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とある人物達が歩んできた道 ~ 心、触れ合う ~

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それにしても、予想外だったわ、あいつがまさか子供を置いて旦那や従業員に任せるなんてね、ああ見えて責任感も強いし、自分で出来ることはやり遂げたい人で、誰かを頼りにするっていう感情を持ち合わせていたのねってくらい、ちょっと頑固な部分があるのに、誰かを頼りにするなんてね、まぁ、それは良いとして、普通に貴女しか出来そうもない仕事もしてるなんてね。

それにしても予定が大きく変わりそうね、今から、この何もすることが無い場所で夜まで、待つのも、ねぇ?ちょっとやることが無さ過ぎて辛くないかしら?

だからといって、あいつがいる場所まで歩くとなると…教えてもらった場所と方角から見ても、そうとう距離あるわよね?
姫ちゃんを背負ってまだまだ歩くの?…さすがにちょっと、辛いわね、でも、街に戻って仕事して、また、夜になったら、ここに来るのも辛いのよねぇ…地味に遠いのよ。

本日の予定を、自分の体力、現場の状況、姫ちゃんの容態を考えてどの選択肢を取るのか考える、これが一番、楽っというか、ましよね。

…ここで待つ方がしんどいわね、それなら歩いてあいつのとこまで行くのが一番いい気がするわ。何もないとこで好奇心の塊である姫ちゃんがここでじっとしているわけがない、足が痛い姫ちゃんは確実に私を足の様に扱う可能性が非常に高い、どのみち歩かされるのなら、あいつが仕事をしている場所まで歩いたほうがいいわ。

そんなことを考えながらも、旦那との話を一段落つけ、姫ちゃんにあいつがいる場所まで行きましょうと声を掛けあると、頷いてくれる。
旦那さんに具体的な今日作業している場所を教えてもらって向かおうかと思ったのだけれど、赤ちゃんがいる新婚さんを訪ねておいて、赤ん坊を見ないのは、常識的に考えて良い印象を与えないわよね。

それに、姫ちゃんの情操教育に良いかもしれないし、声を掛けて許可を頂けるのであれば、赤ちゃんの様子を見て行きましょう。
「あちらの木陰の下にある、揺りかごが見えますけれど、そちらに赤ちゃんが寝ているのですか?」「はい!ぜひ、顔を見て行ってやってください!」
満面の笑みで勧められるわよね、わかってはいたけど、まぁ、寝ている赤ちゃんですし、一目見てからアイツが開拓している場所まで歩くとしましょう。
姫ちゃんに一目見て行きましょうっと声を掛けると、固まった笑顔のままで頷くけれど、貴女…さては、興味がないわね?目が笑ってないわよ?張り付いた笑顔でも感情を隠しきれていないわよ?

赤ちゃんの方へ向かって歩き始めるが、違和感が凄い、普通に考えたら、赤ちゃんを見ると言って大切な赤ちゃんに赤の他人が近づくのなら当然、一緒についてくるわよね?
どうしてか知らないが、畜産の旦那が付いてこないけれど?どうして付いてこないのかと振り返る
「すみません!収穫している作物を早く収穫しないと予定に間に合わなくなるので!急がないといけないので!」
振り返ると、さっきいた場所よりも少し離れた場所で作業していた。

…私達を信頼しているからこそ、ってことで、さらっと寝ている赤ちゃんのご尊顔を拝ませていただくとしましょうか。

畜産の旦那との距離が開くと手を繋いでいる姫ちゃんが腕を引っ張ってくるのでどうしたのかと見てみると、ちょっとつらそうな表情をしているので、しゃがんで抱っこする。
先ほどまではおんぶスタイルだったけれど、赤ちゃんを見るのであれば、お姫様抱っこに近い形の方が覗き込みやすいからね。

抱っこした時に足が痛いのか確認すると、辛そうに頷くので、たぶん、筋肉痛になっているのでしょうね。
我慢出来て偉いわね、今の表情を見ている限り、結構痛そうな表情をしているし、表情を崩した瞬間に汗が浮き出ているもの、商談の時に心配かけないように必死に我慢していたのね。

