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ポツポツ
ポツポツ
ついに雨が降りだしてきた。
この地域の降水確率は十パーセントでほぼ快晴なはずなのになぜ?
山の天気は変わりやすいと言うがそれにしたってさっきまであんなに晴れてたのに。
局地的とはいえせっかくのバス旅を台無しにしかねない。
これは恵みの雨なのか何かしらの前触れなのかそれとも……
雨の量が徐々に増しついには大雨に。そして雷雲が湧き辺り一帯を覆う。
雷鳴と共にバスはどうにか雷道を抜けるが雷の勢いは止まりそうにない。
「うわあ! これはまずいな! 」
運転手が何か叫んでる。
彼は地元の者と言う訳でもなくただこの山に詳しい雇われドライバー。
安全に目的地に届けるのが彼の役割。
もちろんその後で何が起きようと運転手に責任はない。
大丈夫。何も起きないでしょう。
雷道を抜けるとついに目的地のホテルが見えてきた。
いつの間にか雷も止み青空が戻る。
本当に山の天気は変わりやすく我々の心を惑わす。
「さあ着きましたよ。皆さんお降りください」
安堵した運転手が挨拶を行う。
「何もなければ二日後にお迎えに来ます。では楽しい旅を」
少々意味深な発言。脅しならやり過ぎだよ運転手君。
最初に降りたのは海老沢。
六十代の恰幅のいい爺さん。
せっかちなのか一番最初に降りようとする浅ましさ。
次に降りたのはこの俺。
山田凡太。
ミサを残し先に進むのは忍びないがこれ以上くっつき過ぎると男から反感を買う。
せっかくの旅が台無しになる前に撤退だ。
続いてミサ。俺を追いかけてきてくれる。やっぱりミサはいい子だ。
さあ受付を済まし部屋へ。
エレベーターで三階まで。三〇二号室。
やはりあのせっかちな爺さんが一番をキープした。こだわりでもあるのだろうか?
何でも美術商だとか自慢していたがどうも怪しいもの。
まあ俺にはその辺の造詣が深くないので疑ってかかるが。
隣はラッキー。ミサだ。
さあ約束は忘れてないよな。
「なあミサ…… 」
「ハイハイ。部屋を開けておいてね」
どうやら突撃してくれるらしい。
いやはや何とも準備のいい。
おっとこれ以上は注目を浴びてしまう。
あ…… まずい俺が既婚者だと言いそびれた。
俺には女房も子供も。今は別居中だからいいよな。
問題はミサ。まさか居ないよな。俺を誘っておきながら……
まあいいか。その時はその時。
しかし俺に騙されてるとも知らずのこのこついてくるこの女も相当な間抜けだよな。
誰が社長だよ。そんな偉い者か。ただの個人事業主様さ。
まあ自分を偽るのは彼女も当然そうなんだろうが楽しませてもらいましょうか。
彼女は金の匂いに釣られてやってくる蝶。
俺はその上を行く蜘蛛ってところか。
ニ週間前。
リモート。
荒い映像から被り物をした依頼主の姿が映し出される。
ただの悪ふざけ。気にするなと意に介さない。
立場上何も言い返せない。しかも奴は俺たちのことを良く知っている。
随分調べたようだ。そうすると下手な返事もできない。
これでは対等な取引など不可能。金儲けにも黄色信号。
せめて男か女かさえ分ればいいがそれも明らかな機械で作られた音。
これでは何の判断材料にならない。ただ口調は間違いなく男。
「いいかお前たち今回の仕事はこれだ」
「ちょっと待ってくれ。あんた一体誰だよ? 」
正体を明かすように迫る。
取引は信頼関係が大事。
信頼関係を築くにはやはりお互いの素性を晒すのが一番。
そんなことは百も承知だ。これが取引の条件のはず。
「お前の正体が分からないと何か危険じゃね? 」
「ふふふ…… 確かに。だがこれは取引などではない。命令だ。
カモからできる限り搾り取るのだ」
依頼人はもはや俺たちを対等に扱っていない。
「成功報酬は総額の半分。悪くない条件だろ? 」
「だがお前は一切手を汚さない。捕まったら俺らを切り捨てる気だろ? 」
「ああ捕まるような間抜けは切り捨てる。覚えておけ。
それに俺からの依頼を断ればお前らだってこの業界にいられないはずだ。
まさか更生でもする気かい? 好きにするがいい。
カモを集めるのは俺の仕事。舞台だって用意してやった。
お前らは哀れなカモたちに襲い掛かればいい」
「けっ! 分かったよそれでいい。まったくよう」
「お前はどうだ? 」
「私もいい。いい男を捕まえてたらふく頂くもの」
「よし次の者は?」
「もちろんいい。だが俺にも商売させてくれ。要するに別仕事って奴だ。
いいだろう? 」
「ふん。強欲な爺だ。好きにしろ! ただし商売の邪魔だけはするなよ」
「それから次」
顔を隠し声を変え偽名で取引。
リスクを負うことなくビジネスができる。
さあ準備は整った。
後はドスグロ山に行ってもらうだけ。
だがこのビジネスには落とし穴がある。
それは……
続く
ポツポツ
ついに雨が降りだしてきた。
この地域の降水確率は十パーセントでほぼ快晴なはずなのになぜ?
