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私と恋人。
捧げる薔薇。-ママ視点-
しおりを挟む冷静になる、なんて到底無理だったから、今出来そうな事を考えることにした。
ユーリちゃんを起こして、ラグエルが迎えに来る前に逃げてしまおうかしら、なんて思ってしまう。だけどそんな事をして、ユーリちゃんが本当に消えてしまったら、私のせいだ。彼女が居ないなんて、生きていける気がしない。
何か手立てはないのかと、メールもう一度読み返してみると、少なくとも消えない術がある様だったし、一度ユーリちゃんから引き離されてしまうのは定めなのかもしれない。
短い時間でも離れるのが惜しいぐらい、私はどっぷりとユーリちゃんに依存してしまってるのに、一人になってしまったらどうしたら良いのだろうか。
数時間後の事を思い浮かべると気が狂いそうだ。彼女の愛を知ってしまった心にはぽっかりと穴が空いてしまうに違いない。だけども、いつかまた会えるなら、、、
「はぁ、、、」
胃がキリキリと痛くなる。睡眠時間の短さは確実に悪化するだろう。起きている時間で、大天使としての仕事とBARでの仕事に明け暮れれば彼女の事を少しでも忘れる事が出来るのだろうか。この数日、片時も私の脳内から離れることもなかったのに。
こんな状態になっても、不思議と恋をしなければ良かったとか、ユーリちゃんに出会わなければよかったとか思わないのは、やっぱ強い愛なのよね。
彼女と出会って、何一つ代わり映えのしない毎日が、楽しく思えた。好きでもない仕事も、ユーリちゃんが待っているなら、と頑張れたし、BARも前より活気を見せた。それに、他の天使達とも昔の様に馬鹿騒ぎするのも悪くないなって思えたのよ。
「ユーリちゃん。私、もっと仕事頑張るわ。民を守って、天国を守って、そして、貴女を必ず幸せにするの。今一度そう思えたのも、貴女と出会えたからよ。ありがとう。」
深い眠りについている彼女の頬をそっと撫でた。
チリっとした痛みと共に、薄らと浮かび上がる透明な薔薇は嫉妬心に火をつける。
ユーリちゃんが“成れの果ての者”であるなら、これを付けた奴の正体は、、、目星はついたし、後で消してもらおう。
「でも、私だけの誓いを刻んでもいいかしら?」
---------------
無我夢中で誓い、気がつけば多くの薔薇が咲き誇っていた。
喉、首筋、腕、手のひら、胸、腰、太腿、足の甲、爪先に、その誓いの印は鮮やかに色付いている。
暗闇の中で、月光を受け光り輝く薔薇の印。それは、この世の中で他では見る事の出来ない特別な花。狂おしい程に愛おしく、独占していたくなるそれは、私の恋人にしか咲かない。
瞳と同じ色の印、何度見てもこの世に咲く花の中で一番美しいそれは、花としての形を持たない。私だけの、ユーリちゃんの為の証。
「喉は、欲求。
首筋は、執着。
腕は、恋幕。
手のひらは、懇願。
胸は、所有。
腰は、束縛。
太腿は、支配。
足の甲は、隷属。
爪先は、崇拝。
って意味があるのよ。こんな独占欲丸出しじゃ、ユーリちゃんも苦笑いしちゃうわよね。、、喜んでくれるのが一番良いのだけど。」
勿論、左手の薬指にも付けようと思ったけれど、此処は私がプロポーズして、彼女の気持ちをもう一度聞いてからよね、、と思って諦めた。
ふう、と息を吐いて改めて私の証だらけの彼女を見る。これだけ残しても、ユーリちゃんは、、、。
額に咲く薔薇を撫でると、口から弱音が溢れる。
「ねぇ、ユーリちゃん。もしもの話よ。もし、朝日が登って、貴女が此処から居なくなってしまったら、、、必ず探し出して見せる自信があるわ。」
彼女の力の入っていない手に指を絡ませると、ふんわりと優しく握られた気がした。
「だって、こんなにも誓いの印を贈るぐらいに愛してるのよ。貴女の事を誰よりも愛してる私が見つけられないなんてあり得ないでしょう?」
視界が歪んで、目尻に熱い液体が集まっていく気がした。声も頼りないぐらいに震えて、こんな姿、貴女に見せたくないのに、、止まらない。
「好きよ、誰よりも貴女の事を愛してると誓うわ。これから先もずっとずっと、私の全てを貴女に捧げるから、、お願いよ、、お願いだから、、」
ぽたりと零れ落ちた。溢れたそれは、薔薇を潤す様に流れ落ちていく。留まって貴女の身体の一部となれば良いのに、と薔薇に染み込ませる様に撫でると、広がって消えていく。
「消えないで。俺のところに戻ってきて。」
今はただそれを願うばかりだ。
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