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Dead End 6■■の黙示(4)
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止まることを知らない心臓のように動き続けていると、夕暮れ前にはひと段落が付く。
急なお願いを快く助けて頂いた数多くの人達、一人一人に感謝の祈りを捧げ終わり、イラツゲ様の器と話でもしようかと視線を向けると、イラツゲ様とシスター達が何処かに向かって歩いていく姿が見える。
歩いていく、あの方角にシスター達と向かうのであれば、一つだけ心当たりがありますね。そうですね、身を清めに行かれるのですね、良き事です。
では、その間に私がすべきことをするとしましょうか、大地と一体化している人達を起き上がらせ、身の程を弁えてもらうように己の巣へと向かう様に声を掛けていく、とっとと帰路についてくださいね、汚らわしい。
あの程度の怪我で聖女様の慈悲をその身に受ける?っふ、分不相応という言葉とはこのことを言うのでしょうね。怪我も治り、食事にもありつけたのです、感謝の言葉を述べて早々に立ち去りなさい。
さて、お礼を述べながら帰れるものは帰りましたが、大地と一体化し過ぎて、どうしようもない人は取り合えず祈りの間に連れて行きましょうか、この場で解体するわけにはいかないですからね、周りの目もありますし、手厚く保護するように見せかけて、祈りの間でゆっくりと始祖とかいうどうでもいい存在に見守られながら供物へと転じて頂くとしましょうかね、貴方達からすれば始祖という存在に見送られるなんて、本望以外に何も感じないでしょう?
時間も時間なので、当然、動けなくなった人達が残された広場には誰も居ない。
仕方がありませんね、私独りで…っと思っていましたが同胞諸君が何処からともなく駆けつけて手を貸してくれるではありませんか。
やはり持つべきものは信徒ですね。約束の日は近いですよ。共に神がご所望とされている贄を、供物を、運びましょう。
供物を祈りの間に運び終わるころにはイラツゲ様が教会へとご帰還されたご様子だが、体調が悪いのか遠目で見てもわかるくらい足取りが少々、芳しく無さそうですね。
体調がお辛いご様子でいらっしゃる、今すぐにでも駆けつけて御傍に居させて欲しいのですが、今はシスター達が近くにいるのでおいそれと御傍に親身となって近寄るのは要らぬ誤解を生みそうで出来ないですね…皆が帰った後にでも、苦痛が和らぐように祈りを捧げに参りますね。
それにですね、女性同士が集まればどんな場所で在ろうと華の色が淡い桃色にでもなりましょう。
楽し気に花を咲かせている、その間に何が起ころうと気が付きはしないでしょう、そうと決まればやることありますからね、敬虔なる信徒して。
ささ、供物を捧げましょう捧げましょう、私達は無言で頷き、供物を神の祭壇に運び続ける。損傷が激しい供物を動かした際にちょっと壁とか床を汚してしまったが、暗くなってしまえば気が付く方は居ないでしょう。
その程度の違和感など、神の御業によって誰も気にも留めないでしょう神の台本がこの程度の些事で揺らぐことなどありません、私達の祈りは盤石たる力となるでしょう。
胸が上下に動く供物は地下に運んでもらい、胸が上下に動かない供物はある程度、先に血を抜いてから地下へ運ぶ、その為の血抜きという作業が大変ですね。
必死に血抜き作業をしていると何処のどなたか存じませんが部屋を訪ねてくる方がいらっしゃるじゃないですか。
ドア向こうの方に声を掛ける、志を同じくする信徒であれば私の言葉なんて言に返さずに入ってくるが入ってこない辺り、同胞では無さそうですね。
何も言わずに帰っていくので気にする事も無いでしょう。
非道な行いをしているわけではありませんので何かを警戒する必要なんて無いのですけどね、今の現状を見られても知る人が見れば特に問題は無い。
説明を求められれば、教会として火葬をする前の下準備をしていると言えば、騎士達も納得してくれますからね。遺体を無碍に傷つけているわけではないですからね、血を抜く作業は力仕事となるので大変なんですよ。
