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ピイィィィーーッ!
朝七時、給湯室。
治外法権eスポーツカフェにやかんの高音が響き、コンロを止める。
設備やアメニティが充実しているのは助かった。
シャワーだって浴びられるし、紅茶のティーバッグは数種類置いてある。
僕らはここで一夜を明かした。
こんな普通の状態ではないときには、紅茶を一杯飲むに限る。
これから、もっとまともじゃない一日が始まるんだから。
「いよいよかぁ」
ボソッとつぶやくと、
「なっにーっ☆ 不安なちゃってんのーぇ?☆」
「……少しだけですよ。自分で言うのもなんですが、あんなメチャクチャな作戦」
はっきり言って、今回の作戦で不安をいだくななんて無理な話だ。
「でも、弱腰になってるわけじゃありません」
今回の作戦はやっぱり普通じゃない。
不安要素はそれだけでもないのだけど。
「作戦もそっだけどさー、
けっきょく真正面から戦ぅわなきゃなんないんの忘れてないよっねぃー?☆」
「それはもちろん。
今回は普通に大会に出るんですから。
何回も試合して勝者を決めるんですよね」
「そそっ☆ 世界大会で使われてっのと同じルール☆」
大会のルールは、いわゆるマッチポイント方式。
キル数と順位のポイント合計が五十に到達した状態でチャンピオンを獲ったら優勝できる方式だ。
試合数の上限はない。
つまりは、これまでと比較にならないほど長丁場になる可能性がある。
身をひき締めなくては。
「紅茶、飲みます?」
「んや、ボクコーヒー派だっからぅーー☆☆」
と、僕とマホが話していると、
「あら。おまえらもう起きていましたのね」
「お早いですね、お嬢さま」
「あたりまえですわ。
本日はやることやらなきゃならねえですもの。
おまえら、覚悟はよろしくて?」
僕とマホがうなずく。
「あのゲーミング京都女のすまし顔にクレイグ・ザ・ブルートがごとく右ストレートかまして、棺にFを押して敬意を払うと見せかけ、ゴアグラかけてトラボルタどころかビートルズもVomit Dollsレベルのツイスト踊ってやりますわよ」
行動開始。
僕はひとり、紙コップを捨ててその場をあとにした。
■ ■ ■
店の外には、何人もの警察官が入口周りに立っていた。
さらに路地裏から表通りに出ると、パトカーが何台も駐められていた。
京が言っていた書きこみとやらは本当だったらしい。
単独行動にしておいて正解だった。
向かった先はもちろん大会の会場、我らが学園。
坂道を下り、門を抜けた。
〝全国高等学校eスポーツ選手権大会
APEX LEGENDSの部
決勝戦 最終日〟
まずは第一段階だ。
僕は、体育館の舞台裏へと忍びこまなければならない。
そのために入口をくぐり、
「!? あ、ああっ!? あんなとこにホンモノの京さんがいるーーゥ!?
京都の京って書いてキョウって読んじゃう京さんだーーーッッッ!?」
あいさつを添えて、
「ふええぇぇぇ~~!
ラムネ~~ェェ!
ふえラムネ~~~!!」
飲み会終盤でも許されないギャグとともに受付ちゃんがドロップアイテムがごとく落としていった、スタッフの腕章を手に入れた。
とりあえず、これで顔を知られている人間以外にはバレずに潜入できる。
言わずもがな、ヒッ○マン方式だ。
こうすれば、どうどうと歩いて裏側へ潜入できる。
メインホールは準備中でガヤガヤしていた。
タイミングよく京がみんなにお茶を配っていたので、
僕は注目を浴びずホールを歩くことができた。
そうして、舞台横の扉をそっと開いた。
……が。
「うっ!」
声が聞こえて、とっさに物陰へ隠れる。
うつ病のウッちゃんだ。
アイツ、スタッフでもあったのか。
見つかるとまずい。アイツは僕の顔を知っている。
「緊急! 聞こえますか!」
耳元のインカムに手を当て、お嬢さまに小声で状況を伝える。
「いっそ強行突破するしか……」
「落ちつきなさい、セバスチャン。
おまえはメ○ルギアからなにを学びましたの?
こういうときのために備えておきましたの。カバンを見なさい」
言われたとおりカバンを漁ると、
ページがウネってカピカピになった本が一冊出てきた。
「男など、そういう本で釣ってしまえば一発でしてよ」
いや、これはさすがに引っかかるわけが――
「うっ……!」
「お茶の子さいさい、ですわ」
「うわぁ……」
なにはともあれ、ここでやることはひとつだ。
気をとりなおして、ウッちゃんの背後を抜けハシゴを登る。
視聴覚室。
目当ての場所はここだ。
僕はスイッチを操作してスクリーンを下ろし、照明を消した。
ピイィィィーーッ!
