったらな」
できれば国を混乱させることなどしたくはないが、民が大勢殺されるよりはマシな未来だろうと思っての選択だった。
だが、二人の心配は杞憂で終わった。
サルシューア国と戦争することはなかった。
ただその代わり元々仲が悪く表面的な付き合いしかしてこなかったレイサン国と戦争することになった。
誰も予想していなかった。
レイサン国から戦争を仕掛けてきた。
国王は急いで公爵に戦場に向かうよう指示したが、着くまでに一週間はかかる。
魔族と魔物のことが心配だったがレイサン国の兵士を放っておくこともできない。
幸いイフェイオンたちの部下が屋敷で主人の帰りを待っているからなんとかなるだろうと安心して戦場に向かえたが、二ヶ月後に魔族が魔物を引き連れて侵攻してきたと知らされた。
公爵が屋敷に着くと執事が出迎えた。
いつもとは表情が違い、少し困っている様子だ。
執事の言いにくそうな雰囲気から公爵はリナリアがまた屋敷にきたのかと察した。
妻の身勝手な行動に公爵はなにもいう気にもなれず、部下を集めて戦争をさせないための会議をしようと屋敷の中に足を踏み入れた瞬間、妻とリナリアにで迎えられた。
まるで自分を待っていたかのような二人の態度に公爵は眉を顰める。
「あなた。お帰りなさい」
「閣下。お帰りなさいませ」
リナリアのまるで自分が次期公爵夫人かのように振る舞う姿があまりにも滑稽で、公爵は気づけば「また来たのか」と冷たくあしらった。
そのまま二人を通り過ぎて自室に向かっていると、後ろから妻の罵声が耳に届いた。
自室の扉を開けると既に最も信頼している部下であり、長年の友である男、ルークがいた。
ルークは侯爵家の三男で家族とは絶縁している。
男以外この部屋にはいないので、主人の部屋にいるとは思えないほど、ソファーに深く腰掛け膝の上に足を乗せて、出された茶菓子を食べていた。
ルークが公爵に気づくと慌てて立ち上がるが入ってきたのが自分だけだとわかるや否や「なんだよ。お前だけか。焦って損した」とまたソファーに深く腰掛けて座った。
「それよりなんかあったのか?」
ルークは茶菓子を食べながら尋ねる。
公爵の顔が今朝よりもげっそりとしていたからだ。
国王に会いにいく時点でそうなることは予想していたが、それでも長年の付き合いから様子が変だと気づいた。
「国王が戦争を始めると……」
ルークは深くため息を吐き、また魔物との戦争をしないといけないのかと頭が痛くなる。
ようやく訪れた平和も長くもたなかったか、と落胆していると公爵が振り絞るように出した声から聞こえた言葉を聞いて持っていた茶菓子を落とし、目を見開いた。
「隣国と」
「嘘だろ」
人間と魔族、魔物との戦争は仕方ないと諦めているが、人間同士の戦争ほど愚かなものはない。
先代国王がせっかく築き上げた平和を壊すことを命じるなんて頭がおかしいとしか思えない愚かな行為だ。
「どうするつもりだ」
ルークは友として、部下として尋ねた。
「どうにかして戦争を止めるしかないだろう。戦争を始めた瞬間、魔物たちが襲いかかってくるだろう」
「だろうな」
ルークは今の国王はなにもわかってないと憤りを感じる。
剣を持ったこともない男にその重みを感じることなどできるはずがない。
魔物がどれだけ恐ろしく、魔族がどれだけ狡猾で残虐非道な生き物か知らないのだ。
先代国王はそれをよく知っていた。
そして、そんな恐ろしい生き物と戦う全ての者に敬意を示していた。
あの国王の息子がその跡を継いでいたら、この状況も違っていただろうと思うが、死んでしまった以上たらればを言ったところで無意味だ。
ルークは髪をガシガシとかき、どうにか苛立ちを抑えようとした。
「そもそも、あの馬鹿王はどこと戦争するつもりなんだ?」
ルークは肝心の相手を聞いていなかったと思い尋ねる。
それに公爵は首を横に振ってから「俺もわからない」と言ってから、少し考えてからこう続けた。
「多分だが、サルシューア国だと思う。あそこは昔から水が豊かだ。何よりよ近年、目覚ましい発展をしている。あの男ならそれを疎ましく思っているだろう。先代国王のときは様々な分野で他の追随を許さなかったからな。今は軍事力以外は他国と同等、いやもしかしたら追い越されているかもしれない状況だからな。子供の頃からなんでも一番でなければ気が済まない性格だったからな。許せなくて、戦争などと愚かなことをしようとしているのかもしれんな」
公爵は冷静に分析したことを口にする。
それを静かに最後まで聞いていたルークは「なんてはた迷惑なクソガキだよ!」と思わずにはいられなかった。
「よりにもよって先代国王が最も有効的だったサルシューア国かよ」
ルークは額に手を当てる。
「もうこうなったら反乱起こすか?」
ルークは笑いながら言うが、本気だった。
馬鹿なことを言うな!と、怒鳴られると思ったが、「それもいいかもな」と肯定され、ルークは驚いて硬直してしまった。
「本気か?」
あの生真面目で融通が効かない、家族よりも国を守ることを第一に考えていた男が反乱に賛同するなんて、明日は空から槍が降ってくるのかと変な心配をしてしまう。
「いい策が思いつかなかったらな」
できれば国を混乱させることなどしたくはないが、民が大勢殺されるよりはマシな未来だろうと思っての選択だった。
だが、二人の心配は杞憂で終わった。
サルシューア国と戦争することはなかった。
ただその代わり元々仲が悪く表面的な付き合いしかしてこなかったレイサン国と戦争することになった。
誰も予想していなかった。
レイサン国から戦争を仕掛けてきた。
国王は急いで公爵に戦場に向かうよう指示したが、着くまでに一週間はかかる。
魔族と魔物のことが心配だったがレイサン国の兵士を放っておくこともできない。
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