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人間は、常に抗えない欲求を抱えて生きている。
食欲、性欲、睡眠欲。
俗にいう三大欲求である。
これに加えてブッダは、承認欲、生存欲、怠惰欲、感楽欲の四つを人間が本能的に求めるのだと説いた。七大欲求である。
人間は日々、これだけ多くのものを欲しているのだ。
そのなかでも、睡眠欲は万人が強くもっているとか。
理由は単純、睡眠不足は死に直結するから。
眠って夢を見ることは、体と頭が欲する休養なのである。
僕はロングスリーパーの気があるから、なおさらだ。
で、なにが言いたいかっていうと――
「ふあぁぁ」
「こら、セバスチャン。人前であくびをしてはなりませんわよ」
「あ……失礼いたしました」
眠い。
それもそのはず。
きのう(きょう?)の配信で魔法少女を仲間にしてから一睡もせず朝九時に屋敷を出て、会場の学園へと歩いているんだから。
「ねむねむならー、ボクが変身するとき飲んでるパキ○ル飲むーぃ?☆」
「いや、抗うつ薬はそんなエナドリ感覚で飲む薬じゃないですから」
「なに言ってやがりますの、おまえ。デ○スはゲーマーにとってのラムネですの。
ゲーミングラムネですの。頭おかしくなったんですの?」
「お嬢さま、デ○スは抗うつ薬ではなく抗不安薬でございます。
脳の興奮を落ちつかせるお薬でございます」
「おぇぅおっ、詳ぉっしーぃ☆ なーっんでそぅんなん知ってぇんのー?☆」
「さあ……? いまちょっと眠……くて……」
「起きろぅぇっっ☆☆★(でっけースピーカーのスイッチを入れる音)」
♪BGM
ØØ Void
――Sunn O)))
「ぅわ地割れ!?!?――って、なんだ、ただのドゥームメタルか……」
「起きたぁ?☆ ねぅ、起きた?☆
まだネムならーぁ、このでっけーハリセンで――」
「おまえら、いい加減にしなさいな。もう到着しますわよ」
気づくと、僕らは並木のゆるやかな坂道を下っていた。
気を引きしめなきゃ。
アネさんのために、これからアイツと決着をつけなければならないのだから。
とはいえ、僕にできるのは二人のサポートくらいである。
ハンカチ、ティッシュ、マウスとキーボード、デ○ス……
忘れものはないな、うん。
出発前にもチェックしたから当然だけど。
歩きつつコートのポケットとカバンの中身を確認して、会場へと向かった。
■ ■ ■
それから僕らは、このあいだと同じく赤レンガのアーチ門をくぐり、
〝全国高等学校eスポーツ選手権大会 APEX LEGENDSの部 決勝戦 二日目〟
このあいだと同じ看板が立っている第二体育館に入り、
「ごめんあそばせ。お紅茶のデリバリーサービスですわ~」
お嬢さまの丁寧なあいさつを添えると、
「ダメです」
断られた。
「きさまァ! ダメとはなにごとか! お嬢さまを愚弄――」
「どうどう、セバスチャン。安易な天丼は愚者のお笑いでしてよ」
お嬢さまにいさめられて自分を取りもどす。
いけない、睡眠不足だからか思考が停止している。
「なんで入っちゃダメなんですか」
頭を冷やして、僕はちんまりと座っている受付ちゃんにそう尋ねた。
「理由は話さずともわかりますよね。
頭おかしいんですか、あなたたち」
「いいえ?」
「……少しは頭使ってくださいよ。
この前のことといい、入場を許すと思います?」
「心が狭ぇですわねぇ。
昔のオフライン大会の机かと思いましたわ」
「うんうっん、そゃれにボクら京ぴっぴから来てーって誘わっしーぉぃ?☆」
「いやいやいや。あの人、べつに大会を仕切っているわけじゃありませんし。
