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とある人物が歩んできた道 ~油断、素が滲み出る~

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来る決戦に向けての定例会議、大地を食らった様な錯覚を覚える程の凄まじい味と匂いがする健康食品を飲んでもらった、あの翌日。

何時もの様に、研究塔に籠って魔道具の研究をしていたけれど~、同じ場所で同じ作業を繰り返すと気が滅入ってくるので新鮮な空気を吸うために外に出る!
気分も外に出ることでリフレッシュし、負の感情も転換し、性の感情に変換させる!…なんか、漢字が違うような気がするけど、気のせいキノセイ!!

あ~ほんとうに、天気もいいし、お日様を全身で浴びれば浴びる程、気持ちが良い、人間には太陽が必須だよね!部屋の中に閉じこもっちゃいかんいかん!

場所を変えることで思考も切り替わるので、お日様を木陰から覗かせる中庭で、売れるものがないか探りながら魔道具のデータを見ていく。

中庭の前を、通りがかった騎士様がいつも元気だけど、いつも以上に元気はつらつとしていて、私の視線に気が付いたみたいで、爽やかに挨拶をしに近くまで来てくれた

「順調ですか?僕はすこぶる元気がよくて!」

ニカ!っと、輝く白い歯が、いつも以上にまぶしかった、その輝きが真っ暗な私の人生によく刺さりますぅ。
昨日とは様子が違っているので、もしかしたら、騎士様も魔力が枯渇していた可能性があるんじゃないかと、昨日は何をしていたのか、参考のために聞いてみよう。

口角が上がったままにこやかに爽やかに、まさに、私にとって、全身が清涼剤の様な存在
「昨日ですか?最近、自己鍛錬の量を増やしていまして、肉体強化、瞬間強化、持続強化、魔力放出などの訓練を行っているので、魔力が枯渇していたのかもしれないですね。」
…魔力放出?何のために?武芸に必要だっけ?私が訓練した内容はひたすら体を動かす事ばっかりだったから、きっと、高位な騎士だからこそ知る理由があるのだろう

「この間、父にもっと強くなるために必要な訓練は無いかと文を送ったんです、返事が返ってきて、それらの訓練を行えって書かれていたので、今は、私を含め、できそうな人だけやっています。」
ここ数日間の騎士様の雰囲気、発言内容、動きからやっぱり体内にある魔力量は、精神に作用させるのは疑いようがないと思う。
あと、嫌な予感がしたので、確認をしてみる、最近、それらを行っている人達が暗い雰囲気だったり、ネガティブな思考だったりしませんか?っと

困った感情と驚いた感情が瞬時にころころと切り替わる騎士様、考えていることがすぐ顔に出るから裏表がないって心の底から思えるのって素晴らしいよね。
「すごいですね!そうなんですよ!あの前向きな人たちが全員、ここ最近、表情が暗いし、やる気がないんですよ!」
予測と、経験則で確証が無いけれど、魔力が減ると、気分が滅入る可能性があるとお伝えすると

ここ数日の自分と周りの状況を思い出しているのか、斜め上を見ながら
「なるほど、それでだったんですね。最近、僕もやる気が出にくくて自分を鼓舞したりするのに大変だったんです」
納得したような顔で、魔力の性質には、困りものだなぁっと呟ている、それには私も非常に同感。
魔力って、非常に便利な物質だと思うけれど、やっぱり何処かでデメリットがあるのだと世の中、上手い事できてるなぁって痛感しちゃう。

魔力回復促進剤によって体内に残っている魔力が減っている人に対して服用した場合のその前、その後における体調の変化、心理の変化っという、論文に使うための結果が欲しいので
「それじゃ、そのメンバーに昨日、飲んでもらった魔力回復促進剤を飲んでもらうってのはお願いできます?」
笑顔で、激マズ飲料を勧めてみると

「もちろん!味は苦手な部類ですし、匂いもきついものがありますけど、その日に効果は実感しにくかったですけど、一日経ってから実感が湧きましたよ、気力が満ち足りるっていう感覚がこういうものなのかと、新しい未体験の感覚を知れたので貴重な経験だと思います。なので、僕としては嫌がっても飲ませますよ!みんなの為に!!」
うわぁ、笑顔がまぶしすぎる、いつも以上に元気はつらつになると、こんなにグイグイくるのね…

躊躇わず飲んでくれるのなら、あの味だったら、興奮剤でも仕込んでもばれないとおもうし、失敗~失敗~。
やれるときにやっておけばよかったかも!まぁ、あの時の私はそこまで気が回らんかったから仕方がないよね~
あの味なら多少、そういった類のものを入れたとしても味に変化が起きにくい気がするし、自分で試すのも嫌だから~…
…今度、坊やに持たせておこうかしら?

