最前線

TF

文字の大きさ
159 / 657

王位継承戦 Side-S 1日目 ① 

しおりを挟む
点呼を取り、各部隊の状況を確認良し!
各部隊に持たせた装備の点検、魔道具の発動確認良し!
今回の作戦の胆であるお邪魔虫!絶対に参加せてはいけない超重要人物!お母さんはシフト的に身動き取れなくしたので問題なし!監視もばっちりお願いしてるので良し!

全員の集合を確認、装備も問題なし、お母さんも封殺済み!!何にも問題なし。
さぁ行くよー!目指すは王都!
部隊と共に掛け声を出して、各々が出発する、私も馬車に乗り込んで発進してもらう。


不安材料があるとすれば、王都って…脳裏に過る様々な不安要素の数々…

まぁいいでしょ、読み切れない要素はぶっちゃけると!非常に多い。
だって、相手の情報が少なすぎるから、王族全ての動きなんてさ~完全に読めるわけないじゃん!
そりゃ~、ある程度は?予測できるけど?完全には読み切れない、意図は読めない…わけじゃない。最低限の思惑は推察できる、けど…
敵は獣じゃない、悪意ある人物で知恵も回るし、権力もある、そして、平民の命なんて100減ろうが気にしない相手…厄介だよね。

厄介だよ?そりゃぁもう、めちゃくちゃ厄介極まれりってね…王座に座らせないようにするならね。

逆にね、王座に座らせることは簡単なんだよ…
そう、座らせることはね、相手も喜んで座ってくれるよ、労せず欲しい席に座れるんだもん。
問題も当然ある!作戦の胆として、敵に自分の裁量で座ったと思わせる必要があるんだよね、それでいて尚且つ!長期に渡って自分が傀儡になっていると気が付かせないようにするのも大変!更に、国民という鎖で自由に横暴な政治が出来ないように雁字搦めにする…
うん、そこは、さほど難しくはない、かな?末席の彼も、その為に王座を諦めてもらったのだから…

だから、たぶんできると、思う、不安材料がたっぷりで、”たぶん”を”確実”にするには情報が必要…
未来の情報が地味にすっごく重要な局面…だから、正直に言うとお母さんが傍にいて欲しかった。

未来からの情報を持つお母さんがいれば相手の動きをかなり把握できる、でも、お母さんはダメ、前回で実感した…

あの人は呪われている…

王都に居てはいけない、その呪縛から逃れるまでは…あんな絶望が敵になっちゃったら私独りじゃどうしようもできない!なら、発動さえなければいい、邪魔させなければいい!

なんか、この言い方だと、情報だけが取り柄みたいじゃない?なんか、物扱いみたいに言っちゃったけどー、お母さんが傍にいて欲しい理由って、それだけじゃないけどね!
お母さんが居ないと魔力を激しく消費できないっていうのもあるよ?お母さんが傍に居ないと思考を加速させる術式が使えない。
あれって、思っていた以上にかなりの魔力を持っていくっぽいから、今回ばかりは使えない…思考速度は常に普通にしないとな~、まぁ、そこは皆と連携して何とかすればいいかな?…少し考えるが、ありとあらゆる可能性を潰すのは不可能、っとなると、出たとこ勝負になるので、考えるのを放棄する…

…本当の所はね、お母さんが傍に居ないと不安だよ、あの人ってさ、謙遜してなのか知らないけどさ…傍にいるだけで前向きになれる気がするの。人にやさしくしようと思える…愚かでどうしようもない人達といえど、救う価値のある存在だと感じさせてくれる。王都周辺にいるどうしようもない奴らを駆逐した時に痛感したよ。

お母さんが傍に居ないと私はここまで冷徹で残忍になれるのか、ってね…

そう、お母さんと同じように私も混ざっているのがわかる、それと同時に何かが分離しているような気がするのもわかる。
お母さんが読んでいた本「精神分裂症」恐らく私はそれになりつつある、ううん、たぶんもうなっている。