どうして血を抜く必要があると思いますか?私も先人から教わっただけなのでこういうものだと思っているのですよ、死体に血があると肉の腐敗が速くなってしまうと言われておりますからね…死後のお別れをするために死体を数日、保存しないといけない時がありますからね~、その為に死体を保存する方法の一つとして、ある程度の血を抜くというのは教会が行うのは特に違和感っていうのは無いのですよ。この作業を嫌う方は多いのが問題なのですけれどね、もっと楽に抜く方法があればご教授願いたいものですよ。
かといって誰かに任せるわけにはいかないのですよ、死後の肉体に触っても良いのは、修道を修めた穢れなき魂と肉体を持つ聖職者、それも出来る限り徳が高いと言われている階級の高い聖職者が行わないといけないのでね。雑多なことを言えば、司祭としての業務の一つですからね。
この作業によって腰を痛めたり肩を痛めたり首を痛めたりするので年老いた方はこの作業を嫌って、階級を高くするのを躊躇うものがいるくらい…重労働ですからね。
作業を続けていると地下から同胞たちが出てきて挨拶をしてくれる。
どうやら地下で作業を手伝ってくれた同志たちの作業が人段落ついたみたいですね、では、同胞がお疲れの様ですし、帰るのを見送るために祈りの間まで付いて行くとしましょう。同胞とはいえ労いの精神は大事ですとも。
同胞を見送った後、自身の部屋に戻る際に、シスター達が休憩するために用意されている部屋に近づくと、胸が熱くなる、比喩ではない物理的に、何事かと直肌に身に着けている三角形のエンブレムを手に取ると目が部屋を見つめているではありませんか、イラツゲ様の器が此方にいらっしゃるのですね。わざわざ知らせてくれるという事は何か器に用事があるのですね、参るとしましょうイラツゲ様のご意思のままに。
中に入ると、イラツゲ様の器が心地よさそう…という感じではなく、少々寝心地が悪いみたいで麗しいお顔に皺ができてしまっているではありませんか。
横になられている環境がよろしくないのでしょうか?ふむ、特に寒そうでも暑そうでもなさそうない快適な温度と感じますし、念のためにひざ掛け程度はかけてあげましょう。
ひざ掛けを手に取り、かけてあげようと近くに行くとより一層、胸が熱くなるのを感じるではありませんか。
ネックレスのように首からぶら下げているエンブレムを、取りだすとイラツゲ様の器に向けて三角形の中央にある目が動き続けてじっと見つめている…
そうですかそうですか、イラツゲ様も早く肉体へと孵りたいのですね。
エンブレムを両の手で包むようにし祈りを捧げる…
イラツゲ様の魂が少しでも早く肉体へと孵っていただけるように、目の前にある器へと…
祈りを捧げましょう、捧げましょう、幸いにも今のこの教会は神の力に溢れている、供物を美味しく食べておられるでしょうから、神の心が力が、すぐそばに感じ取れるほどに昂っておられることでしょう…
長い時間、祈りを捧げていると、エンブレム中央にある目が、いつの間にか閉じているではありませんか、そうですかそうですか。
では、私は神の供物をささげる作業に戻りましょうぞ、戻りましょうぞ。
作業に戻ろうと思ったのだけれど、廊下の汚れが目に留まる。イラツゲ様は綺麗好きであらせられる、よろしくないですね。
その前に、廊下などが汚れているのはイラツゲ様が悲しんでしまいますね、それに、敬愛するイラツゲ様が何かの弾みで汚れてしまってはいけませんからね、掃除をしておきましょう。
この手の汚れを掃除するのは幼い時から続けてきたのですから、手慣れたものですよ。
こういった状況の為に、専用の洗剤も教会には数多く保管しておりますので、お掃除であればお任せください。イラツゲ様が常に清らかな姿でいてもらう為にはこの程度の雑務何も苦ではありませんぞ。
手早く掃除を終わらせて、地下に残された作業も全て終わり、地下から地上に戻ってくると、外から光が入ってくる…気が付けば日が昇ろうとする時刻ではありませんか。いけませんね。
作業中の事を思い出す。
早朝に誰かが訪ねてくる可能性があるというのに、遅くなりすぎてしまいましたね、このままでは、体が疲労の影響によって動きが鈍くなってしまうかもしれませんね。
でも、よいのです、今の私は神の御力によって普段よりも、より深く疲れを感じません、痛みも鈍く感じませんとも。
神の御心を考えると、先ほどまでの一連の流れを思い出すと体が歓喜の声によって震えあがる。
はぁぁ、神の御力は偉大です、大願が悲願が叶う時が近いのですね、ちかいのですね、感じます、感じますよ!!