音を立てずに近づき、寝ている相手を起こさないように、ゆっくりと揺りかごを覗き込むと、綺麗な顔立ちで、あいつとは違い、普通のサイズで小さくて可愛い女の子が気持ちよさそうに寝ていた。
うん、何処からどう見ても旦那さん似ね!!あいつにひとっつも似てないわね~、もっと大きな大きな子供じゃないかって思っていたけれど、何度見ても、普通の女の子って感じなのよね~。
姫ちゃんも覗き込んでみているけれど、何も表情を変えないので「可愛い?」っと、質問をしてみると「う~ん、弟や妹を思い出しちゃったって感じかなー」淡白な返事が返ってくるじゃないの。
嗚呼、そうか、そうよね、弟や妹、異母兄弟がいるって言っていたわね。そうなると、姫ちゃんからすると赤ちゃんがいる生活ってのも、珍しくないのかも、しれないわね。

私からすれば赤ちゃんなんて、そうそう見ることなんてないから、ちょっとしんせ…ん…

赤ちゃんをもう一度しっかり見ようとした瞬間に見知らぬ世界が一気に広がり、ある物語があたかもその場で体験したかのように、音も映像も体感していく…高速で再生される物語によって体が膠着し動けなくなる。
「ぉ、お母さん!?ど、どうしたの」
姫ちゃんが私の顔をハンカチで拭いてくれる感触が伝わってくるけれど、何も動けなかった、何も反応が出来なかった

今、物語を強制的に見せられている私の感情は…ある一点へと収束していく、そう、湧き上がる感情は 一つだけ

悲しみと、苦しみと…恨み…身を焦がすほどの、アレへの殺意… その一つだけ

そう、貴女の記憶なのね、そう、あなたは…そうなのね…貴女の…そう、そういうことだったのね。

「ねぇ?どうしたの?どうして、無表情で涙を流し続けるの?ねぇ?お母さん?」

自然と抱きしめている姫ちゃんに力を込めてしまう。駄目よ、体は私の物よ、貴女の経験は私の脳に焼き付いたわ、だから、安心して、その時が来たら…もう、間違わないわ。
確実に私が貴女の無念を晴らしてあげる…

… ミナイデヨ …

見えてしまったものは仕方がないじゃない、貴女の思念を受け取る鍵だったのね、赤ん坊が…

「お母さん?ねぇ?意識はある?…違うよね?」
腕の中にいる姫ちゃんから、明確な殺意が、殺気が、伝わってくる、そっと、添えられる手が頸動脈へと触れられる、意図なんて決まっているわね、殺す為に的確狙いを定めているのが伝わってくる。このままでいると、殺されるわね
「ごめんね。大丈夫よ。いま、私は、私と繋がったわ、もう大丈夫、あの黒くて暗くて…闇そのもの、天から、大地から、人の身から、悪魔へと墜ちてしまった…貴女はもう、出てこないわ、ごめんね、心配かけちゃって」
溢れ出る涙を拭おうにも姫ちゃんを抱っこしているので拭えない、なので、溢れ出る涙のまま、笑顔を作り、姫ちゃんに向けると
「…もう、いなくなったの?」
姫ちゃんから伝わってくる殺意が収まることもなく、今も、確実に私の頸動脈を何らかの手段で殺せるように狙いをつけたまま、姫ちゃんが質問をしてくる。
「…いなくなってはいないわ、ただ、和解したのよ、お互いが見えている目標が一緒になっただけよ。いなくなってはいけない、カナシミを背負っていくわ。姫ちゃん、ある日が来たら私を殺してね」
止められない涙を流しながら姫ちゃんを強く抱きしめ、姫ちゃんのおでこに頬を付けると姫ちゃんから伝わってくる一撃必殺の殺気は消えていく。
「…うん、でも、その日が来ないのを願っているからね?」
その言葉に私は…答えを返すことが出来なかった。

だって、知ってしまったから、理解してしまったから、これはもう、否定することなんてできないじゃない、許されるわけないじゃない、受け止めるしかないじゃない、同意する以外の選択肢がないのよ。

