最前線

TF

文字の大きさ
上 下
145 / 214

とある人物達が歩んできた道 ~ 待ち受ける試練 ~

しおりを挟む
机の上に一晩で用意された貴重な資料、その全てに目を通さないといけない。
その過程を考えると頭を抱えたくなる、それくらい大量に置かれた資料、その一つ一つ漏らすことなく目を通していく…

資料を読んでみてわかったこと、まず第一に、前回の封印術式とは大きく異なる点がある、それは、詳細や材料等、必要な物が全て細かく書かれている。

前回と違って今回は、優しいじゃないって考えるのは間違いね。

内容が易しくないし、優しくもない…

用意しないといけないものが本当に!容赦がない!
これを、実現するには幾らの予算が必要なのよ?絶対に必要なものだと、経験上確信できる、理性的に考えてもこれは必須だと理解出来る。
こんなにも、画期的な方法があるなんて、驚きという感情しかない。

私達…医療班全員が…いいえ、医療に携わる全ての関係者が集まって研究したとしても、発展してくと思われるペースがある程度は想像がつく、その想像がつく今のペースで考えてみる。
医療という枠組みを強化拡張し、発展していっても永遠に届かないと思う、この用意された資料の域に私達が…到達できるとは思えない…

姫ちゃんという神に愛されし才能、それ抜きで、資料に書かれている治療方法、特殊な素材の活用方法、これに気が付き、幾度となく実験を重ね、実用段階まで成長させるなんて…

医療班の世代を100代重ねても…実現不可能よ

未来姫ちゃんの世界は何処まで発展してるのよ?…癒しと言えば聖女様よね?実は、聖女様からの情報とか?それとも地球では、これが普通なの?

自身の細胞から筋肉、骨、臓器を培養することで事故やケガ、病気における失われし臓器を復元する方法
大きく出血させない、つまり開腹しないでも、開腹していると同じ状況を作り出して損傷、または、病気によって切除しないといけなくなった臓器の切除
更には、魔道具を使っての部分麻酔や、他にも数多くの考え抜かれた新時代の医療技術

最たる例が、【浸透水式】…これが実現可能だとすれば
今後、この街では死者が出ることは無いのでは?怪我による引退も無くなりそうね。

この資料に書かれていることが、真であるのあれば…爪や髪の毛などの素材さえあれば、そこから肉体のデータを手に入れる事により、自身の体と同じ物質として培養、復元が可能、それが可能だとしたら全身、作れない?培養できる可能性があるわよね?…

出来るわね、私が研究しているテーマ、第三の秘匿してきた研究… 始祖様復元 …っという神をも恐れぬ、人類救世の研究が…

そう、騎士様を救うためには、人類を救う必要がある。そう、考えた私が、辿り着いた極論
実現不可能な空想物語、研究していたって大層に言ってるけれども、実際は、現実的に考えて1%も可能が無い、そんな、どう足掻いていもどうやっても考えるだけ無駄って笑っちゃうほど、阿呆が考える、机上の空論よ?

騎士様が死なないようにするにはどうすればいいのか?
└騎士様よりも強い存在を誕生させ、獣達を殲滅してもらう

騎士様よりも強い存在とは?
└始祖様

っという、短絡思考もいい所よねっていう、考えよ。
夢物語を考えただけなのよね、一応、ある程度は考えたからにはね、ちょこちょこっと、色々とは、調べてみたのよ?念のためにね?
まぁ、直ぐに不可能だと悟って放り出した研究テーマよ。

その研究テーマが、もしかしたら、実現可能なのかもしれない、そんな淡い期待を抱いてしまう。
何故なら、王都で信仰深い人なら一度は耳にしたことがある、とある噂があるのよ、まぁ眉唾物だと私は思っているわよ?

噂では、教会の宝物庫には始祖様の髪の毛、とか、爪とか、そういったものが保存されているという噂がある、それが本当に始祖様の物であれば、そこからデータを取得して、肉体という器は用意できるんじゃないの?…

考えれば考えるほど、可能性はゼロじゃなくなってくるわね、私と姫ちゃんの立場を最大限に活用すれば、閲覧くらいはさせてくれるのではないかしら?

