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「ありがと」
お礼の為に開いた口に反応したのかメイドちゃんの指が近づいてくる。
近づけられた指先には、私の小さな口に入る為に小さく千切ったパン、それを此方に強引に放り込もうと向けてくるので
「ううん、あんまりお腹空いてないから」
首を横に振って断ると眉を八の字して千切ったパンを自身の口の中にパンを放り込みほぼ噛まずに丸呑みしてから、八の字のまま唇を尖らせ
「食べれるのなら食べてください」
断っても粘ってくる辺り…良くない感情が湧き上がってくるのを戒める。
はぁ、色々と知ってるのも、要らぬお節介に繋がるからめんどくさいって気持ちが湧き上がってきちゃったのは、良くないよね、反省。
引き下がろうとしないメイドちゃんが引き下がらざるをえない言葉で断らないとね。
「食べ過ぎると眠くなるから今はいいの、少しで」
今はっと言う言葉を鵜吞みにしてくれているのか安心した表情で
「失念しておりました、この後、会議を行うのでした」
自分の中の感情を想いを押し付けてしまったことに対してなのか少々照れた顔をしている。

珍しく感情を押し付けようとしてきた人物を見ていると、少しだけ、申し訳ない気持ちになるので、彼女から視線を外すとつい視線が彼女に止まってしまう。

視線の先に居るのは、No2っと、女将や閃光さんベテランさんティーチャーくん、幹部組だね。
食事を取りながら何か会話している。

会話しているけれども各々の表情が硬かったり柔らかかったり…
楽しそうとも何とも言えない、多くを語ることが無い静かで不思議な雰囲気。
古くからこの街にいる古株だけにある何かがあるのだろう。

団長もそれを遠目で見…ていないな、見てるのはその先にるティーチャーくんね、はいはい、未練たっぷりじゃん。

湿った視線を送り続ける団長を見ている私達
当然、隣にいるメイドちゃんも団長を見ている
「近くに行かなくてもいいの?」
「はい、すでに終わっていることですから」
言葉の内容に驚きつい視線を向けるとにっこにこと屈託のない勝者のような笑みで団長を見ている。

メイドちゃんのこういうところが腹黒いよね…
ティーチャーの考えっていうか思考を把握しているからこそ、彼が団長の想いに応えることは絶対にない、どんなに想いを寄せても靡かないと彼女は確信している。
ほんっと、悪い女です事。つってね。

食事をしながら世間話なのか、古株としての会話をしている戦士達。
その傍らで会話に参加することなく黙々とその会話を聞きながら栄養を摂取している人物、その人物を湿った瞳で眺め続ける未練たっぷりの女性。
そして、その女性が何れ此方になびくのだと確信している悪女…何この構図?

それを傍観する様に見ている私…少し、ほんの僅かに離れているってだけなんだけど、それ以上に…彼らとの距離が別の世界のように遠く感じてしまう。


理由はわかってる。
私の時と今代では皆が…みんなの雰囲気が細かいところで違うから。
それが、否が応でも、私の心に語り掛けてくる。ここは違う世界なのだと。


私が生きた時代から何年も先の時代なのだから違うのが当たり前なのは、勿論わかってるよ…

でも、私はわたしは…出来る事なら私を生きた時代で最後まで皆と笑って生きたかった。

同じ人物なのに、彼らと私の中にいる彼らは別…
本質は一緒なんだけど、小さな違和感が、私の心が小さな拒絶を繰り返していく…


叶うことがない願いだと分かっていても、願ってしまう。
空を見上げ、居るはずのないあるはずのない人物達に語り掛ける。
時の流れが違えど…何時か、私も皆のいる場所にかえるからね…