全てを受け止め、内なる新たなる決意が宿った瞬間に、永遠に止まらないと感じていた涙が、不意に止まる。
ゆっくりと眠りなさい、後は私に 任せて って感じね。

私達のいざこざなんて、何のその、赤ん坊は気持ちよさそうに寝続けている、その姿を見た私たち二人が思ったことは一緒みたいね。
「この子は大きくなったら大物になりそうね」「そうだね」
気持ちよさそうに寝ている赤ちゃんにお別れを言って、二人は歩みを再開する。
といっても、姫ちゃんは歩くのがつらそうなので背負っていく形になるけど、一撃必殺の気配がちょくちょく感じるのは警戒しているから、なのでしょうね。ストレスで胃が痛くなりそうね…


教えてもらった森は、結構距離があるみたいで、定期的に座って休憩していると、通りがかった従業員の方達からお水を分けてもらったり、新鮮な野菜を頂いて、その場で食したりと、想像していた辛い道のり、よりも、辛い道のりにならず、二人でピクニック気分で歩いて行けたのが凄く良かった。
あの街で生きていると、こんなにも、ゆったりとした時間も無いし、何かを楽しむというような余裕もない、だからこそ、何か、特別な日の様な、楽しくて二人で何かをしたっていう、思い出作りっていいわよねっと、お互い今の状況を楽しむことが出来たのが凄く嬉しかった。血は繋がっていなくても本当の家族の様で。

幼い頃に、こんな風にお母さんやお父さんと一緒に遊べれなかったからこそ、こういう日を何処かで夢見ていたのだと…

休憩を適度に挟みながら進んでいく、天気も気持ちいいし、風も程よく涼しくて汗ばんだ体にちょうどいいし、良い運動にもなる!

けれど!これ、確実に私の足太くなりそうな気がするわね…

適度に細く適度に太い、絶妙なバランスで美しさをキープしていた、華麗なる私のボディメイキングに陰りが見えそうな気がしてきたわね…

っふ、女としてよりも母親として頑張っていきたいとは思っているけれど!譲れない部分はあるわね!…
帰ってからしっかりとケアして太くならないように数週間、食事にも気を付けないといけないわね。

歩くこと、軽く2時間くらい経過して漸く、木が地面に打ち付けられうような倒れる大きな音が聞こえてくる。
汗が滲むどころか、肌着がしっとりどころかべっしゃりよ…背中なんて汗が凄いことになっているでしょうね。

音がする場所まで駆け寄りたいけれど、体力にも限界があるし、何よりも汗だくであいつに会うのはね?エレガントじゃないでしょ?なので、最後の休憩をしてから行きましょう、汗がひくのを待ってから、今もカーンっと音が鳴り響き、音が通り過ぎた後に木が倒れる音が響き渡る。そんな本来であれば、私や姫ちゃんの様なか弱き乙女とは縁遠い作業現場に向かう、向かうのだけれど…

ちょっと違和感というか、気になることがあるのよね~。

私が知る限りの浅い知識だけどね、木の伐採っていうのは、普通は、木を何回か斧で叩いてからじゃないと倒れないと思うの、よね?
っということはよ、事前準備の為にある程度叩いておいて、あと一回くらいで切れる段階で放置しているってことじゃない?ある程度叩いて、木の自重である程度傾くのを待ってから、最後にひと叩きして、倒すって方法かしら?だから、叩く音が一つしか聞こえないのじゃないの?そして、木が倒れる音がするってことは。

あと一撃で倒せれるようにしている可能性が高くない?だとしたら、迂闊に近づくと危険な気がするわね。

音のする方向に向かって進めばいいって言うのが単純明快なのだけど、木が倒れてきたら運が悪いと死ぬわね、あいつも誰かが来るなんて思ってもいないだろうから無我夢中で、無心で木を切り倒していそうなのよね…

困ったわね、どうやって知らせるべきかしら?人が現場に近づいているわよっと、何かしらの方法で知らせれたらいいのだけれど、どうしたものかしら?
私の知る限りのあいつって耳は良いけれど、集中し始めると周りが見えないのよね。

音のする方向を見つめながら立ち尽くしているとポンポンっと肩を叩かれる
「何かいいアイディアがあるのかしら?」
賢い姫ちゃんの事だから立ち止まっている理由も察してくれているはず
「うん、音声を拡張するからさ、遠く広く声が届くようにするよ?だから、叫んで知らせてみる?」
あら、それは良い考えね。

