君が見せた私の夢

浅村 英字

文字の大きさ
8 / 23
第二話 衝撃は予想以上に

初めての経験

しおりを挟む
「ごめんね。遅くなったね。それじゃあ行こう」

 私は、校門で陽介くんともう一度会い、カフェに向かう。

「先輩って、案外おっちょこちょいなんですね」

「そんなことないよ。今日はたまたま」

 私と昨日初めて会って、初めて話すのに私の何を知ってるの、って思ってしまった。
 カフェに着いたら、彼の東京感が溢れ出てた。すんなりとテーブル席に案内させてくれて、私に質問してきた。

「先輩ってパンケーキ以外で何か好きなのってありますか?」

 メニュー表を渡されて、聞いてくる陽介くんのすごい場慣れ感や年下なのに大人びているのが可愛く見えて仕方がない。

「私は・・・これ食べてみたいかいも」

 そうして私が選んだのは、人気ランキングのようなものにも入れてないものの私いの好きなモンブランだ。

「なら、その二つを頼みましょ?」

 そう言ってテーブルの端にあるボタンを押して店員さんを呼んだ。

「お待たせいたしました。ご注文はお決まりですか?」

「えっと、このパンケーキとあと、モンブランお願いします」

 ここでスラッと言える陽介くんがかっこよく見えて、何だかギャップがすごい。ずっと萌えている自分に赤くなってしまう。

「今更なんですけど、先輩に彼氏とかいたりしますか?」

「ううん、いないよ。自慢じゃないけど、年齢=の非リア歴やで」

 私、やばい事まで話してるな。

「良かったぁ、もし彼氏さんがいたら、この状況を知られたら、僕はボッコボコにやられるんだろうなって考えちゃって」

「あらら、そんなに君をボコボコにしてくれるような人は私にはいないかな」

 そう言って私たちは笑って今の時間を満喫する。
 でも、私の中にはさっき教室で会った彼のことが頭から離れない。

「お待たせいたしました。パンケーキとモンブランになります」

「「ありがとうございます」」

 私たちは店員さんにお礼を言って、パンケーキとモンブランを半分にして食べた。

「うわっ、確かにこのパンケーキめっちゃおいしいね」

「先輩の口にあったみたいでよかったです」

 彼がニコッて笑う姿に私は心を撃たれた。食べ終わった頃に彼はまた話し始めた。

「先輩の名前って可愛いですよ」

 陽介くんが話しかけている時に私の携帯から一通のメールが来た。

「ごめん、用事があるのすっかり忘れてた」

 今日の放課後の六時半頃いつもの駅で変な男性と話し合いがあったんだった。

「ごめんね、お題はこれ」

「いや、今日は僕に払わせてください」

「いや、後輩くんに奢られるわけにはいかないよ」

「いいですよ。ここは僕がお薦めしたんですし」

「先輩として、あんまりそれは」

「だったら、今日は僕に奢らせてください。そして、今度先輩が行きたいお店に行きましょ?その時に奢ってください」

「そう?そういうことなら。ごめんね」

「いいですよ。それより、先輩は早く行った方がいいと思いますよ?」

 年下なのに私より大人な感じがあって、かっこいいな。

「分かった。ありがと」

 私は陽介くんと別れて、駅に向かう。
 改札を抜けて下り方面のホームに走り込む。

「ごめん!お待たせ」

「ホントにギリギリだったな。六時には来るって勝手に思ってたから結構待ったよ」

 今は六時二十分。私たちの駅に六時半頃着く最後の電車。周りを見てもそこにいたのは真鳳くんだけで、煌太くんと緋奈ちゃんはいなかった。

「あの二人は?」

「あいつらはまだ部活。行きは一緒だけど、帰りはテスト期間くらいしか一緒に帰らないよ」

「そうなんだ。この時間まで、真鳳くんは何してたん?」

 教室にいたのは、この真鳳くんただ一人。つまり、この人がシンくん。でも、そんな感じは一切しないから心の中で否定している。それはあの時から思ってて、教室でも彼に声をかけることはなかった。

