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人類生存圏を創造する 始祖様の秘術をここに 4

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全員の休憩が終わり、車に乗り込み、朝日が差し込む中、走っていく。
姫様も回復して来たみたいで姫様が寝ている間の状況などを説明すると
「予想はしていたけれど、こうも簡単にやられるなんて、う~ん、もう少し練度を高めるように特訓してもらわないとだねー」
しかめっ面で、戦士や騎士たちの練習が足りてないんじゃないの?っと鬼のような発言が出てくる

騎士や戦士部隊達の訓練内容を知っている私と女将は顔を真っ青にしている

あれ以上をするの?っと…

助手席にいる戦乙女ちゃんに至っては震えてるじゃないの

「何か策はあるのかい?」恐る恐る手を挙げて話題を変えると
「策はあるし、今もそれが作用し始めていると思うよ、時期に…ね」
どうやらすでに私達の知らない何かが走っているみたいで、それが作用している影響なのかな?通信が静かになったのは

「それって具体的に聞いてもいい内容?」不安材料は減らしておきたいから、知りたいよね
「ん~予想通りならボチボチ連絡くると思うよ?」その言葉と同時にベルが三回鳴り大きな声が車内に響き渡る
「姫様!と、そこに孫ちゃんがいるのだったな?お爺ちゃんが来たよ!!」
メイドちゃんからの可愛い声が聞こえてくるのかと思ったら、180度違う、むさっ苦しくて重低音が効いた渋い音声が車内にこだまするように反射し、響き渡る
「ぉ、お爺ちゃん!?」どうして!?王様の警護はいいの?…あれ、確かもう、殆ど引退してたよぅな

「お久しぶりです、大老」姫様が外行の声で返事を返すと
「なんじゃ、よそよそしいの、いつも通りで構わんぞ、姫様もワシにとっては孫同然じゃぞぉ?」その一言にふぅっと眉間に皺をよせてから
「お爺ちゃん、私だってね、た・ち・ばってのがあるの!わかってよね!部下が一緒に居るんだからね?」いつも通りに接すると
「そうそう、それこそ姫様じゃ!…ここからは安心せい、粉砕の、俺が敵の進行を止める愚息の代わりにな」
その頼もしい言葉に女将が涙を浮かべながら「はい!お願いします!!」元気に返事をしていた

「孫ちゃん!」ん?私にも用事だろうか?慌てて返事をすると
「ちゃんと怪我人を手当てするための人数も手練れも用意しておる、安心せい、救える命は全力で救う、これ以上あやつらに人類の血を減らさせはせんよ。お爺ちゃんの選りすぐりをしっかりと連れてきておる、じゃから…今度会ったらじーじの為に可愛い服きてほしいなぁ?姫様とメイドちゃんも一緒に」
こんのスケベじじいが!!私の突っ込みが入る前よりも先に「ぇ!?私もですかぁ!?メイド服で十分じゃないんですかぁ!?」
巻き添えを食らってしまったメイドちゃんの悲鳴が聞こえてくるので助けてあげないと
「お爺ちゃん、エッチなのはいけないよ?…いいつけるよ」
最後の言葉は、どすの効いた圧を加えるように言うと
「ぉぉ、怖いのぉ、母さんに似とるのぉ…だが、それでいい、硬くなるなよ、自然体でいなさい、焦りはミスを生む、不安や緊張があるだろう、焦る気持ちが強くなるだろう、だがな、俺が来たからにはもう大丈夫だ、あんな糞猿共、蹴散らしてくれようぞ。息子もみとるしな…では、行ってくる!!」
決め台詞にカッコいい言葉、私が孫じゃなかったら惚れちゃうじゃない…

「いってらっしゃい!気を付けてね!愛してるよお爺ちゃん!!」「応さ!俺も愛してるぜ孫ちゃん!!」
遠く離れた場所からでも繋がっているのだと感じ取れるくらい力強い声に勇気をもらった