姫ちゃんにお願いすると片方の手で喉を触ってくる、場所的に声門の辺りね、もう一つの手を私の口の前に親指と人差し指で輪っかを作ってるわね。
っていうか、喉を掴む手で自身の体重を支えようとしないでよ、器官が圧迫されて、苦しいじゃない…

しっかりと背負いなおして、やや前かがみになる、重心の位置をずらして姫ちゃんの重みを足と腰と腹筋で支える姿勢に切り替える…腰に来るわね…

「いいよ!叫んで」
姫ちゃんから作戦開始の合図を貰ったので、遊びに来たわよーっと何回か、叫ぶと木を叩く音が止まり、森の奥から巨体がゆっくりと姿を現す
その姿を遠目で見た姫ちゃんが「…敵?」っと、小声でつぶやき殺気が溢れようとしたので
「遠目だけで見たら最近、倒した二足歩行に見えるけれど、ちゃんと人よ、知性があるわよ…知恵と知識は無いけれどね」
ゆっくりと背負っている姫ちゃんを下ろして手を振ると、キョロキョロと辺りを見回しているような仕草が見える。
暫く手を振り続けていると、巨躯の女性がこちらに気が付いたのか、ドズンっと大きな音がする。恐らく、手に持っていた斧をその場に置いたのだろう。

ゆっくりとノッシノッシっと大股で此方に近づいてくるシルエットに姫ちゃんは怖いのかぎゅっと手を握ってくる。

恐怖という感情があるみたいで少しホッとするわね。恐怖知らず、それはそれで、命知らずと変わらない、ある程度の防衛本能としての恐怖は身に着けておいてもらいたいものよ。
視線を姫ちゃんに向けると恐怖で眉をひそめているのではなく、歓喜の顔?凄く嬉しそうな表情をしているじゃない…もしかしなくてもこの距離で姿が見えている?…
巨躯の女性らしきシルエットが手を振ると、姫ちゃんも同じように手を振る…見えてるわね、術式で視力を強化したり、しているのでしょうね。

笑顔で手を振りながら、手を引っ張る、何か伝えたいことがあるのね腰をかがめると
「お母さんの言ってたこと本当だった!凄い!あんなに大きな人がいるなんて知らなかった!筋肉すっごー!かっこいいー!!ふぅぁぁぁああぁぁぁ」
憧れの存在に出会ったかのような乙女の様な表情に溢れる感情から声が漏れ出てるじゃない、知ってるわよ、そうなるときってロマンスのときよね?
…これはもしかしなくてもこの子って筋肉フェチ?それも弩級の?…巨躯の女性と同レベルのだんせいが。このみ?…世界中を探しても居なさそうね…この子は、永遠と理想の男性に出会えない気がするわね。

ある程度、姿が見えてくると、貴女ねぇ…っと、ついつい、溜息と共に声が漏れそうになる。
スカートをはいているのに大股で歩くな!っという女性として最もな、駄目だしをしたい部分もあるけれど!貴女ねぇ!作業するときはちゃんと作業着を着なさい!

なんで、エプロンにスカート姿なのよ!そこだけ見たら普通の奥様って感じなのに!さっきまでその恰好でその場に置くだけで遠い場所まで音がする程の質量をもった大きな斧を担いでいたでしょ?その恰好で木を切り倒していたでしょう?

貴女に常識は無いのかしら?

「おーう!久しぶりじゃねぇか!!こんな遠くまで遊びに来てくれるなんてな!!」
とびっきりの笑顔で出迎えてくれるじゃない、その笑顔を通して、あの輝いた世界を思い出すじゃない、だから、面と向かってしっかりと相手をしたくなかったのよ、まだまだ、私の中にある傷は開いたままね。

それも、乗り越えていかないといけないわね。

心の傷と向き合おうとしているとつないだ手が離れ、姫ちゃんが巨躯の女性にむかって駆け出していく、あなたねぇ、足が痛いんじゃなかったの?もう、テンション上がっちゃって痛みが飛んでしまったのね。

