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密会
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部屋をノックする。
「戻って来たのリャウジン? 」
ワリーナが飛び出してきた。
「失礼入るわよ」
「ええっ? ご主人様がなぜこんな夜中に? 」
「ワリーナ。リャウジンは諦めなさい! 」
唐突だったのか言葉が継げないでいるワリーナ。
「いいですか。私は見なかったことにします。ですから…… 」
「嫌! 私はリャウジンが良いの! 」
聞き分けの悪いまるで子供のよう。これでよくメイドが務まるもの。
人がせっかく忠告してあげてるのになぜ聞き入れない?
「だったら誰にも気づかれてはダメ! メイド仲間にも執事にもそれこそボノにも」
最後のは余計だったかしら。
「へえ? ご主人様はお見逃し下さるのですか? 」
かなり意外だったらしくまだ信じられないと言った様子。
私だって鬼じゃない。それに少々問題が発生してる訳で。
「だから今回は見逃します。一度の過ちでここを去るのはあなたも不本意でしょう」
大体一度の失敗や過ちに目くじら立てては成長もあり得ない。
ただボノと関係を持ったら容赦はしませんけどね。
「ご主人様…… 」
「ですがもう二度と気付かれないように慎重に。いいですね? 」
どうにか収める。
主人として見逃す訳には行かないが厳しくも優しく接するべきだ。
本来恋愛感情を抱いてはいけないがそれは陽が暮れるまで。
プライベートまで詮索しては可哀想。
出来たら控えては欲ししけど。
ちょっとずつ甘やかしていると自分でも自覚している。
ただセピユロスのことがあり強く言えない。
私が模範にならなければならないところを自ら掟を破ろうとしている。
見た目にはそれは問題なくても心はもうダメ。
「そうだ。あなたボノと関係を持ったことは無いの? 」
弱みを握ってる以上言葉を選ぶ必要もない。
そして彼女も応えてくれるはず。
「はい? 旦那様ですか? それは何度か言い寄られたことはありますが……
お断りしています。それは確かに尊敬するとこもありますが…… 」
「いいの。それだけ聞ければ充分よ」
「それで…… なぜご主人様はこのような場所に? 」
当然の疑問。それは私にも分からないぐらい。
「夜のお散歩。最近始めたんですよ」
「はあ…… 」
そう言われたら確かに黙るしかないか。
「迷ってしまいまして。出来たら部屋まで送り届けてもらえないかしら? 」
そうこれが言いたかった。
このままでは朝まで屋敷中を当てもなくさまよう羽目になる。
それは避けたい。
今どうしても助けが欲しい。
密会の現場が何だと言うのですか?
私のピンチを助けてくれるなら目を瞑るのも当然。
「ご主人様。どうぞお任せください」
まだ完全には理解してない様子のワリーナだが快く引き受けてくれた。
ふう助かった。主人が自分の屋敷で遭難などと噂が広がったら……
恥ずかしくてメイドに顔も合わせられない。
近所に知れ渡りでもしたらそれこそお終い。
それだけの大失態。求心力を失ってしまう。
他の者に気付かれないように慎重に道を選ぶ。
「ご主人様お着きなりましたよ」
角を三つ曲がったところでストップ。
意外にもすぐだった。夜で暗かったこともあり簡単に道に迷う。
「よろしい。ではワリーナ。今後は気付かれぬようにするのですよ」
「はいご主人様」
こうして予期せぬ夜の冒険は終わりを迎える。
収穫は特にない。ただ屋敷の夜の顔が見えた気がした。
これだけ面白いなら夜の徘徊も悪くない。
日課に入れるのはまずいが一週間に一回程度ならいいわよね。
もちろんお付をつけてもいい。
それこそワリーナを誘うのも悪くない。
仕事が忙しくない時に迷惑にならない程度に。
何となく気分が晴れた気がする。
ボノのこと。離婚のこと。ヴィーナとの関係。
セピユロスとの関係で悩んでいたのが馬鹿らしく思えてくる。
ほほほ…… あーすっきりした。
続く
「戻って来たのリャウジン? 」
ワリーナが飛び出してきた。
「失礼入るわよ」
「ええっ? ご主人様がなぜこんな夜中に? 」
「ワリーナ。リャウジンは諦めなさい! 」
唐突だったのか言葉が継げないでいるワリーナ。
「いいですか。私は見なかったことにします。ですから…… 」
「嫌! 私はリャウジンが良いの! 」
聞き分けの悪いまるで子供のよう。これでよくメイドが務まるもの。
人がせっかく忠告してあげてるのになぜ聞き入れない?
