君が見せた私の夢

浅村 英字

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第一話 蘇る思い出

初恋はどこかに

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 初めての芸能校で受ける授業にドキドキしていた。

「初めまして、俺は『則松 煌太』部活は軽音部ね」

 私も同じ軽音部の人が隣と思うと、部活に行きやすくて嬉しい反面、男子なのはな・・・。

「えっ?私も軽音部に入りたいんだよね!」

「おっ、まじ?俺はギターしてるで。鈴乃ちゃん?は何にするん?」

「私は正直歌いたいって思ってるんよ」

「歌か、歌は正直頑張ってとしか言いようないな」

 初めて会った彼から聞いた驚異的な言葉は私の今後の学生生活を左右するんだろうな。この恐怖感がすごい。

「何いきなり仲良くなってんの?」

 前の子から言われた忠告で少しの間私たちの会話が止まった。
 朝のホームルーム終了後、先生から何も言われてなかったのにチャイムが鳴った途端に班を作り出した。

「あのね、ここは朝のホームルームが終わったらこうやって班を作って芸能関係の報告会みたいなのをするんだ」

 隣の煌太くんがそう言って私に説明してくれた時に、ようやく前の席の彼が私の存在に気付いたらしい。

「おう、このクラスだったんだね」

「あれ?さっき言ってた転入生ってこの子のこと?」

 他にも転入生がいたのかな・・・。

「この子以外に転校生っておったと?」

「え?九州弁?」

「そう、マコトは高校になる時に東京に来て、それまでは福岡にいたんだよ」

 そうなのか、と思うけど、自己紹介、して欲しい。してくれないと何て呼んだらいいか分かんないよ。

「自己紹介くらいしてあげろよ。普通に困るだろ」

 そう言ったのは今朝の男子で、また私の心の中をよまれたような気がして、警戒心が強くなってしまう。

「そっか、そうだね。ごめんね。私は『深町 緋奈』です。今はお芝居の勉強をする為に演劇部に入ってます。よろしく」

 ヒナって最近の女子っぽい名前に、モデルさんになっててもおかしくないほど、美人すぎる。

「ほら、言い出したマコトも!」

 私は隣になった今朝の男子の顔を見る。

「俺は『相澤 真鳳』、特に部活はやってない。最近は何もなく暇してる」

 でしょうね。何か教室にいた感じから何となく分かったよ。今朝からずっと見てきたあなたの姿は、あの人とは正反対で何もない空っぽの心の現れ。そんなあなたに私は何も思うことはできない。

「この人ね。暇だって言ってるけどね、モデルやら役者とかやっててすごいんだよ!」

 確かに、顔と格好だけで成り立つモデルは彼にとってはもってこいって仕事かもしれない。役者は・・・演技自体を知らないらなんとも言えないな。

「別に、もうやってないよ。飽きたし」

「嘘?まじで?もったいねぇ」

 煌太くんはクラスの中心人物になってるんだろうな。私が前にいた所じゃこんな人は、クラスというより、学年のトップにいるような人だった。東京だと、クラス程度なのかな。

「そうか?仕方ないじゃん。興味なくなったんだから」

 モデルとか役者とかって飽きたからってやめられるものなの?この人の中身がよくわからない。

「でも、今日久々に仕事とかあるんじゃないの?」

 この会話に私だけはついていけてない。

「いや、俺の仕事じゃないし。俺はただの連れってだけだよ」

 私はどうしてだか、心の中に些細な傷口がついていた。自分でもどうして傷ついたのか分からない。こんなクズ野郎のどこに傷つく要素なんてあるのか、思い当たることもない。
 それからの朝のホームルームが終わってからの話し合いは、主に私の話で終わった。それからは班行動で、授業の部屋を回ったり、普通に勉強したり、思ったより普通の高校生活を過ごした。

「なっかやっすみ!」

 ルンルンな緋奈ちゃんは昼休み前の二十分くらいの休み時間で私に声をかけてきてくれた。

「鈴乃ちゃん!一緒にお昼食べよ?」

 周りを見るとほとんどの人がお弁当を出して、食べ始めた。

「みんなこの時間に食べるん?」

「そう、お昼ご飯食べる以外にやること無いからさ。そうだ!煌太も真鳳も一緒にどう?」

 私のためなのか、美妙だけど、同じ班の二人も誘ってお昼。私的には女子を誘ってそう欲しいんやけどな。

「おう、いいぜ」

 煌太くんが出したお弁当箱は何となく子供というか、男の子って感じがして可愛く思えた。

「悪い、俺今日は学食でなんか食ってくるからさ」

 学食・・・。東京の学食は私にとってはどこか興奮を掻き立てる。ここに持ってきて、少しだけ分けてくれないかな。

「・・・電話なってるぞ、真鳳」

 唐突に、かつ静かになり出した真鳳くんの携帯は本人には見向きもされなず、友人に言われるまで、放置されている姿にどこか儚く思える。

「あ、うん。・・・もしもし?どうしたの?また後で連絡するって言ってたじゃん」

 相手、誰だろう。無意識に彼の身辺が気になる。どうしても理由がわからないけど、彼の姿に目を引かれてしまう。

「・・・は!?どゆこと?」

 電話に出るなり、話してみるなり彼は不思議がっている顔をして、外を見る。

「・・・どうしたと?だって放課後会うやん・・・。わかった。ちょっと待ってて。今からそっち行くから」

 彼はいきなり携帯を持ったまま教室から飛び出した。
 飛び出した彼の姿を追いかけるのとは反対側で私の班のメンバーは、窓側で外を覗く。誰が来たのか、私たちはその方が気になってた。

「誰?あれ」

 急に言ったのは緋奈ちゃんだった。そこにいたのは、私も知らない女性。まあ、ついこの前に来たこの都会では、私の知っている女性なんて会えない人しかいない。

「おお、ウミちゃんじゃん」

「誰?」

 分かった煌太くんは名前を言うと緋奈ちゃんに睨まれた。しかも、鋭い。

「ちょっとした女優だよ。確か、真鳳の幼なじみだって言ってたよ?」

 ウミちゃん。芸名は『松本 海華』。話によれば、真鳳くんの幼なじみらしい。
 幼なじみってことは何も無いのかな。ちょっと気になる。え・・・恋・・・?な訳ないよね。だって今朝初めて会って、変なこと言われて、あんな男に何もいいところなんてないのに・・・。
 真鳳はその女性と正門で少し話して、何か袋をもらって、教室に戻ってきた。

「何それ」

 緋奈ちゃん、どうしてそんなに冷たいの?

「なんか、弁当作ってきてくれて・・・」

「あの人、誰?」

 正直・・・、

「怖っ、どうしたよ。緋奈」

 私の思いを代弁してくれた煌太くん。ありがとう。これで私に火の粉がくることはなくなった。・・・でも、こういうのってやっぱり代わりに発言してくれた男子をかっこよく見えてしまう。

「別によくね?お前たちに関係ないじゃん」

 なんだかピリピリし出した。この空気がどこか冷たく感じる。

「いや、だって知らない女の人がおったら気になるじゃん」

「何?お前はいつから俺の彼女になったと?」

 真鳳くんは一年以上、上京しているのにまだなまってるのがすごい。私はもう、方言を出すことが出来ないのに。

「え!?」

「俺はお前に告られた覚えもないし、告った覚えもないっちゃけど?」

 美男美女の関係に亀裂が入るなんて、誰も思わなかった。この喧嘩の最中にも関わらず、私はバックにつけてある、あの人にもらった福岡土産のキーホルダーにしか気が向かなかった。
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