騎士様に後ほど、激マズドリンクを訓練所に持っていきますので、飲み終わった後の感想レポートの提出をお願いし、
騎士様は訓練所へ、私は魔道具のデータを改めて確認する作業に戻る。

ふと、データを見ているときに突然、閃く、先輩って薬学の知識も豊富じゃん
今度、興奮剤とかその辺の知識は先輩が詳しいので、魔力回復促進剤と興奮剤の組み合わせについて議論してみよう

忘れないようにメモして、っと、持ち歩いているやることリストに薬先輩っと書いてっとベンチの隣において作業を再開する。

作業に没頭していると「ほれ、頑張ってるじゃねぇか」先輩が瓶に入った飲み物を渡してくれる中身はたぶん、こーひーかな?先輩は紅茶よりもコーヒーが好きだもの、私はちょっと苦みが苦手なんだけど、疲れた時に飲むとリフレッシュするので今はちょうどいいかも
笑顔で「ありがとございますいただきます」っと感謝の言葉を述べながら、瓶を受け取るとちらりと先輩の後ろに人影が見えるので、誰だろうと覗き込むと予想通り、奥様もいらっしゃって、察する

きっと、奥様が気を利かせてくれたのだろう、先輩が差し入れなんて絶対するような人じゃないもの…

三人で少しの間、コーヒーを飲みながら休憩をしていると、先輩がふと、私が隣においてあるメモをみて
「薬先輩って誰だ?薬学で詳しい人でもいるのか?」この街にそんなやついたかなぁ?っと首をかしげている。
それ、先輩の事ですよっと返事を返すと

「んだよ、俺のことか、薬学に詳しい人が居るのなら話してぇなぁって思ったんだがなぁ」その反応をみて驚いてしまう。
あの先輩でも、まだまだ知識量が足りていないのだと、驚愕の事実を知ってしまう。
薬学ってやっぱり大変なのね、私は、毒とアレに関連する薬効成分ばっかり研究してたから、先輩のようなありふれた薬学はあまり勉強してきていないので、ちょっと苦手なのよねぇ。

良い機会だし、先輩に魔力回復促進剤について質問をすると奥様もあの味を思い出してしまったのか二人そろって苦虫を嚙み潰したような顔になる。お顔が皺だらけ。

「苦いものは食べ馴れてるけど、あれは群を抜いて、やばいからなぁ、味だけじゃなく臭いもそうとうだからなぁ」
先輩にが言うには非常に理に適っていてこれ以上ないほどの完成されたレシピで味と臭いさえ無ければ珠玉の一品だそうだ。
なので、あれを飲みやすくするために、薄めて飲んだりとか味を変えてみるために素材を一工夫したりする方法も考案したのだけど、結果は良くなかった。

薄めたら一気に薬効作用が減ってしまって効果も激減するからたちが悪いとか、あれに何かをプラスすると成分が変化して薬効作用が激変するかもしれないとか貴重な話を聞けた。

因みに、あれを販売するとしたら売れますか?っと聞くと
「売れる売れる!王都じゃ材料が手に入んねぇから高くても買うやつは買うぞ!」
え!?それじゃ大量にせいさ
「でも、売るのはお勧めしねぇ、今、戦士達も術式を扱うようになっただろ?いつかでてくるぞ、魔力枯渇症状が」
わぁお、流石、先輩だ。この街の全てを見通してるような的確なアドバイス!

っくっそぉ、惜しいなぁこの知略も知識も経験も豊富そうなこの人を巻き込みたいけど、巻き込めない!
だぁってさぁ、これ以上あの、会議室に人が増えると、減るの!騎士様の隣に座れるチャンスが減るの!
あと、秘め事を共有するっていう連帯感を少しでも維持したいから巻き込みたくないのよねぇ。

限界超えそうになる前に、相談しに走る予定ではあるけどね。

奥様にもちょうど聞きたいことあるし、ついでに聞いちゃおう。
解析状況はどうなのか聞いてみると、過去に作った特殊な魔道具を思い出したからね!引っ張り出してきたの!あげる!っと渡された。