駆けだした姫ちゃんはその勢いのまま巨躯の女性に向かって飛び跳ね分厚い胸元へと抱き着こうとする、しかし、分厚い胸板に弾かれてしまう。
姫ちゃんが空中に弾き飛ばされたけれど、綺麗に腰回りを掴み、胸元へと優しく引き寄せる、相も変わらず体に似合わず繊細な動きが出来るわね。
「おいおい、大丈夫かい?」「すっごい!!」
巨躯の女性に抱きしめられながらもテンションが抑えきれないのかはしゃいでるわね。
「久しぶりね」
手を挙げて挨拶をすると
「本当にな、噂では元気にしているみたいだってきーてたからよ、こっちは心配してなかったぜ?」
こちらに返事をしながらさらっと、姫ちゃんを持ちあげて、さらっと首後ろに座らせて、肩車するあたり、にわかには信じられなかったけれど、子供の扱いに手慣れているのね、自分の村では子供の相手をすることがあるなんて言っていた、そんな、ねぇ?嘘だと思っていた話、真実味が増すじゃない。

正直、貴女の様な肉体を持った人が子供という繊細で弱い生き物の対応が出来るなんて、思っても居なかったわ。



姫ちゃんを肩車しながら軽く世間話をする、その姿に、変わらない雰囲気に、本当にあの頃を思い出して、思い出して、仕方がないわね。

子供の扱いも馴れていそうですし、姫ちゃんも楽しそうにしているものだから、その様子を見ていたら緊張の糸が切れたのか。どっと、疲れが押し寄せてくる。
姫ちゃんを背負いながら歩き続けてきた肉体も少々、疲れているなと思っていたけれど、思っていた以上に疲れていそうね、帰りの事もあるし、少し木陰で休ませてもらってもいいかしら?
その間、姫ちゃんのお世話をお願いすると「それくら容易いさぁねぇ」っと、笑顔で引き受けてくれた。
遠慮せずに、木の根元に座って足を伸ばし軽くマッサージをしながら姫ちゃんから貰った回復を促す術式が刻まれた陣を太ももにあてて起動する。

視線の先では、先ほどまで木を切り倒す為に振っていたであろう大斧を肩車をしている姫ちゃんに見せていた。

見覚えのある大斧じゃないの、片方が槌で片方が斧、貴女の得意とする得物じゃない…
敵を蹂躙するための武具、それを…木を切り倒す為に使っていいのかしら?その武具って王都にいる意匠作よね?物凄く高価な得物じゃなかったかしら?…手に馴染むから、あれがいいのかもしれないし、あいつの力に耐えれる逸品があれしかないのかもしれないわね。

足の痛みも引いて喉かな木漏れ日の中、風も心地よく、周りから漂う木々の香り、死の危険から遠く、本能からこの場所は、安全だと心の底から感じれる、そんな世界に包まれていくと、自然と瞼が重くなり、意識がゆっくりと消えていく…木漏れ日から聞こえてくる自然の歌声、その音に誘われる様に心地いい眠りについてしまっていた。



大きな音が聞こえ、お腹に響く様な地響きが伝わってきたので、ゆっくりと、目を開けると音の正体が何か寝ぼけた眼で見つめる。
どうやら、木が倒れる音で目が覚めたみたいね、足を動かそうとすると私の太ももをベッドにするように上に乗りながら、お腹に頭を乗せて気持ちよさそうに姫ちゃんが寝ている、空を見てみても、お日様は真上辺りにあるあたり、寝てしまってから、そんなに長い時間経っていないわね。

ゴドンっと音がしたので視線を音がした方向に向けると、もう一つゴドンっと音がする。

切り倒した大木を両脇に脇に抱えて運んできては、特定の場所に木材を置いているって感じね…
その姿を見て出てくる感想なんて一つしかない、流石としか言えないわね、あのサイズの巨木を一人で、しかも二つも同時に運ぶなんて、人間やめてるわね、普通であれば、紐か何かで巨木を縛って、牛、もしくは複数人による大の大人が引っ張って運ぶものじゃないの?