疲れが感じないとはいえ、多少は横になりましょう。時計の針が一周、回るくらいであれば、休むにしてもちょうどいいでしょう。
椅子に座って目を閉じる、疲労や痛みが感じないので気が付かなかったが目を閉じた瞬間に意識が飛んでしまったのは予想外でしたね。思っていたよりもお疲れだったのですね。
目を閉じて体を休ませていると、耳から情報が入ってくるので、意識を起こし、耳を澄ませる。
廊下を何者かが歩く音が聞こえる、目を開けると時計が一周して少し時間が過ぎたころですね。少し休め過ぎましたか?いえ、丁度よいころあいでしょう。
早朝と言えば、イラツゲ様ですね、昔から誰よりも早くに起きられている時があり、イラツゲ様にとって朝が早いのは当然ですからね、さて、早朝の廊下を歩かれている方なんて器としか考えられませんね、お手洗いでも行かれているのですかね?
お手洗いではない可能性もありますしね、ふむ、何かお困りかもしれないですし従順なる御傍付として何時でも呼ばれても良い様に近くで待機するとしましょう。魂は違うとは言え、お体に何かあるのは好ましくありませんからね。
椅子から立ち上がり、遠くからイラツゲ様の器に気が付かれないように気を付け乍ら彼女の動きを観察する。
観察していると、変化を薄くではあるが感じ取れますね、彼女が歩く姿が、昨日よりもより一層、イラツゲ様に近づいているような気がするのは気のせいではないでしょう。
昨日とは違い背筋を伸ばし、気品ある歩き方に変化しつつあるのが私にはわかります、ええ、わかりますとも!
私程の親愛なる隣人であれば、気が付きますよ、貴女を見つめ続けてきた私にはそのような些細な変化も見逃すはずもありません。
幼き日に見た、後ろ姿をまた、この眼に焼き付けれる日が訪れるとは、自然と心からの発露である液体が顎を伝って、小さな雫となり、私の手のひらに落ちていく…
後ろ姿を眺めて、もとい、見守っていると自然とご自身の部屋に入られるではないですか!?
昨夜の祈りによってイラツゲ様が目覚めつつあるのでしょう、思い返して手を伸ばしても永遠に届くことが無かった、あの日々を取り戻せると希望を薄っすらと感じるだけで心からの発露が加速するように溢れ出てきて歓喜の衝動が全身を駆け巡る。
さて、衝動に包まれていないで、器の観察を続けましょう。
部屋の中に入っていったので、ドアの隙間から様子を伺せてもらいますが、お着換えなさるのでしたら、直ぐにでも目を離すのでご安心召されよ。劣情を催すなぞ、修道を修めし者として恥ずべきことですからね。
ドアの隙間から見える景色、いつ見ても、いつ訪れても、この部屋の中だけは時計の針が進まないように気を付けていますからね。
机の前に置かれている椅子はイラツゲ様が大層お気に召している愛用の椅子…
いつもその椅子に座りながら私達に悠久なるときの中にあると言われるお伽噺をお聞かせくださいましたね。懐かしい日々です…
また、あの甘いお声でお伽噺を聞かせていただきたいですね。
そんな事を思い出していると器の方が、椅子に触れてから何か思い出したのか辺りを見渡し始めるじゃないですか、流石に覗いている様な今の状況を見つかってしまうのは説明するのは困難となるでしょう、確実に要らぬ疑いを与えてしまいますね、ではでは、少々、距離をとるとしましょうか。
部屋から少し距離を離すと器の方も部屋から出てきて何処かに向かいますね?
