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エピローグ セピユロスとディーテ愛の物語

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あれから三日が経った。
セピユロスとの逃避行も今思えば楽しい思い出。
ボノとの関係も改善。とは言え一度離れた気持ちは元には戻らない。
離婚を決意。国王様たちへの報告も済ませた。
ボノはお屋敷を出て行くが領内に留まるそう。
そうしてくれた方がこちらとしても助かります。
ボロとテキュサーでひっそり暮らすことも。でも女好きのボノには耐えられない。

「ふう…… 暇ですね。何もやることがない」
逃避行を経験した今お屋敷でのんびり紅茶で読書では刺激が足りない。
「何を申しますご主人様。やることはいくらでも」
「はいはい。分かってます。体が疲れてしまって…… 」
面倒なことはすべて新しい執事に押し付けて優雅な気分に浸っている。
「ご主人様! 」
「そうだチャウチャウ見ませんでした? 」
「それがお客様のところにお邪魔してるようで。探してきましょうか? 」
メイド頭の嫌そうな顔を見るとさすがに頼むのは悪い気がしてきた。

「もういいわ。ちょっと体調が優れないので寝ます」
「もうご主人様! 」
どうも帰ってきてから体調が優れない。慣れない長旅に体が堪えたのでしょうか?
お医者様にも見せましたが何ともないと。
うーん。やはり体が何かしらの拒否反応を起してるのは間違いない。

昼過ぎ。
メイドが血相を変えてやって来る。
「どうしましたキャロル? 騒々しいですよ」
「ご主人様! お手紙が! お手紙が届いております」
「手紙ですか…… 一体誰から? 」
元気も出ずに三日間あまり口にしていない。そのせいかすぐに疲れてしまう。

「お嬢様からです」
「ヴィーナ? 」
そうだ。この子は私がヴィーナ付きに。仲のいい幼馴染。
立場は違えどヴィーナの一番の理解者だった。
ヴィーナは今……

親愛なるお母様へ。
お母様とセピユロスとの関係を知り大変ショックを受けております。
思えばメイドたちの噂にも。セピユロスが夜な夜な密会を重ねていると。
まさかそのお相手がお母様だったとは夢にも思いませんでした。
お母様から知らされた時は言葉もありませんでした。
お父様と離婚しセピユロスと結婚されると聞きもう何が何だか分からずに混乱。
どうにか祝福の言葉を贈りましたが心のどこかで許せない気持ちが勝っていた。
お母様たちには幸せになってもらいたい。でも私は結ばれた二人を見ていたくない。
これはもうどうしようもない感情なのです。どうかワガママをお許しください。
私はこちらで楽しく暮らしております。
お母様もどうか元気でお幸せに。
また手紙を書きます。
ヴィーナより。

ヴィーナはお姉様のところで預かってもらっている。
セピユロスと別れたショックが大きくまだ立ち直れてない様子。
その原因が母である私では何ともしようがない。
ヴィーナが立ち直るまでの間お姉様にすべて任せることに。
お姉様も快く引き受けてくれました。
ヴィーナもお姉様を慕っているしお姉様のところなら安心。
悩みの種だったヴィーナとの親子関係も改善されるでしょう。

「ご主人様? 」
「いいのよ。これで良かったの。ヴィーナが選んだことだもの」
ヴィーナを追い出す形になってしまった。
ボノとも来年までに別れることに。
これは仕方ないこと。セピユロスと結ばれるには犠牲が付きもの。
生半可な気持ちでは決断できない。
もちろん自分勝手だと自覚してるつもりです。それでもセピユロスと結ばれたい。
自分の気持ちに嘘はつけない。

果たして私はこれで本当に幸せなのでしょうか?
長年連れ添ったボノを捨てることが正しいのでしょうか?
大事な一人娘を裏切り苦しめ続けるのが正しいのでしょうか?
自問自答する毎日。

いくらご主人様でも耐えられそうにありません。
そんな時は未来を見つめるしかない。
即ちセピユロスとの輝かしい明日。
一緒になることを誓った。どうであれもう後戻りはできません。
悩みに悩んだこととは言え果たして本当に正しかったのでしょうか?
夕食を部屋で済ませ再び眠りにつく。

コンコン
コンコン
こんな夜遅くにお客様?
「どうぞ」
「大丈夫ですかディーテ。お見舞いに参りました」
セピユロスの突然の訪問に心が躍る。
「ありがとうセピユロス。心配をかけましたね。もう大丈夫です」
「やっぱり仮病だったんだね? 」
「もうセピユロスったら! 」
怒って見せる。
「はっはは! 」
「笑わないのセピユロス! 」
「あの…… 」
「実は…… 」
いつの間にか重苦しい雰囲気に。

