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Fine 飛翼恋理 3

そう、ティーチャーだけではないのである、この街にいる全員が恐怖に、フィアーであったか?支配されていないのである。
こんなにも大掛かりな作戦であり、もう日にちも経過しているのであるが、あの怒涛の攻めに対し未だに王都や街が混乱してもおかしくないのである。
今に至っても未曽有の危機というのは変わっていないのである、だが、皆、慌て混乱することなく各々の役割を全うにこなしてくれているのである、全員が希望を胸に宿し目に力が込められているのである。

これも偏に姫様のおかげであるな。
…この街は、いや、王都を含め、この大地に住まう者たちは、みな、若い頃の吾輩達とは違い過ぎるのである。

今にして思えば姫様がときおりする無茶で傲慢な我儘も全てはこのためだったのかもしれないのではないかっと彼の者の叡智がゆえなのかと感じてしまうのであるが、いかんせん、時折見せるあの子供の駄々、癇癪のような振舞いを見ているせいか、姫様が常軌を逸した超常なる人物だと思いきれないのであるなぁ、それも姫様の人徳であるな。
その姫様も今は団長と共に心穏やかに車椅子に座られている、彼の者を敬愛し心酔するように崇めている部隊が今もいれば今頃、膝をついて祈りを捧げていたであろうな。

最後に周囲を見渡し、各々が闘気を漲らせ準備万端だと視線を送り返してくれる
「では、団長に合図を送るとするのである」
少し離れた場所で姫様と共に居る団長に合図を送ると直ぐに返事が返ってくる
周りが良く見えているのである、彼…おっと、彼女が後ろにいてくれるのであれば吾輩達も安心して暴れられるというモノである。

後ろっか、苦い思い出であるなぁ、戦士長、次こそは、誓うのである。
あの時のように医療班を危険に何ぞさせぬ、絶対に何が有ろうと守り抜くであるぞ
だから、No2よ、もう涙を流さなくとも命を投げうたなくともいいですからね、あのような悲劇は繰り返させはしませんよ

合図を送りティーチャーが席を離し妻と二人っきりっと言うわけではない、周囲に人が多く皆活発に動いている。
それでも、この瞬間だけは二人だけの空間
最後にお互いの顔を見て、兜越しではあるが目と目が重なり心が通い合った気がした


転送の陣が開かれ先陣である粉砕姫が陣を通る
幾ばくかの時、心臓の鼓動が10を超えた辺りまでまつ
特に引き返してくる様子も無ければ陣が消えることも無い
重い荷物を背負い、木箱を持ち
妻と同じく木箱を持ち二人同時に陣の奥へと進む


陣から出て少し歩き持ってきた箱を地面に置き
「その辺に置いてもよいである、ぞ?」
後ろを振り返り見えた風景によって心臓が掴まれたのかの如く小さく悲鳴を上げ思考を切り替え即座に警戒態勢を取る
その吾輩の動きを見て妻も直ぐに駆け寄り木箱を置き剣を抜き吾輩のすぐ横に背を低くし警戒態勢を取ってくれる
「何が起きた?」
妻も状況が理解できていないのか周囲を見渡している

最初に見えた風景は野原、姫様が指定した場所だとおもった
だが、振り返った瞬間、想像していた風景と違っていた
後ろには吾輩達を待っている先行部隊が後方警戒として陣を守っていてくれていると思っていた

だが、予想していた風景とは違い後ろには誰も居なかった。
それだけではない、後続がくるはずである為、消えるはずのない転送の陣が消えている。
そもそもここは、何処であるか?予定の地点、その近くは見晴らしの良い野原、森の近くではない!
「ここは、何処だ?」
声を絞るように小さくする
周囲を見渡し今自分達が何処にいるのか把握するために必死の頭の中の地図と照らし合わせていく
死の大地、デッドライン付近にも何度か遠征はしている…何年も何年もこの大地を巡回して来た、この大地は吾輩にとって庭も同然!

っであるが!ここが森の近くで開けた場所としかわからないのであるぅ!!

現在地が分からず血の気が引いていく、なか、仲間はどこであるかぁ!?
何度も周囲を探るようにしてみてはいるものの、現在地を把握しきれない、何故なら!特徴的な物が見当たらないから!
必死に周囲を観察し続けていると鎧をノックされ
「どうしたのであるか?」
心が乱されているのだと悟られないように冷静な雰囲気を装う様に小さな声でノックしてくれた妻に返事を返すと
「遠くにある岩」
岩?その言葉で気が付く!現在地がどの辺りなのか!
妻が教えてくれた方へと視力を強化して視線を向けると僅かに見える岩
それを見てこの辺りがデッドライン付近にいるのだとわかる
だとすれば、この森はデッドラインの近くにある森!姫様がこの森には近づくなと警告を出していた森!
…流石の吾輩達もデッドラインに隣接しているこの森へと遠征に出るほど馬鹿ではないのである。
どの程度まで森が広がっているのか全体像が掴めていない魔境の森である。

っであれば、左程遠くない場所である。
ふぅっと、驚き慌て落ち着きのない心臓が静かになろうとする

先行部隊はここから走れば30分もあれば合流出来るであるな~、まったく、この様なミス止めて欲しいのである。
幸いにして周囲に獣の気配はしないのであるし、歩いて向かうとするであるか
念のために…森の方へも意識を向けて見たのであるが、探るという視線を感じて気配を消したモノもいないのである、っとなれば、何かが森の中で吾輩達が入ってくるのを待つように潜んでいる獣もいなさそうであるな