先輩には、色々と相談に乗ってもらったし、奥様からも解析状況の話を聞いたりしたし、場所を変えて正解だった。
二人も持ち場に戻るってことでお別れする帰り際にさらっと
「背負い過ぎるなよ、頼れるときは頼れよ、俺はもう責任者じゃねぇが、お前の師匠だと思ってんだからな。だから、遠慮なんてするなよ?」
カッコいいきめセリフを去り際に言う辺り、奥様にカッコいい処を魅せたかったのだろうなって思ってしまう、だって、帰り道に奥様が腕に抱きついていたし!!仲良すぎ!
…うらやましくないもん!いつか私も騎士様とラブラブになるんだからね!!

内心、二人のラブラブな関係に涙しながら、二人を見送った後。
時計を見るといい時間になりつつあるので、研究塔に行って騎士様とお約束をしているので、魔力回復促進剤を取りにいかないと。
研究塔のメンバーに魔力回復促進剤を何本か頂いてもいいですか?っと確認すると、「全部持って行っていいよ!腐るから!早めに飲んで」っと
前回作成したやつ、全てを余すことなく全部!一度に、渡されてしまった…全部で10本、多くない?…余りそうな予感

今この瞬間に必要以上の数があるけれど、今後、先輩の予想では必要になると思われるので確認しておかないと

念のためにまだ材料があるのか?追加で作ってもらっても大丈夫なのか、確認すると、
「新人の研修にちょうどいいから作るよ!その代わり、余すことなく飲んでね!私達、飲みたくないから!絶対に!!」っと、
強く念を押されてしまう。研究塔の人達も、一度は絶対に飲んでるのだろうなぁっと理解してしまった。

渡された両手で持つにはちょっと重たいくらいの大量の瓶をもって、訓練所の方にお邪魔すると、

項垂れる様に椅子に座り込む人が一名
隅っこの方で三角座りの姿勢で膝を抱えてじっと地面の一点を見つめている人が一名
大の字にで寝ころんで意識が空に溶けてしまっている人が一名

そして、純粋に疲労で息を整えようとしている汗だくの人達が数名

中央には、騎士様が一人で集中してらっしゃるけど、なんだろう?あそこだけ雰囲気が異質というか異様っていうか、よくわからないけれど、空間が違うような気がする。

邪魔をしては申し訳ないのと、上半身裸で集中している騎士様を合法的に舐め回すように見ても怒られないので、心の中では涎が垂れてしまっているだろう。ぐへへ、ええ体してまんなぁ…

って、ダメダメ、大衆がいっぱいいるときにそんな邪なこと考えちゃだーめ、みんなに変態だってばれちゃうじゃないの。…誰が変態じゃ!!

待っている間に、奥様から受け取った特殊な魔道具を取り出してみると使い方が記載されている紙があったので、その通りに実行する。
まずは、レンズを目の前に持ってきて、レンズに向かって魔石に魔力を注入するように魔力を注ぐとレンズが反応して、ってこれ、もしかして!?
あれ?あれですか!?衣服が透けたり!?…するわけないよねぇ~、でも、騎士様の周りになんだろう?白い湯気みたいなのがいっぱい見える。

騎士様が手の平を上に向けると、白い湯気みたいなのが手の平に集まっている、それを前に向かって投げるように手首を動かすと丸い湯気の塊が前に向かって飛んだと思ったら霧散して消えた…これ、ってもしかして、魔力を視認するための魔道具じゃないの!?

汗だくになっている数名に向かってレンズを向けてレンズを覗き込むと、数名から湯気が昇っているのが見える
項垂れている坊や、隅っこで縮こまる乙女ちゃん、大の字豪快巨躯を見ると、湯気がほとんどない?

やっぱり、あの三名は魔力が枯渇していっている可能性が高い。

うわぁ、何これ?すっごい魔道具じゃないの!魔力の流れが見える魔道具なんて画期的で使い道が凄く多そうじゃない!
…なんで、もっと早くにこれの存在教えてくれなかったの!?箱を見る限りそうとう年期が入ってそうだけど!?絶対、5年以上は経過してるよね!?
きっと、魔道具のデータ漁りをしていたときに、見つけた成果物だと思いたい!うっかり忘れてたぁって言いそうな人だからそっちのほうの可能性が、可能性があるのでは?!って申し訳ないけれど、疑ってしまって辛い!!