たかが大会参加者の一人ですから。
だいたい、あの人いっつも――」
「あらぁ? いま、うちのうわさ話してはったんどすか?」
「うぃぉっ、京ぴっぴだ☆」
「ふええぇぇぇ~~!」
「あ、逃げましたわ」
「ふふ。あの子ぉ、お茶事で何度も何度もおもてなししてから、
着物見ゃはるだけで逃げだしてまうようになったんどす」
パブロフの犬かよ。
「パブロフの犬、どすぇ」
パブロフの犬らしい。
「犬いうたら、嬢のあんさんもずいぶんかいらしいわんわん手なずけたことでぇ……
ひょっとするとケルベロスさんかもわかりませんなぁ……」
「なんの話ですの」
「失礼しました、ただのひとり言どす。
ようおこしやした、お三方」
京は挨拶すると、軽く右手を上げた。
すると、着物姿で背の低い男の子がひとり、サッと姿を現した。
「これ、うちの一番弟子どす。きょう、この子ぉが案内しますぇ」
男の子は、いっさいのムダがない所作で一礼すると、
「お荷物と上着をお預かり致します」
抑揚の少ない口調で言って、僕らを先導した。
僕らはまた前と同じく長い廊下を歩き、大きな両開きの扉を開いた。
その先に見えたメインホールは、やはり前回とほとんど変わっていなかった。
チームごとに少しだけスペースを空けて並べられた長机。
その上に置かれたパソコン、モニター。
ひろびろとした空間のほとんどを机が占有し、人の熱気であふれている。
そんな熱気の一番先、舞台の上にアイツはのぼっていた。
「あんさんら、おはようさんどす。
うちも出させてもらうことになりましたぇ。よろしゅうお頼みしてもうします」
「Wooow!! OMFG!! Let's goooo!!」
「わお。わたしのフ*ック神。レットの進行!」
しかし僕の勘違いでなければ、熱気を構成している人間に外国人が多い気がした。
そのことをお嬢さまに告げると、
「ええ、けっして気のせいではありませんわ。アイツの影響ですの。
なんでも、例の京は独自進化を遂げた京都の煽り文化を発信する親善大使で、多くの外国人ファンを有するのだとか。
ついでに外国人だけでなく、思想もオツムも左にねじ曲がった連中から持ちあげられていると」
とのことだった。
「これは最近、NAVERまとめから調べましたの」
なるほど。
現在、この大会の実質的な支配権はアイツにあるらしい。
「カメラの向こうのあんさんらも、えろぅ遠いとこから応援してくれはって、おおきにどすぇ」
証拠に、いま京を映しているあのカメラマンも先週はいなかった。
配信なのかテレビなのかはわからないが、
どちらにせよ、あれもヤツの強大さを表している。
京はひととおり挨拶を済ませると、
「なんときょうは、特別なお客さん来ゃはってるんどす」
僕らを舞台上へと上げた。
そして京は、改めて僕らを紹介し、大会への参加を認めると宣言した。
が――
「いや……」
そう区切ってヤツの口から発せられた言葉は――
「やっぱり、うちらかてプライドいうんありますし、
〝タダで〟いうわけいかしませんなぁ」
妙に演技がかった口調で紡がれていき――
「そや、ええ案を思いつきました。
そこのあんさん。そこの、背の高い使用人のあんさん」
「……?」
「一マッチだけ、あんさんらとうちら、
あと会場のみなさん入れてAPEXでぇ勝負しておくれやさしませんやろか。
大会とおんなしポイント方式で。
うちらがあんさんらよりええ結果とったら、
その使用人さん、うっとこで丁重におもてなしさせとくれやす」
「おまえ……! おもてなしって、つまりお姉さまと同じアレを……!!