閲覧して仮に、存在しているのであれば、そう、現物さえあるのがわかってしまえば…

入手することは可能よね?手段を問わなければ…っふ、実行してはいけない、邪な考えがよぎってしまうわね。

犯罪行動の中でも見つかれば即極刑&打ち首っという、危険極まりない内容、危険思考な考えを頭から離れさす為に、未来姫ちゃんの資料に再度、目を通していく。



集中して資料を読み漁っていくと、膨大過ぎる量が故に、朝とはいえ、頭が疲れてくる。
それだけじゃない、年のせいか、連日の事務作業で目が疲れているのか、資料を見ていると目が痛くなってくるし、目が霞んでくるから、文字が読みづらい。
取り合えず目覚ましの紅茶でも飲もうかとお湯を沸かしに立ち上がって向かうと
「うああああああああああ」
物凄い叫び声と共に姫ちゃんが起きたので驚きながら姫ちゃんの方に視線を向けると、私を見つけるなり飛び起きてしがみついてくる。

力強くしがみついてくるわね…
怖い夢でも見たのかしら?

全力で泣き叫びながら何度も何度も私の名前を呼びながら、頭をこすりつけてくるなんてね…
怖い夢をみて飛び起きて甘えてくる、そこだけを見て考えると、まだまだ、子供ねぇって、微笑ましくなるじゃない。

膝をついてしゃがみ、姫ちゃんのお尻に手を添えて抱き上げてから、体にしっかりと密着させるように抱きしめてあげる。
すんすんっと鼻を鳴らしながら耳元で、死んだらいや、駄目、死なないでとぐずってくるじゃないの。

大丈夫よ、私は…死なないわって、慰めてあげたいけれど、私に待ち受けている未来は…死ぬ未来しかない…

自分自身でも、その答えを真っすぐに応えることが出来ない、死なないっという言葉は、言えない…嘘だと自分自身でもわかっているからいう事が出来ない。
この子には、出来る限り嘘をつきたくない。
なので、その言葉を口から出すことが出来ない、そのせいもあって、何度も声を出そうと口をパクパクと動かしてしまう、何て声を掛けたらいいのか、私には、わからない。

わからないなら、わからないなりに行動で示す!取り合えず、体を動かして、行動であやすことにする。
ポンポンっと背中を叩き、赤子をあやすように子守唄を唄いながら、姫ちゃんの心が落ち着くまで歌う。

今回っと、言うか、ここ迄…甘えてくるっていうか、ぐずるなんて初めてで、本当に、どうしたらいいのかわからないの、どうしたらいいのかしら?泣き止む気配が無いのよ。
ずっと、嫌だ、いやだ、死なないでって、力いっぱい抱き着きながら小声でつぶやかれると…

決心が揺らぐわね、時が来れば命を賭してでも成し遂げる予定なのに、母親としての心が、この子に悲しい思いをさせるわけにはいかないって、心が切なくなりすぎて痛くなってしまう。

それにしても突然どうしたのかしら?多少の怖い夢くらいなら楽しそうに笑い話にするくらいの度胸があるわよね?それが、どうしてここまで?どんな夢をみたというのかしら?…

考えると思い浮かぶ、一つの心当たり

一つだけ、心当たりがある。

もしかしたら、未来姫ちゃんの記憶が夢となって溢れ出てきたのかもしれないわね。
可能性として、言葉の意味から導き出せる答えって、もう、これしかない、わよね?
たぶん、未来で…私、死んだのだろう…

その私が、死んだのを目撃、もしくは、体験してしまった未来の姫ちゃんが過去の姫ちゃんに向かって術式で、思念を飛ばしてきたのかもしれないわね。
あ~だからかな?私が死なないように、こんなにも医療に関する新技術ばっかり送ってきたのかな?…かもしれないわね。

姫ちゃんは私の命を心配してくれているっていうのに、自分の命よりも、秘匿している研究に意識を向けるなんて、駄目な人ね~私って…
これじゃ、まるで、非道な探求者って感じじゃないの、道徳をわきまえない人みたいで、ダメねぇ…

お~よしよしと、ずっと抱きかかえている、その姿勢が徐々に、ダンダンと寝起きのせいもあって体の準備が出来ていない為か、腰も足も辛くなってきた…っく、年は取りたくないわね。

ぽろりと零れるように落ちてしまった、私自身の言葉に、即座に自分の発言を否定する!

違う!まだ若い!連日の疲労が溜まってるだけなの!マッサージをしてもらえるお店が無いから疲労が溜まっていくだけなの!若い!!