「だったら誰にも気づかれてはダメ! メイド仲間にも執事にもそれこそボノにも」
最後のは余計だったかしら。
「へえ? ご主人様はお見逃し下さるのですか? 」
かなり意外だったらしくまだ信じられないと言った様子。
私だって鬼じゃない。それに少々問題が発生してる訳で。
「だから今回は見逃します。一度の過ちでここを去るのはあなたも不本意でしょう」
大体一度の失敗や過ちに目くじら立てては成長もあり得ない。
ただボノと関係を持ったら容赦はしませんけどね。
「ご主人様…… 」
「ですがもう二度と気付かれないように慎重に。いいですね? 」
どうにか収める。
主人として見逃す訳には行かないが厳しくも優しく接するべきだ。
本来恋愛感情を抱いてはいけないがそれは陽が暮れるまで。
プライベートまで詮索しては可哀想。
出来たら控えては欲ししけど。
ちょっとずつ甘やかしていると自分でも自覚している。
ただセピユロスのことがあり強く言えない。
私が模範にならなければならないところを自ら掟を破ろうとしている。
見た目にはそれは問題なくても心はもうダメ。
「そうだ。あなたボノと関係を持ったことは無いの? 」
弱みを握ってる以上言葉を選ぶ必要もない。
そして彼女も応えてくれるはず。
「はい? 旦那様ですか? それは何度か言い寄られたことはありますが……
お断りしています。それは確かに尊敬するとこもありますが…… 」
「いいの。それだけ聞ければ充分よ」
「それで…… なぜご主人様はこのような場所に? 」
当然の疑問。それは私にも分からないぐらい。
「夜のお散歩。最近始めたんですよ」
「はあ…… 」
そう言われたら確かに黙るしかないか。
「迷ってしまいまして。出来たら部屋まで送り届けてもらえないかしら? 」
そうこれが言いたかった。
このままでは朝まで屋敷中を当てもなくさまよう羽目になる。
それは避けたい。
今どうしても助けが欲しい。
密会の現場が何だと言うのですか?
私のピンチを助けてくれるなら目を瞑るのも当然。
「ご主人様。どうぞお任せください」
まだ完全には理解してない様子のワリーナだが快く引き受けてくれた。
ふう助かった。主人が自分の屋敷で遭難などと噂が広がったら……
恥ずかしくてメイドに顔も合わせられない。
近所に知れ渡りでもしたらそれこそお終い。
それだけの大失態。求心力を失ってしまう。
他の者に気付かれないように慎重に道を選ぶ。
「ご主人様お着きなりましたよ」
角を三つ曲がったところでストップ。
意外にもすぐだった。夜で暗かったこともあり簡単に道に迷う。
「よろしい。ではワリーナ。今後は気付かれぬようにするのですよ」
「はいご主人様」
こうして予期せぬ夜の冒険は終わりを迎える。
収穫は特にない。ただ屋敷の夜の顔が見えた気がした。
これだけ面白いなら夜の徘徊も悪くない。
日課に入れるのはまずいが一週間に一回程度ならいいわよね。
もちろんお付をつけてもいい。
それこそワリーナを誘うのも悪くない。
仕事が忙しくない時に迷惑にならない程度に。
何となく気分が晴れた気がする。
ボノのこと。離婚のこと。ヴィーナとの関係。
セピユロスとの関係で悩んでいたのが馬鹿らしく思えてくる。
ほほほ…… あーすっきりした。
続く
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