手をパンパンっと叩きながらふと、此方に向かって視線を向けてくるので手を振ると、此方が起きていると木がついたのか、こちらに向かってゆっくりと歩いて来る

傍に来ると、どすっと座って、いつの間にか用意されていたバスケットからパンを取り出して食べ始める
「腹減ってるか?」
すっと、長いパンを差し出されるが、正直のところお腹は空いていないのよね、道中で休みながら歩いて来てるときに、たくさんの取れたてのお野菜を従業員の方達からわけて頂いたのでお腹は減っていないのよね、その事を伝えると驚いた表情もなく、さも当然の様な笑顔でパンをかじりながら
「みんな、優しいだろ?」
はにかむその顔は、完全に戦士というよりも女性としての表情ね、あの時、ちらっと見た貴女の女性としての表情、今も同じね、幸せそうで何よりね。
「ええ、とても良くしてもらったわ、ここの作物が美味しいのは知っているけれど、採れたては、また格別だったわよ」
思い返しても本当に美味しかった瑞々しいっというのはまさにあのことを言うのだと、野菜から豊富な水分を摂取できるなんて想像できなかったわ。
「だっろ~?自慢の畑さ、ここは、本当に…」
自慢げに語りたいのか辺り一面を見渡した後「最高の場所だろ?」嬉しそうに自慢してくる。ええ、最高ね、静かで安全で、この世の楽園と言われたら納得してしまいそうになるわ。

「今、楽しい?」
帰ってくる答え何てわかりきっているのに、聞いてしまいたくなる、幸せそうな表情をしているのに、聞く意味なんてないのにね、声で、言葉にしてもらって確かめたくなるのよ。
「ああ、楽しいぜ、あたしはさ、やっぱり、闘いよりも…」
静かに震えてる右手を、ぎゅっと左手で震える手を抑えるように握りしめている…そうね、貴女が育ってきた環境、若い頃にしていた仕事、木こりって言っていたわね、一歩踏み出せば殺意で溢れていて、人を見つけるや否や襲ってくる、明確な殺意と殺気を込めて突撃してくる、そんなやつと闘う為に人生を歩んできた人じゃない、自然と対話し、自然と共に生きる生活をしてきた人よ。根っからの戦士じゃないし、根っからの戦闘狂ってわけじゃないものね。

そんな人並外れた体躯という、戦士なら誰しもが羨む体じゃなく、ありふれた女性の体だったら、よかったのにね。
「そうね、貴女は心優しく穏やかな人だものね、貴女はここに居なさい、私が守ってあげるから」
ポンポンっと太ももを叩いてやると「運動も大してしてねぇ、その貧弱な体でか?」脇腹をつまむんじゃないわよ!!たるんでない!たるんでないぃ!!

ペシっと脇腹を積まむ手を叩くとわりぃわりぃっと本当は悪いなんてひとっつも思ってないくせに謝るんじゃないわよ、まったく。

「それはそうとよ、この子ってさ、どうしたんだい?噂の姫様だってのはわかるけどさ…えらい」
言いたいことはわかるわよ?私が子守なんてがらでもないって言いたいのでしょ?
「私のね、見た目が、この子のお母様に似ているところがきっかけでしょうね」
気持ちよさそうに寝てる姫ちゃんの頭を撫でながら、事の経緯を説明していく。

「そうか、んじゃ、あんたもあたしと一緒でお母ちゃんになったんだな」
そうよ、今の貴女と同じように穏やかな笑みを、女としての幸せではなく、子を育てていく喜びを知ってしまった母親になったのよ。

穏やかな昼下がりに、旧友であり、戦友であり、同じ人を愛した二人はゆっくりと会話を続けていく。

お互いの未来を語ったり、愛する旦那の愚痴とか、凄いとことか、今も惚れ直してしまう話とかね、ちゃっかり惚気てんじゃないわよ、ったく。本当に、変わったわね、あなた…
いいえ、本来は今の姿が性根にあっているのでしょうね、張り詰めたような緊張も無く、心穏やかに自然と対話するその姿勢こそが、本当の貴女なのでしょうね。

こんな世の中じゃなかったら、私達はきっと出会うことは無かったでしょうけどね、ほんっと、皮肉も良い所ね…気の合う仲間に出会ったのもこんな時代だからってね…
平和だったら、私は騎士様に心惹かれたのかしら?平和だったら、私達は騎士様を愛さなかったのかしら?…考えるまでも無いわね。きっと、私達は何処かで出会い、騎士様に心惹かれてたでしょうね。

不思議ね、最初見た時は、相容れぬ存在だと思っていたし、ライバルだと思っていたけれど…
お互い、気を許しあえるような間柄になるなんてね。

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