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Cadenza ルの力 ③

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「団長の事でご相談があります」
「私もよ、貴女が…」
口が止まり、視線を一瞬だけ地面に向けた?
「思い描く策については止めておきましょう、虫の気配がします」
っげ、どこに?私じゃまったくもって!?気が付かないんだけど!?
叔母様はこえぇなぁ、どんだけ…気配に敏感なのだろうか?
「なので、言葉について多少なりとも配慮なさい、私達は今、優雅にお茶会をしている真剣な話ではなく昔話をしましょう」
「はい、そうさせていただきます叔母様」
ここからは、腹芸を全力で活かせってことですね!
「叔母様はあの時、どんな事を思い描ていたのですか?」
「あら、ストレートに聞くのですね、はっきり言いましょう、何も覚えていないわよ」
成程、加工されている間の記憶はないってことか
「左様でしたか、些事も些事っということですね」
「うふふ、ドタマかち割るわよ?」
直ぐに視線を叔母様からそらしてしまう。
叔母様?此方も流す為に些細な事ってしたいのですけど?殺気を向けないでくださいまし?
「冗談よ、あの辺りの出来事は些事ではないけれど、私が得られた経験なんて何もないわ」
殺気が消えたので、胸を撫でおろしながらテーブルへと視線を向けなおすと
そっとテーブルの上に手を置き人差し指を伸ばしてくるので、音を立てることなくそっとテーブルの上に手を置き手のひらを表にすると人差し指が触れる
『私がこいつの中で静かに研究し続けてきた内容よ持って行きなさい』
指先から伝わってくる悲しい…自分の記憶が削られていくっという忘れたい記憶が流し込まれていく
その仕組みや、やり方を理解すると同時に吐き気が湧いてくる。
吐かない為に紅茶のカップを手に取り胃へと流し込む、甘い感覚が癒しとなって吐き気を抑え込んでくれた。
砂糖多めで良かったかも…

それにしても流石は叔母様、自身に施された辛く悲しい記憶をしっかりと分析しきっている。
…下手すると、私でも…いや、やめておこう。このデータは私の中だけにとどめておこう。
「加工業者も落ち着いて仕事をしてほしいものですね、荒々しいのは商業として正しくないと思いません?」
「あら?自分が子飼いにしている事業のこぼれ話かしら?そうね、私としてもそういった作業は丁寧にしてほしいわね」
きゅっと手のひらが抓られてしまう。言葉を間違えたか。
「そんな業者に対するご意見を頂きたいのですが」
「あら?そうね、今度気が向いた時に書にでもしたためておきますわ」
『先ほどの内容では薄いってこと?これ以上の事は知らないわよ?』
むぅ、そうですか、叔母様的に団長の体がどの程度、妖精に近づいたのか、予測できるのかな?
「その業者が混合物を用意しまして、叔母様的に混合物の内訳などをご測量願えたり、します?」
「そんな専門的な事、私がわかるわけないでしょう?」
『憶測よ?魂の楔は消えてそうね、でも、愛する息子…いいえ、娘の体を構成する因子は人ではないわね、半分?いいえ、全てよ』
…そっか、私と同じ判断結果だね、手遅れだったのかな?
「そうですか、その指摘は遅かったですか?」
「私に聞かれましてもね?貴女が遅いと思われたのでしたら、訂正すればいいだけでしょう」
『仕方がないわ、あんなの…彼女を繋ぎ止めれた、それだけでも奇跡…いいえ、貴女の貴女達の歩んできた道、故ね、誇りなさい。あの子が人であると願い続ける限りあの体は人として生きるわ、でも』
人を辞めると強く願えば
「そうですよね~、強く打診してみます」
「それがよろしいのではなくて?」
『大丈夫よ、あの子は人として生きる、妖精としての力を使わざるを得ない時だけ使うでしょうね』
むぅ、その結果、彼女は人を止めざるを得ないことにならないかな?
「今のままで混合物を除去する方法って考え付いたりします?」
「専門外の事をお聞きになるのですね?素人判断で宜しければ、分離工程を行えばよいのではなくて?」
『無理よ、あの邪法、私も知らないわね、邪法には邪法、貴女の方が詳しくなくて?あるのでしょう?人の魂を移す術』
んげ…叔母様何処まで知ってるんだろう?
「新しい精肉のこともご相談しておきたいのですが、新しい精肉方法はお聞きになりまして?」
「そうねぇ…お聞きになっていないけれど、書物は閲覧させていただいてますわよ」
…私の研究している書類を読んだってことかな?
『そうよ、貴女の禍々しい断罪されるべき畏怖べき研究、見つけれるだけ見つけて読ませてもらってるわよ、神を恐れないの貴女?』
殺気を込めて意識を飛ばさないでください怖いです。
「叔母様は、新しい精肉方法は宜しくないって思いですか?」
「それで救われる人が居るのであれば、良いのではありませんか?世論が反論したのであれば、やめればよいだけです。その間に採算をとれば良いのではなくて?」
成程、バレたらもみ消せってことですね。
考えが私よりで何よりです
『っで、誰と誰の肉体を精製しているの?』
「いえいえ、今はまだ研究途中でしてまだ着手しておりませんわ」
「あら?そうなのね、では、あれは机上の空論でしたか」
オホホホっと笑ってくれているけれど目が笑っていない、隠すなよっと強い意志が伝わってくる。
「それでは、今は何もしていないのですか?」
『本当の事を言いなさい、隠し事はなしよ?良いわね?』
本当のホントに、今代の私は肉体を精製していない…
培養液なども左程、ストックを用意していない。
たぶん、戦いに備えていると判断されないために…だと思う
「始祖様に誓って何も進めていません、この研究は私が居なくなってから誰かが引き継いでくれるのではないでしょうか?」
「そうなのですね、では、世間に公表することなく消えていくのかもしれないですわね」
『そう、残念ね、貴女の事だから貴女と団長、その二つの肉体を最低限、用意していると思っていたわ』
今代の私がどうして、培養していなかったのか私も疑問だった。
彼女の記憶が混ざったからこそ、何となくだけど、推察したのが

