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コーコ
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黒髪の大変美しい女性が目の前に。
ここはパンキーに手伝ってもらいますか。
ワワン!
パンキーが吠えるので黒髪の女性が驚いて振り向く。
「ごめんなさい。びっくりさせてしまったみたい…… 」
「大丈夫! 可愛いですね」
礼儀正しく慎ましい女性。
パンキーが気に入ったのか優しく撫でる。
クーンと甘えた声を出し気持ちよさそう。
いつもは家の者以外から触られると吠えて逃げてしまうのに今日は大人しい。
ただ触って来る者のほとんどが子供か匂いのきついご婦人。
お年寄りが近づくこともありますが察知して逃げてしまう。
お父様だってたまに帰って来ると吠えられる始末ですからね。
そこを行くとこの方は扱いが上手。何か飼われてるのかもしれませんね。
「失礼ですがご出身は? 」
「東の東。東の果てから。母に連れられ町を転々とした後に昨年ここへ」
お母様の都合で一年ごとに移り住んでるのだとか。
そのお母様も体調を崩されて寝込んでるそう。
ここに落ち着いたと言うよりやむを得ない事情で足止めを食ってるのだろう。
偶然にも同じような境遇の方に出会えた。
こちらは精神的なものであちらはもっと本格的なものらしい。
何と声を掛ければいいか迷う。
とにかく自己紹介を済ましてしまいましょう。
「私はクレーラ。こっちはパンキー。よろしくね」
「失礼しました。私はコーコって言います」
名前をコーコと名乗ったその方は大変黒髪の美しい東洋の女性。
特技は編み物だそうで手先は器用だと。自慢かな?
うらやましい限り。私ったらお姉様たちにいつも笑われていましたからね。
これは何ですってお婆様から呆れられたものです。
そうやって自信喪失させるのだから困ってしまう。
それでも出来の良いお姉様と比べられることは特にない。
何と言っても比べようがない。比べるレベルにないから気にしてないとも言える。
『あんたは本当に何もできないんだから大人しくしてな』がお婆様の口癖。
もう少し分かり易く丁寧に教えてくれたら私だって。
自慢ではないですが不器用ですから。
誇れるものと言えばこの美貌ぐらい。
かわいさも美しさも誰にも負けるつもりはありません。
ふふふ…… ちょっと言葉が過ぎたでしょうか?
「ねえクレーラ。その子は何でパンキーって言うの? 」
「パンが大好きなのでパンキー」
想定外の単純明快な答えが返ってきたので驚いている。
それを聞くとさっそくポケットからパンを取り出す。
朝食べた残りだそうでコーコも苦労してるんだと分かる。
「ねえ今度お家に遊びに来て」
「はい」
社交辞令を真に受けるほど私は愚かではありません。
どうせ来月にはもっと田舎へ引っ越さなければならないのですから。
そうなれば交流などしようもない。
阻止するにはお父様が許されるかあるいはどうにか爵位を得るしかない。
または十年来の付き合いのあるお母様のお友だちに頼るぐらい。
お父様関係は失態が知れ渡ってますのでまず頼れません。
今度のことで迷惑を掛けた親族も同じで無理を言ってお願いする立場にない。
結局のところ我が一族は見捨てられたのです。
爵位を得ることが現実的な解決策とは何とも情けない限り。
不確かな噂に頼ってるようでは心もとない。でもそれしか生き残る手はありません。
没落して田舎で一生を終えるのも悪くないと最近思うようになりましたが。
お婆様以下誰も賛成することはないでしょう。
「ねえそれでこの子は…… 」
一時間ほどおしゃべりに花を咲かせたところでようやく順番が回ってきた。
疲れて大人しくなったパンキーも尻尾を振ってまとわりつく。
「ではお引きください」
コーコが大きな箱に手を入れる。
「はい残念! 」
オレンジ一つ。決して悪くはないが残念賞に違いない。
続けて私が引くことに。
悪い流れは止められずティッシュ。
こうして残念賞を貰って大人しく引き下がることに。
謎の行列の正体はくじ引きだった。
ティッシュだってありがたいですよ。でも我が家にもありますから。
今回はどうやら完全な失敗だったかな。
こんな時もある。もう切り替えるしかない。
「ねえ暇がお有りでしたらもう一つ並んでみませんか? 」
コーコは別の行列の当てがあるそう。
そう言われれば断れない。どんな僅かな可能性にも賭ける。
提案を受け入れることに。
続く
ここはパンキーに手伝ってもらいますか。
ワワン!
