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私と恋人。
美しい彼女。-ママ視点-
しおりを挟む水が入っていたグラスをテーブルに置いた。真っ暗な空間に異様にキラキラと輝くグラスは、私が現地に出向いて仕入れたお気に入りの物。
やけに家が暗いと思ったけれど、それもその筈。家に着いた頃にはまだ日が登っていたのに、窓の外を見ると、もうすっかり日が暮れている。少しやり過ぎたわね、と反省しつつも、可愛すぎる彼女が悪いんだとか、自分の都合の良いように解釈して頭を落ち着かせる。
「本日は休み、っと。」
BARの扉に休みの立て札を掛けて、リビングの方に戻れば、意識が戻ったユーリちゃんがソファーから身体を起こしてこちらを向いていた。
暗がりの中で見る彼女も美しい。大きな瞳は長い性行為に疲れたのか、寝起きだからなのか、とろんとしていて色っぽい。下着とかパジャマとか着せてあげたかったけど、挑戦して挫折してしまった。私のTシャツを着させただけの彼女の小ささを見て、胸を込み上げる何かにきゅんっとして苦しくなる。
「ママ、、??」
「なーに、ユーリちゃん。」
彼女の声に誘われて近づき、隣に腰を下ろせば、こてんと柔らかい身体を預けられて、ドキドキした。さっきまでもっとドキドキしてしまう事をしていたのに、素面の方が胸が苦しくなるのは、理性が働いているだわ。ユーリちゃんは、私の腕に自分の腕を絡ませて、キュッと手を握った。
、、そんな可愛い事されると、心拍数が上がり過ぎて死んでしまうわよ。なんて言葉にせず、ユーリちゃんの言葉を待った。
「、、触れてたかったの。」
思わぬ言葉に、握られていない方の掌で拳を作って胸きゅんに耐える。この子は、何度私の理性を飛ばして犯されれば気が済むのかしら。私だって、まだまだ沢山触れてたい。エロい事をしなくても、ただ貴女に触れてたいわよ。だけど、そんな事してたら私はすぐにエロいことしたくなってしまうし、ユーリちゃんを壊してしまうかもしれないのに、そんな矛盾で頭がいっぱいになる。
「ママ」
呼ばれて顔を向ければ、ちゅっと唇に温かいものが触れた。思考停止して固まっていると、ちゅっちゅっと何度かキスされる。こういう時だけ甘えん坊なのもずるい。そんなの抜け出せないぐらいハマってしまうに決まっているじゃない。ユーリちゃんしか知らない私には、刺激が強すぎた。
口の形が“好き”と描いたときには、今度は私から唇を奪っていた。
しばらく唾液を交換し唇を離すと、繋いだ銀色の糸と、熱帯びた瞳に視線が囚われる。ふわりと笑う彼女は、今まで観た何よりも美しくて、やっぱり自分だけの女で居てほしいと強く思った。
ユーリちゃんと出会うまで知らなかった、自分の中の愛が、全て溢れ出してしまいそうになる。最も、彼女の額に咲かせた印が、どの愛よりも重たいのは承知だ。咲くたびに、満たされる。もっと沢山の場所に咲かせて、俺だけの女だって見せつけたくなる。
「ママ、すごくえっちな顔してるよ。」
「え、あ、、」
ふふ、とユーリちゃんに指摘されて、私欲に溺れ過ぎた思考が戻ってくる。余裕のない私を知るのは彼女だけだけど、それでも指摘されるとやっぱり恥ずかしくて、顔に熱が集まる。
「よ、余裕のないところ見せちゃったわ、、恥ずかしいわね。」
「んーん、ママのそういうところも私は好き。」
ドキリと跳ねた心臓が、慣れない刺激に痛む。素直な彼女に、心臓を鷲掴みされているようだ。
「もう、ユーリちゃんったら。」
男臭い姿を見せるのも貴女だけだ。そう思いながら、さらりと髪の毛を撫でた。
-----------------
隣で眠る彼女を撫で、私もそろそろ眠ろうと思った。もともと先陣を切って戦闘しているような筋肉馬鹿なだけあって、今でも睡眠時間は長くない。だけども、ユーリちゃんが私の隣で眠るようになってから、2、3時間は長めに寝れるようになった。
大した用事でもない連絡しか来ない携帯はなかなか開くことは無いけれど、ユーリちゃんの写真で埋まったフォルダを見るのは毎日の日課。今日も寝顔を収めて、、、と携帯を眺めていると、クシエルから連絡がきているのに気付く。
[クシエル:なぁ、ジフリール。お前の女、、、“成れの果て者”らしいぞ。明日、ラグエルが引き取りに行くって言ってた。]
「は?」
よくわからない文章に、思わず頭を傾げて、声が出た。成れの果ての者、、?ラグエルがユーリちゃんを引き取る??全然理解できなくて、脳内が混乱する。
まさかと思って、ラグエルから来ていたであろう連絡を開くと
[ラグエル:ジフリール、やっと彼女が出来たらしいな。ウリエルがはしゃいで言いふらしていたぞ。、、おめでとう。親友として、お前が幸せにしたいと思う女が見つかった事がとても嬉しい。是非とも今度会わせてくれ。]
[ラグエル:ジフリール、お前の彼女は森で出会ったというのは本当か?その女は本当に民なのか??もし、悪魔だったらどうするんだ。大天使が欠けることは絶対に避けなければならない。特に、最大の戦闘力でもあるお前の首が取られるような事があっては困る。疑っている訳じゃないとは言い切れないが、こちらで調べさせてもらうぞ。]
[ラグエル:ジフリール、いい加減携帯を見てくれ。ハニエルが全部吐いた。ジフリールの恋人は、成れの果ての者だ。悪魔じゃないのは分かったが、そのままでは消えてしまう。どちらにせよこちらで一度引き取る。]
深呼吸した後、携帯の画面の明かりをそっと消して、ユーリちゃんの顔を見つめる。
貴女が成れの果ての者。いつか夢に出てきたことは本当だったのね。脳味噌は酷く混乱している筈なのに、なんだか納得している私がいた。
記憶喪失は嘘だったとか、彼女が民じゃないとか、もうそんなのもうどうでもよくて、自分の元から、この世界から、消えてしまう事が嫌だと思った。繋ぎ止めていたい、出来ればずっと側にいて、、、守らせて欲しいって約束したのに、、俺はただ消えてゆくだけの彼女を見守る事しか出来ないのかと思うと、歯痒くて鼻の奥がツンとする。
「やだ、ユーリちゃん、消えないで。」
俺の小さな叫びは、夢の中の彼女には届かない。
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