202 / 657
Dead End 6■■の黙示(2)
しおりを挟む来る日に備えて祈りを続ける日々、もう一度、愛する人に会える日を恋い焦がれる乙女のように夢にまで見て一日一日を準備の為に費やしてきた。
そんなときに貴族の方で王族とも繋がりがある教徒から次代の王を決めるために何かしらのアクションがあると親切に教えてくれた。
彼のおかげで王族の動きがある程度、知りえることが出来るのが非常に助かっており、教会としても私個人の動きとしても功を奏している。
この様な、教会が未だに機能していられるのも王族達の下らない悩みを事前に知ることにより、対策や彼らの望むような事象を根回しをしてあたかも神のお導きですと洗脳、いや、誘導してこれた成果もあり、この教会は数多くの力ある信者に支えられている
これによって多少の事はお目こぼしを頂いているし、彼らがこの教会を潰したくても潰せれないという板挟みの状況に持っていけている。
この教会を潰したいというか方針を王族は変えたいのは前々から知っているし、その理由も理解はしている、納得は出来んがな。
王族からすれば絶対的、力の権化、象徴である始祖という名の新しき力の象徴を、この大陸全土に住まう人々を聖女様から始祖へと信仰対象を切り替えようと動いている。
聖女様を崇め奉り、守り続けようという考えがもう王族にはない…その理由はわかる。
聖女様の血筋が途絶えたからだ
愛するイラツゲの血筋は消えた…ことになっている。イラツゲ様が愛する妹君を王族の目から解放するために一芝居は打ったが、私にとって聖女様はイラツゲ様以外に居ない、なので、その後については興味が無いので知る気はないので調べていない。時の流れを考えれば、妹君であろうと運命から逃れる事叶わず、寿命で亡くなっているだろう。
王族が管理する最後の聖女様は私の、私の傍で息を引き取られた…いや違う、一時的に現世をお離れになられただけだ。消えてはいない。
王族であろうと何者であろうと、見えなくなってしまえば…奇跡をその身に宿した尊き存在がこの大地から居なくなってしまった。
その様な状況であればと私とて一考はしたさ、だがな、今までの恩義を忘れて今まで信仰を捧げていた信仰対象をおいそれと変えるというのも恩知らず、恥知らずと罵られても文句は言えまいて?
貴様らに信仰心は無かったのかと、問いただしてやりたくなるのは至極当然、甘んじて受け止めるべき言葉であろう?
王族からしたら、聖女という存在は疎ましく感じていたのだろうな、始祖の様な力の権化ではなく、闘いにおいての力はなく、初代様と同程度の奇跡すら起こせないような…劣化した存在、その様なか弱き存在なぞもとより興味が無かったのだろう。
ゴミ共が…聖女様はそこにあるだけでいい、存在しているだけで尊いというのをあいつらは理解していない、わかっていない!下らぬ、何が王だ、輝く月すら血に染めようなど愚かを極めし愚劣なる存在、その様な些末な存在が幾ら王の席を変えようが世界は変わることはないだろう。
聖女様からもたらされる、人としての正しき温もり、優しさ、与えらえれた人としての正しさを忘れた愚劣共め、血を吐いて今すぐにでも絶命しろ…
俺は、忘れない彼女の温もりを優しさを、心を救ってもらった恩を忘れない。
救った貰った恩を返す為に、俺は突き進む…授かりし大いなる魔術によって、俺は成すべきことを成す、この世界に正しき神を降臨させる。
その為に必要となる触媒、彼女の骨は手元にあり、既に使用済みである。
書物による儀式が成功しているのであれば、魂をこの大地に縛り付けることに成功している筈だ…
私の血と魔力を持って儀式は成功している書物通りであれば、その証明として私が肌に話さず持っている三角形で中央に開かれた瞳らしきものが描かれているエンブレム
魔術の本が真実であれば、これの目が開いている限り愛するイラツゲ様の魂はここにある。
麗しきお声が聞こえないのは少々苦しいがそれはあの時からずっと慣れてしまったと言えば悲しいことに慣れてしまった自分がいる、だが、いつか、いつかきっとあの甘い声と共に、私の頭を撫でてくれる時が訪れるのだろう。その日が来るまで、我らは同氏と共に歩を弛めるつもりはない。後、必要なのは一つだけ