山の天気は変わりやすいと言うがそれにしたってさっきまであんなに晴れてたのに。
局地的とはいえせっかくのバス旅を台無しにしかねない。
これは恵みの雨なのか何かしらの前触れなのかそれとも……
雨の量が徐々に増しついには大雨に。そして雷雲が湧き辺り一帯を覆う。
雷鳴と共にバスはどうにか雷道を抜けるが雷の勢いは止まりそうにない。
「うわあ! これはまずいな! 」
運転手が何か叫んでる。
彼は地元の者と言う訳でもなくただこの山に詳しい雇われドライバー。
安全に目的地に届けるのが彼の役割。
もちろんその後で何が起きようと運転手に責任はない。
大丈夫。何も起きないでしょう。
雷道を抜けるとついに目的地のホテルが見えてきた。
いつの間にか雷も止み青空が戻る。
本当に山の天気は変わりやすく我々の心を惑わす。
「さあ着きましたよ。皆さんお降りください」
安堵した運転手が挨拶を行う。
「何もなければ二日後にお迎えに来ます。では楽しい旅を」
少々意味深な発言。脅しならやり過ぎだよ運転手君。
最初に降りたのは海老沢。
六十代の恰幅のいい爺さん。
せっかちなのか一番最初に降りようとする浅ましさ。
次に降りたのはこの俺。
山田凡太。
ミサを残し先に進むのは忍びないがこれ以上くっつき過ぎると男から反感を買う。
せっかくの旅が台無しになる前に撤退だ。
続いてミサ。俺を追いかけてきてくれる。やっぱりミサはいい子だ。
さあ受付を済まし部屋へ。
エレベーターで三階まで。三〇二号室。
やはりあのせっかちな爺さんが一番をキープした。こだわりでもあるのだろうか?
何でも美術商だとか自慢していたがどうも怪しいもの。
まあ俺にはその辺の造詣が深くないので疑ってかかるが。
隣はラッキー。ミサだ。
さあ約束は忘れてないよな。
「なあミサ…… 」
「ハイハイ。部屋を開けておいてね」
どうやら突撃してくれるらしい。
いやはや何とも準備のいい。
おっとこれ以上は注目を浴びてしまう。
あ…… まずい俺が既婚者だと言いそびれた。
俺には女房も子供も。今は別居中だからいいよな。
問題はミサ。まさか居ないよな。俺を誘っておきながら……
まあいいか。その時はその時。
しかし俺に騙されてるとも知らずのこのこついてくるこの女も相当な間抜けだよな。
誰が社長だよ。そんな偉い者か。ただの個人事業主様さ。
まあ自分を偽るのは彼女も当然そうなんだろうが楽しませてもらいましょうか。
彼女は金の匂いに釣られてやってくる蝶。
俺はその上を行く蜘蛛ってところか。
ニ週間前。
リモート。
荒い映像から被り物をした依頼主の姿が映し出される。
ただの悪ふざけ。気にするなと意に介さない。
立場上何も言い返せない。しかも奴は俺たちのことを良く知っている。
随分調べたようだ。そうすると下手な返事もできない。
これでは対等な取引など不可能。金儲けにも黄色信号。
せめて男か女かさえ分ればいいがそれも明らかな機械で作られた音。
これでは何の判断材料にならない。ただ口調は間違いなく男。
「いいかお前たち今回の仕事はこれだ」
「ちょっと待ってくれ。あんた一体誰だよ? 」
正体を明かすように迫る。
取引は信頼関係が大事。
信頼関係を築くにはやはりお互いの素性を晒すのが一番。
そんなことは百も承知だ。これが取引の条件のはず。
「お前の正体が分からないと何か危険じゃね? 」
「ふふふ…… 確かに。だがこれは取引などではない。命令だ。
カモからできる限り搾り取るのだ」
依頼人はもはや俺たちを対等に扱っていない。
「成功報酬は総額の半分。悪くない条件だろ? 」
「だがお前は一切手を汚さない。捕まったら俺らを切り捨てる気だろ? 」
「ああ捕まるような間抜けは切り捨てる。覚えておけ。
それに俺からの依頼を断ればお前らだってこの業界にいられないはずだ。
まさか更生でもする気かい? 好きにするがいい。
カモを集めるのは俺の仕事。舞台だって用意してやった。
お前らは哀れなカモたちに襲い掛かればいい」
「けっ! 分かったよそれでいい。まったくよう」
「お前はどうだ? 」
「私もいい。いい男を捕まえてたらふく頂くもの」
「よし次の者は?」
「もちろんいい。だが俺にも商売させてくれ。要するに別仕事って奴だ。
いいだろう? 」
「ふん。強欲な爺だ。好きにしろ! ただし商売の邪魔だけはするなよ」
「それから次」
顔を隠し声を変え偽名で取引。
リスクを負うことなくビジネスができる。
さあ準備は整った。
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それは……
続く
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