そんな情けない、自分の発言に溜息を出しながら、姫ちゃんを抱っこしながらも、ゆっくりと、ソファーに座り、彼女が泣き止むまであやし続ける

はぁ~、それにしても、今、この瞬間が早朝でよかったような、そんな気もするわね~。
お昼ごろだったら、確実に誰かが姫ちゃんか、私のどちらかを呼びに誰かしら部屋に訪ねてくるだろうからね。

こんな状況を目撃されちゃうと、訪ねてきた相手も困惑しちゃうじゃない…

ずっと、何も考えずに、ただただ、泣き止むのを願いながら、無意識に永遠と体を動かし続ける。
背中を叩いていると、漸く、泣き声がしなくなってきた!はぁ~やっとよぉ~。
心が落ち着いたのかと安堵し様子を伺うと、寝息が聞こえてくる…こいつ…泣き疲れて眠りやがったな…

はぁ、っと心の中でため息をつきながらソファーの上におろそうかと、体を傾けようとするが…がっしりと服を掴まれているのでソファーの上におろせないじゃない!離してくれない!!

どうしたものかと考えてしまうが、もう好きにしてっという、諦めの感情が湧き上がってくる。

…まぁいいわ、こういう日があってもいいじゃない、焦るような状況でもないし、ね。
今の街は、凄く安定しているし、戦士の数も問題なし、数も問題なければ士気も問題なし、むしろ、やる気というか殺気というか、全員の目の色が…
黄金色に輝いているのよね~。

敵の体が金を生み出す原材料になるっという今までの常識を覆す新発見がね、戦士の人達のやる気を底上げしちゃってるのよね。
昔からこの街で頑張って戦ってきた献身的な戦士の人達はこの街が財政難という部分を知っているからね、だから、少しでも街の財源になるのなら!っと息巻いているのよね。

そこにね、更にやる気に繋がるような発言を…姫ちゃんが燃料を投下しちゃったのよ~

「敵を綺麗に仕留めてきたら高値で買い取るよ!!」
なんて言っちゃったのがねー…成りあがりたい王都からの若手達にとって資金ってのは重要なファクターなのよ。

姫ちゃんが、いつの間にか財務の人と掛け合ってて、皆にお給金を増やせれないか相談を持ち掛けてたらしいのよ。
でもね、姫ちゃんがこの街を、より良い物へと改築していく為に設計図やら何やらと考えて改築&開発プランを財務の人に渡しているのよね。

そのプランを実現するには、現状では、まだまだ財源が足りていないのよ。

そんな状況で、戦士の人達や、この街の職員全員のお給金を増やすのは難しいと言われたみたいなのよね、姫ちゃんからすると結構稼いだみたいだけど、まだまだ、駄目なのかっと愚痴っていたわね。

一度上げたお給金は、ずっとその高さを維持しないといけない。
下げてしまうとモチベーションも下がってしまうから、現状、取引で得られる財源と、現状、街にある財源を照らし合わせて計算していき、尚且つ、今後必要になってくるであろう予算を考えると…
お給金を増やすことは出来ないって冷静に説明してくれたらしいのよ、姫ちゃんもしっかりと計算された内容には反論しようがないから納得するしかなかったでしょうに。

少しでも外で敵と闘う危険な戦士達にそれに見合った報酬を用意したかったみたいで、出来高?歩合制?っという形で、仕留めた敵の状態に合わせて報酬という名目で、戦士達に臨時収入としてお給金を出せる、更に状態のいい、敵の素材も手に入るっという一石二鳥って考えらしいのよね。
ちゃんと考えて実行できているし、今後も、お金の取引とかで、誰が得をして、誰が損をするのか、そういう金と信頼の勘定を覚えてもらえるのは嬉しいわね。

お陰様で?戦士のやる気は最高潮だし、貴族出身の連中も成りあがるために必死だし、一部のやつらは速攻で姫ちゃんにアプローチかましてきて、騎士1号から10号までがブチ切れていたわよ。仲裁するこっちの身にもなってほしいわね…

まぁ、ね?騎士たちの言い分も最もよ?
「新参者がふざけんなと、推すのなら序列を守れ順番を守れ、俺たちを倒してからにしろ!!」って部分、ごもっともな意見よね。
私もちょっと納得してしまった部分があって、それのせいもあって、戦士達の喧嘩を止めるのに、ちょこっと遅れてしまっちゃったのよね~。
新参者が姫ちゃんに無礼を働いた瞬間に騎士たちが粛清しちゃってたわ…何名か打撲とか打ち身とか、怪我しちゃったのよね。

