マジックカースト 〜苦しい魔法世界〜

浅村 英字

文字の大きさ
29 / 32
第肆章 本番

証明

しおりを挟む
「雷装」

 雷をまとった幸平が、二人の相手をしてくれている。
 私が思いついたのは、紬さんに教わった手法の一つ。相手が自分よりも格上で、無敵に近い環境がそろっているときに使える技。紬さんから教えてもらった魔法技法三種ある中のうちの一つ。

「邪魔!私はあの子を」

 声と魔力で真鈴が近づいてくるのは察してきた。でも、魔力を集めるのに集中するために彼女のことを無視する。
そして、魔法のために姿勢を低くして神経を研ぎ澄まし始める。自分の中の魔力がどこにあるかを探り始める。

「待てよ!お前も俺が相手してやる」

 聞こえる声を頭の中から排除しつつ、両手の神経に通る魔力と向き合う。大丈夫、きっと幸平ならこの一戦を乗り越えるために私が求めた時間を稼いでくれる。そう信じて、私は私のために目を閉じる。
 視界を閉じた分、あたりの音がよく聞こえ、魔力や魔源の動きがいつもより感じる。幸平が一人で二人をちゃんと相手していて、私のほうに近づいてこない。さらに、私のほうに遠隔攻撃魔法が近づくと、幸平も同じような遠隔攻撃魔法で私に命中するをずらして、あたりから砂埃が舞う。
 暗闇の中、見えてくる景色は数週間前の紬さんせんせいとの修行の時間。あの苦しい生活が私の中の何かを変化させた。あの時の言葉は私を大きく変化させるきっかけの一つとなった。先生は尻もちをついている私を見下ろし、私に見せたその技法について説明を始めた。

『いい?最も効率のいい魔法は、発動した瞬間にだけ魔力を使うこと。その結果、魔方陣が変色し魔法の威力が爆発的に上がるの。それを発動するためには・・・』

 紬さんせんせいから教わったこれでなら、きっと何とかなる。魔法を使うとき毎回これじゃなくても、ここぞという時に使えればと、教えてもらったけど、こんなに早く使うとは。そもそもこの技法を使うには、今の私はかなりの集中を必要とするが、紬さんせんせいやより強い人は、タメの時間が出来ればいいらしい。私はまだその領域が見え始めたばかり。その領域に入ることができれば、私もきっとあの二人と肩を並べられる。
 この技法を最も効果的に当てるには、今現在の私の実力だと、二つの条件がそろわないといけない。一つ、相手と私の実力の差が圧倒的であるということを互いに自覚しているということ。二つ、戦いの終盤もしくはこの一手でその戦場をしのぐことができるのが確実であること。つまりは、相手が隙を作ることができ、その後の勝利を決定づける何かがある必要がある。正直、後者の方は今回は微妙だった。でも私は彼を信じるからこそ今回、この技を使える。
 あの時と同じく、腰の左で刀を握るように右手を握る。魔力を右手の空間に集める。中の空気が抜けて魔力でいっぱいになったところで、こぼれないように左手で、蓋をする。

「風魔法 玉の吐息!」

「砂魔法 高温の砂漠」

 私の方に風の球が三発飛んでくるのが分かる。そして、向こうから徐々に砂で浸食されていくのも理解できた。視覚からの情報をなくした分、魔力の感知が敏感に働いた。
 私の前に幸平が立つのが分かった。魔力とは別にどこか温かい気がした。

「雷魔法 落雷の防壁」

 幸平の魔力が大きく広がるの分かる。その魔力の壁は砂を私の方に寄せ付けなかった。

「雷魔法 雷槍」

 幸平の魔力が細長く三つに分かれ、降ってきている風の球を貫く。
 不思議とこの試合の間、時間がゆっくりに感じた。

 『確かに強力な魔法は使うのも難しい分、大抵の状況を覆すことのできる力を持つ。でも、それを使うのは正直コスパが悪いんだよね』

 私の知らない強力な魔法を余裕をもって使った紬さんせんせいは、主婦のようなことを言っていた。

『魔法の属性は多くの種類があるように、魔法自体にも多くの種類が存在するのは知ってるでしょ』

 幸平と平山さんが使ってる君主魔法を含む複数の魔法階級、一回戦で幸平が使って見せた魔法陣を重ねる重複魔法、魔法陣の外側にさらなる魔法陣を張る結合魔法、名前の通り広い範囲に魔法を張らせる広域魔法、さらに魔法の公式を進化させた大魔法。それにより、魔法の種類は人の数の倍以上だといわれている。

『そして、現魔導警察所長が現実可能にまでさせたこの技は、平凡な私たちを天才な人たちに匹敵させてくれる』

 魔力を意図的に詰まらせて、魔法を発動させたいタイミング、つまりは相手に当てたいタイミングで一気に放出する。この技に求められる魔力コントロールの繊細さは、他の技に比べて群を抜いている。

「日向!そろそろ限界!」

 幸平の言葉が聞こえた。感覚上で私と相手の二人のちょうど中間地点。そこから、幸平を蹴り飛ばし、移動速度からして真鈴が私の方に攻めてくる。

「そこをどきなさい!風魔法 空の刃」

 彼女の両手から鋭く研磨された爪が感じられた。でも、私の準備も万全だ。少なくとも、彼女は私が終わらせる。

「水魔法 水刃 鏡の太刀」

 右手の指先、三か所からだけ魔法を発動させるように意識して、詰まっていた魔力を放出することで魔法の性質変化を起こさせる。
 私の発動した魔法は、水色の魔法だったが性質変化で白く反射していた。狙いは風魔法士 真鈴、天才の由来となる魔法をも貫通して、彼女の魔力結晶ラクリマをも破壊した。
 
「えっ!?」「まじ!?」

「これはすごい」

「十年に一人の天才を証明した秀才が倒した!十代では無敵に近い『旋風纏』を一撃で破った!」

 実況と解説をする二人の漏れた声まで聞こえた。

『性質変化か・・・』

『性質変化?なんですかそれ』

『説明したいけど、男子組が動き出すよ』

 解説は実況の人よりも私たちの場を理解して、実況者を仕事に戻した。

「砂拘束魔法 砂嵐の檻」

 私の水属性の魔法は、砂だらけの今の環境に相性最悪だったから、魔力はそこをつきそうになり、ちゃんと立とうにも力が入らず、腰が抜ける。その下に敷かれた魔法陣によって私はこの場に拘束され、相性のせいで魔力が削られる。

「日向!」

 もう一度、魔力を絞り出して性質変化させた魔法を使おうにも、砂嵐の向こう側の魔力が読めない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...