朝七時、給湯室。
治外法権eスポーツカフェにやかんの高音が響き、コンロを止める。
設備やアメニティが充実しているのは助かった。
シャワーだって浴びられるし、紅茶のティーバッグは数種類置いてある。
僕らはここで一夜を明かした。
こんな普通の状態ではないときには、紅茶を一杯飲むに限る。
これから、もっとまともじゃない一日が始まるんだから。
「いよいよかぁ」
ボソッとつぶやくと、
「なっにーっ☆ 不安なちゃってんのーぇ?☆」
「……少しだけですよ。自分で言うのもなんですが、あんなメチャクチャな作戦」
はっきり言って、今回の作戦で不安をいだくななんて無理な話だ。
「でも、弱腰になってるわけじゃありません」
今回の作戦はやっぱり普通じゃない。
不安要素はそれだけでもないのだけど。
「作戦もそっだけどさー、
けっきょく真正面から戦ぅわなきゃなんないんの忘れてないよっねぃー?☆」
「それはもちろん。
今回は普通に大会に出るんですから。
何回も試合して勝者を決めるんですよね」
「そそっ☆ 世界大会で使われてっのと同じルール☆」
大会のルールは、いわゆるマッチポイント方式。
キル数と順位のポイント合計が五十に到達した状態でチャンピオンを獲ったら優勝できる方式だ。
試合数の上限はない。
つまりは、これまでと比較にならないほど長丁場になる可能性がある。
身をひき締めなくては。
「紅茶、飲みます?」
「んや、ボクコーヒー派だっからぅーー☆☆」
と、僕とマホが話していると、
「あら。おまえらもう起きていましたのね」
「お早いですね、お嬢さま」
「あたりまえですわ。
本日はやることやらなきゃならねえですもの。
おまえら、覚悟はよろしくて?」
僕とマホがうなずく。
「あのゲーミング京都女のすまし顔にクレイグ・ザ・ブルートがごとく右ストレートかまして、棺にFを押して敬意を払うと見せかけ、ゴアグラかけてトラボルタどころかビートルズもVomit Dollsレベルのツイスト踊ってやりますわよ」
行動開始。
僕はひとり、紙コップを捨ててその場をあとにした。
■ ■ ■
店の外には、何人もの警察官が入口周りに立っていた。
さらに路地裏から表通りに出ると、パトカーが何台も駐められていた。
京が言っていた書きこみとやらは本当だったらしい。
単独行動にしておいて正解だった。
向かった先はもちろん大会の会場、我らが学園。
坂道を下り、門を抜けた。
〝全国高等学校eスポーツ選手権大会
APEX LEGENDSの部
決勝戦 最終日〟
まずは第一段階だ。
僕は、体育館の舞台裏へと忍びこまなければならない。
そのために入口をくぐり、
「!? あ、ああっ!? あんなとこにホンモノの京さんがいるーーゥ!?
京都の京って書いてキョウって読んじゃう京さんだーーーッッッ!?」
あいさつを添えて、
「ふええぇぇぇ~~!
ラムネ~~ェェ!
ふえラムネ~~~!!」
飲み会終盤でも許されないギャグとともに受付ちゃんがドロップアイテムがごとく落としていった、スタッフの腕章を手に入れた。
とりあえず、これで顔を知られている人間以外にはバレずに潜入できる。
言わずもがな、ヒッ○マン方式だ。
こうすれば、どうどうと歩いて裏側へ潜入できる。
メインホールは準備中でガヤガヤしていた。
タイミングよく京がみんなにお茶を配っていたので、
僕は注目を浴びずホールを歩くことができた。
そうして、舞台横の扉をそっと開いた。
……が。
「うっ!」
声が聞こえて、とっさに物陰へ隠れる。
うつ病のウッちゃんだ。
アイツ、スタッフでもあったのか。
見つかるとまずい。アイツは僕の顔を知っている。
「緊急! 聞こえますか!」
耳元のインカムに手を当て、お嬢さまに小声で状況を伝える。
「いっそ強行突破するしか……」
「落ちつきなさい、セバスチャン。
おまえはメ○ルギアからなにを学びましたの?
こういうときのために備えておきましたの。カバンを見なさい」
言われたとおりカバンを漁ると、
ページがウネってカピカピになった本が一冊出てきた。
「男など、そういう本で釣ってしまえば一発でしてよ」
いや、これはさすがに引っかかるわけが――
「うっ……!」
「お茶の子さいさい、ですわ」
「うわぁ……」
なにはともあれ、ここでやることはひとつだ。
気をとりなおして、ウッちゃんの背後を抜けハシゴを登る。
視聴覚室。
目当ての場所はここだ。
僕はスイッチを操作してスクリーンを下ろし、照明を消した。
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