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Cadenza 花車 ⑳
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「この体の感覚掴めました、次のステップへとお願いします」
澄み渡っていた声に闘志が混ざり込む。
その台詞、やっぱり理解していたか。
今回の改造術、ただただ、肉体が強化されただけではないってことに。
肉体能力を向上させることが目的の最終地点ではないって気が付いている。
もしくは、ベテランさん達の動きを遠目で見てたのかも?
だとしたら、彼女であれば一目見てある程度、理解してそうだね。
「それじゃ早速、始めて行こうか、そこの木箱にあるやつで持ち手に付けれる様な筒状のやつ、わかる?取れる?」
「はい」
小さく頷いてからつま先で優雅に体の向きを変え木箱の方へと一歩歩き出そうと足首を曲げたがその先の動作が無く止まる。
「こちらですね」
いつの間に…彼の気配を消す能力は断トツ、気配を消すっと言うかその場の空気に紛れ込むっていうか、その場に居ても何一つ違和感を感じさせない。
そんな稀有な能力を有している人物が木箱から取り出した魔道具を渡しに綺麗な所作で近づいて来てくれる、近づくにつれ見えてしまう彼の表情が今まで見たことが無いくらい曇っていない。
晴れ渡る空、悠然と輝く月のように白く聡明だった。
良い顔をするじゃん。若き頃、私に助けを求めてきた心弱きボンボンじゃないんだね。
「ありがとうございます、その様な雑務をしていただけるとは感謝の極みにございます」
綺麗で優雅な所作で目の前の人物がどの様な人物なのか直ぐに悟ったのか、渡された筒を受け取りその所作に応えるように貴族として丁寧なお辞儀を返してる。
その動きにやってしまったかと照れた笑みを浮かべてから気恥ずかしそうに此方を見て
「では、僕も扱い方のレクチャーを教えてください、この街の騎士部隊を先導するただの騎士である僕に、お願いしますね我らが司令官様」
即座にちょっとした訂正文を混ぜ込み、遠回しに彼女にも言葉を投げかけながら、されど身に染みた優雅さを保ちながら丁寧に小さくお辞儀をしてくる。
お辞儀が終わり顔を見せると先のような照れた顔ではなく教えを乞う弟子のように師匠の全てを観るように真っすぐに此方を見てくる。
本当に、心が強くなったね…
彼の成長を歓び、彼の想いを受け止め、司令官として先へ進めよう。
「っじゃ、始めようか」
目の前にいる己の全てを背負いし二人に、戦士として最後の境地へと導いてくれる彼らの為だけに用意したと言っても過言ではない魔道具、その使い方を説明していく。
説明の合間に、次の私が起すべき行動が来たのだと心に思考が投げかけてくる。
彼が来たということは、次は、団長の番ってことだよね、なら、No2を…お母さんをサポートできるのは誰が居る?私以外なんてあり得ない。
私がいかないと誰が愛する妹彼女に改造術ができるのかってことだよね。
思考が後押ししてくる、心がそれを嫌がっている、前へ進む勇気が私には足りない。
でも、もう、戻れない、戻れないのなら見届けたい、この手で彼女の未来を…その咎を私は背負いたい。
思考だけでなく心も納得した瞬間、少しでも早く彼女達が待っている病棟に急いで向かいたいという衝動が湧き上がるが、冷静な思考が踏みとどまらせてくれる。
私が席を外しても大丈夫な段階まで彼らに、丁寧に伝え忘れなく魔道具の使い方を説明しないといけない。
指導者として、開発責任者として、最後のプランを考えた者としての責任がある。
指導し続けていると飲み込みがとっても早い優秀な二人なだけあって、凡その動きが出来るようになるのが早かった。
この段階であれば戦士四人、お互いの学びをディスカッションして次へと進めてくれるでしょう。
ね?偉大なりし戦士長?