じゃなかったら、人を殺すことに抵抗を覚えるはずだもの…
未来の私は…人を殺した経験がある、それは確実だと思う。曖昧な記憶の中にその様な瞬間があったのだと心が理解している…

未来の私が伝えたいことは、ある程度伝わっているけれど、辛かった感情や情報が多すぎて受け入れるのに凄く時間がかかった…気がする。
ううん、我ながら何とも言えない感じ、やだなぁ、お母さんが傍にいないだけでこんなにも私の心は不安に駆られてしまうし、人の命なんてどうでもいいって思っちゃう。

そんなんじゃだめ!民衆の支持を得られない!親身にならないと!人の命、その重さを知ってるでしょ!…遠い昔に私が描いた夢物語には人が数多くいるのだから。
ここが私にとっての踏ん張りどころでターニングポイントだとわかってる、失敗すれば

近い未来に王都は滅ぶ

王都が滅べば、この大陸は力を失う、そうなると…考えるまでもない。
ほかの大陸にいる人達から狙われてしまう、ここぞとばかりにね!今は、人同士の争いによって人という数を減らしてはいけない!マンパワーが弱まった結果…滅ぼされてしまう。

うーん、考えれば考えるほど、どうして、私がここまできをもまにゃ~いかんのじゃ!そんな、人類の未来を背負うなんて私じゃ無理!って言いたいけれどー、お母さんの幸せのためには、頑張らないとなーやだなーしたくないなー研究所に籠って研究したいなー、なーんでこんなことせにゃーならんのじゃー!うにゃー!研究させろー!遊ばせろー!

はぁ、やだやだ…

ついつい考え込んでしまう、だって、馬車の中って何もすることが無いんだもん。
馬車に揺られながら、この先に待ち受けるメンドクサイイベントに心が病んでしまいそうになる…はぁめんどくさ~い



今回はさ~、大勢の移動で、色々と時間差を作りたいからさー、移動速度が速くて乗り心地が馬車よりもましな車を選択できなかったんだよね~。
一応は、私は徒歩じゃなくて馬車だけどさー…馬車って不便だよね、ああもう、お尻がいたいなぁ…もうちょっと良い馬車を用意すればよかった。

でも、出来ないんだよね~目立つわけにはいかないから。

私が相手どる、王族達や、その派閥である貴族達って、馬鹿じゃない限りどうにかして情報を掴もうとしてるでしょ?だから、私の情報はある程度、筒抜けているはずと想定するべきなんだよね、だから、派手に車とか、高い馬車で出向くと、私が王都に来たって直ぐに見つかってしまう恐れがある、見つかるとさ、何をされるかわからないでしょ?
警戒は大事…
だから、本当は!私が乗りたかった!予算度外視で作った、貴族に売り出す為の最新モデル!その車に私の実家に連なる偉そうな紋章をぶち込んで目立つように仕上げた囮用の車をベテランさんに運転をお願いして、王都に先行して入ってもらう。
そして、そのまま、ベテランさんのお嫁さん?奥様?の実家に真っすぐ向かってもらう手筈になってるの。

ここ迄派手に入場したら、囮って可能性があったとしても行き先を突き止めるまでは絶対に何名か監視がつくでしょ?それだけでも、敵の意識を逸らせれるし、その隙をついて監視に見つからないように赴かないといけない場所があるの、私が、いいえ、寵愛の巫女として赴きべき…行くべき場所がある。
一族の末裔として、筋を通さないといけないんだよね、今回ばかりはね~。赴くのすっごく嫌だけどね~…ぁ~ぁ、いきたくないなぁ…裏に化け物飼ってなかったら後回しにしたんだけどなぁ!!ほんっとにもう!…まぁ、これに関しては先んじて情報を得られたというアドバンテージは生かさないといけない…だって、王都滅んじゃうもん。

お尻の痛みに、メンドクサイイベントが目白押しという状況にうんざりと憂鬱な気分の状態で赴かないといけない目的の場所に到着する。
当然、秘密裏に行動するので、目立つ護衛はいないっていっても、数分すれば認識阻害の術式を起動させた状態で隠密部隊が警戒してくれる。
それに、このエリアには、確実にアレや王族の魔の手はない、断言できる場所だもの。
それだけじゃない、前回、お母さんと訪れた時に見える範囲で隠れれそうな場所とかチェック済み、刺客が潜めそうなところは土の中くらいじゃない?…墓地の中?ンゾンビ!…っは、流石にないよね?