新しい?魔道具によって新たな可能性に心高ぶるけれども、まずは、魔力が枯渇している三人にアレを飲まそう。
坊やの方を叩いて「差し入れ(ハート)」拒否を許さない笑顔で渡して、今すぐ飲めよっとプレッシャーを与えてから、
次の人にうつる。

三角座りで隅っこで自分の世界に入ってしまっている乙女ちゃんのわき腹をつついて、ビクっと体を跳ねさせた後、顔を真っ赤にしてこちらを見ている乙女ちゃんに「飲みなさい」っと真剣な顔で渡して、飲んだら元気になるからっと心配そうに相手を気遣う様に接してから、
次の人にうつる。

大の字で寝てる野生人の口の中にダイレクトに瓶の中身をぶちまける、この人ね、大の薬嫌いだから、渡しても飲まないの知ってるからね。

大の字で寝てた野生人がものすごい勢いで起き上がる、凄い形相でこちらを睨むので
「貴女の症状を回復させるためのお薬よ、我慢して飲みなさい」お医者モードで接すると、ごくんっと口の中に放り込んだ液体を飲みほすと、同時に勢いよく立ち上がり、砂埃と地面に響くような重みのある音を出しながら、水場へと走っていった。

坊やと乙女ちゃんもどうやら、瓶の中身を飲みほしたみたいで一斉に水場へと走っていった
「吐き出したらだめよー?吐いたらもう一本強制的に飲み干してもらうからねー!」
念のために、水場に走っていった三人めがけて大きな声で吐くなよっと、注意を呼び掛ける。

余った瓶は~どうしようかな?とりあえず実験してみようかな、味とか成分とか調整する試みに使わせてもらおうかな、一旦保存するために冷やしといたほうが腐りにくいと思うし、後で食堂のおばちゃん、もとい、お姉さんにお願いして保管しておいてもらおう。

水場から各々、帰ってくると全員から何てものを飲ませるのだと、非難轟轟と文句をぶつける様に言われてしまった。
けれど、あの味の文句を言われてもねぇ?私が味付けしたわけでもないし、調合したわけじゃないからねー、悪くないよね~?

まぁ、その気持ちもわかるよ!誰かにこの理不尽すぎるまずい物を飲まされたんだもの、持ってきた人に感情をぶつけたくなるのも頷ける。
私も。騎士様も、飲んだからこそ、その苦しみが痛いほどわかるよ。なので、受け止めましょう。

三人からの感想は、この世全ての地獄のような不味い食べ物を豊かに詰め込んだ味で、沼地のような土本来の風味を添えた香りで死ぬほどつらかった、二度と飲まない!
っというありがたい感想をいただいたのですが、たぶん、遠征時にみんな最低でも2本は持たせるつもりだから、馴れておいてほしいなぁ、味の改良が出来そうだったら頑張ってしてみるけど、期待はしないでほしい。

なお、遠征時に食料として持たされている丸薬よりも、こっちの方が圧倒的に、口に含むのが辛いというのが満場一致でした。

丸薬は、食感さえ何とかすれば、無味無臭に近いので食べれないことはない、若干、よくわからない食材の臭いとか、味がするけど、いろんな味が混ざって喧嘩しているので、何かよくわからない物を口に含んでいるって感覚で済むけれど、これは、苦みとえぐみがきつい上に、香りがとんでもねぇってので軍配が上がりました。

うーむ、戦士の人達が遠征でこれを飲んだとしても士気が落ちるだけで、長期遠征を考えれば、士気の低下は死に繋がるので、あまり、よろしく無さそうなので、早急に対策を練ろう、食堂のおばちゃんに相談するのが一番かも。

皆も元気になったみたいだし、騎士様の分もひと瓶置いて、坊やたちに騎士様もトレーニング終わったら飲むようにと言伝を頼み。
食堂にいっておばちゃんに改良点が無いのか相談しよう。

食堂に入ってみるとおばちゃんが料理の仕込みを終えたみたいで、少し休憩タイムみたいだったので、早速、意見を聞くために「おばちゃ~ん、ちょっといい?」
手を振りながら近寄ると「次、不敬な呼び方したら、おやつ作ってあげないよ」こめかみに青筋を立てながら、ギロリっと睨まれてしまう。
ついうっかり、お姉さんって呼ばなかったからお怒りのご様子じゃないのさ、初手でやらかしてから気を付けていたんだけど、最近はどうも仕事の量が多すぎて配慮が欠けている気がする、反省しないといけない。
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