彼の座っていた椅子に瞳を向けると大丈夫だよっと、肩を叩かれたような気がした。
その大きな手のひらから伝わってきたことにより私は憂いなく前へ進めれる。
「ごめんだけど、私は一旦、席を外すから後は各々で訓練していてもらってもいいかな?」
感覚を掴んでしっかりと魔力を飛ばさせれるようになってきている二人に声を掛けると
「・・・」
熱中しているのか集中力が高まりすぎているのか小さく頷くだけだった。
二人の心配ないという声ではない想いを受け止め
車椅子のタイヤを掴んで転がしていく。
修練場を出る時にすれ違った術式研究班や研究塔の人達、彼らが持っている魔道具を見て、その後の心配も消える。手配ばっちりだね。
車輪を動かして向かうは病室
愛する人達が待ってるからね。
指導者としては、戦士達が修練場で各々、最後の鍛錬を繰り返していくのを見届けたいけれど、私には私の仕事がある。ううん、これは私の我満。
後ろから聞こえてくる音に好奇心が擽られてしまう。
後ろを振り返りたくなる衝動は研究者としてなのか、皆の事を見守りたいのか、よくわからない感情が少し尾を引いてしまう。
だとしても、感情が留まるわけにはいかないと腕を動かし続ける。
進み続ける、最愛の妹、その未来をこの手で殺すのだとしても
私は迷わない
愛する人達の未来へと向かって船を動かすように漕ぎ続ける。
車椅子の車輪を掴みひとつ漕ぐひとつ回す…
車輪を一周させるごとに、己の感情を殺していく。
長い永い…道のり、歩けないってのはこんなにも困難なのかと頭を俯かせて息を切らせて腕や手のひらが痛くなろうとも、前へと進み続けて病棟の前に到着すると「姫様!?」可憐な華の音が聞こえてくる、顔を上げるとメイドちゃんが駆け寄ってくれる
「待っていてくれればお迎えに行きましたのに!!」
急ぎ足で後ろに回ってくれるので手を車輪から外すとゆっくりと車椅子を押してくれる。
長い永い、永遠に続くのではと感じてしまう車輪が動き出す。
私の意思から解き放たれ街の意思にゆだねるように背もたれに体重を預け、息を整える。
直ぐにでも愛する人達がいる場所に通されるのかと思いきや
病室の中に入って直ぐに炊事場に案内される、それが何を意味するのか解らない私じゃない、そうだよね、これからの事を考えると綺麗にしておかないとね。
手を伸ばすと、湿らせたタオルで手を綺麗にしてくれる。
「では、団長の元へまいりましょう」
手を綺麗にした後は間髪入れずに車椅子を押されていく。
彼女に何も言わなくても指示を出さなくても進んでいく
私の時のメイドちゃんもこれくらい、何も言わずにしてくれたらなんてのは言いっこなしだね。
車椅子が押され通されたのが、納得の場所、休憩室。
そうだよね、物凄い速さで戦士達を改造したのだから、二人だって疲れ果てるよね。
なら、後は、最後は、私一人が背負うよ、お母さんに娘を改造なんてさせたくないもんね。
「はいりまーす」
はーいっという小さく消え入りそうな音と同時に中に入ると
「おかえりなさーい」
ぐったりとベンチの上であおむけで寝ころんで天井に向かって手を振っているNo2と横向きで静かな寝息を奏でている団長の姿があった。
部屋の中は予想通りすぎた。
そうなるよね、簡単な内容とはいえさ、4人のために意識を水の中へとダイブさせ続けたんだもん、そりゃぁ、疲労困憊になるよね。
仰向けで寝ころんでいる人に向けて労いの声を掛ける
「だいぶ急ピッチで終わらせたんだね」
「そーよー、何度も説明するのって貴女嫌いでしょ?説明するのなら全員一緒の方がいいでしょー?」
天井に向かって伸ばされていた腕は彼女の額の上に落ち、腕が動かなくなる。
「急いでくれてありがとう、戦士達は各々、最後の訓練にはいったよ」
彼女たちの頑張りのおかげで彼らが修練を積む時間がたくさんとれた、一日、戦士達の為に時間を設けようかと思ったけれど、1日、そう、この状況下で1日はとても大きい、1日早く歩を進めれる。
「…そう、なら、私も後で顔を出さないといけないわね、少し休憩をしてから…最後の施術を行いましょう」
消えていきそうなか細い声にうんっと頷きたいけれど、これ以上の無理なんてさせられない。
予定ではNo2がメインを担当する予定だったけれど、うん、私一人でもなんとかなる、女将がくれた魔力がまだ私の中に鎮座してくれている今なら出来る気がする。
それに、よくよく考えたら、私と団長の魂っていうか、記憶はもう混ざりに混ざってるから、何も問題なんて無い。
「いいよ、お母さんは寝ていて」
後は私がやるから
「そうもいかないでしょ、貴女一人でやらせるわけにはいかないっ!でしょ」
直ぐにでも始めようとしているのが伝わってしまったのか、ベンチから体を起こし
「魔力…ちょっとだけまってなさい」
ベンチから立ち上がり、かなりきついのか、ふらふらと体を揺らしながら歩き出し魔力回復促進剤を複数本取り出して次々と蓋を開け飲み干していく
空っぽになった瓶を並べ目を閉じ
「これじゃ、足らないわね、小娘、手筈は整えてくれてるわね?」
「はい、勿論です」
メイドちゃんに確認を取る。
手筈?
