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だって、得物を投げるってことは、魔道具と一緒に投げるってことだよね?
魔道具の数を考えると、迂闊に投げちゃうと、次の攻撃手段がなくなるよね?
投げた斧が自動で手元に返ってくるわけじゃないんだからさ…

そうなると、投げた時点で詰みにならない?
次、どうやって攻撃するの?攻撃するための選択し狭めてない?
そういう状況に陥って困らない?

戦士達だとその辺りは連携力でカバー!っとか言いだしそう…
投げた得物を誰が取りに行くんだっての!それこそ命が幾つあっても足りない!
超絶危険な敵の前を横切って回収する班=死の部隊になっちゃうじゃん!ダメだよ…そういうのは。

喜んでいるところに水を差すような行為。
今のとても良い明日へと向かって行こうとする雰囲気や士気が下がってしまうっと、解っていても…私は司令官だから。

喉の奥が幾ばくか締め付けられる様な感覚があっても、声に出す。
「でも、武器を投げるってことはさ持ち手につけてある魔道具も一緒に飛んでいくよね?そうなるとさ、魔力を武器に伝える魔道具が手元から無くなるんだよ?次はどうするの?次の武器に魔力の刃を付与できないよね?だから」
言葉を遮るようにベテランさんの腕が上がり人差し指を天に向けて刺す?
なに急に?
言葉を遮るような行動を滅多にしない彼の行動に言葉が詰まると
「ふっふっふ」
指を立てて横に振って不敵な笑みで此方を見てくる。

これは、あれかな?私はきっと何か勘違いをしているってこと?
何か間違えたのかな?
こういう不遜な態度を見せつけてくる時は、たいてい私が何か間違えた時なんだよね。

「これを見るのである」
手に持っている鉄剣の潰されている刃の部分を持ち、鉄剣の持ち手を此方に向けて突き出してくるけど…だから何?
「姫様ともあろうものが、気が付かないのであるか?」
意地悪そうな声で挑発してくるじゃん、つってもなぁ、何もない普通の持ち手…ん?何もない?
「目つきが変わったのであるな、そう、この通り!っである!」
鉄剣をその場でバトンのように空中で半回転させ、一瞬の動作で瞬時に持ち手を握る。
鉄剣を逆手持ちで持って直ぐに鉄剣の先が地面に触れるか触れない彼の位置から中腰のラインまで振り上げるように鉄剣を振りぬくと豪快な音が修練場に響きわたる。
何が起きたか何て見るまでも無い、それでも、見てしまう、何も魔道具をセットしていないのに、あの僅かな時間で彼は…魔力を飛ばした。

彼の剣が振りぬいた先…当然の結果、丸太が砕け散っていた。
その一連の流れに脳が勝手に声を出しリアクションを取ってしまう。
「あばんすとらっしゅじゃん!!」
「どうで…あば、ぇ?なんであるか?」
つい漏れてしまった言葉が予想外の言葉を聞き返すように不思議そうに振り返ってくるので、これ以上追及されると面倒なので軽く咳払いをしてから
「ん!何でもない!ってか、魔道具なしでも放てれるようになったの?」
ついらしくない疑問をぶつけてしまう。
目の前でやってのけたのだから、聞くまでも無いのに。
「うむ!寧ろ、吾輩としてはもう邪魔である、っが、まだまだ他の者たちは吾輩と同じ高みにはいないのであるがなぁ?」
顎を触りながらニタニタと邪悪な笑みを浮かべながら周囲の人達を焚きつけるように挑発している、こういう役目はベテランさんが最も適している。
この挑発によって
「っは!今日中にあたいだって出来るようになってやらぁ!みてろよ!」
「・・・!」
案の定、わかりやすく触発される戦士二人が鼻息を荒くして「いこうぜ」「・・・!」少し離れた場所で練習を再開し始める。
その二人の後姿を見送っているベテランさんは完全に勝ち誇った目をしている。
彼の誇らしげな姿を見て、彼にとって気にしていた心の弱さ、その部分に対しての心配が消えていくのを感じる。

今の彼なら何が起きようが大丈夫。
そう信じられる程に自信に満ち溢れている。

彼の背中を見ていると
「僕もある程度ですが、出来るようになってきています、では、練習を再開する前に、背中の魔石を交換してきますね」
説明会&報告会が完全に終わりを告げたのだと彼の言葉で察することが出来る。
一声かけてから離れて行く彼の額には小さな汗が浮かんでいる、話したり動いたりして体が熱くなったのだろう。
浮かんだ小さな汗をハンカチで拭きとりながら、向かっていく場所は、修練場から見える場所だけど、彼らが練習する場所から少し離れた場所に多くの人がいる、そこに向かって歩いていく。

技術班、おっと、術式班かな?
彼らが待機している場所へ向かって歩いていく、その後ろ姿はとても優雅で、自信に満ち溢れている。
彼もまた心を決めたのだと…私の中にある憂いや不安要素がどんどん氷解し溶けて流れていく。

こんなにも、皆が…頼もしいと感じたのは…
愛する旦那が傍にいた時以来かな…

「っというわけである、吾輩も練度を高めるために練習を再開する…の前に魔石を交換してくるのである」
幼き頃に助けを求めてきた王族の忘れ形見を見送っていると
ベテランさんも一声かけてから離れようとしたので、捕まえる。
「ちょっとまって、一つ確認したいんだけどさ」
「何であるか?」
振り返ることなく立ち止まってくれる
「魔石からどれくらいの魔力が流れ込んだの、いや違う、魔石の中に魔力が残っているのかどうか、これも…感覚でわかったりするの?」
私の時は感覚を掴めきれなかった、目視で確認するしか無かった。
「もちろんであるが?その様に作ってくれたのであろう?では、吾輩は行くのである」
手をひらひらと振ってからティーチャーがいる方へとベテランさんも向かっていく

目視で確認する様にして、たんだけど…想定外も想定外、感覚でわかっちゃうんだ。
私が魔石と繋がった時とは違う…これが研ぎ澄まされた戦士達の境地ってこと、なのかな?