「そんなわけで姫様!王都からの応援が先刻到着して、お爺様と一緒に出撃予定です!ありがとうございます!」
希望に満ち溢れた清涼のある声で元気に嬉しそうな声が車内に響き渡る
「ええ、間に合ったみたいで良かった、かなり早くに動いてくれて感謝しかないね、本当に今度、会ったらとびっきりの可愛い服きて肩でも揉んであげないとね、任せたよ団長」
ぁ、さらっと丸投げされた気がするけど?
「ええ、そうですね、此方は大きな動きはありませんが、先ほど、連絡を取った際に人型の魔力が尽きたみたいで肉弾戦に切り替わったみたいで、ベテランさんが対処しています、そのほかの部隊では、今のところ人型との接敵はありません」
あれ?さらっと完全に私に全て接待を丸投げされたのが決まったみたいだけど?
「接敵は無くても!会敵してからじゃ遅いからね!ちゃんと索敵して自爆型の強襲に備えることわかった?ちゃんと通達してね?あと、その時の責任者に全てが終わったらレポートという名の反省文書かせるからって伝えといて!」
「はい!伝えておきます!元隠蔽部隊のTOPに!」
その言葉を聞いてぁぁーっと全員が項垂れる、誰だよ!あいつに指揮を取らせようとしたの!!

「…私、それ許可してないけど?」怒気を含んだ声で話しながら怒気事、伝えんと言わんばかりに通信機を掴みだす
「はい、全員が反対してたんですけど、いつの間にか、1部隊を乗っ取られてしまっていたみたいです」
ああ、もう!!色を出すな色を!!!どうせ、今回の件で実績を上げたから再度隠蔽部隊のTOPに躍り出るとか欲をかいたんでしょ!最悪!!帰ったら全部隊の幹部からお仕置きだよ!!
どんな時でも予想外な出来事ってあるみたいで姫様のこめかみに血管が浮き出てる…
「あんにゃろぉ、そんなに前線に出たいのなら、デッドラインに特攻させたろかい…」姫様、顎が前に出てる出てる、しゃくれてるよ・・・

「今、通信しても大丈夫かい?」もう一つの通信機から声が聞こえてくる、宰相のだ
「ぁ、はいー大丈夫ですよー」瞬時に外行の声に切り替わる姫様、切り替えが早い…
「王都から応援がきてね、そちらの方向に魔石を持たせて走らせているのと、術士も2名ほど融通してくれたみたいで魔石と共に向かってます。魔道具の予備があればよいのですが、ありませんか?」
術士が来てくれるのは凄く助かる!
「申し訳ありません、最前線の街でも、あの数を作るだけしか時間が無く、予備は無いので、私とこに寄こしていただいた応援の方と使いまわして作業を行いますね」
悔しそうな顔をしている、たぶん、姫様的にも魔石から魔力を取り出す魔道具は大量に生産したいのだろうけれど、予定よりも生産が間に合わなかったのが悔しいのだろう。
「そうか、それじゃしょうがないか、こちらは現状、問題は無いが、本当にこのままで大丈夫かい?…僕的には不安なのだけれど、姫様が警戒している敵ってのが本当に、出てこないのかい?」
…そうだよ!未知なる獣の存在!…大丈夫なの?
「ええ、私の予想通りであれば、あいつは出てこない、今回の南と北、同時進行しているにも関わらず、攻めの一手を打ってこないので確信が行きました、あいつらは」

臆病者だ

「お、臆病者です、か?」驚きというか困惑した声が聞こえてくる
その反応が正しいと思う、臆病者?一体ですら此方が滅びそうな程の強力な人型を用意できているのに?
「そう、だから、海と大穴の獣、この二つは最終局面…追い詰められないと出てこない…もしくは、ううん、これは確証がないから、何とも言えないかな…」
その後、小声で、星の命って聞こえたけれど、どういう意味だろう?

「そうであると此方としても皆様が壁を創り終えるまで砦を維持し続けて、ここから先、北へと進ませなければいいだけですからね、建築予定の壁近くに住まう領主たちにも御触れをだして、敵が攻めてきたときに備えるように声明を出していますので、今日か、明日には領主お抱えの軍隊が壁を創るための場所に陣を築いていると思いますよ」
本当に人類一丸となって生存するために協力することになるなんて、夢にも思わなかった。

「助かります、一番の懸念があるとすれば、獣の軍勢が南の砦以外から進軍することですからね、たまたま、北に向かって行く途中にある砦が一番人が多いっていう理由だけで攻めてきている可能性が高いので、他にも人がいるのだと感知されてしまうと、獣の軍勢が分かれて進軍する可能性がありましたので、ご協力感謝します」
通信機の前で相手には見えないのに頭を下げる、その誠実な姿勢はきっと相手にも伝わっていると思いますよ、姫様。

「そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ、今こそ、王族の力を満遍なく振るう必要がありますからね、本来であれば、王がその判断をし采配を振るうはずであるのに、アイツは何もしようとしない…何故、あんなのが王になったのか…いえ、失礼しました無礼なる発言をお許しください」 
宰相の口から絶対に零れてはいけない言葉が聞こえて、やっぱり、王族同士でのいがみ合いは終わりを告げたりはしないのだろう
「今の発言は聞かなかったことにするから、私の発言も聞かなかったことにしてね」
すぅっと鼻から息を吸うと
「私の方が何倍も王様に相応しいと思うけどね!!あんなのに比べたら何倍も国力増強に貢献してるし?農民だろうが貴族だろうが、遍く全ての人に生きやすい時代にしたと思うけどなぁ!!そう思うでしょ?」
盛大な愚痴が飛び出す、よりによって宰相という立場の人に聞かせてはいけない特大の愚痴を、これが王様の耳にでも入ってしまえば、不敬罪&王家転覆を考えた謀反の罪で裁かれちゃうよ
「ふはは!いいですね!僕もそう思いますよ!…貴女こそがこの大陸を統べる王に相応しい…民衆も貴族も、王族だって認めていますよ…でも、貴女の体がそれを許さない」
笑ったと思ったら最後は悲しそうな声に切り替わる
「そう、私では絶対に王へと至れない…っさ、茶番はここまでにして、何か、他に報告ある?」いつも通りに話を進め、いつも通りに話の主軸を取り、何時だって姫様のペースに巻き込まれていく
「いえ、場を和ませていただき感謝しかないですよ、貴女にはつい、本音が漏れてしまいます、不思議な感じですね」
宰相ともあろう人がこんなにもフランクに心許せる相手はいないのだろう
「あら~ごめんなさいね、私の趣味じゃないのよねーもう少し鍛えぬいてから口説いてもらえますー?」
何処に口説き言葉が?ぁ、本音が漏れるっていうことは、嘘偽りなく普段通りに接することが出来る特別な人って意味になるのか!社交界わかりにくいなぁ…
「ち、違いますよ!僕だって相手を選べるのなら年上が好みですからね!通信切りますからね!」
からかわれているのがわかり、尚且つ、敵わないと判断したらすぐに撤退する、頭の回転の速さは流石は宰相ってところね

ふぅっと呼吸を整えながら水分を飲んでいる姫様に
「説明ってもしかしなくても、殆ど終わっちゃった?」
確認すると水を飲みながらこくりと頷いてくれる
ぷはっと吐息が漏れると直ぐに
「だね、不安だった戦力不足、北への戦力補填として、団長のお爺ちゃんに頼っちゃった、南に関しても宰相が陣取っている手前、王都からは応援が直ぐに次々と駆け付けてくれるだろうし、宰相からの一声さえあれば、地方領主なんて首を縦に振るしかないもの、宰相をおびき寄せるためにも、あの魔道具を使っておきたいってのもあったけれど、いい具合に策がはまってくれて僥倖かな、今のところ、順調…かな、不安は山ほど残っているし問題も山積み、幾ら敵の総大将が攻めてこなくても…敵の切り札はそれだけじゃないもの」
切り札が他にもあるってこと?

「女将」唐突に声を掛けられてびくっとしている、女将の方を一切見ないで声をかけたらそりゃ、驚くよね。
「ど、どうしたんだぃ?」急に話を振られると思っていなかったので驚きながらも返事をしている
女将の方を見ないで言葉を続けていく、その顔からは感情が読めない
「あの時に戦った敵が、攻めてきたら・・・砦は、私達の街は・・・何分持つ?」
あの時の敵?どの敵だろうか…女将は数多くの敵を倒してきている