「俺はずっと教室にいたけど。特にどこかに行くような用事もないし」

「そうだよね・・・」

 そう思っていると、アナウンスが聞こえてきてすぐに電車が来た。

「真鳳くんって」

「なぁ、そのくん付け、やめてくんね?あんまくん付けされるの好きじゃないから」

 何その『いきなりだけど敬語とか俺には使わなくてもいいよ』的なやつ、上から目線でムカつく。やっぱり、この人がシンくんだなんてありえないよ。きっと偶然偶然。そう思い込んだ。

「真鳳って呼び捨てがいいから」

「なら、うちのこと・・・」

「なんだよ?」

 よく考えたら私、この人に名前とか呼ばれた記憶がない。

「俺は名前でも、お前とかでも呼んだことないけど?」

「うちのことは鈴乃って呼んでや、じゃないとうちが変に思われるやろうから」

「そう、分かったよ鈴乃」

 彼の言葉のどこかでは面倒なやつとかで思われたんだろうか。
 そこからは全くことがなかった。家の最寄りまでの数駅、無言の状態が続くだけ。でも、その駅に着くアナウンスが聞こえて、彼は久しく私に口を開けた。

「鈴乃は基本何も話さなくていいから。あいつが来たら俺が相手する。お前は被害者だってのを他の人にも知らせるためにいて欲しい」

 よくわからない、彼の事を自分がどう思っているのかも。

「着いたし、今朝の男覚えてる?」

 私はあんな人生で滅多にない事にあったんだから、なかなかそんな人の顔を忘れられるわけがない。

「いねぇな、探してて。俺は電話してみるから」

 彼は携帯片手に私にそう言って辺りを探す。
 私は緊張して、視界が狭くなって奥の人の顔がよく見えない。

「・・・でねぇな、ってか携帯使われてねぇし。クソが」

 急に大声で下品な言葉で周りの人に圧をかけて、こんな人がシンくんな訳ない。

「あっ、すいません」

 ふと思えば彼は周りに謝り、冷静さを私に見せた。

「どうする?帰るか?」

「ねぇ、今日教室で何歌ってたん?」

 私は教室で声をかけられなかったのに、聞いてしまった。

「あ?いや、なんで?」

 恐怖感、今朝とは違うもので、今まで感じた事のないもの、そんなものを感じて私はやっぱり否定したくなった。

「え、いや・・・」

「よく覚えてない」

 なんか何とも言えないガッカリ感・・・。

「そんなことないでしょ?」

「俺さ、東京に来た時辺りで、交通事故にあってそれ以前のことは分かんないことが多いんだよね」

 衝撃だった。これって、運命的って言うのかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

五月病の処方箋

松丹子
恋愛
狩野玲子29歳は五月が大嫌い。その理由を知った会社の後輩、石田椿希27歳に迫られて… 「玲子さん。五月病の特効薬、知ってます?」 キリッと系ツンデレOLとイケメン後輩のお話です。 少しでも、お楽しみいただけたら幸いです。 *Rシーンは予告なく入りますのでご注意ください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

二年後、可愛かった彼の変貌に興ざめ(偽者でしょう?)

岬 空弥
恋愛
二歳年下のユーレットに人目惚れした侯爵家の一人娘エリシア。自分の気持ちを素直に伝えてくる彼女に戸惑いながらも、次第に彼女に好意を持つようになって行くユーレット。しかし大人になりきれない不器用な彼の言動は周りに誤解を与えるようなものばかりだった。ある日、そんなユーレットの態度を誤解した幼馴染のリーシャによって二人の関係は壊されてしまう。 エリシアの卒業式の日、意を決したユーレットは言った。「俺が卒業したら絶対迎えに行く。だから待っていてほしい」 二年の時は、彼らを成長させたはずなのだが・・・。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...