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シカの耳
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第三世界。
現在海上を南進中。
ただの冗談を真に受け閉じ込められてしまう。
脱出を図るもアトリを人質に再び閉じ込められる。
「ははは…… お前女だったのか? どおりで異常に警戒してる訳だ」
「うるさい! どいつもこいつも馬鹿にしやがって! 」
その言葉使いが誤解を生むのだろう。
興奮すると言葉が乱暴になる。
ただよく見ると可愛いからこっちは何も言えない。
ではここで改めて自己紹介。これで三回目。
「俺はゲンだ。よろしくな」
「おいおい何回すればいいんだよ? 」
呆れ気味のノコタップ。
「どうせ捕えられていてやることもないからいいだろ? 」
「分かったよ! 俺…… 私はノコタップ。短い間だけどよろしくな」
嫌々やってるのが丸わかり。やっぱり嫌われてるのか俺? それともしつこかった?
「なあその耳ってウサギ耳だよね? レアアイテムのウサギ耳だろ」
どおりで可愛い訳だ。あれがあれば誰であろうと可愛くなれる無敵のアイテム。
その辺のマスターでもドラストキヨシの店長でも信じられないほど可愛くなる。
俺ももう一度って思ってたんだよな。忘れられない思い出の変身アイテム。
「違うって言ってんだろ! これはシカの耳だ。ウサギの耳なもんか! 」
一応はファッションで着けてるってことで。今流行ってるみたいだし」
シカ耳ね…… どうも信じられないがまあいいや。
「それで重要だから何度も聞くがお前は悪人なのか? 」
「違うに決まってるだろ! ただちょっとタダ乗りしたら閉じ込められたのさ」
うわ…… とんでもないのに遭遇したな。俺たちも人のこと言えないが。
「どうするノコちゃん? ここらで脱出しないと俺たち動きが取れなくなるぞ」
「誰がノコちゃんだよ! 大丈夫でしょう。明日には解放されるって」
「ノコちゃんは甘い。甘過ぎるよ。ただ引き渡されるだけ。解放されないよきっと」
「さっきからノコちゃんってうるせいなもう!
私はノコタップ。おかしな呼び方するな! 」
シカの耳をした少女を怒らせてしまった。
「うーん。だったらシカちゃん」
シカの耳を着けてるのでシカちゃんだ。
「シカちゃん? 冗談でしょう? 恐ろしいセンスの持ち主だな」
おいおい。シカちゃんでも気に入らないのかよ。困ったな……
「だったら何て呼べばいい? 」
「ノコタップでいいでしょう。それかあんたより年上なんだからノコ姉さんか」
ノコタップは細かい。もう仕方がないな。
「ノコ姉さん。またはノコ姉って呼ぶよ。
俺はゲンでもいいしご主人様でも構わないから」
まだ聞きたいこともあるが今はこれくらいでいいだろう。
自己紹介を終える。
「それでどうするノコ姉さん? 」
この際すべて彼女に頼るのが良いだろう。少々情けないが我慢我慢。
「うーんそうだな…… 」
真剣に考えるも打開策が浮かばずに夜になってしまった。
これはまずいぞ。
「ねえその耳可愛いね」
どうにか褒めるがまったく反応なし。
「うるさいな! もう寝るぞ! 」
機嫌がすこぶる悪いノコ姉さん。
「なあ何でここに来た? 」
「だから言ったろ。密航しようとしたのさ」
密航とは穏やかではないな。
「ほら早く寝るぞ! 」
寝不足気味で機嫌も悪く態度も悪い。
これは使いものになりそうにないな。
ここは大人しく寝ることにする。
俺は個室が良かったのに気が利かないんだから。
でも悪くはないかもしれない。
「ご主人様。不便はありませんか? 」
アトリは心配性だ。あるとしたら寝れないぐらい。
さっきからノコ姉さんの寝息が漏れて集中できやしない。
俺は今日本当に眠れるのか?
ウサギさんが一匹、二匹……
羊を数えるのは飽きたのでウサギにしてみる。
ピョンピョン
ピョンピョン。
だが一向に寝れる気配がない。
情けない。言右衛門最大のピンチ。
このままでは誘惑に負けそうだ。
ここは暑くもなく寒くないが夜になるとやはり冷えてくる。
暑いよりはまだマシだけど一肌が恋しくなる。
だから可愛い寝息と寒さに耐えきれずにノコ姉さんに近づこうとする。
もちろん防御は完璧。
俺が一歩でも近づけば眠りを覚ます。
熟睡まではしてないらしい。
二歩近づけば暴言が飛んでくる。
「何やってるんだよ! ふざけるな! 」
どうも寝不足だとがさつになるらしい。
扱いやすいは扱いやすいがどうも睨まれて怖い。
「済みません。済みません」
「このボケが! 」
暴言は激しさを増す。
俺何かした? ただちょっとお近づきになろうとしただけなのに。
勘違いは良くないよ。
こうして眠れない夜を過ごす。
続く
現在海上を南進中。
ただの冗談を真に受け閉じ込められてしまう。
脱出を図るもアトリを人質に再び閉じ込められる。
「ははは…… お前女だったのか? どおりで異常に警戒してる訳だ」
「うるさい! どいつもこいつも馬鹿にしやがって! 」
その言葉使いが誤解を生むのだろう。
興奮すると言葉が乱暴になる。
ただよく見ると可愛いからこっちは何も言えない。
ではここで改めて自己紹介。これで三回目。
「俺はゲンだ。よろしくな」
「おいおい何回すればいいんだよ? 」
呆れ気味のノコタップ。
「どうせ捕えられていてやることもないからいいだろ? 」
「分かったよ! 俺…… 私はノコタップ。短い間だけどよろしくな」
嫌々やってるのが丸わかり。やっぱり嫌われてるのか俺? それともしつこかった?