「…嫌なことを聞くねぇ、もって5分じゃないかねぇ?…あれは違い過ぎる、全てにおいて人類が叶う相手じゃない、姫ちゃん、いや、姫様はアイツが」
その先の言葉を言い淀む様に唾をごくりと飲み込んだ女将に姫様は冷静に告げる
「いる、確実にいる、アレ一体なわけないじゃない、私の予想だと、未知なる海の獣が南の砦を攻めきれず、壁が生まれてきたら切り札を切ると思う、壁が完成しきるまで投入されないのを祈っているけれど、壁が完成する前にアレが投入されたら手も足も出ない」
その言葉に女将の額から汗が湧き出てきて、手が震えている
「な、なさけないねぇ、あれと戦ったときのことを思い出すだけで震えが、悪寒が、全身から湧き出て、止まらなくなるのさ、これのせいもあって、引退を考えたんだけど、やっぱりまだ…決意を固めたってのに、アレを目の前にして動ける自信が無い…恐怖ってのはなかなか、厄介だったんだねぇ…」
女将がこんなにも恐怖を露にし、溢れ出る汗は冷や汗、恐怖や、焦りを感じた時に自然と溢れる緊張の汗
それ程までに強い相手が攻めてくるという新たなタイムリミットがあるなんて、想像だにしなかった。

「うん、ここからは速さが大事になるよね、アレと戦ったことがある女将が、そうまで恐怖を刻まれている絶望的な相手、下手をするとそれ以上の駒がまだまだ温存しているはずだから」
そんなにも強い敵がいるのなら、どうして、今の今まで攻めてこなかったのだろうか?
その質問は絶望に繋がるとしても、好奇心を抑えることが出来なかった、自然と手を挙げて質問をしていた
「どうして、そんな戦力を温存なんてして、一気に攻めてこなかったの?」
この質問に姫様は深く考えた後、ゆっくりと姫様なりの推察を話してくれた
「ここからは、確証はないけれど、世界に起こりえた可能性が高いことを説明していくね」

①どうして、未知なる海の獣を見つけることが出来なかったのか

私が警戒していて、海で漁をしている人達全員にお願いしていても見つからなかった理由
単純に、その場所を通らなかっただけ、北の大穴から南にいかないでさらに北上してこの大陸沿いを通らないで、まったく警戒していない大陸へと迂回して私達から最も遠い人類から滅ぼしていったんだと思う

②では、何故、その選択肢を選んだのか

寵愛の巫女は始祖様と共にある、だからこそ、始祖様の凄さを目の当たりにしてきた。
始祖様が敵を討ち滅ぼした威力はすさまじく、それを目の当たりにした大穴の獣は、始祖様のその絶大なる力に恐怖したと考えるのが妥当だと思う
更には、その始祖様のお子様たちが地形を変形させる程の大暴れをしたものだから、大穴に潜む敵は更に恐怖してより深く潜り
戦力を蓄え続けたのだと予測しているの。

大穴に潜む敵は、私達を恐れている、まだまだ、始祖様のような非常識な力を持った人類が数多く、この大陸を牛耳っているのだと勘違いしている可能性がたかい。
何故、そのような勘違いが起きたのか?

一つが、王族の血
王族の中に色濃く眠る始祖様の血に恐れをなしているのでないかという考察がある

二つが、デッドラインでの遠征による結果
長い年月が経って攻める機会を伺っていた時に、突如、デッドライン上に放っていた極上の人型がたったの一人の人間が、放った 一撃 で絶命した

この部分だけ見れば、大穴にいる敵からすれば恐怖を感じているはずだよ
だってさ、手塩にかけて育てた極上の駒がモノの一撃で死んだなんて、信じられる?
始祖様の放った神がかった一撃を見てきた大穴の獣からすれば、まだまだ、人類は脅威に値すると考えているのだと、私は考察している。

特に今回の状況になって、海も大穴の獣も姿を現さない時点で、相当、人類に恐怖を抱いていると思われる
だって、アイツらが何度でも生まれ出ことが出来るのなら、始祖様が仕留めた、天・地・宇の三体が既に、再度、生まれているはずだもの

それが無いということは、あいつらは一点物である可能性が高いと予測できる
だから、死ねない

アイツらに何かしらの目的があるのだとすれば、死は許されない
仮に海の獣が、海でしか活動が出来ないのであればなおさら、前に出るわけにはいかない、その目的を果たす条件が海では叶わなかった場合
大穴の獣は出るに出れなくなる

③この大陸以外の人類が滅んだから、その時に用いた軍勢を南に解き放った

だから、タイムラグがあった。
第一陣を放った後に、海の獣が陸地を闊歩できるのであれば、出てくる可能性が高いと最初は思っていたけれど
第一陣があっさりと倒されても、姿を見せないで、第二陣を送り込むと、ほぼ同時期に北からも獣の軍勢が攻めてきた

確実に、第一陣が滅んだのを見届けてから、一度北に戻り、兵を確保しに行くと同時に北からも責めるように口裏を合わせたのだと考えるのが妥当じゃない?