どういうつもりですの……!!」
「まぁ。なにも、あんさんらに悪いことばっかてぇわけやおへんぇ。
あんさんら勝ったら大会に参加できますし……
うち、なんでもあんさんらの望み聞きますぇ」
お嬢さまもマホも、当の僕ですらも、楽しくおしゃべり《VC》しているなかで急に政治の話をもちだされた瞬間のごとく、あっけにとられてしまうのだった。
「ふふふふふ」
■ ■ ■
実質的に、僕らに拒否権はなかった。
「ねっーぇ☆ なーんっであんな条件で受けちゃんたのさーぅ☆
負けたらセバぴっぴ連行確定だよーぉ?☆」
「それは……おまえには関係ありませんの」
「はー、なっんそれー☆」
知ってのとおり、僕らはアネさんを人質にとられてしまっている。
もとに戻せるのはアイツだけだ。
「なに、負けなければよいだけのお話でしてよ」
「そーだけっどさーぅ?☆」
くわえて言えば、この勝負に勝つことで、かねてよりお嬢さまが望んでいた大会への参加だって達成できるのだ。こんな一石二鳥のおいしい話、受けないなんて選択肢はなくなる。
ただそれだけに、はっきりしないヤツの目的が怖い。
なぜ僕に狙いをつけたのか。
たかが使用人でしかない僕に。
「セバぴっぴはさー、そんなっでいぃのーぅ?☆」
「……お嬢さまを信じていますので。
わたくしめは一介の使用人にすぎません」
だから、言葉ではそう言っても、僕の身体には無意識に力が入っていた。
「……」
そんな僕の肩に優しく手を添え、僕の目をまっすぐ見つめて、お嬢さまは言った。
「わたくしもおまえを信じていますわ」
その青色の奥底に秘められた光を前にして、やはり僕は安心できた。
理由や理屈はいらない。
僕があれこれ悩む必要などないのだと、改めてそう思い、席に着いた。
それから一〇分後。
会場は、先ほどまでの熱が夢だったと言わんばかりに静まりかえっていた。
会場にいる人間の多くが席に着いて、
誰が合図したわけでなく、ほとんど話さない。
いまかいまかと、静謐のなかで始まり待ちわびている。
今回は、いままでと違って小規模な戦いではない。
二十チームで生き残りをかけて戦うバトロワ、それがAPEXなのだ。
「――つまるところ、蹂躙すればよいのですわ。
順位とキルの両方でポイントが入るんですもの」
「そっかなーぅ?☆
順位ポイントのほーが高いしぃー、生きのこり優先しちゃぅたほうがボクはいいっと思ーけどなーぁ☆」
「細けえことは気にすんなですわ。蹂躙しつくせばどうとでもなりますの」
なるべく役にたてるよう、考えを巡らせなければ。
僕はそれだけを思いながら、静かにモニターを見すえた。
人間は、常に抗えない欲求を抱えて生きている。
食欲、性欲、睡眠欲。
俗にいう三大欲求である。
これに加えてブッダは、承認欲、生存欲、怠惰欲、感楽欲の四つを人間が本能的に求めるのだと説いた。七大欲求である。
人間は日々、これだけ多くのものを欲しているのだ。
そのなかでも、睡眠欲は万人が強くもっているとか。
理由は単純、睡眠不足は死に直結するから。
眠って夢を見ることは、体と頭が欲する休養なのである。
僕はロングスリーパーの気があるから、なおさらだ。
で、なにが言いたいかっていうと――
「ふあぁぁ」
「こら、セバスチャン。人前であくびをしてはなりませんわよ」
「あ……失礼いたしました」
眠い。
それもそのはず。
きのう(きょう?)の配信で魔法少女を仲間にしてから一睡もせず朝九時に屋敷を出て、会場の学園へと歩いているんだから。
「ねむねむならー、ボクが変身するとき飲んでるパキ○ル飲むーぃ?☆」
「いや、抗うつ薬はそんなエナドリ感覚で飲む薬じゃないですから」
「なに言ってやがりますの、おまえ。デ○スはゲーマーにとってのラムネですの。
ゲーミングラムネですの。頭おかしくなったんですの?」
「お嬢さま、デ○スは抗うつ薬ではなく抗不安薬でございます。
脳の興奮を落ちつかせるお薬でございます」
「おぇぅおっ、詳ぉっしーぃ☆ なーっんでそぅんなん知ってぇんのー?☆」
「さあ……? いまちょっと眠……くて……」
「起きろぅぇっっ☆☆★(でっけースピーカーのスイッチを入れる音)」
