マジックカースト 〜苦しい魔法世界〜

浅村 英字

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第参章 魔導剣舞祭典

シンプル

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 初めて、師匠でも魔導警察でもない人に魔導剣流を使った。

「え?」「は?」

 淳に対して使ったはずの剣技は、そこにはいないはずの東雲さんに命中していた。

「いってぇ」

 あたりを見ると、俺の背の壁に向かっていた東雲さんの場所に淳の姿があった。彼の左手は俺が狙っていた魔力結晶ラクリマの辺り。だが、彼の魔力体ドールが存在しているということは、魔導剣流をかわしきった訳ではないみたいだ。

「交換魔法か・・・」

 交換魔法は、上級魔導士になりやすい空間属性の魔法の中で、一番使用者が多い魔法だ。
 しかし、淳のペアの魔法は風魔法じゃなかったのか。

「へっ!風魔法だと思っていただろ?こういうこともちゃんと考えて行動しなきゃな永和」

「ってか、何で交わせてんだよ。卍侵ばんしんは初見殺し筆頭だぞ?」

 俺が使える魔導剣流の中では、最速の技が卍侵ばんしんだ。それを初見で交わせるのは、少なくとも同い年では無理だと思っていたのに。

「あぁ、だろうな。正直、これで傷がつくなんて思っても見なかったぞ」

 交換魔法、二つの対象物の位置を入れかえる魔法。この魔法の強みは、今回のように戦闘中の味方と敵の位置を入れ替えて、同士討ちを狙える点だろう。それに、その二つが魔力を持っていれば、その魔力量の差を自分が消費するという意味の分からない仕組みが強力だ。
 最初に淳と戦った時に風魔法のように見えたのは、大方交換魔法を繰り返していたのだろう。

「味方をやるなんて最低だな」

「だな。ほんと、東雲さんには申し訳ないことをした」

 俺は、自分の集中していた範囲の狭さに後悔しながら剣を振り上げる。そして、交換魔法対策に、自分の魔力を辺りに充満させる。

「やば、その剣は振り下ろさせない」

 淳が全速力で、俺が持っている魔導具での間合いに入る。

「魔導剣流 彼方狩り」

「炎魔法 炎性戦機えんせいせんき

 魔導剣流として、剣を振り切る前に淳の魔法が俺の剣と衝突する。

「これで、止め・・・?」

 しかし、俺もそんな甘い流派を受けている訳ではない。魔導剣流はあくまでも魔力を使った流派だ。彼方狩りは卍侵と違い、剣を合わせる必要がないのだ。

「ショウタ!」

 振り切れず、目の前の敵と衝突したとしても、初動が成立していればこの技は成立する。
 壁の向こうから何者の魔力結晶ラクリマが崩壊し、リタイアするところが見える。淳のペアのショウタという奴らしい。

「どうして、交換魔法が発動しなかった」

 剣のぶつかり合いもこれ以上無意味だと認識した淳は、俺から距離をとって、現状に疑問を持地始めた。

「そんなの簡単だろ。交換魔法の原理は大きく分けて二つだ。
 一つ 対象物の下に魔法陣を作成し、交換対象とする。
 二つ 魔力もしくは魔源 マナを特定して、交換対象とする。
この二つだけが条件で、交換できるのは、ある程度同じ大きさのものだけだ」

「それが、交換できない理由にはならないだろ」

 最後の方で理解ができないのかと、息が漏れる。神経を削りながら、頭をフル回転させるのは今の淳には難しいのだろう。そういう奴が、強化魔導具を使っていることに呆れる。

「俺自身のサイズを大きくすれば、交換する対象はそれと同じくらいじゃないと成立しないんだよ。だから、俺は無駄に魔力を消費して周辺に俺の魔力を流したんだ」

 歯を食いしばり、俺を睨む目は殺意を隠す気がしないように見えた。俺はその殺意を受け入れるわけでも無く、返すわけでもなく、剣を納める。

「調子に乗るんじゃなね!」

 声を荒げて、我武者羅に突進してくるその姿に、好敵手ライバルという存在であったかもしれないことを、後悔する。

「魔導剣流 居あ?」

 最後の一撃で彼を落とそうとした瞬間、感じたことのある雷ざして、俺と正々堂々一対一さしで勝負してきた。

「ヘヘッ、やっと会えたな」

 ワクワクオーラ全開の幸平は、君主魔法を使ってもまだまだ元気が溢れているように見えた。

「俺は、もっと後半で会いたかったけどな」

 互いに感情の昂りを魔力と闘志に変えて、敵意をむき出しにする。その空気感が、周りの魔源 マナに影響を与え辺りがピリつき出す。無音の中、俺も幸平も動きを止めて、ただただ相手の隙を狙おうと神経をすり減らす。
 その時間がどれくらい経っただろう。外から聞こえた爆発音が俺たちの合図になった。