戦士達から伝えられた練習成果に驚いてばっかり
私が席を外したのって、僅かな時間だと思ったんだけど、その僅かな時間で彼らは飛躍的に成長している。

戦士として多くを経験し多くを積み重ねてきたからこそ、ってことかな?もしくは、始祖様の力を目覚めさせるには膨大な魔力が必要で、魔力が無いと私達はその扉の前に立つことすら許されなかったのかもしれない。

「ししょー!ちょっといいかい!」
感慨にふける間も無く手のかかる弟子が大きな腕を振って呼びかけてくるので
「いいよー!こっちきてー!」
返事を返すとドシドシと地面に大きな音を響かせながら巨体がこっちにやってくる。
まだ時間はある、彼らと共に私も研鑽を積もう。
彼らの経験を動きを少しでも見て吸収しよう。
私だって、まだ、闘えれるはずだから!

薄れていた闘志が少しずつ燃え上がっていくのを感じる
その炎は憤怒の炎ではなく、明日を照らす…
太陽のように…

『白き黄金の太陽のようだ』

彼の声を受け止め、私は前へ進む。
最後の決戦に向けて最後の訓練を…



一連の報告会が終わった後は、私も彼らと一緒に研究に参加し続けた。
新しい気付きに全員が夢中になり熱が引くことなく私達は動き続けた…


楽しいひと時は何時だって一瞬だ…
気が付けば日が暮れようとする時刻となった。


終了を告げる言葉が修練場の中へと投げ込まれ、戦士達の緊張の糸が切れる。
「差し入れ持って来たわよー」
綺麗な声と鼻の奥を擽るバターの香りに戦士達の視線を釘付けになる。
飢えや渇きを満たしてくれる戦士達が最も欲している香りと共にやってきたのは、No2と団長、それにメイドちゃんだった。
両手いっぱいにランチボックスを抱え修練場に顔を出してくれた。

この状態で訓練を再開するわけにもいかないし、何よりも、私達には時間が無い、楽しいひと時を締めくくるにはちょうどいいタイミング。
「それじゃ、軽く休憩しよー」
休憩っと言う言葉に完全に戦士達の緊張の糸が切れ全員がランチボックスへと吸い寄せられていく。
その後ろ姿に
「…そのあとは会議かな」
訓練だけではダメ、私達は…決めないといけないことがある。

ポツリと漏らした言葉が聞こえてしまったのか、いつの間にか集まって丸太のセッティングとか片付けを手伝ってくれていた戦士一同から殺気が溢れ出てくる
湧き上がる殺意という名のやる気に水を差す、まだその時ではないから。
「早いよ、先走らないの」
ふぁぁっとつい零れてしまう欠伸と共に、彼らの溢れ出る殺気を抑えるようにと手を団扇でも扇ぐように下向きに振ると、それを見た戦士達が殺気を抑えてくれる。
直ぐに会議なんてしないってーの、まずは休息腹ごなしってね。
戦士達には全身を栄養で満たしてもらわないとね!

ランチボックスの近くにいるベテランさん達が此方を見て、っふっと鼻で笑ったと思ったら
「取り合えず腹ごなしすっか」
「そうであるな」
「・・・」
「ですね」
余裕の表情で地面に座り始める。

修練場の一画でランチボックスが開かれメイドちゃんが各々に飲み物が入ったコップを渡している。
ランチボックスから皆好きなように食べ物を手に取り食べている。
サンドイッチに、串焼きに、中身のバリエーションがとっても豊、食堂のおばちゃん渾身のお弁当ってことかな?…って思ったんだけど、ランチボックスから見えてしまった黒い丸薬…何故か用意されている丸薬…それは誰も手に取らない。
それはそうだよね、普段から死の大地で強制的に食べさせられてんだから、飽きてるのもあるだろうし、美味しくないんだもんね。
いれたのはきっと、医療班の誰かさんだろうね…まったく、そう言う部分が空気が読めないって言われるんだよねー。

「はい、姫様」
メイドちゃんが小皿と一緒に足音も気配も無く近づいてくるので
「あーん」
「はい」
口を小さく開き目を閉じると唇に何かが触れ押し込まれる様に口の中に小麦とバターの心擽る様な本来であれば幸せの香りがするものが入り込んでくる。
目を空けて手元を見ると私のサイズに合うようにパンを千切って押し込んでくれたみたい。
もぐもぐと口に放り込まれた物を噛み続ける

困ったことに美味しいと思えれない…っま、しょうがない。
場の雰囲気だけでも美味しいと思おう。

「どうぞ」
差し出されたカップを受け取り口に含む。
あれかな?あんな小さなパンの欠片をずっともぐもぐと噛み続けていたから飲み込めないって思われたのかも。
つい、味がするかなって確かめるように咀嚼し続けちゃったや。

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