付いて行くと、外に向かって歩を進める様子から何処かに行かれるのでしょう。イラツゲ様の器が何処で何をするのか、大して興味はありません好きにさせましょう。
ふふ、流石は私です、歩き方で器なのかイラツゲ様なのかすぐにわかってしまいますね。
さて、私も部屋に戻って、さぎょうをっと、思いましたが、一歩目が重いではありませんか、ふむ、致し方ありませんね、少々、もう少しだけ体を休めるとしましょうか。
急なお願いを快く助けて頂いた数多くの人達、一人一人に感謝の祈りを捧げ終わり、イラツゲ様の器と話でもしようかと視線を向けると、イラツゲ様とシスター達が何処かに向かって歩いていく姿が見える。
歩いていく、あの方角にシスター達と向かうのであれば、一つだけ心当たりがありますね。そうですね、身を清めに行かれるのですね、良き事です。
では、その間に私がすべきことをするとしましょうか、大地と一体化している人達を起き上がらせ、身の程を弁えてもらうように己の巣へと向かう様に声を掛けていく、とっとと帰路についてくださいね、汚らわしい。
あの程度の怪我で聖女様の慈悲をその身に受ける?っふ、分不相応という言葉とはこのことを言うのでしょうね。怪我も治り、食事にもありつけたのです、感謝の言葉を述べて早々に立ち去りなさい。
さて、お礼を述べながら帰れるものは帰りましたが、大地と一体化し過ぎて、どうしようもない人は取り合えず祈りの間に連れて行きましょうか、この場で解体するわけにはいかないですからね、周りの目もありますし、手厚く保護するように見せかけて、祈りの間でゆっくりと始祖とかいうどうでもいい存在に見守られながら供物へと転じて頂くとしましょうかね、貴方達からすれば始祖という存在に見送られるなんて、本望以外に何も感じないでしょう?
時間も時間なので、当然、動けなくなった人達が残された広場には誰も居ない。
仕方がありませんね、私独りで…っと思っていましたが同胞諸君が何処からともなく駆けつけて手を貸してくれるではありませんか。
やはり持つべきものは信徒ですね。約束の日は近いですよ。共に神がご所望とされている贄を、供物を、運びましょう。
供物を祈りの間に運び終わるころにはイラツゲ様が教会へとご帰還されたご様子だが、体調が悪いのか遠目で見てもわかるくらい足取りが少々、芳しく無さそうですね。
体調がお辛いご様子でいらっしゃる、今すぐにでも駆けつけて御傍に居させて欲しいのですが、今はシスター達が近くにいるのでおいそれと御傍に親身となって近寄るのは要らぬ誤解を生みそうで出来ないですね…皆が帰った後にでも、苦痛が和らぐように祈りを捧げに参りますね。
それにですね、女性同士が集まればどんな場所で在ろうと華の色が淡い桃色にでもなりましょう。
楽し気に花を咲かせている、その間に何が起ころうと気が付きはしないでしょう、そうと決まればやることありますからね、敬虔なる信徒して。
ささ、供物を捧げましょう捧げましょう、私達は無言で頷き、供物を神の祭壇に運び続ける。損傷が激しい供物を動かした際にちょっと壁とか床を汚してしまったが、暗くなってしまえば気が付く方は居ないでしょう。
その程度の違和感など、神の御業によって誰も気にも留めないでしょう神の台本がこの程度の些事で揺らぐことなどありません、私達の祈りは盤石たる力となるでしょう。
胸が上下に動く供物は地下に運んでもらい、胸が上下に動かない供物はある程度、先に血を抜いてから地下へ運ぶ、その為の血抜きという作業が大変ですね。
必死に血抜き作業をしていると何処のどなたか存じませんが部屋を訪ねてくる方がいらっしゃるじゃないですか。
ドア向こうの方に声を掛ける、志を同じくする信徒であれば私の言葉なんて言に返さずに入ってくるが入ってこない辺り、同胞では無さそうですね。
何も言わずに帰っていくので気にする事も無いでしょう。
非道な行いをしているわけではありませんので何かを警戒する必要なんて無いのですけどね、今の現状を見られても知る人が見れば特に問題は無い。
説明を求められれば、教会として火葬をする前の下準備をしていると言えば、騎士達も納得してくれますからね。遺体を無碍に傷つけているわけではないですからね、血を抜く作業は力仕事となるので大変なんですよ。