肉体だけだ
無いのは彼女の魂を宿らせるための宿命から解放された肉、彼女の魂が最も馴染むであろう肉が世界に産まれ落ちるのを待ち続けるのみ
長い長い間、肉が魂に惹かれこの地を訪れるのを待ち続けていた…
そんなある日だ、王族の中だけを見れば愚劣とは言い切れない、私としても弟のような存在で無謀なる挑戦者であるピーカが教会に面倒な話を持って来た。
そうですね、ピーカという人物について軽く触れておくとしましょうか。
ピーカの血筋はイラツゲ様の下僕としての業を背負わされている、正式には騎士という立場だが、あのような愚劣極まれし者が騎士など名乗るのはおこがましいと思いませんか?イラツゲ様のおそばに居ていいのは俺だけだ、だが、継いできた歴史という物は馬鹿にできないですからね、特別に傍にいることを許していた。当時は幼過ぎて自分の業を理解してはいなかったでしょうけどね。
私の考えとして、王族は心の底から軽蔑しているがピーカだけは特別に許してやる、そもそも、あいつの中に王の血が流れているなど、嘘だからだ。
ピーカの中に流れる血は平民と左程かわらない、微々たる程度だろう、血脈の流れで王族を名乗っていいのだったら王都に住む貴族全てが王族だ。
なら、何故彼が王族という枠組みの中に歩を進めれたのか、そこに関しては教会側の闇というべき恥ずべき行為だろう…いや、それを考え行動に移すというのは勇敢な姿勢であったとでも言っておこうか。
教会側からすれば守るべき存在が蔑にされそうになっているのを感じており、それらの流れに対してずっと危険を感じていた…
守る為に動くしかなかったのでしょうね、教会の教えとなる始まりの血脈、聖女様を守るために愚かなアクションを起こした、よりによってピーカなどという愚劣な存在を王族の中に教会の手のものとして差し込む…
それだけの為に教会側の都合という贄として、ピーカが産まれた瞬間に強引に王族の中にねじ込んだ。
この絵を画策した当時の教皇も、まさか、ピーカがあそこ迄、忌み嫌われる程の愚劣さを発揮するとは思っていなかったのでしょうね、血筋だけを見れば聖女様の騎士、その直系ですからね…
強引な手段によって教会の手先として組み込まれた、当然、反発するだろう、その結果、数多くの王子たちが裏で殺しあうような結果になってしまったのは教会の闇であり、教えに背く様な愚かで恥ずべき事態になったのだと言わざるを得ない。
前皇はその責任を取り退任したのだが、退任だけで許されるはずもなく、表舞台から出て行った後に、裏でひっそりとこれ以上の惨劇を防ぐために、自らの命を持って償いとし教会側はこれ以上の追求から免れるように嘆願したのだったな。
だけど、王も甘くはない、その日を境に、俺よりも上の立場の人達が全員、不合理な死を迎えさせられた…
未だに覚えているとも、一人、また、一人と静かに自分たちの人生に幕を強制的に降ろされ民衆の知らない場所で消えて行った。
俺がこれ以上、上の席に移りたくないのは見てきたからだ王族の容赦のない攻撃を、上の席に移れば最後、身動きが取れずに雁字搦めにされ死ぬ未来しか見えないからだ。
現時点では死ぬことに対して恐れている、死という概念は左程、恐れてはいない、人はいずれ滅ぶ運命だから。
だけどな、死ぬのなら、我が悲願、成就してからにしてもらわねばな。
ピーカが教会に齎したのは悲劇であり福音でもあるのだ、産まれた時から愚劣極まれし存在に関しては少々同情の余地はある、それにな、ピーカのおかげで俺以上の階級全てが空っぽという状態が出来上がったのは非常に好都合だ、お陰で神を降ろす儀式の間を完成させることができたからな。
上の席に誰も居ないからこそ、俺は好き勝手にやれている、世渡りに関しては我ながら上手であると感じてはいる。
同胞のお陰でもあるがな…
その厄介者が教会に話を持ち掛けてくるのは決まって迷惑ごとだけだ。碌な話がない、毎度毎度、どれだけの迷惑をかければ気が済むのやら、イラツゲ様がご存命で在れば、彼に手を貸すのであろうから、断るに断れないのが頭を悩まされる。
ピーカが持って来た話を聞くために心を落ち着かせ、内なる自分を表に出さないように取り繕いながら、彼の言葉に耳を傾ける、正直な話、愚劣なる弟の述べる言の葉は気持ちがいいものではない、立場が違えば絶対に傍に起きたくない存在だ…その気持ちの悪い声に真剣に聞き続ける…はぁ、面倒ごとばかりだ。
