天才詐欺師は異世界で無双する!

アリス

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報告

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「……なんか、だいぶ話し端折ってない?」

私はアスターの報告を聞き終わったあと、ボロボロの観察者たちを見て、そう尋ねる。

「いえ、端折ってません」

本当は結構端折っていたが、全部あったことを話したら怒られるのはわかっていたので嘘を吐く。

「まぁ、いいや」

アスターが端折った部分は大体想像がつくので、わざわざ聞く必要はないな、と思いこの話しはこれで終わらし、本題に入ることにした。

「一応、話しはした?」

拷問だと、なぜかこちらが悪いことをした気になるので「話し」と言ったが、意味は伝わるので言い方は大した問題ではない。

「したのはしたんですが、その……」

言ったら怒るだろうな、と思い言葉に詰まる。

「言え」

「はい」

私が圧をかけるとアスターは先ほどまで、躊躇っていたのが嘘みたいに感じるほどペラペラと話し始める。

「お嬢様のことを、知識もないのに医者のまねをしている馬鹿な女。子供と変な生き物を従えている変人」

'子供'と'変な生き物'と言う言葉に妖精と悪魔の王たちは自分たちのことを馬鹿にしているのかと苛つく。

「どうせ、最後は全員仲良く死ぬのに無駄なことばかりしてマヌケ、と言ってました」

アスターが帰ってきて、数分後にローズが帰ってきたので目的を聞き出す前に話しを終わらしたので、彼らが発した言葉はローズを侮辱するものだけだった。

言われた通り、彼らが言った言葉を全て言ったがローズは何も言わないし、怒りもしない。

それが逆に怖すぎて、アスターは黙って時が過ぎるのを待つ。

「へぇ、そう。私のしてたことが、彼らには子供のママごとに見えてたわけね」

(あ、これ、間違いなく、あいつら終わったな)

アイリーン以外の全員がローズの言葉を聞いて、観察者たちの最後を悟った。

「アスター」

「はい」

何を言われるのだろう、と内心ドキドキしながら返事をする。

「今言ったことは、あんたの本音じゃないわよね」

「……は?」

いきなり変なことを言われてマヌケな声が出る。

心の中ではたまに、というかほぼ毎回悪態はついているが気付かれていないと思っていた。

だから、それがバレて今問われているのかと思うと怖くなる。

だが、ここで下手なことを言うと間違いなく嫌な仕事プラスご飯抜きにされるので、しらばっくれるしかない。

「もちろんです。変なこと言わないでください」

平常心を保って言う。

「そう。なら、いいわ」

私は嬉しさのあまり顔がニヤけてしまう。

観察者たちが私を脅威に思わなかったのなら、私たちが来たことを上に報告してない可能性が高い。

まぁ、これは今から楽しいお話の時間で報告したかどうか聞けばわかること。

まだ確定ではない。

だからニヤけてはいけないと思うのに、観察者たちの馬鹿な発言を聞いたせいで、ニヤけが抑えられない。



「おい。誰か顔がキモイからニヤけるなって言えよ」

ルネが顔を顰めながら小さな声で言う。

「自分で言えばいいじゃないか。俺は嫌だ。まだ死にたくないからな」

シオンはルネの意見に賛同しながらも、自分の命を危険に晒したくはないので断る。

「そんなの無理に決まってんだろ。俺だってまだ死にたくないからな」

他人が死ぬのはいいが自分が死ぬのは嫌だとわがままを言う、悪魔の王さま。

そこから二人は、ローズが話しを再開するまでの間、小声で言い争いを続けた。



「ルネ」

「はい」

ルネはいきなり呼ばれて声が裏返る。

「なんでしょうか?」

小声だがシオンと言い争っていた内容を聞かれて怒られると思い、つい身構えてしまう。

「昨日の失態の挽回のチャンスを与えるわ。できる?」

私がそう言うとルネは一瞬なんのことかと思うも、すぐに今朝言われたことを思い出した。

そして、挽回のチャンスが何を指しているのかわかった。

「ああ。もちろんだ。できる」

ルネは目をギラギラとさせながら答える。

「そう。任したわ」

「おう」

「わかってると思うけど、遠慮は要らないわ。馬鹿でマヌケで変人な女がつれてる変な生き物の怖さを死なない程度で、彼らにたっぷり教えてあげて」

(あ、これ、相当怒ってるな)

アスターは瞬時に理解した。

さっきは怒ってないと思ったが、それは勘違いだった。

お嬢様はわざわざ彼らが言った言葉を使って言うくらい、物凄くキレていた、と。

「ああ、言われなくても。そのつもりだ」

ルネも同じくらいキレていた。

'変な生き物'と悪魔の王である自分を嘲笑った彼らを許すことなどできない。

馬鹿にしたことを死ぬほど後悔させてやると意気込んで、ルネは監禁部屋へと向かう。




その日の夜。

いつもとは違い、フリージア領民たちは穏やかに眠ることができなかった。

ローズたちが来てから、少しずつ安心して眠ることができていたが、今日だけはそうもいかなかった。

理由はご飯が食べられなかったからではない。

久しぶりに体を動かしたのだから、疲れて何も考えずに眠れるはずなのに、そうならなかった理由は……

朝まで悪魔のような笑い声と泣き叫ぶ悲鳴の声が鳴り響いたから。

夢の中に入ってもそれは聞こえてきて魘される。

太陽が顔を出すまで、その地獄は続いた。

後にそれは、本当に悪魔のような時間だったと言い伝えられた。

それからフリージア領民の子供たちは悪いことをすれば悪魔に罰せられる、だから悪いことは絶対にしては駄目だと言われながら育った。

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