どうして血を抜く必要があると思いますか?私も先人から教わっただけなのでこういうものだと思っているのですよ、死体に血があると肉の腐敗が速くなってしまうと言われておりますからね…死後のお別れをするために死体を数日、保存しないといけない時がありますからね~、その為に死体を保存する方法の一つとして、ある程度の血を抜くというのは教会が行うのは特に違和感っていうのは無いのですよ。この作業を嫌う方は多いのが問題なのですけれどね、もっと楽に抜く方法があればご教授願いたいものですよ。
かといって誰かに任せるわけにはいかないのですよ、死後の肉体に触っても良いのは、修道を修めた穢れなき魂と肉体を持つ聖職者、それも出来る限り徳が高いと言われている階級の高い聖職者が行わないといけないのでね。雑多なことを言えば、司祭としての業務の一つですからね。
この作業によって腰を痛めたり肩を痛めたり首を痛めたりするので年老いた方はこの作業を嫌って、階級を高くするのを躊躇うものがいるくらい…重労働ですからね。
作業を続けていると地下から同胞たちが出てきて挨拶をしてくれる。
どうやら地下で作業を手伝ってくれた同志たちの作業が人段落ついたみたいですね、では、同胞がお疲れの様ですし、帰るのを見送るために祈りの間まで付いて行くとしましょう。同胞とはいえ労いの精神は大事ですとも。
同胞を見送った後、自身の部屋に戻る際に、シスター達が休憩するために用意されている部屋に近づくと、胸が熱くなる、比喩ではない物理的に、何事かと直肌に身に着けている三角形のエンブレムを手に取ると目が部屋を見つめているではありませんか、イラツゲ様の器が此方にいらっしゃるのですね。わざわざ知らせてくれるという事は何か器に用事があるのですね、参るとしましょうイラツゲ様のご意思のままに。
中に入ると、イラツゲ様の器が心地よさそう…という感じではなく、少々寝心地が悪いみたいで麗しいお顔に皺ができてしまっているではありませんか。
横になられている環境がよろしくないのでしょうか?ふむ、特に寒そうでも暑そうでもなさそうない快適な温度と感じますし、念のためにひざ掛け程度はかけてあげましょう。
ひざ掛けを手に取り、かけてあげようと近くに行くとより一層、胸が熱くなるのを感じるではありませんか。
ネックレスのように首からぶら下げているエンブレムを、取りだすとイラツゲ様の器に向けて三角形の中央にある目が動き続けてじっと見つめている…
そうですかそうですか、イラツゲ様も早く肉体へと孵りたいのですね。
エンブレムを両の手で包むようにし祈りを捧げる…
イラツゲ様の魂が少しでも早く肉体へと孵っていただけるように、目の前にある器へと…
祈りを捧げましょう、捧げましょう、幸いにも今のこの教会は神の力に溢れている、供物を美味しく食べておられるでしょうから、神の心が力が、すぐそばに感じ取れるほどに昂っておられることでしょう…
長い時間、祈りを捧げていると、エンブレム中央にある目が、いつの間にか閉じているではありませんか、そうですかそうですか。
では、私は神の供物をささげる作業に戻りましょうぞ、戻りましょうぞ。
作業に戻ろうと思ったのだけれど、廊下の汚れが目に留まる。イラツゲ様は綺麗好きであらせられる、よろしくないですね。
その前に、廊下などが汚れているのはイラツゲ様が悲しんでしまいますね、それに、敬愛するイラツゲ様が何かの弾みで汚れてしまってはいけませんからね、掃除をしておきましょう。
この手の汚れを掃除するのは幼い時から続けてきたのですから、手慣れたものですよ。
こういった状況の為に、専用の洗剤も教会には数多く保管しておりますので、お掃除であればお任せください。イラツゲ様が常に清らかな姿でいてもらう為にはこの程度の雑務何も苦ではありませんぞ。
手早く掃除を終わらせて、地下に残された作業も全て終わり、地下から地上に戻ってくると、外から光が入ってくる…気が付けば日が昇ろうとする時刻ではありませんか。いけませんね。
作業中の事を思い出す。
早朝に誰かが訪ねてくる可能性があるというのに、遅くなりすぎてしまいましたね、このままでは、体が疲労の影響によって動きが鈍くなってしまうかもしれませんね。
でも、よいのです、今の私は神の御力によって普段よりも、より深く疲れを感じません、痛みも鈍く感じませんとも。
神の御心を考えると、先ほどまでの一連の流れを思い出すと体が歓喜の声によって震えあがる。
はぁぁ、神の御力は偉大です、大願が悲願が叶う時が近いのですね、ちかいのですね、感じます、感じますよ!!
