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或ル勉学
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「おはよう國弘くん!さっそくだけど國弘くんには大学受験してもらいまーす!」
「……は?」
朝早くから突然部屋に入ってきてそんなことを言う博士。大学受験?高校も卒業できてない僕になぜ大学を受けさせる必要があるのか。
「あの、僕大学行く気なんてないんですが……まず高校出てないし」
「それは知ってるよ!記憶を見たんだからね」
「知ってるんだったら何でまた……」
「……そういや國弘くんには仇討つってしか言ってなかったね」
「え?」
「前記憶を見せてもらった時のアレだよ」
「あぁ……アレですか」
以前、僕は博士の作った(のかは定かではないが多分作った)機械によって、少しだけ彼に記憶を覗かれたのである。記憶を見た途端、急に博士は出掛けていったので状況がまるで読めなかったが、何故今更。
「あのときどこ行ってたか教えてあげるよ」
「……どこなんです?」
「君の、元住居だよ」
「……え、何で」
博士の口から信じられない言葉が。何故、彼は僕の……親戚の家なんかに行ったんだ。意図が読めない。
「思い出したくないだろうけど……國弘くんの親戚は、お母さんやお父さんの遺産をすべて持っていってたんだよ……とりあえず國弘くんに入るはずだったお金はすべて僕の口座に振り込んでもらったよ。全部」
「……かなり生々しい話ですね、」
「まぁ僕の手に掛かればこんくらいはチョロいね、あと國弘くんが成人になるまでの養育費も、月一度僕の口座に振り込まれていくから」
「うわぁ……」
更に告白される信じがたい話に、僕は疑問というより意味が分からなくて曖昧な返事しかできなかった。まず博士は僕の親戚に何をやらかしたんだ。確かに悪い人だったがお金を踏んだくる博士もなかなかの暴君である。
「だから國弘くん大学生になろう!お金はいっぱいあるんだよ!」
だから何故そうなる。金にもの言わす気かこの人は。
「お金の問題じゃない!頭がないんですよ僕には!」
「あるじゃん、白銀に輝く麗しの髪にルビーのように暖かでありながらも攻撃的な光を湛える瞳……」
「何ですかその文学くさい表現は……そういう意味じゃなくて、僕勉強できないんです」
「え?國弘くん頭良さそうな顔してバカなの?」
「……えぇ、バカですよ」
直球でぶちこんできたこのデリカシー無し男に苛々を募らせてもしょうがない。この人は多分ろくな理由もなく僕を大学に送り込もうとしている。行ってたまるか。
「じゃあ僕が勉強教えてあげる!」
「……博士、」
「何?國弘くん」
「……僕の将来に大学は必要でしょうか?」
「いるよ!」
「何でですか?だって僕の将来の夢は……」
「?」
本当は恥ずかしくて死にそうなくらいだが、大学受験なんてめんどくさいことはしたくない。僕はこう言うことにした。
「博士の、お嫁さんなんですよ……?」
「ッ國弘くん……!」
「だから博士、僕は毎日博士のために部屋を掃除したり洗濯をしたりして、あたたかいご飯を作って……夜には、えっちしたりするのが……僕の将来の夢なんです、だから大学なんて」
「それとこれは関係ない!けどえっちはしよう!毎日!」
「…………」
「明日から勉強だからね!」
「…………はぁ……」
何でそうなる。恥を忍んで頼んだというのに。明日は部屋の掃除してやらない、そう思ったけど。
「……僕の行ってる大学だから、ね?」
「…………」
「入ったら、一緒にキャンパスデートしよ?」
「……ッ、分かりましたよやればいいんでしょやれば!」
僕はこの男の提案、お願い事にどうも弱いようだ。
†
「國弘くんはねー……学科は何がイイ?僕が入ってる授業は……機械工学Ⅰ・Ⅱと、生物学Ⅰ・Ⅱ、あと……」
「なんかもう訳がわからない次元です、生物学ならできると思うんですが……」
「君たまに剥製作ったりしてるもんねェ……薬学とかどう?」
「絶対無理です」
「むぅぅ……」
博士はベッドの上に腰掛けて、股の間に僕を座らせて大学のパンフレットをぺらぺらと捲っていく。雰囲気は楽しそうだから自分の見た目がまた好奇の目に晒されるのかと思うと憂鬱になる。博士はそれを知ってる筈なのに。
「何か一番楽そうなのがイイです」
「それじゃ行く意味ないじゃん」
「行く気ないんですけど」
「じゃあ無理矢理にでも行く気にさせたげる!明後日オープンキャンパスあるから無理矢理にでも連れていく!」
「……めんどくさいなァ」
「めんどくさいとか言わない!」
博士の胸にぽすっ、と凭れる。はぁと溜め息を吐けば、博士が肩に顎を乗せてきた。
「くにひろくんあったかいね」
「博士もあったかいですよ」
「あー……やっぱり大学とかめんどくさい?」
「……まぁ、めんどくさいというか見た目でよく虐められてたので……またそういうのがあったら嫌だなぁって……」
「大学はそんなことないよ、いろんな髪色の人がいるし、いろんな国の人が学びに来てるから……國弘くんの過去を考えたらやっぱり、友達作って欲しいなって思ったんだ……」
「……博士、」
首を動かして博士の方を見ると、ね?と微笑みかけてくる。彼は僕自身よりも僕のことを考えていてくれた。それがとても嬉しくて、ただそれを言葉にするのは恥ずかしいので、今日もそっけないことを言ってしまう。
「……案外まともなこと言えるんですね」
「案外って何だよ!」
「……いつもふざけ散らかしてるので、ちょっと吃驚しました」
「散らかしてはない!僕は部屋しか散らかさないよ」
「……、そんなあなたが大好きなんです」
「ッ……ありがとう、僕も國弘くん大好き」
だけど結局、こうやって博士に強く抱き締められて甘えてしまうのだ。服越しに彼から伝わる体温が心地よくて身を委ねる。あまりにも気持ちよくてそのまま微睡みかけたそのとき、博士が僕の下腹部にそっと手を回してきた。
「はかせ……なにして、」
「……セックスしたい」
「…………いいですよ、」
「珍しいね、いつもは嫌がるのに」
「したくてしょうがないんでしょう?」
「うん……けど、」
「……?」
「國弘くんが学科決めるまで我慢する」
「……、あんたから言い出したんでしょ……」
「えー?國弘くんセックスしたいの?」
「……学科決めます」
「……ふふ、どこにしよっか」
「……は?」
朝早くから突然部屋に入ってきてそんなことを言う博士。大学受験?高校も卒業できてない僕になぜ大学を受けさせる必要があるのか。
「あの、僕大学行く気なんてないんですが……まず高校出てないし」
「それは知ってるよ!記憶を見たんだからね」
「知ってるんだったら何でまた……」
「……そういや國弘くんには仇討つってしか言ってなかったね」
「え?」
「前記憶を見せてもらった時のアレだよ」
「あぁ……アレですか」
以前、僕は博士の作った(のかは定かではないが多分作った)機械によって、少しだけ彼に記憶を覗かれたのである。記憶を見た途端、急に博士は出掛けていったので状況がまるで読めなかったが、何故今更。
「あのときどこ行ってたか教えてあげるよ」
「……どこなんです?」
「君の、元住居だよ」
「……え、何で」
博士の口から信じられない言葉が。何故、彼は僕の……親戚の家なんかに行ったんだ。意図が読めない。
「思い出したくないだろうけど……國弘くんの親戚は、お母さんやお父さんの遺産をすべて持っていってたんだよ……とりあえず國弘くんに入るはずだったお金はすべて僕の口座に振り込んでもらったよ。全部」
「……かなり生々しい話ですね、」
「まぁ僕の手に掛かればこんくらいはチョロいね、あと國弘くんが成人になるまでの養育費も、月一度僕の口座に振り込まれていくから」
「うわぁ……」
更に告白される信じがたい話に、僕は疑問というより意味が分からなくて曖昧な返事しかできなかった。まず博士は僕の親戚に何をやらかしたんだ。確かに悪い人だったがお金を踏んだくる博士もなかなかの暴君である。
「だから國弘くん大学生になろう!お金はいっぱいあるんだよ!」
だから何故そうなる。金にもの言わす気かこの人は。
「お金の問題じゃない!頭がないんですよ僕には!」
「あるじゃん、白銀に輝く麗しの髪にルビーのように暖かでありながらも攻撃的な光を湛える瞳……」