愚劣な弟が出す言葉は何時だって気持ちが悪い、福音となるのはやはりイラツゲ様だけが持ちえていい。
気持ちが悪い愚の骨頂である者から相談を持ち掛けられた内容が本当に面倒ごとで頭を抱えたくなる…
次の王を決める選挙戦に打って出たいので教会として後ろ盾になってほしい?今の教会の立場を理解して話しているのか?教会は表向きは中立の立場であることを忘れていないか?
その提案に関しては、イラツゲ様がご存命で在らせられるのであれば…残念なことに、快く承諾されたであろうな。
彼の者が背負う業と共に歩む存在である聖女様であればな、だが、聖女様のいない今、お前なんぞを王にしてなんとする?無意味だ、この先にある全ての王族は存在すら意味をなさない。
無駄なことに時間なんぞ裂きたくはないが、ここで彼からの提案を断るのは教会側としてらしくない、断れない…下手な理由で断ると地下に在る物が見つかる可能性が出てきてしまう。
私にも教会としての立場という物がある、それだけじゃない、教会として、昔から個人的な彼との関係値というものがある、世間体としての部分がここで彼の提案を足蹴にするのは違うと判断されるであろうな、今は世間体からもおかしな部分を見せるわけにはいかぬのでな。
なれど、全てを了承するわけにはいかない、教会として出来ないこと、出来ることを話しあい、出来る範囲で命を狙われない範囲であれば協力することにしましょう。司祭というのも面倒だが、この立場だからこそ、私は前に進めているのも自覚している、致し方あるまい。
何も気にせず、周りの目を見ないで済むのであれば、イラツゲ様の事のみを考え生きていきたい、大願がある限り、俺はその選択肢を選べぬ、致し方あるまい。
詳しく話を聞いていると、どうやら他の方達も巻き込んでいるみたいだな、可哀相に死地へと誘われる者たちを憐れんでしまう、哀れみの感情を抱くというのは仕方が無かろうよ。
その協力をする過程である人物にも声を掛けていてるのだが、その人物が教会に訪れたら声を掛けて欲しい?
この私を伝令係とさせるか、偉くなったものだな、愚劣なる弟よ、何も守れない愚者の癖にな、その図々しさ反吐が出るほど気持ちが悪いものよ。
快く承諾したと見せかけて彼を見送る、この件を承諾したことが正に神の台本の流れなのだと知る由も無かった、後に、これが神の台本通りなのだと知った際に神に感謝を捧げたくなったのは、かつてない程だろう。
0
あなたにおすすめの小説
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~
橘まさと
ファンタジー
脱サラしてラーメンのキッチンカーをはじめたアラフォー、平和島剛士は夜の営業先に向けて移動していると霧につつまれて気づけばダンジョンの中に辿りついていた。
最下層攻略を目指していた女性だらけのAランク冒険者パーティ『夜鴉』にラーメンを奢る。
ラーメンを食べた夜鴉のメンバー達はいつも以上の力を発揮して、ダンジョンの最下層を攻略することができた。
このことが噂になり、異世界で空前絶後のラーメンブームが巻き起こるのだった。
置き去りにされた聖女様
青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾
孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう
公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ
ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう
ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする
最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで……
それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる