言葉の暴力で世界最強！ 消えたヒロインを追い求めて世界へ！ 幼馴染に告白するつもりがなぜかモンスターに愛の告白を

リナックス

第六世界へ通じる扉は閉ざされた。
今日はこれで終了だそう。用のある者は明日また来るようにとのこと。
残念だがこれ以上粘っても無駄みたいだな。
「なあ代わってくれないか？　落としそうでよう」
「ははは……　くれぐれも飲みすぎるなよ」
二人は終わったものだと無視して話し始める。
付き合ってられないので町に戻って宿探し。

「あのちょっと……　」
さっきから何度も引き留めようとする女性。せっかくだから宿を教えてもらうか。
「ふう……　ようやく捕まえた」
「何も買いませんし入会だってしません。他を当たってください。
それより宿を知りませんか？　」
「だからあんた馬鹿なの？　私は妖精。何で待てない訳？　」
ガミガミに加えてネチネチまで。
一通りお説教を食らったところでようやく解放される。

「お前は妖精なのか？　」
ただの怖くてうるさそうなおばさんに見えたがどうやらまだ若いらしい。
「私はリナックス。核であるカーネルで動いてます」
「俺は……　」
「把握してます。昔の恋人の尻を追いかけて馬鹿な旅を続ける言右衛門。
きちんと資料にありますのでどうぞご心配なく」
自己紹介をさせないちょっと怖そうなお姉さん。
無視して先に行ったのをまだ根に持ってるらしい。
タイプ的にはエクセルみたいな感じか。

「エクセルって知ってる？　君によく似てるよ」
「いえ……　ただジャンルと言うか根本が違います。私は特別なんです」
自信満々なリナックス。仲間にすると頼りになるがこじれると厄介な相手だ。

「それでリナ。宿は？　」
「リナって……　まあいいわそれくらい。では私もゲンと呼ぶことにしましょう」
意外にも物分かりのいい柔軟なタイプ。第一印象とはだいぶ違うな。
「それではリナ。ご主人様から一言だけ。俺に惚れるなよな」
アトリにも釘を刺したが結局嫉妬竜になってしまった。
再び同じ過ちを繰り返さないためにも強く言う必要がある。
もう二度とあんな思いしたくないもんな。
これだけは心を鬼にしてリナに伝えなければ。

「はあ？　あなたに惚れるはずないでしょう。　
馬鹿じゃないの？　それにご主人様って誰よ？　」
リナのことを思って忠告したのになぜかキレられた。あまりに理不尽だ。
「でももしもの場合もあるし……　」
「馬鹿じゃない？　あり得ない！　私はビジネスって割り切ってる」
そう言って大丈夫アピール。それでも心配だから言ってるのに聞き分けの悪い。

「では大丈夫だと？　万が一もあり得ないと？　」
「ビジネスはビジネス。いい加減にしてよね！　」
何ともパワフルな人だ。ビジネスだと割り切るか……
しかしそれでも割り切れないから始末に負えないんだよな。　
俺には理解出来ないや。ファンタジーには珍しいタイプ。
「まあいい。好きにするといいさ」
もう反論できないので格好つけて形だけでも整えることに。
「はいはい分かった。私も言い過ぎた。謝ります」
そう言って頭を下げるからもう訳が分からない。

「よしリナ。宿を探そうか？　」
「待ってその前に……　これをプレゼントするわ」
お近づきの印にと砂時計を渡される。
「はあ……　」
「どうご感想は？　」
「アン！　アン！　アーン！　」
「ちょっとどうしちゃったの？　落ち着きなさいよゲン！　」
「いやつい故郷を思い出してね……　急にアンに会いたくなったんだ。
それで夢中で叫んだ。たぶんアンと故郷に帰りたくなったんだと思う」
砂時計を見ておかしくなる俺。アトリと別れたばかりだから……
とりあえず宿で一泊することに。

翌日。
さっそく第六エリアを目指す。
今回はリナには悪いけど楽勝だから助けはまずいらない。
あれおかしいな？　そう言えば第五世界に来てからモンスターを見かけない。
これは一体どう言うことだ？　

「ああうんうん。モンスターの件ね。
この辺りは治安がいいからモンスターが出ることはないそう。
でも一歩外に出ればヘビーモンスターがウヨウヨしてる。
ただそこに行くにも簡単には抜けられないから」
ははは……　誰が好き好んでモンスターのところに行くものか。
このまま平穏な世界でのんびり暮らせたらな。

「そうだ。昨日は説明そびれたけどこっちのは時間を早められる。
もう一方は逆に時間を遅らせる力がある」
砂時計は二つあって反対の能力が備わってるそう。
俺の頭ではちっとも分からないのでハイハイと聞き流す。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く