パンキーが吠えるので黒髪の女性が驚いて振り向く。
「ごめんなさい。びっくりさせてしまったみたい…… 」
「大丈夫! 可愛いですね」
礼儀正しく慎ましい女性。
パンキーが気に入ったのか優しく撫でる。
クーンと甘えた声を出し気持ちよさそう。
いつもは家の者以外から触られると吠えて逃げてしまうのに今日は大人しい。
ただ触って来る者のほとんどが子供か匂いのきついご婦人。
お年寄りが近づくこともありますが察知して逃げてしまう。
お父様だってたまに帰って来ると吠えられる始末ですからね。
そこを行くとこの方は扱いが上手。何か飼われてるのかもしれませんね。
「失礼ですがご出身は? 」
「東の東。東の果てから。母に連れられ町を転々とした後に昨年ここへ」
お母様の都合で一年ごとに移り住んでるのだとか。
そのお母様も体調を崩されて寝込んでるそう。
ここに落ち着いたと言うよりやむを得ない事情で足止めを食ってるのだろう。
偶然にも同じような境遇の方に出会えた。
こちらは精神的なものであちらはもっと本格的なものらしい。
何と声を掛ければいいか迷う。
とにかく自己紹介を済ましてしまいましょう。
「私はクレーラ。こっちはパンキー。よろしくね」
「失礼しました。私はコーコって言います」
名前をコーコと名乗ったその方は大変黒髪の美しい東洋の女性。
特技は編み物だそうで手先は器用だと。自慢かな?
うらやましい限り。私ったらお姉様たちにいつも笑われていましたからね。
これは何ですってお婆様から呆れられたものです。
そうやって自信喪失させるのだから困ってしまう。
それでも出来の良いお姉様と比べられることは特にない。
何と言っても比べようがない。比べるレベルにないから気にしてないとも言える。
『あんたは本当に何もできないんだから大人しくしてな』がお婆様の口癖。
もう少し分かり易く丁寧に教えてくれたら私だって。
自慢ではないですが不器用ですから。
誇れるものと言えばこの美貌ぐらい。
かわいさも美しさも誰にも負けるつもりはありません。
ふふふ…… ちょっと言葉が過ぎたでしょうか?
「ねえクレーラ。その子は何でパンキーって言うの? 」
「パンが大好きなのでパンキー」
想定外の単純明快な答えが返ってきたので驚いている。
それを聞くとさっそくポケットからパンを取り出す。
朝食べた残りだそうでコーコも苦労してるんだと分かる。
「ねえ今度お家に遊びに来て」
「はい」
社交辞令を真に受けるほど私は愚かではありません。
どうせ来月にはもっと田舎へ引っ越さなければならないのですから。
そうなれば交流などしようもない。
阻止するにはお父様が許されるかあるいはどうにか爵位を得るしかない。
または十年来の付き合いのあるお母様のお友だちに頼るぐらい。
お父様関係は失態が知れ渡ってますのでまず頼れません。
今度のことで迷惑を掛けた親族も同じで無理を言ってお願いする立場にない。
結局のところ我が一族は見捨てられたのです。
爵位を得ることが現実的な解決策とは何とも情けない限り。
不確かな噂に頼ってるようでは心もとない。でもそれしか生き残る手はありません。
没落して田舎で一生を終えるのも悪くないと最近思うようになりましたが。
お婆様以下誰も賛成することはないでしょう。
「ねえそれでこの子は…… 」
一時間ほどおしゃべりに花を咲かせたところでようやく順番が回ってきた。
疲れて大人しくなったパンキーも尻尾を振ってまとわりつく。
「ではお引きください」
コーコが大きな箱に手を入れる。
「はい残念! 」
オレンジ一つ。決して悪くはないが残念賞に違いない。
続けて私が引くことに。
悪い流れは止められずティッシュ。
こうして残念賞を貰って大人しく引き下がることに。
謎の行列の正体はくじ引きだった。
ティッシュだってありがたいですよ。でも我が家にもありますから。
今回はどうやら完全な失敗だったかな。
こんな時もある。もう切り替えるしかない。
「ねえ暇がお有りでしたらもう一つ並んでみませんか? 」
コーコは別の行列の当てがあるそう。
そう言われれば断れない。どんな僅かな可能性にも賭ける。
提案を受け入れることに。
続く
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