「何ですかその文学くさい表現は……そういう意味じゃなくて、僕勉強できないんです」
「え?國弘くん頭良さそうな顔してバカなの?」
「……えぇ、バカですよ」
直球でぶちこんできたこのデリカシー無し男に苛々を募らせてもしょうがない。この人は多分ろくな理由もなく僕を大学に送り込もうとしている。行ってたまるか。
「じゃあ僕が勉強教えてあげる!」
「……博士、」
「何?國弘くん」
「……僕の将来に大学は必要でしょうか?」
「いるよ!」
「何でですか?だって僕の将来の夢は……」
「?」
本当は恥ずかしくて死にそうなくらいだが、大学受験なんてめんどくさいことはしたくない。僕はこう言うことにした。
「博士の、お嫁さんなんですよ……?」
「ッ國弘くん……!」
「だから博士、僕は毎日博士のために部屋を掃除したり洗濯をしたりして、あたたかいご飯を作って……夜には、えっちしたりするのが……僕の将来の夢なんです、だから大学なんて」
「それとこれは関係ない!けどえっちはしよう!毎日!」
「…………」
「明日から勉強だからね!」
「…………はぁ……」
何でそうなる。恥を忍んで頼んだというのに。明日は部屋の掃除してやらない、そう思ったけど。
「……僕の行ってる大学だから、ね?」
「…………」
「入ったら、一緒にキャンパスデートしよ?」
「……ッ、分かりましたよやればいいんでしょやれば!」
僕はこの男の提案、お願い事にどうも弱いようだ。
†
「國弘くんはねー……学科は何がイイ?僕が入ってる授業は……機械工学Ⅰ・Ⅱと、生物学Ⅰ・Ⅱ、あと……」
「なんかもう訳がわからない次元です、生物学ならできると思うんですが……」
「君たまに剥製作ったりしてるもんねェ……薬学とかどう?」
「絶対無理です」
「むぅぅ……」
博士はベッドの上に腰掛けて、股の間に僕を座らせて大学のパンフレットをぺらぺらと捲っていく。雰囲気は楽しそうだから自分の見た目がまた好奇の目に晒されるのかと思うと憂鬱になる。博士はそれを知ってる筈なのに。
「何か一番楽そうなのがイイです」
「それじゃ行く意味ないじゃん」
「行く気ないんですけど」
「じゃあ無理矢理にでも行く気にさせたげる!明後日オープンキャンパスあるから無理矢理にでも連れていく!」
「……めんどくさいなァ」
「めんどくさいとか言わない!」
博士の胸にぽすっ、と凭れる。はぁと溜め息を吐けば、博士が肩に顎を乗せてきた。
「くにひろくんあったかいね」
「博士もあったかいですよ」
「あー……やっぱり大学とかめんどくさい?」
「……まぁ、めんどくさいというか見た目でよく虐められてたので……またそういうのがあったら嫌だなぁって……」
「大学はそんなことないよ、いろんな髪色の人がいるし、いろんな国の人が学びに来てるから……國弘くんの過去を考えたらやっぱり、友達作って欲しいなって思ったんだ……」
「……博士、」
首を動かして博士の方を見ると、ね?と微笑みかけてくる。彼は僕自身よりも僕のことを考えていてくれた。それがとても嬉しくて、ただそれを言葉にするのは恥ずかしいので、今日もそっけないことを言ってしまう。
「……案外まともなこと言えるんですね」
「案外って何だよ!」
「……いつもふざけ散らかしてるので、ちょっと吃驚しました」
「散らかしてはない!僕は部屋しか散らかさないよ」
「……、そんなあなたが大好きなんです」
「ッ……ありがとう、僕も國弘くん大好き」
だけど結局、こうやって博士に強く抱き締められて甘えてしまうのだ。服越しに彼から伝わる体温が心地よくて身を委ねる。あまりにも気持ちよくてそのまま微睡みかけたそのとき、博士が僕の下腹部にそっと手を回してきた。
「はかせ……なにして、」
「……セックスしたい」
「…………いいですよ、」
「珍しいね、いつもは嫌がるのに」
「したくてしょうがないんでしょう?」
「うん……けど、」
「……?」
「國弘くんが学科決めるまで我慢する」
「……、あんたから言い出したんでしょ……」
「えー?國弘くんセックスしたいの?」
「……学科決めます」
「……ふふ、どこにしよっか」
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