第二陣に毒の対策も何もなしに突撃させる辺り、兵に対して情はない、つまり、数はまだまだ多くあるという事
そして、敵はその獣達ではこの砦を突破できないと考えている

④では、何故、攻撃を続けるのか?

怖いから人類が、ううん、始祖様の血を引くこの大陸にすむ人が怖い

物の試しに一度手を出してみたら、思っていた以上に人類が逃げまどい死にゆく姿を見て、海の獣は調子に乗ったんだと考えている
このまま、獣の軍勢が人が営む街を殲滅してくれれば、何を恐れていたのだと過去の自分を嘲笑ったのだと思う

だけど、結果は、砦の手前で全滅

海の獣は調子に乗って攻撃し過ぎたことに恐怖を覚えている
なので、少しでも数多くの駒を用意して突撃させその間に、自分は逃げる算段をつけるのか
それとも、北の獣と策謀して、同時進行し戦力を分散させるために動いたのか
この辺りはよくわからない…

だけど、わかっている点は一つ

恐れ

怖いから、人類の力を恐れているからこそ、見極めようとしている、私達に獣の軍勢を退けるだけの力があるのか
そんな時に、私が放った光の一撃を見て、更に恐怖している…はず
迂闊だった、本当に迂闊だった、あれはやっぱり最後の、本当に最後の切り札にするべきだった、相手を誘い出して光で貫きたかった
相手がそこまでこちらに対して警戒しているなんて思っていなかった

犠牲を覚悟で、アレを使わない選択肢を取れない私の覚悟が、良くない未来を良き寄せてしまった…
だから、私は常に一手遅い

犠牲を良しとしないから…
だから、相手の後を取ろうとする、失いたくないから…それなのに失ってばかり、もっともっと…もっと!攻めに転じていれば、助かった命は多かったとずっと後悔している

だってさぁ、獣の軍勢を率いて他の大陸を攻め滅ぼすような好戦的な獣だったら、他の大陸を一緒に攻め滅ぼして調子に乗りに乗ってた一団が死んだらさ、血気盛んなタイプだったら、頭に血が上って、前に出てくると思うじゃん?こないんだもん…完全に予想を見余った、選択肢を間違えた…

なので、敵からすれば死んでもいい、替えなんて幾らでも用意できる雑魚の軍勢を突撃させて、どの辺りまで耐えれるのか人類の強さを確認している可能性があるんじゃないかなぁって推測してるの

そして、北も南も、用意した雑魚を全部蹴散らされたらどうする?

私だったら、疲弊している間に、特別性を放ち鏖にする…

大穴から絶対に出ない程、臆病なやつが切り札をデッドラインに単独でうろつかせる筈がない、他にも複数いたはずよ、自分の身を守るために。
きっと、デッドラインで極上が一撃で死んだのを見て引き下がらせたと、私は考えてるのよね


だから、その切り札が本格的に人類殲滅に導入される前に壁を創る、アイツらが超えにくくて破りにくい壁を…
時間が欲しいの、今の人類じゃ、そいつらに太刀打ちできない…

時間さえあれば、人類はアイツらに勝つ術を得るはずだから

「だから私は、人類に時間を与えたいの、希望を生み出す時間を…その為なら犠牲は厭わないつもりだったんだけどなぁ…」
それが出来ないのが私のダメなところだよねっと申し訳なさそうな顔をしている。

「後ね、確証が得れないから何とも言えないのだけれど、400年も生き続けることが出来るのかっていうのも謎なのよね、姿を目撃していないから、実は400年の間に代替わりを何度もしていて、その都度、人の恐怖を教わってきて、それが誇張され膨らんでいき、より強く恐怖が魂に刻まれ、それすらも引き継がれているっていう可能性もあるのよね」


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