これ以上、想いを胸に秘めていると心が叫び狂いそうになるので、少しでも意識を背けるために周囲の音に意識を向け思考を停止させる。

お祭りっと言う程ではないにしろ、多くの人達の声が修練場を満たし続けている。
天を見上げるように背もたれに体重を預け瞳を閉じ、多くの語らう音に心を委ねる。

「おめぇ休まないでいいのかい?」
「何よ?珍しく労わってくれるじゃないの」
「母ちゃんが疲れるのは当然だろ?」
「…あぁ、そう言う事ね。てっきり激務に対してかと思ったじゃないの」
「そっちに関しちゃー何も心配してないさぁね、あたいのしるおめぇなら余裕でこなすだろ?」
「っふ、そうね、あの時代を乗り越えたんですもの…そうねぇ…」
僅かな沈黙、皆が彼女の言葉を待っているかのよう…
「ふふ、優しいわね、貴女も心配してくれるのね。そうよねー子育てに関しては二人の方が私よりも大先輩ですものね~経験者だからこそ知る苦労ってことかしら?」
「応よ、子供ってのは休まらせてくれねぇからな~何時だってこっちの都合何ておかまいなしさ」
「貴女のような底なしでも、子供達にはそう感じてしまうのね」
「あたいだって疲れたりするさぁね。子供達はよ、敵と違ってよ、気配を感じたら警戒すればいいって、わけにもいかねぇからな!遊びに出たと思ったらよ~唐突に呼びつけてくるんだからな~、昼にちょっと寝るかって思ってても寝かせてくれねぇしよ。さらにチビのときなんて、夜中に泣くから寝れない日ってのが何度もあったさぁね、回数なんてよ何度あったかおぼえちゃいねぇほどだったさぁね」
女将の言葉に小さな声が聞こえる…えっと、ですです?ぁぁ、閃光さんが頷いてるのかな?
「子供達っであるか、元気に育って欲しいのであるな」
「そういう日々を、明日を…掴みに行くのよね…」
「ん?それってど…ああ、そりゃそうだわな、おめぇが知らないわけねぇもんな、そっか…聞かされてんだよな」
「ええ、私も付いていきたかったわ、でも、私ではダメなのよね。だから、この街で皆を支えるわよ、後ろは任せなさい」
「それが一番である、闘えぬものが居ても邪魔である、No2はもう前に出るなっで、ある」
「言うじゃないの…私も賛成するしかないわよ、心が我儘を言うけれども、冷静に考えればね…わかってるわよ、この戦い、私なんかじゃただの足手まといにしかならないってね、わかってるわ」
「いいんだよ、おめぇはよ…これまでによ、その」
「そうである何時ものように、いや違うであるな、何時までも我々に守られていて欲しいのである、我ら戦士の…俺達の…帰る場所を戦士長と共にここに居て俺達の戦いを見守っていて欲しい」
「そうです、今度こそ、守って見せますから先輩」
それが彼らが敬愛する偉大なりし戦士長への最後の恩返しって事なのかな?
彼らの覚悟が伝わってくる。胸が痛いや…
「…そうね、愛する子供と、ううん、この街にいる全員で皆の帰還を待ってるわ」
「頼むであるぞ、その…お子が母も父もいないっというのは、悲しいであるからな」
「貴方が言うと言葉に重さを感じるわね。私が居なくてもこの街の人々ならあの子を真っすぐに育ててくれるから大丈夫なんて、言わないわよ、あの子を育てるのは私であるべき、よね」
「子は親の背中を見て育ちます、先輩の背中を見て育った、あの子がどの様な素晴らしき人物に育つのか」
「見たかったっというのであるか?愛する妻よそれは違うのである」
「何がちげぇんだよ?あたいだって」
「皆で共に、かの子だけではなく、当然、吾輩達の子供達、いや、家族全員で集まって笑いあう日々を共に歩むのである。見守るだけではなく共に月と太陽のめぐりを見送るのである」
「珍しく詩人じゃない、仕込まれたのかしら?愛する奥様のお父様に」
「っふ、吾輩とて貴族の一員、学が無ければ胸を張れぬのである」
「武家としての道だけではなく、子供達に他の生き方もあると道標になりたい、そういってましたものね」
「である」
「偉そうに胸張って背伸び…してるわけでもないわね、悪くない考えよ、この戦いが終わったら」
「ああ、闘いなんて起きやしねぇからな!学者先生たちが威張る時代がくるってもんだよ」
「はい、私達は月の裏側へ馳せ参じるまで肩身の狭い世界をいきましょう」
「ふふ、そんな肩身の狭い世界なんて姫ちゃんが否定するわよ安心しなさい、私達は…いつだって月の光に導かれるのよ」

そうだね・・・
皆が・・・

生きて帰れたら、月の光に導かれる様に普通の・・・
日常を生きて欲しい・・・
争いのない平和な日々を・・・

「歳をとったせいかしら?最近、目が悪くなってしまったのよね、貴女なら見えるんじゃないかしら?ほら、あれ、月の近くに何か見えないかしら?」
「あん?あたいもなんやかんやと目が悪くなっちまったからなぁ…近くの文字が読みにくくなっちまってねぇ…どれだい?」
月の近く?
気になるワードに目を開き薄っすらと白く見える月を見てみるが
「特に何もねぇけどな?目に砂でも入ったんじゃねぇのか?」
「そうかも、しれないわね、黒い点が見えた様な気がしたのよ」
月の近くを目を凝らしてみてみるが…特に何もない。
私の視力をもってしても何かが飛んでる様なことはなかった。

可能性があるとすれば、偵察かな?
死の大地にいる鳥が偵察か何かで飛んでいて視線を感じたから逃げたんじゃないの?

「歳食えばそういうこともあるってこったな!先生として新たな経験を得て良かったじゃねぇかよ!だっはっは」
「うるさいわねー、ふと、何かが浮いてるように見えたのよ」
「空に浮くなんてよ鳥しかいねぇよ…なら、鳥だったんじゃねぇか?」
「かもしれないわね、って言いたいけれど、鳥って同じ場所を飛び続けるように空で停滞できたかしら?」
「どうであったかなぁ、ある程度の揺らめきは許容範囲であれば、あ奴らはある程度その場でとどまるであるぞ?」
「なら、死の大地の鳥かもしれないわね」
「そうさね、あたいらを見てたのかもしれないねぇ」
一定の距離まで近づいてくれば壁で待機している戦士や騎士達が弓で撃ち落としてくれるから街に迄はこないだろうね。
時折、鳥が接近してくるのはこの街では良くあることだもんね。

なら、きっと、鳥だよね。ねぇ?先生?
私達が騒がしいから差し向けたんでしょ?


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