「なあその耳ってウサギ耳だよね? レアアイテムのウサギ耳だろ」
どおりで可愛い訳だ。あれがあれば誰であろうと可愛くなれる無敵のアイテム。
その辺のマスターでもドラストキヨシの店長でも信じられないほど可愛くなる。
俺ももう一度って思ってたんだよな。忘れられない思い出の変身アイテム。
「違うって言ってんだろ! これはシカの耳だ。ウサギの耳なもんか! 」
一応はファッションで着けてるってことで。今流行ってるみたいだし」
シカ耳ね…… どうも信じられないがまあいいや。
「それで重要だから何度も聞くがお前は悪人なのか? 」
「違うに決まってるだろ! ただちょっとタダ乗りしたら閉じ込められたのさ」
うわ…… とんでもないのに遭遇したな。俺たちも人のこと言えないが。
「どうするノコちゃん? ここらで脱出しないと俺たち動きが取れなくなるぞ」
「誰がノコちゃんだよ! 大丈夫でしょう。明日には解放されるって」
「ノコちゃんは甘い。甘過ぎるよ。ただ引き渡されるだけ。解放されないよきっと」
「さっきからノコちゃんってうるせいなもう!
私はノコタップ。おかしな呼び方するな! 」
シカの耳をした少女を怒らせてしまった。
「うーん。だったらシカちゃん」
シカの耳を着けてるのでシカちゃんだ。
「シカちゃん? 冗談でしょう? 恐ろしいセンスの持ち主だな」
おいおい。シカちゃんでも気に入らないのかよ。困ったな……
「だったら何て呼べばいい? 」
「ノコタップでいいでしょう。それかあんたより年上なんだからノコ姉さんか」
ノコタップは細かい。もう仕方がないな。
「ノコ姉さん。またはノコ姉って呼ぶよ。
俺はゲンでもいいしご主人様でも構わないから」
まだ聞きたいこともあるが今はこれくらいでいいだろう。
自己紹介を終える。
「それでどうするノコ姉さん? 」
この際すべて彼女に頼るのが良いだろう。少々情けないが我慢我慢。
「うーんそうだな…… 」
真剣に考えるも打開策が浮かばずに夜になってしまった。
これはまずいぞ。
「ねえその耳可愛いね」
どうにか褒めるがまったく反応なし。
「うるさいな! もう寝るぞ! 」
機嫌がすこぶる悪いノコ姉さん。
「なあ何でここに来た? 」
「だから言ったろ。密航しようとしたのさ」
密航とは穏やかではないな。
「ほら早く寝るぞ! 」
寝不足気味で機嫌も悪く態度も悪い。
これは使いものになりそうにないな。
ここは大人しく寝ることにする。
俺は個室が良かったのに気が利かないんだから。
でも悪くはないかもしれない。
「ご主人様。不便はありませんか? 」
アトリは心配性だ。あるとしたら寝れないぐらい。
さっきからノコ姉さんの寝息が漏れて集中できやしない。
俺は今日本当に眠れるのか?
ウサギさんが一匹、二匹……
羊を数えるのは飽きたのでウサギにしてみる。
ピョンピョン
ピョンピョン。
だが一向に寝れる気配がない。
情けない。言右衛門最大のピンチ。
このままでは誘惑に負けそうだ。
ここは暑くもなく寒くないが夜になるとやはり冷えてくる。
暑いよりはまだマシだけど一肌が恋しくなる。
だから可愛い寝息と寒さに耐えきれずにノコ姉さんに近づこうとする。
もちろん防御は完璧。
俺が一歩でも近づけば眠りを覚ます。
熟睡まではしてないらしい。
二歩近づけば暴言が飛んでくる。
「何やってるんだよ! ふざけるな! 」
どうも寝不足だとがさつになるらしい。
扱いやすいは扱いやすいがどうも睨まれて怖い。
「済みません。済みません」
「このボケが! 」
暴言は激しさを増す。
俺何かした? ただちょっとお近づきになろうとしただけなのに。
勘違いは良くないよ。
こうして眠れない夜を過ごす。
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