疲れが感じないとはいえ、多少は横になりましょう。時計の針が一周、回るくらいであれば、休むにしてもちょうどいいでしょう。
椅子に座って目を閉じる、疲労や痛みが感じないので気が付かなかったが目を閉じた瞬間に意識が飛んでしまったのは予想外でしたね。思っていたよりもお疲れだったのですね。
目を閉じて体を休ませていると、耳から情報が入ってくるので、意識を起こし、耳を澄ませる。
廊下を何者かが歩く音が聞こえる、目を開けると時計が一周して少し時間が過ぎたころですね。少し休め過ぎましたか?いえ、丁度よいころあいでしょう。
早朝と言えば、イラツゲ様ですね、昔から誰よりも早くに起きられている時があり、イラツゲ様にとって朝が早いのは当然ですからね、さて、早朝の廊下を歩かれている方なんて器としか考えられませんね、お手洗いでも行かれているのですかね?
お手洗いではない可能性もありますしね、ふむ、何かお困りかもしれないですし従順なる御傍付として何時でも呼ばれても良い様に近くで待機するとしましょう。魂は違うとは言え、お体に何かあるのは好ましくありませんからね。
椅子から立ち上がり、遠くからイラツゲ様の器に気が付かれないように気を付け乍ら彼女の動きを観察する。
観察していると、変化を薄くではあるが感じ取れますね、彼女が歩く姿が、昨日よりもより一層、イラツゲ様に近づいているような気がするのは気のせいではないでしょう。
昨日とは違い背筋を伸ばし、気品ある歩き方に変化しつつあるのが私にはわかります、ええ、わかりますとも!
私程の親愛なる隣人であれば、気が付きますよ、貴女を見つめ続けてきた私にはそのような些細な変化も見逃すはずもありません。
幼き日に見た、後ろ姿をまた、この眼に焼き付けれる日が訪れるとは、自然と心からの発露である液体が顎を伝って、小さな雫となり、私の手のひらに落ちていく…
後ろ姿を眺めて、もとい、見守っていると自然とご自身の部屋に入られるではないですか!?
昨夜の祈りによってイラツゲ様が目覚めつつあるのでしょう、思い返して手を伸ばしても永遠に届くことが無かった、あの日々を取り戻せると希望を薄っすらと感じるだけで心からの発露が加速するように溢れ出てきて歓喜の衝動が全身を駆け巡る。
さて、衝動に包まれていないで、器の観察を続けましょう。
部屋の中に入っていったので、ドアの隙間から様子を伺せてもらいますが、お着換えなさるのでしたら、直ぐにでも目を離すのでご安心召されよ。劣情を催すなぞ、修道を修めし者として恥ずべきことですからね。
ドアの隙間から見える景色、いつ見ても、いつ訪れても、この部屋の中だけは時計の針が進まないように気を付けていますからね。
机の前に置かれている椅子はイラツゲ様が大層お気に召している愛用の椅子…
いつもその椅子に座りながら私達に悠久なるときの中にあると言われるお伽噺をお聞かせくださいましたね。懐かしい日々です…
また、あの甘いお声でお伽噺を聞かせていただきたいですね。
そんな事を思い出していると器の方が、椅子に触れてから何か思い出したのか辺りを見渡し始めるじゃないですか、流石に覗いている様な今の状況を見つかってしまうのは説明するのは困難となるでしょう、確実に要らぬ疑いを与えてしまいますね、ではでは、少々、距離をとるとしましょうか。
部屋から少し距離を離すと器の方も部屋から出てきて何処かに向かいますね?
付いて行くと、外に向かって歩を進める様子から何処かに行かれるのでしょう。イラツゲ様の器が何処で何をするのか、大して興味はありません好きにさせましょう。
ふふ、流石は私です、歩き方で器なのかイラツゲ様なのかすぐにわかってしまいますね。
さて、私も部屋に戻って、さぎょうをっと、思いましたが、一歩目が重いではありませんか、ふむ、致し方ありませんね、少々、もう少しだけ体を休めるとしましょうか。
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