前のように積極的に唇を奪いに行かないセピユロス。
部屋に入った瞬間に抱きしめ合うこともなくなった。
もう二人を引き離す者はいない。
もう二人の関係を咎める者はいない。
もう誰にも邪魔されることはないのです。
私が望めばセピユロスが応えてくれる。
セピユロスが求めるならこの体を差し出すことも厭わない。
沈黙が支配する。

「ディーテ! ああディーテ! 」
沈黙を破ったのはセピユロスの方だった。
「もううるさい! 静かにしなさい! 」
「ディーテ! 」
セピユロスは愛を囁きながら歩き出す。
「セピユロス…… 」
堪らずに逃げるがすぐに捕まってしまう。
「ははは…… 逃げても無駄だよ」
「まったく子供なんだから」
「ディーテ! ああ愛しのディーテ! この愛をお受け取り下さい! 」
「もう仕方がないですね。そうっとお願い」
セピユロスはご主人様の言いつけを守らずに強引に引き寄せきつく抱きしめる。
そして熱い口づけ。
「セピユロス。ちょっと…… 」
二人は愛を確かめ合うように何度も何度も口づけを重ねる。

「ディーテ。はあはあ…… 」
「はあはあ…… 興奮してきた」
ついに二人は結ばれる時。
「元気そうだね。なら大丈夫かな」
「ほら焦らさないの」
「待って。今用意するから」
そう言って十分後に戻って来るセピユロス。
もうセピユロスったら醒めたらどうする気?

「では改めまして…… 」
「ほら早く! ご主人様に恥をかかせないの! 」
「分かってるよ。だからほらこれ」
「まさか…… これは…… 」
鞭? 鞭? どう言うこと?
これでセピユロスを? それはさすがにまずい……
 
「国王様の生誕祭は三日後。もう練習の時間がありません」
「だから? 」
「今から猛特訓。さあ練習しましょう」
「嘘でしょう? 」
「さあ早くディーテ! 時間がありません」
「いやあああ! それだけはいや! 」

逃げ惑うご主人様に追いかけ回すセピユロス。

二人の間には悠久の時が流れている。

セピユロスとディーテ愛の物語はこれにて。

二人の愛は永遠に!

『なぜお義母様と呼ばないのです』
                
                  <完>

この物語はフィクションです。

【後記】
最後までお読み頂きありがとうございます。

<キャラクター設定>
ディーテとアーフリーの姉妹でアフロディーテ。
ヴィーナはヴィーナスから。
セピユロスは西風。
ここまでは主に神話から。主にギリシャ神話。
と言うのは冗談で。本当は『キャッツ・アイ』(原作)
だからこそチャウチャウも活躍。
ボノは美味しいで美食家プラス好色家。
ボロはお馬さんのボロ。
ブラックウッドはそのまま日本語。他作品からちょうどいい悪役として。

<セピユロス>
もっと素敵で可愛らしいセピユロスを描くつもりだったんですが物語が進むにつれてどんどんイメージとかけ離れてしまった。特に逃避行でのセピユロスはおかしくなっていった。
逃避行編ではセピユロスの違った一面を見せようかと。しかしコロコロ性格が変わり最後にはただのお調子者に。
物語の性格上仕方がないですが修正しきれずに終了。
原因はメンバー不足。お付きの者一人ぐらいつけておくべきだった。
セピユロスはご主人様に救われるが救ったことはない。
追手に囲まれた時もセピユロスではなく影のメイドがピンチを救う。

<物語>
最初はディーテとセピユロスが隠れて関係を深めるラブコメを描くつもりだったんですがさすがに娘の婚約者との関係はあまりにアブノーマルで非現実的過ぎたので少々真面目なお話に変更。
最後にSF設定にするためにお母様たちを敢えて出さずに。ただ修正が難しく断念。
仕方なくお屋敷騒動を絡めた逃避行に。
本当はディーテとセピユロスが逃避行に出て終わりにする予定だったがボノを探すことに。
その為悪役は後で作られた。ちょっと無理のある展開だったかとも思いますがどうにか終えることが出来た。

<予告>
次回作は未定。一個か二個予定。

『タピタピクライシス』八月頃。
英語教師と生徒による学園もの。
危険度マックスの青春残酷物語となっております。
興味のある方は気をつけてお楽しみください。
どちらかと言えば男性向け。

ついでにもう一つ。
『紅心中』(仮) 来年の初夏。
決して結ばれない男女の物語。

両作とも夏への招待状シリーズとなっております。

<最後に>
ではまた。
二廻歩。
二十四年四月十日現在。
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