既に何かしらの準備をしていたのだろうかと首を傾げる間も無く
「では、皆さまお願いします」
ドアの外に向けて声を出すと部屋の中に次々と医療班が入ってくる。
入ってきた人達を見てどのような準備をしていたのか直ぐに理解する。
すべてが女性ってのは、そういうことなのだろう
「みんな、協力ありがとうね」
入ってきた医療班が誰なのか確認している間に、No2は準備の為に上着を脱いで上半身を露にしながら申し訳なさそうに部屋に入ってきた人達に声を掛けていると
「この日の為に私達は魔力譲渡法を訓練して来たのだと思っています」
「そうですよ!さっき来た戦士の方には申し訳ないですけど!魔力は、医療の為に!明日の為に!」
「私達よりも姫様達が魔力を宿した方が未来の為!ですからね!」
「そうです!この先の事も私達は覚悟してます!」
「です!魔力を回収する魔道具に毎日限界まで魔力を注ぐ覚悟だってできてますから!」
全員が医療班としての覚悟を述べながら上半身の服を脱いでいく。
医療班の皆はそこまで出来るようになっていたんだ。
「みんなの魔力、頂戴ね」
「「はい!!」」
澄み渡っていた声に闘志が混ざり込む。
その台詞、やっぱり理解していたか。
今回の改造術、ただただ、肉体が強化されただけではないってことに。
肉体能力を向上させることが目的の最終地点ではないって気が付いている。
もしくは、ベテランさん達の動きを遠目で見てたのかも?
だとしたら、彼女であれば一目見てある程度、理解してそうだね。
「それじゃ早速、始めて行こうか、そこの木箱にあるやつで持ち手に付けれる様な筒状のやつ、わかる?取れる?」
「はい」
小さく頷いてからつま先で優雅に体の向きを変え木箱の方へと一歩歩き出そうと足首を曲げたがその先の動作が無く止まる。
「こちらですね」
いつの間に…彼の気配を消す能力は断トツ、気配を消すっと言うかその場の空気に紛れ込むっていうか、その場に居ても何一つ違和感を感じさせない。
そんな稀有な能力を有している人物が木箱から取り出した魔道具を渡しに綺麗な所作で近づいて来てくれる、近づくにつれ見えてしまう彼の表情が今まで見たことが無いくらい曇っていない。
晴れ渡る空、悠然と輝く月のように白く聡明だった。
良い顔をするじゃん。若き頃、私に助けを求めてきた心弱きボンボンじゃないんだね。
「ありがとうございます、その様な雑務をしていただけるとは感謝の極みにございます」
綺麗で優雅な所作で目の前の人物がどの様な人物なのか直ぐに悟ったのか、渡された筒を受け取りその所作に応えるように貴族として丁寧なお辞儀を返してる。
その動きにやってしまったかと照れた笑みを浮かべてから気恥ずかしそうに此方を見て
「では、僕も扱い方のレクチャーを教えてください、この街の騎士部隊を先導するただの騎士である僕に、お願いしますね我らが司令官様」
即座にちょっとした訂正文を混ぜ込み、遠回しに彼女にも言葉を投げかけながら、されど身に染みた優雅さを保ちながら丁寧に小さくお辞儀をしてくる。
お辞儀が終わり顔を見せると先のような照れた顔ではなく教えを乞う弟子のように師匠の全てを観るように真っすぐに此方を見てくる。
本当に、心が強くなったね…
彼の成長を歓び、彼の想いを受け止め、司令官として先へ進めよう。
「っじゃ、始めようか」
目の前にいる己の全てを背負いし二人に、戦士として最後の境地へと導いてくれる彼らの為だけに用意したと言っても過言ではない魔道具、その使い方を説明していく。
説明の合間に、次の私が起すべき行動が来たのだと心に思考が投げかけてくる。
彼が来たということは、次は、団長の番ってことだよね、なら、No2を…お母さんをサポートできるのは誰が居る?私以外なんてあり得ない。