「雷魔法 雷砲乱れ撃ち」

 雷の弾丸が生成され、俺に向かってくる。

「魔力の壁で受け流すだけじゃないんだな」

 俺は、飛んでくる魔法を交わしいて距離を詰める。

「まぁな。魔導剣流 虎の手切り」

 正面に来た砲を切り裂き、そのまま同じ技で幸平の魔力結晶ラクリマを狙う。ただ一瞬の隙を攻めれば、誰でも打ち込めるチャンスはあり続けると。

「雷魔法 雷天の甲盾」

 雷が硬化して盾の役割果たした。俺の剣先も、技先も彼には届かず、盾の破片が弾ける。俺の舌打ちも、きっと破片の音によってかき消された。

「ちょっと待ったぁ!」

 あの時開いた壁の穴から、更なる声が聞こえて、この場を混乱にさせる。声の主は簡単にわかった。彼女の声を聞くのが久しぶりでも、心のどこかでずっと聞いていたいと思っていたのかもしれない。

「その戦い、私も混ぜてもらうよ」

「日向?」「小川さん?」

 互いの顔を見ながら、動揺していることに気付き、戦闘の手を止める。

「三つ巴かよ。面倒、だなっ」

 さっきとは違い、きっかけを待たずに幸平が俺に仕掛ける。短剣に雷を纏わせ、殺傷力を上げた魔導具は正確に俺の首を狙う。そして、その動きに合わせて日向も俺に魔法を放とうと魔力を込め始めた。

「じゃあ、俺のところじゃっ、なくて別のやつを狙えよ」

「水魔法 水流錬成弾」

 防御して一歩下がると、予測していたものより遥かに大きい水の大砲が俺たちに一発づつ放たれる。

「「デカすぎだろ」」
「雷魔法 雷生流渦らいせいりゅうか
「魔導剣流  卐断ばんだん

 俺は水の球を真っ二つにぶった斬り、幸平は雷の渦で水の球を受け止める。すると、幸平の方から大量の空気が爆発する。

「バッカ!水に雷で対抗してどうする。ちょっとは頭使えや!」

 水は電解され、水素と酸素になって俺たち全員の体を壁に押し付ける。しかし、俺はこの好機を逃す訳にはいかない。この衝撃波を逆手にとって、壁に押し付けられる瞬間、技を放つ。

「魔導剣流 卐槌ばんつい

 壁に四角い穴が空き、爆風に乗せられている俺はそのまま建物を後にする。
 あの二人よりも、他の人を狙った方が確実で楽であるというのは言うまでもない。辺りの動く魔力を探れば・・・、探れば・・・?

「マジかよ。もしかして・・・」

 ちょっと期待していた周りの魔力は、ほとんど存在せず、動いているのは後ろのものと、反対側のものだけだった。おおよそ、あの二人が他の人をやりきったのだろう。その動く数少ない魔力は、何を考えているのか、二つとも俺の上空に移動する。

「雷魔法 雷砲乱れ打ち」
「水魔法 水流柱」

 二人の魔法は、それぞれ俺ともう一方の二手に放れ、互いに距離を取らされた。

「へへっ、一人だけ逃がしはしねぇぞ」

「そう、私ばっか幸平の相手してて疲れてんのよ。永久も手伝いなさいよ」

 俺はため息をつきながらも、一人の相手をしては横や後ろから来る攻撃をかわし、どちらかの隙を見つけては打撃を与える。延々とこれを繰り返して、気が付けば辺りはほとんど更地と変わらなかった。

「はぁ、はぁ。そろそろギブしろよ」

「それは、あんたたちでしょ?ここは私に勝ちを譲りなさいよ」

 幸平と日向が疲れ果てている声で、力の源を振り絞る。周囲の魔源 マナが二人の元に集まるのが感覚でわかる。
 その一方、幸平の後ろに更なる魔源が集まっているのが、なんとなく感じられる。

「悪いけど、ここは俺がもらうぞ。全員これで終わりだ!炎魔法 紅点爆丸こうてんばくがん

 俺たち三人に対して、淳の炎魔法が遠方から俺たちの視界に届く。
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