切羽詰まった様な状況では無さそうであれば、歩いて皆と合流するのが正解なのであろうが一つ気がかりがあるのである。
目のまえに置かれた木箱
「何かが起きたのは間違いないのであるな」

荷物を置いて先行部隊と合流するべきか
荷物を持って先行部隊と合流するべきか

どうしたものであるか…デッドライン付近までくると従来の死の大地であれば人型と遭遇するリスクが高すぎるのである。
今が従来の死の大地とは思えれない緊迫した状況であるが故…何が起きるか予想がつかないのである。
そもそもである、仲間たちは何処にいるのであるか?吾輩達だけが違う場所に転送されたのであるか?
「姫様達は?」
妻の小さな声、周囲を未だ警戒し声をすぼめているのであるな。
吾輩だって、仲間が何処にいるのか知りたいものである
「そうであるな、先行部隊と共に居てるのであればよいのであるが、偶然、吾輩達だけがはぐれたのであれば、吾輩達だけが身を潜め合流すればよいのであるが」
「…そう都合よく」
あるわけがないのであるなぁ、吾輩も薄々感じてはいるのである、タイミングが敵にとって都合がよすぎるのである。
このタイミングで都合よく転送の陣が誤作動を起こすわけがないのである。
何度も何度も繰り返し使ってきている信頼置ける魔道具が、ここまで完璧なタイミングで誤作動を起こすような不幸
今まで一度足りとて起きなかった誤作動…有り得ぬのである
「…皆の言う通り、獣側に知恵者が居るっと言う事であれば」
「罠」
妻も同じ結論であるか、っであれば
「直ぐにでも離れるべきであるな」
「はい」
息を潜めここが死の大地のど真ん中であるのだと気を引き締めなおし
「荷物は置いていくのである」
「はい」
身を切る様な!苦渋の決断をする!こんな高価な物を捨てていくという絶対にしたくない決断!!
ぐぅ!木箱の中身だけで吾輩は何度絶頂を迎えれるのか!!ぐむむ!!
つい思い描いてしまう嬢たちの美しき絶景や甘美な技…口恋しいが仕方ないのである。

もう一人の吾輩が叫ぶのを無視して、木箱から離れ先行部隊が居るであろう場所へと二人で歩き出すと
「…何であるか?」
少し離れた大地が暗くなっていることに気が付く。
あれは、影?
大地のど真ん中、今日は晴天だというのに大地に影が出来ているのことに気が付く
こんな野原に影?それが何を意味するのか直ぐに姿勢を低くし空を見上げると
「いる!」
空には一つの黒い点があった、すぐに視力を強化すると獣姿が見えた。

タイプは鳥

鳥が空を飛んでいるのが見えた、鳥が見えたと言うことは鳥は此方を見つけている!
死の大地での鉄則!鳥を見つけたら即座に殺せ!!周囲の獣に吾輩達の位置を知らせる厄介な獣である!!

鉄則を嫌という程理解している、だが、弓矢は…持ち合わせていないのである。
「上空への攻撃に関してはティーチャーが担当する予定であった」
消耗品である弓矢に関しては先行部隊が背負って運んでくれているし弓も道中で必要なので先行部隊が持っている。
合流した際に受け取る手筈であった!

だが!弓矢だけが上空への手札ではないのである!!
木箱の中には上空への対策として有効な魔道具が数多く用意してある!
…置いて来てしまったのが失敗である、吾輩はこういうところが運が悪いのであるなぁ。
っだが!運が悪いけれども、まだ取り返しのつく場所で良かったのである!
「まだ、左程離れていないのであるな、距離にして5歩」
木箱を置いていくのは攻撃の選択肢を狭めてしまうのであるな、先の判断は間違いである。
一旦木箱へと戻って手に持ち臨機応変に戦えるためにも、機動力や体力を消耗するのであるが、木箱と共に行動するのが正解であるな。先の判断を間違えたのだと反省し
「木箱を持っていくのである」
申し訳ないと妻に語り掛けると妻は無言で頷いてくれる
木箱へと視線を向けると鎧が激しくノックされ慌てて前へと向くと影が近づいていることが分かるが更にノックが強くなり何事かと空を見上げると
「な!?」
炎の渦が天から此方へと向かって落ちてくるのが見え
炎の渦に対して背を向け妻を抱きしめ「深く息を吸うのである」妻に警告を出しながら腰につけてある水が入った瓶を上空へと投げる、落ちてくる瓶に合わせて軽く頭突きをして瓶を砕く。
兜のてっ辺で瓶が砕け中身が吾輩達を包むように広がり僅かではあるが身を濡らすことが出来た
水が鎧の上を跳ねる音が耳に残っているのとほぼ同時に炎の渦が吾輩達を包み込むように駆け抜けていく
「すぅーーー、っむん!」
口先を窄め勢いよく胸と腹に空気を吸い込み、頬を膨らませて炎が通り過ぎるのを耐える。

火が怖いのは呼吸が出来なくなることである!人型共がときおり火を放つ魔道具を持っていることがあるのでな!対策など慣れているのである!

幸いにして炎の渦は吾輩達を包み込みその場で停滞することなく大地へと広がっていき消えていく。
ただ、その火力が凄まじいのだと大地が教えてくれる。
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