私がいかないと誰が愛する妹彼女に改造術ができるのかってことだよね。
思考が後押ししてくる、心がそれを嫌がっている、前へ進む勇気が私には足りない。
でも、もう、戻れない、戻れないのなら見届けたい、この手で彼女の未来を…その咎を私は背負いたい。
思考だけでなく心も納得した瞬間、少しでも早く彼女達が待っている病棟に急いで向かいたいという衝動が湧き上がるが、冷静な思考が踏みとどまらせてくれる。
私が席を外しても大丈夫な段階まで彼らに、丁寧に伝え忘れなく魔道具の使い方を説明しないといけない。
指導者として、開発責任者として、最後のプランを考えた者としての責任がある。
指導し続けていると飲み込みがとっても早い優秀な二人なだけあって、凡その動きが出来るようになるのが早かった。
この段階であれば戦士四人、お互いの学びをディスカッションして次へと進めてくれるでしょう。
ね?偉大なりし戦士長?
彼の座っていた椅子に瞳を向けると大丈夫だよっと、肩を叩かれたような気がした。
その大きな手のひらから伝わってきたことにより私は憂いなく前へ進めれる。
「ごめんだけど、私は一旦、席を外すから後は各々で訓練していてもらってもいいかな?」
感覚を掴んでしっかりと魔力を飛ばさせれるようになってきている二人に声を掛けると
「・・・」
熱中しているのか集中力が高まりすぎているのか小さく頷くだけだった。
二人の心配ないという声ではない想いを受け止め
車椅子のタイヤを掴んで転がしていく。
修練場を出る時にすれ違った術式研究班や研究塔の人達、彼らが持っている魔道具を見て、その後の心配も消える。手配ばっちりだね。
車輪を動かして向かうは病室
愛する人達が待ってるからね。
指導者としては、戦士達が修練場で各々、最後の鍛錬を繰り返していくのを見届けたいけれど、私には私の仕事がある。ううん、これは私の我満。
後ろから聞こえてくる音に好奇心が擽られてしまう。
後ろを振り返りたくなる衝動は研究者としてなのか、皆の事を見守りたいのか、よくわからない感情が少し尾を引いてしまう。
だとしても、感情が留まるわけにはいかないと腕を動かし続ける。
進み続ける、最愛の妹、その未来をこの手で殺すのだとしても
私は迷わない
愛する人達の未来へと向かって船を動かすように漕ぎ続ける。
車椅子の車輪を掴みひとつ漕ぐひとつ回す…
車輪を一周させるごとに、己の感情を殺していく。
長い永い…道のり、歩けないってのはこんなにも困難なのかと頭を俯かせて息を切らせて腕や手のひらが痛くなろうとも、前へと進み続けて病棟の前に到着すると「姫様!?」可憐な華の音が聞こえてくる、顔を上げるとメイドちゃんが駆け寄ってくれる
「待っていてくれればお迎えに行きましたのに!!」
急ぎ足で後ろに回ってくれるので手を車輪から外すとゆっくりと車椅子を押してくれる。
長い永い、永遠に続くのではと感じてしまう車輪が動き出す。
私の意思から解き放たれ街の意思にゆだねるように背もたれに体重を預け、息を整える。
直ぐにでも愛する人達がいる場所に通されるのかと思いきや
病室の中に入って直ぐに炊事場に案内される、それが何を意味するのか解らない私じゃない、そうだよね、これからの事を考えると綺麗にしておかないとね。
手を伸ばすと、湿らせたタオルで手を綺麗にしてくれる。
「では、団長の元へまいりましょう」
手を綺麗にした後は間髪入れずに車椅子を押されていく。
彼女に何も言わなくても指示を出さなくても進んでいく
私の時のメイドちゃんもこれくらい、何も言わずにしてくれたらなんてのは言いっこなしだね。