♪BGM
ØØ Void
――Sunn O)))
「ぅわ地割れ!?!?――って、なんだ、ただのドゥームメタルか……」
「起きたぁ?☆ ねぅ、起きた?☆
まだネムならーぁ、このでっけーハリセンで――」
「おまえら、いい加減にしなさいな。もう到着しますわよ」
気づくと、僕らは並木のゆるやかな坂道を下っていた。
気を引きしめなきゃ。
アネさんのために、これからアイツと決着をつけなければならないのだから。
とはいえ、僕にできるのは二人のサポートくらいである。
ハンカチ、ティッシュ、マウスとキーボード、デ○ス……
忘れものはないな、うん。
出発前にもチェックしたから当然だけど。
歩きつつコートのポケットとカバンの中身を確認して、会場へと向かった。
■ ■ ■
それから僕らは、このあいだと同じく赤レンガのアーチ門をくぐり、
〝全国高等学校eスポーツ選手権大会 APEX LEGENDSの部 決勝戦 二日目〟
このあいだと同じ看板が立っている第二体育館に入り、
「ごめんあそばせ。お紅茶のデリバリーサービスですわ~」
お嬢さまの丁寧なあいさつを添えると、
「ダメです」
断られた。
「きさまァ! ダメとはなにごとか! お嬢さまを愚弄――」
「どうどう、セバスチャン。安易な天丼は愚者のお笑いでしてよ」
お嬢さまにいさめられて自分を取りもどす。
いけない、睡眠不足だからか思考が停止している。
「なんで入っちゃダメなんですか」
頭を冷やして、僕はちんまりと座っている受付ちゃんにそう尋ねた。
「理由は話さずともわかりますよね。
頭おかしいんですか、あなたたち」
「いいえ?」
「……少しは頭使ってくださいよ。
この前のことといい、入場を許すと思います?」
「心が狭ぇですわねぇ。
昔のオフライン大会の机かと思いましたわ」
「うんうっん、そゃれにボクら京ぴっぴから来てーって誘わっしーぉぃ?☆」
「いやいやいや。あの人、べつに大会を仕切っているわけじゃありませんし。
たかが大会参加者の一人ですから。
だいたい、あの人いっつも――」
「あらぁ? いま、うちのうわさ話してはったんどすか?」
「うぃぉっ、京ぴっぴだ☆」
「ふええぇぇぇ~~!」
「あ、逃げましたわ」
「ふふ。あの子ぉ、お茶事で何度も何度もおもてなししてから、
着物見ゃはるだけで逃げだしてまうようになったんどす」
パブロフの犬かよ。
「パブロフの犬、どすぇ」
パブロフの犬らしい。
「犬いうたら、嬢のあんさんもずいぶんかいらしいわんわん手なずけたことでぇ……
ひょっとするとケルベロスさんかもわかりませんなぁ……」
「なんの話ですの」
「失礼しました、ただのひとり言どす。
ようおこしやした、お三方」
京は挨拶すると、軽く右手を上げた。
すると、着物姿で背の低い男の子がひとり、サッと姿を現した。
「これ、うちの一番弟子どす。きょう、この子ぉが案内しますぇ」
男の子は、いっさいのムダがない所作で一礼すると、
「お荷物と上着をお預かり致します」
抑揚の少ない口調で言って、僕らを先導した。
僕らはまた前と同じく長い廊下を歩き、大きな両開きの扉を開いた。
その先に見えたメインホールは、やはり前回とほとんど変わっていなかった。
チームごとに少しだけスペースを空けて並べられた長机。
その上に置かれたパソコン、モニター。
ひろびろとした空間のほとんどを机が占有し、人の熱気であふれている。
そんな熱気の一番先、舞台の上にアイツはのぼっていた。
「あんさんら、おはようさんどす。
うちも出させてもらうことになりましたぇ。よろしゅうお頼みしてもうします」
「Wooow!! OMFG!! Let's goooo!!」
「わお。わたしのフ*ック神。レットの進行!」
しかし僕の勘違いでなければ、熱気を構成している人間に外国人が多い気がした。
そのことをお嬢さまに告げると、
「ええ、けっして気のせいではありませんわ。アイツの影響ですの。
なんでも、例の京は独自進化を遂げた京都の煽り文化を発信する親善大使で、多くの外国人ファンを有するのだとか。
ついでに外国人だけでなく、思想もオツムも左にねじ曲がった連中から持ちあげられていると」