たぶん、団長と一緒に造り出したかったんじゃないかな?
私が全部用意するのは良くないって思っていたんじゃないの、かな?

この辺り、私自身も良くわかってないんだよなぁ?
今代の私は何を想って何を警戒して用意しなかったのか?
団長の事を思いやっての考えと、後は、愛する旦那が目覚めてから進めようと思っていたの、かも?
旦那の肉体と団長の肉体を同時に造って、二人同時に魂を移動させるっとか?
下手に片方だけやっちゃうと…ぁ、そっか、そういうことか。

今の団長の体を愛する旦那に渡したとしても鍛え上げる時間が無い
かといって、男性の体に団長の魂を残したとしても団長からすれば、どうして技術があるのに女性の体を作ってくれないのかって疑問が生まれ、心を蝕んでいく。
それを見逃すほど敵は甘くない、そのストレスをきっかけとして団長の心が耐え切れなくなるほどに追い込んでいく。

二人の体を用意したとしても…それを見逃すほど、敵は甘くない。
空っぽになった器に敵が干渉し、空っぽの器が妖精として目覚める恐れがある。

出来るけれど、できなかったんだ…
でも、それでもさ、もしもに備えて、用意しとけばいいじゃん?
いや、まてよ?敵の技術、そう魂を…
ああ、そっか、敵は魂を操り加工する術がある、っとなれば、培養して長期保管は危険ってことか!
空っぽの器に干渉され奪われる危険性があるってことね。

どの道、用意は出来ないんだ。

だから、スピカは…培養せずに産んでもらう選択肢を取ったってこと、だよね?

今代の記憶が蘇ったとしても全部が全部綺麗に順序だてて理解しているわけじゃないから、記憶の順序だてが難しい。

「もう不出来な平民のお話は終わりかしら?」
「いえ、まだあります、歌についてです、叔母様は…妹様はどんな歌を歌えたのですか?」
終わった話だとしても、もしかしたらがある、私だって…お母様に、お母様の心に触れたい。
お母様は才能があるのだとすれば、あるはずなんだよ、もしかしたら、私が感じ取れていないだけでお母様の歌が私の中にあるのかもしれない
『残念ながら皆目見当がつかないわね、そもそも、教会の中でもルの力に目覚めた少女は殆どいないのよ?』
…ぇ?それじゃ、破邪の歌や、相手を繋ぎ止める鎖の力、相手を狂おしく我が身を焦がすほどの炎の力などは、誰も?
「聖歌や、相手を繋ぎ止めたい別れを惜しむ歌や、相手の事が好きで好きでたまらない歌は、誰も歌わなかったのですか?」
「ええ、そうよ、誰もそんな歌を歌った事なんて無いわ、私の知る限りではね」
…だとすると、楽譜って…もしか、して…

死後、自分たちの命が尽き果てる直前、魂を寵愛の加護に刻む為に歌としてのこ、した?
それ、が…ルの力と混ざって術式として刻みこまれた?

だとすれば…この歌は、無念の歌?願い叶わなかった人達の悲願の歌?

だとすれば、恋をしって愛が結ばれ、子を生したことで、お母様は満足、していた、ってことになる?
そう、なると…お母様を救いたいっていう私の願いは、押し付けになる?

幼き頃に夢描いた…求め止まなかった願いは…
子供達に言った音が私に刺さってしまう。押し付けてはいけない…

「私達は、そういった事に関しては他者よりも上手でしたのよ、なので、新しい歌を歌った人もいない事も無いけれど、多くの方に受け入れられる様な歌は生まれなかったですわね」
『私が知る限り、教会として聖女が目覚めた術式のまとめならあるわよ、受け取りなさい』
流されていく内容…その内容がとてもチープすぎて、これは…っと、つい弱々しいと思ってしまった。

受け取った内容が…

蝋燭ほどの火を灯す
手のひらから幾ばくの水を精製する
頬を撫でる程度の風を指先から放つ
擦り傷程度の傷を塞ぐ
土を小指程度の高さまで隆起させる
痛みを緩和させる
興奮した動物を落ち着かせる
遠くを見ることが出来る
声を遠くまで飛ばすことが出来る
テーブルの上に置いたコップを少しだけずらすことが出来る
冷たい吐息が出る
などなど…どれも、私が術譜に刻み込んだ歌の内容ばっかり。
更には、この歌を調整して改良して、魔道具として販売していたから、知っている内容。

でも、これが誰の歌なのか、誰が考案した歌なのか…私は知らない。
もしかすると、このどれかがお母様の歌、っという可能性もある…のかな?

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