言葉の暴力で世界最強! 消えたヒロインを追い求めて世界へ! 幼馴染に告白するつもりがなぜかモンスターに愛の告白を

二廻歩

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第三世界へ

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もうアンたちは旅立ったそう。入口のところにいた集団が流浪の民だったらしい。
仕方なくお言葉に甘え一晩お世話に。
ついでにアンたちについて知ってることをすべて吐いてもらう。

「それでお前さん方の目的は何だい? 」
世話好きなおばさんにアンについて尋ねる。
「ああアンちゃんね。それは本当によく働くいい子だよ」
当たり障りのない答え。
「それで彼女たちは何人で? 」
勝手に割り込むせっかちな妖精さん。俺が話してるんだけどな。
「それ羽根? 縁起が悪いね」
寒気がすると言って証言を拒む。
大人げないおばさんだ。

「お願いしますよ! 」
「どう言う関係か知らないけど教えて欲しいならそれなりの対価を頂かなくちゃね」
「ではさっそく」
ありったけの金を渡す。これで文句はないはず。
まったくどれだけ卑しい人間なのか。
「ああこれじゃない。今は紙くず同然じゃないか! こんなの要らないよ! 」
文句をつける困ったおばさん。
ドットは大暴落してると駄々をこねる。

少なくてもドッドはこの世界だけでなく全世界共通の貨幣。
だから他のどんな地域の貨幣よりも優れているはず。
それさえも紙くず同然とはインフレが行くところまで行ったと見るのが良いだろう。
大した対策も取らずに暴落させるとはどうなってる?
この世界にも経済的危機が迫っているとみるべきだろうか?
おっと難しいことはこの際考えない。考えない。楽しく行こう。

「だったらこれでどう? 」
金を見せる。
もちろん偽物なんだけどメッキが剥がれることはないさ。
「うんこれだよ! 悪いね。それで何が知りたい? 」
気分を良くして何でも答えると約束してくれた。
まったく本当に現金なおばさんだ。ドッドではなく金だけどね。

「正確な人数は覚えてない。ただ二十人弱居たんじゃないかな。
どこか遠い国からやって来た流浪の民だと言ってたよ」
「おいそこにスチールって奴いなかったか? 」
いきなりハックが話に入って来る。
「スチールって誰よ? 」
「随分前に行方不明になった俺の友だち。合流してると思ったのにな」
ハックは密かに人探しをしていたらしい。
俺にも言わずらしくないハック。
頼ってくれればいいのに。 寂しいよ。
「そんな人知らないわね。あんたが嫌になったんじゃないの? 」
容赦ない言葉を浴びせるおばさん。
これは暴言では? しかも一気に二つ減点もあり得るほどの。
「スチールはそんな奴じゃないさ! 」
ハックはいつになく情熱的だ。
「ほらそれくらいで。今はアンについてでしょう? 」
エクセルが宥める。

「アンかい? 器量はまあまあかね」
俺もずば抜けて美人だとは思わないけど少しぐらいは良い思い出ってないの?
「アプリンよりも? 」
「ああこの子よりも可愛いかはその人次第」
失礼なことを言う。
「それでどこへ行くか聞いてませんか? 」
ようやくエクセルがまともな質問をする。
「ああここでは大人しくしてたけどね。ここが狭く感じるようになったんだろう」
この人の言い方に問題があるのかすべて悪く聞こえる。

「要するに目的地が知りたいんだろ? 」
ようやく答える気になったらしい。
「分かるんですか? 」
目を輝かせるエクセル。
もうこの人に聞いても無駄な気がしてきた。
粘るだけ粘って話を逸らすのが得意技。
いつの間にか術中に嵌ってる。

「第三世界を目指すってさ」
「第三世界? 」
「ああ第三世界に行くんだって。それは張り切ってたよ」
流浪の民は一か所に定住しない。
多い時で三か月。早ければ一ヶ月で新しい場所を求める。
今回も特別早い訳ではない。

「それで第三世界にはどう行けばいいんだ? 」
ハックが礼儀を弁えずに畳みかける。
「まったく何だい? 失礼にもほどがあるよ! 」
「いいから正直に答えろよ! 」
もう大人しくしてるハックではない。

「洞窟を抜け旅館とは反対に行くと橋が。その橋を越えればそこは第三世界。
ただ誰も通り抜けた者は居ないと聞く。橋には恐ろしい門番が構えてるって話さ。
勝手に出入りされると困るんだろうね。特にあんたたちみたいな異人は無理だろう。
通行証でもあるなら別だがね。それでも行くと言うなら止めないよ。好きにしな。
まあ気をつけるんだね。伝説の嫉妬竜の噂もあるぐらいだから」
おばさんは俺たちを脅し第二世界に留まるように諭す。
それが賢明な判断なのは分かり切っている。
だがアンが目指すなら俺も行かざるを得ない。

第三世界とはどんなところだろう?
気がかりなのはエクセル。今は元に戻ったが様子が変だった。
とりあえず一晩お世話になることに。

                  続く
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