もう、騎士というよりも親衛隊ね…



時計を見てみると、そろそろ動き出さないといけない時間ね、姫ちゃんもここ数日、大忙しだものね、研究所に顔を出さないわけにはいかない、わよね~…
しょうがない、気持ちよさそうに寝ているけど、起こしますか。

起こして、寝ぼけている姫ちゃんを仕事着に着替えさせてっと、「さぁ、仕事に行ってきなさい!」ぽんっと、背中を押すが私の服を掴んで離さないし、一歩も前に向かって歩こうとしない…困ったわね、私も予定があるのよ、これから、医療班の方で仕事があるのよ、だけど、この状況…どうしたものか…

こういう時って、平民の皆様はどうやって子供を納得させて仕事場へと向かうのかしら?…

どうやって納得させるのか少し考えてみるが、直ぐに自分の過ちに気が付く。
この考えは違うわね、何も、離れる必要なんて無いじゃないの。一緒に行動すればいいじゃない。
私の傍に姫ちゃんがいるって研究塔の人達ならすぐに気が付くだろうし、何か用事があれば、私を探すのは簡単じゃない?医療班の団長ですもの、当然、医療班として仕事をしている、私を探すのであれば、病棟に顔を出せばすぐに見つけれるじゃない、私だったら姫ちゃんの所在を把握しているって誰しもがしっているでしょうしね。

なら、決まりね、引きはがす事なんてないじゃない、ずっと、ず~~っと、私の傍にいればいいのよ。

姫ちゃんに一緒に行く?っと優しく声を掛けると鼻をすすりながら頷く。
頭を撫でた後、手を繋いで一緒に医療班の職場へと向かって歩いて行く。

病棟に顔を出すと、予定していたメンバーが既に部屋で待っていたみたいで、楽しそうに談義をしている。
部屋に入れば、当然、目立つ。滅多に用事もないのに、病棟に顔を出さない姫ちゃんの姿は、当然、目立つ。

姫ちゃんが私の後ろで服を掴んで離さないで、怯える様にしている仕草、その姿を見て医療班の全員が心癒され和んでいる。



さて、今日の予定は、医療現場で今後、絶対に必要になるであろう技術「魔力譲渡」それに伴い、必須ともいえる技能、体内を廻る魔力をコントロールする方法を医療班の人達に伝えていく。

その最中も、姫ちゃんはずっと私の傍にいて離れる様子が無かった、医療班のメンバーも年相応っというよりも、実年齢から考えても、少々幼い行動、それをどうして、今になってするのか不思議に感じている。
こんなにも不安げに傍にいる仕草に胸を打たれたのか、守りたいという母性本能の影響か知らないけれど、殆どの人が、姫ちゃんを見て可愛い可愛いと連呼しながら目線を合わせて話しかけてあげてくれている。

全員が優しく声を掛けてくれている、その間も、ずっと眉をひそめて不安げに俯いたり、視線をこちらに投げかけてきたり、朝から変わらず、服を掴んで離そうとしない。

本当に弱々しいわね、一体、何を見たの?どれだけ怖い夢をみたの?…
尾を引くほどのリアリティのある夢、未来姫ちゃんからの情報という名の記憶、その記憶を追体験するように夢で体験したのだとすれば…

背中が寒くなり、震えてしまう。
その追体験した出来事が、実際に起こりえるってことよね?…

それだけが不安なのよね~、何が待ち受けているのよ。姫ちゃんがここまで恐怖するような内容?どう対策すればいいのよ…



その日一日は、ずっと私の後ろで服を掴んで離れなかった…
トイレの時もよ、流石に中に入らないわよ?ドアの前に立って定期的にドアをコンコンっとノックしているわよ~っと声を掛け続けたもの。
ご飯を食べている時も、研究塔に向かう時も、研究塔で今後について話し合っている時もずっと、絶対に服を離そうとしなかったわ。

私の後ろを年相応の引っ込み思案でお淑やかな女の子って感じでついてくる、私から決して離れないこの状況。
この状況を目撃してしまった、姫ちゃん騎士連合、通称、親衛隊の皆も心奪われたのか何も言わずにこちらを、いいえ、姫ちゃんを何事かと凝視していたわね…