車椅子が押され通されたのが、納得の場所、休憩室。
そうだよね、物凄い速さで戦士達を改造したのだから、二人だって疲れ果てるよね。
なら、後は、最後は、私一人が背負うよ、お母さんに娘を改造なんてさせたくないもんね。
「はいりまーす」
はーいっという小さく消え入りそうな音と同時に中に入ると
「おかえりなさーい」
ぐったりとベンチの上であおむけで寝ころんで天井に向かって手を振っているNo2と横向きで静かな寝息を奏でている団長の姿があった。
部屋の中は予想通りすぎた。
そうなるよね、簡単な内容とはいえさ、4人のために意識を水の中へとダイブさせ続けたんだもん、そりゃぁ、疲労困憊になるよね。
仰向けで寝ころんでいる人に向けて労いの声を掛ける
「だいぶ急ピッチで終わらせたんだね」
「そーよー、何度も説明するのって貴女嫌いでしょ?説明するのなら全員一緒の方がいいでしょー?」
天井に向かって伸ばされていた腕は彼女の額の上に落ち、腕が動かなくなる。
「急いでくれてありがとう、戦士達は各々、最後の訓練にはいったよ」
彼女たちの頑張りのおかげで彼らが修練を積む時間がたくさんとれた、一日、戦士達の為に時間を設けようかと思ったけれど、1日、そう、この状況下で1日はとても大きい、1日早く歩を進めれる。
「…そう、なら、私も後で顔を出さないといけないわね、少し休憩をしてから…最後の施術を行いましょう」
消えていきそうなか細い声にうんっと頷きたいけれど、これ以上の無理なんてさせられない。
予定ではNo2がメインを担当する予定だったけれど、うん、私一人でもなんとかなる、女将がくれた魔力がまだ私の中に鎮座してくれている今なら出来る気がする。
それに、よくよく考えたら、私と団長の魂っていうか、記憶はもう混ざりに混ざってるから、何も問題なんて無い。
「いいよ、お母さんは寝ていて」
後は私がやるから
「そうもいかないでしょ、貴女一人でやらせるわけにはいかないっ!でしょ」
直ぐにでも始めようとしているのが伝わってしまったのか、ベンチから体を起こし
「魔力…ちょっとだけまってなさい」
ベンチから立ち上がり、かなりきついのか、ふらふらと体を揺らしながら歩き出し魔力回復促進剤を複数本取り出して次々と蓋を開け飲み干していく
空っぽになった瓶を並べ目を閉じ
「これじゃ、足らないわね、小娘、手筈は整えてくれてるわね?」
「はい、勿論です」
メイドちゃんに確認を取る。
手筈?
既に何かしらの準備をしていたのだろうかと首を傾げる間も無く
「では、皆さまお願いします」
ドアの外に向けて声を出すと部屋の中に次々と医療班が入ってくる。
入ってきた人達を見てどのような準備をしていたのか直ぐに理解する。
すべてが女性ってのは、そういうことなのだろう
「みんな、協力ありがとうね」
入ってきた医療班が誰なのか確認している間に、No2は準備の為に上着を脱いで上半身を露にしながら申し訳なさそうに部屋に入ってきた人達に声を掛けていると
「この日の為に私達は魔力譲渡法を訓練して来たのだと思っています」
「そうですよ!さっき来た戦士の方には申し訳ないですけど!魔力は、医療の為に!明日の為に!」
「私達よりも姫様達が魔力を宿した方が未来の為!ですからね!」
「そうです!この先の事も私達は覚悟してます!」
「です!魔力を回収する魔道具に毎日限界まで魔力を注ぐ覚悟だってできてますから!」
全員が医療班としての覚悟を述べながら上半身の服を脱いでいく。
医療班の皆はそこまで出来るようになっていたんだ。
「みんなの魔力、頂戴ね」
「「はい!!」」
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