とのことだった。
「これは最近、NAVERまとめから調べましたの」
なるほど。
現在、この大会の実質的な支配権はアイツにあるらしい。
「カメラの向こうのあんさんらも、えろぅ遠いとこから応援してくれはって、おおきにどすぇ」
証拠に、いま京を映しているあのカメラマンも先週はいなかった。
配信なのかテレビなのかはわからないが、
どちらにせよ、あれもヤツの強大さを表している。
京はひととおり挨拶を済ませると、
「なんときょうは、特別なお客さん来ゃはってるんどす」
僕らを舞台上へと上げた。
そして京は、改めて僕らを紹介し、大会への参加を認めると宣言した。
が――
「いや……」
そう区切ってヤツの口から発せられた言葉は――
「やっぱり、うちらかてプライドいうんありますし、
〝タダで〟いうわけいかしませんなぁ」
妙に演技がかった口調で紡がれていき――
「そや、ええ案を思いつきました。
そこのあんさん。そこの、背の高い使用人のあんさん」
「……?」
「一マッチだけ、あんさんらとうちら、
あと会場のみなさん入れてAPEXでぇ勝負しておくれやさしませんやろか。
大会とおんなしポイント方式で。
うちらがあんさんらよりええ結果とったら、
その使用人さん、うっとこで丁重におもてなしさせとくれやす」
「おまえ……! おもてなしって、つまりお姉さまと同じアレを……!!
どういうつもりですの……!!」
「まぁ。なにも、あんさんらに悪いことばっかてぇわけやおへんぇ。
あんさんら勝ったら大会に参加できますし……
うち、なんでもあんさんらの望み聞きますぇ」
お嬢さまもマホも、当の僕ですらも、楽しくおしゃべり《VC》しているなかで急に政治の話をもちだされた瞬間のごとく、あっけにとられてしまうのだった。
「ふふふふふ」
■ ■ ■
実質的に、僕らに拒否権はなかった。
「ねっーぇ☆ なーんっであんな条件で受けちゃんたのさーぅ☆
負けたらセバぴっぴ連行確定だよーぉ?☆」
「それは……おまえには関係ありませんの」
「はー、なっんそれー☆」
知ってのとおり、僕らはアネさんを人質にとられてしまっている。
もとに戻せるのはアイツだけだ。
「なに、負けなければよいだけのお話でしてよ」
「そーだけっどさーぅ?☆」
くわえて言えば、この勝負に勝つことで、かねてよりお嬢さまが望んでいた大会への参加だって達成できるのだ。こんな一石二鳥のおいしい話、受けないなんて選択肢はなくなる。
ただそれだけに、はっきりしないヤツの目的が怖い。
なぜ僕に狙いをつけたのか。
たかが使用人でしかない僕に。
「セバぴっぴはさー、そんなっでいぃのーぅ?☆」
「……お嬢さまを信じていますので。
わたくしめは一介の使用人にすぎません」
だから、言葉ではそう言っても、僕の身体には無意識に力が入っていた。
「……」
そんな僕の肩に優しく手を添え、僕の目をまっすぐ見つめて、お嬢さまは言った。
「わたくしもおまえを信じていますわ」
その青色の奥底に秘められた光を前にして、やはり僕は安心できた。
理由や理屈はいらない。
僕があれこれ悩む必要などないのだと、改めてそう思い、席に着いた。
それから一〇分後。
会場は、先ほどまでの熱が夢だったと言わんばかりに静まりかえっていた。
会場にいる人間の多くが席に着いて、
誰が合図したわけでなく、ほとんど話さない。
いまかいまかと、静謐のなかで始まり待ちわびている。
今回は、いままでと違って小規模な戦いではない。
二十チームで生き残りをかけて戦うバトロワ、それがAPEXなのだ。
「――つまるところ、蹂躙すればよいのですわ。
順位とキルの両方でポイントが入るんですもの」
「そっかなーぅ?☆
順位ポイントのほーが高いしぃー、生きのこり優先しちゃぅたほうがボクはいいっと思ーけどなーぁ☆」
「細けえことは気にすんなですわ。蹂躙しつくせばどうとでもなりますの」
なるべく役にたてるよう、考えを巡らせなければ。
僕はそれだけを思いながら、静かにモニターを見すえた。
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