寝るときもずっと離れないので抱きしめて寝る。
こうなったらとことん付き合ってあげるわよ!姫ちゃんが満足して安心する時がくる迄、常に傍にいてあげるわよ~…姫ちゃんの事だから、そのうち、何時ものように突然と調子を取り戻すと思うのよね~。


最初は、そんな風に軽々しく考えていたわけよ、でもね、三日も経つけれど、ちょっと困ったことにね、姫ちゃんの様子は変わることがないどころか少々悪化してしまっているのよ


寝起きは毎回、叫び声と共に起き上がり、錯乱しながら過呼吸気味になっているのよね。
私を見つけるまでは心穏やかになれないみたいで、寝起きは確実に錯乱するの。
だから、私も姫ちゃんの叫び声がすると直ぐに、姫ちゃんの傍に駆け寄って抱きしめてあげないといけない。
錯乱していると人って何をするのかわからないでしょ?だから、心が落ち着くまであやしてあげないといけないのよ。

ほんっと、気になって仕方がないわよ。心が強い姫ちゃんが、ここまで錯乱するような未来の出来事…
考えるだけで、こっちの心も不安という波が押し寄せてきてざわつく

この先に待ち受ける試練の大きさに私の心中も穏やかじゃないわ。

未来姫ちゃんも、必要な物を教えてくれるのはいいのだけれど、何を待ち受けているのかそれも、書いて欲しいものね!

姫ちゃんが、ここまで怯える様な来る日に備えて、私としては、少しでも動かないといけないってひしひしと焦るような気持ちも感じてるのよ。
未来姫ちゃんが指定した材料だけでも皆に相談して集めておかないといけないわね。

後ね、困ったことがあるのよ、日に日に、姫ちゃんの顔色が優れなくなってきているのよ、具体的に言うと、目の下にクマが出来つつある、いいえ、出来ているわ。
どうも、寝るのが怖いみたいなのよ、この子ってね、何処でもスパっと寝れるくらい寝つきがいいのよ、羨ましいくらいに。
どんな何時でも、何処でも、眠って体力を回復したり温存したりする習慣があるような子が、些細な時間を昼寝して過ごす。そんな子が、一切していないのよ、昼寝を。

習慣的な物があるから、何かを待つときとかに座って待っていると、眠そうに舟をこぐときは…あるのよ。
だけどね、眠りに落ちそうになると夢の内容を思い出すのか、突然、胸を握りしめて呼吸が乱れるのよ。
そういう状況になったら、すぐに抱きしめて、私は大丈夫ここにいるからっと何度も何度も背中を優しく撫でながら声を掛けないといけないのよ。
一度でもそうなっちゃうと、落ち着きを取り戻してからもずっと、服を掴んで離さなくなっちゃうのよね、まぁ、しょうがないわよね…

一応、周りの人達には、死の大地で活動したストレスが今になって堪えているみたいで、ちょっと、心が穏やかになっていないのではないかって、伝えてある。
この街に住んでいる人であれば、誰しもが納得する内容よ、あの大地は非戦闘員だと本当に居るだけで物凄くストレスを感じるものよ。

親衛隊の皆も心底心配してくれているみたいで、毎日、仕事帰りに一言でも挨拶をしたり、様子を見るために、足繫く通ってくれる。
1号も姫ちゃんに会いに来ては、目を合わせるように膝をついて、「何があろうとお守りします」宣言をして怖がらせないようにゆっくりと離れていく。
一応、姫ちゃんもそれに対してはしっかりと対応している、しっかりと、とは、ちょっといいがたいけれどね。

私の服を掴みながら「うん、死なないでね」っと、小声で悲しそうに言うものだから全員がその仕草にノックアウトされていっているみたいなのよね。
確かにね、儚げで切なげな仕草だもの、誰だって悩殺されていくわよ。

その成果もあってか知らないけれど、徐々に確実に、親衛隊の数が増えてきているのよね。
死の大地での凛々しい姿を見ていた人達は、ほぼ全員、今の年相応よりもやや下くらいの可愛らしい佇まいに心奪われちゃって、心酔しちゃってるのよね~。

俺が運命の騎士になるとか私に宣言する度胸は認めるわよ?でも、12歳に手を出すんじゃないわよ?後、最低でも4年、待ちなさいよ?それまでに、手を出してきたら腕を折るわよ?



しおりを挟む

処理中です...