あり得ない展開が一瞬、妄想として広がったのを頭振って振り払い、気持ちを切り替えていく。
馬車から降りる時から雰囲気を大事にしないとね、だって、これから行う為にはアカデミー賞も夢じゃない女優っぷりを見せないといけないんでしょ?うっへぇ、大変だぁ…
大変じゃない!頑張るの!軽く深呼吸して心と気持ちをスイッチを入れたように切り替える。

馬車のドアが開かれるのが、劇場が開幕の合図となる。この瞬間から、私は並大抵の人じゃない神から祝福された特別な存在という雰囲気を纏う。
厳かに歩を進め近寄りがたいオーラで歩く、だけど、何処か柔らかく親しみがある笑顔で辺りにいる人達に会釈をしながら、教会に向かって歩いていく。
開かれた門の近くで穿き掃除をしているシスターに会釈をすると、唖然とした表情で此方を見ている。あら、良い演技をするじゃない、良い引き立て役♪

その演技は正しい!だって教会にさ、白き髪の少女が唐突にアポイントメントも無しに何処にでもいるようなごく普通の馬車から降りてくるなんてね、誰も予想はしていないでしょう。この大陸では白い髪ってだけでも珍しくて目立つ上に、この教会ではそれ以上の意味を持っている。

この大陸では王族よりも大切であると、人生において、重きを置いている、そんな風に感じている人が集う場所
教会の教え…聖女様、私達の遠き祖先が築いた教えを守る場所、尊き約束を尊重し願い続けている場所。

特別な場所に特別な何かありそうな雰囲気がある、白き髪の少女が訪れるなんて、この場にいる全員が、歴史が動いたのだと、その瞬間なのだと、感じるでしょうね。

教会の門は常に開かれている、教会として、痛めるもの、悩めるものを救う為に…その教えが産まれたのが、始祖様がこの世界にやってくる前の物語、自身の命を、困窮する人達に注ぎ続けた自己犠牲の極み、捧げ続けた聖女様…その人が説いた教え

その場所に、何の因果か、末裔である私が足を踏み入れる事になるなんてね…本来であれば私が訪れてはいけない場所なんだけどね。
寵愛の巫女を知る人が見れば、絶対に踏み入ってはいけない場所に、世界に、寵愛の巫女が踏み入るのだと気が付くでしょうね。

お母様、寵愛の巫女として、最後の仕事を、お母様の無念を、晴らせれるように努めさせていただきます。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

【完結】温かい食事

ここ
ファンタジー
ミリュオには大切な弟妹が3人いる。親はいない。どこかに消えてしまった。 8歳のミリュオは一生懸命、3人を育てようとするが。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~

橘まさと
ファンタジー
脱サラしてラーメンのキッチンカーをはじめたアラフォー、平和島剛士は夜の営業先に向けて移動していると霧につつまれて気づけばダンジョンの中に辿りついていた。 最下層攻略を目指していた女性だらけのAランク冒険者パーティ『夜鴉』にラーメンを奢る。 ラーメンを食べた夜鴉のメンバー達はいつも以上の力を発揮して、ダンジョンの最下層を攻略することができた。 このことが噂になり、異世界で空前絶後のラーメンブームが巻き起こるのだった。

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

悲恋小説のヒロインに転生した。やってらんない!

よもぎ
ファンタジー
悲恋ものネット小説のヒロインに転生したフランシーヌはやってらんねー!と原作を破壊することにした。

置き去りにされた聖女様

青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾 孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう 公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする 最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで…… それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。

処理中です...