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ビーチ殺人事件
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雷雨は一旦収まったがやはり山の天気は読めない。風が強まり嵐の予感。
チェックインから夕食までには時間がある。
それまで各々好きなように過ごす自由時間。
近くを散策に行く者。大浴場に行く者。部屋でくつろぐ者。
ガイドはその間も大忙し。
ドスグロホテル。
外観はシックな黒で覆われ高級感がある。
最近建て替えたのか劣化の痕が見られない。
内部も黒で統一されておりちょっと不気味。
派手な装飾がある訳でもなく落ち着いたと言うか心が沈むような寂しさがある。
慣れてしまえばそれまでだがどうも落ち着かない。
一階がフロントと売店。
ここの名物のライジングウオーターと地ビールが売られている。
色はもちろん黄色。
それから雷の落とし物と言うネーミングのドロップキャンディー。
これはなぜか黒と水色。
後はここの名物のまんじゅうとクッキー。
それ以外はどこにでもある定番のものが置いてある。
もちろんすべて自分でやる。
無人販売所と化した土産店。
ここもあと一時間もすれば閉まるので今買うか迷う。まあ今日である必要もないが。
ホテルと言いつつ内部は旅館みたいなものでちょっとがっかり。
二階はレストランとなっており今は大忙し。
何と言ってもここにはシェフが常駐していない。
もちろん支配人なんかもいない。
すべて先に来ていたもう一人の女性に一任。
二階には小さなカフェとバーもあるがどうやら形だけ。
オープンはしてない。
どうやらこのホテルは間違ってしまったようだ。
客が来ないにも関わらず立派なホテルを建ててしまったのが実情。
バブル期に建てたが最近になって建て直し起死回生を図る。
だが当てが外れ幽霊ホテル状態に。そう推測する。
だからこそ営業を止め撤退したのだろう。
そして買い手がつかずに貸ホテルにしたのでは。
こうすれば安さに目をつけた企業が期間を設けて安く借りることが出来る。
福利厚生の一環。
人里離れた山奥どころか完全な山の頂上。
空気も良く自然も豊か。そう言ったところに憧れる者には理想的。
実際は電波も届かず不便なだけだが。
こんなところにホテルを建てられるかと言う建築上の問題もあるがまあそれはそれ。
大体そんなんものだろう。
だからさっきから一人も従業員を見かけない。
旅行会社の者が見よう見まねでやっている。
まあ無料だから仕方がない。
これくらい目を瞑らなくては。
スーパーセルフ状態。
不備があっても一切責任を負わない。
何があっても自己責任。
あーせっかくの旅行が台無しだ。
地下一階には風呂とコインランドリーが。
駐車場もあるが今はバスも出ており一台の車しか見当たらない。
一台はもちろん事前に来ていた旅行会社の者。
彼女は若くしてソムリエと調理師免許を持っている。
だから料理と酒には期待していい。
旅行パンフレットにもそのことが載ってる。
三階が客室だ。
三○五号室。
さっきからテレビの音がうるさい。
文句言ってやろうかと思うが反撃に遭うと嫌だから大人しく我慢。
こういう時きちんとしたホテルなら電話するが生憎フロントには今誰もいない。
会社の二人は今夕食の準備でそれどころではないらしい。
タダですものね。我慢しなくちゃ。
テレビでも見るかね。
もう地元のローカルと一チャンネルしか映らない。
これでは退屈しのぎにならない。
しょうがない電話も…… あら圏外だわ。
これはとんでもないところに来てしまった。
何度目のボヤキでしょう。
ここまで不便だとボヤキが止らなくなる。
仕方がないここは大人しく読書するとしよう。
引き出しにしまってある聖書を読むつもりはない。
最新のミステリー。
ビーチ殺人事件。
こことは反対。
真夏のビーチが舞台の軽い感じのお話。
でも本当によかったのかしら?
いくらご厚意とは言えタダでしょう。
ちょっと悪い気もする。
それに今回見ちゃった。あの女がいるのを。
あの女だけは許さない。
私の大事な息子をたぶらかしたあの女だけは許さない。
偶然? いえ神のお導きによるもの。
私が強く願ったから引き寄せた。
まったく今日だって一日中男とべったり。
もう我慢できない。
さあ二日もある。
あの女を抹殺する計画を考えないとね。
トントン
トントン
あら誰かしら?
もうしょうがないわね。
続く
チェックインから夕食までには時間がある。
それまで各々好きなように過ごす自由時間。
近くを散策に行く者。大浴場に行く者。部屋でくつろぐ者。
ガイドはその間も大忙し。
ドスグロホテル。
外観はシックな黒で覆われ高級感がある。
最近建て替えたのか劣化の痕が見られない。
内部も黒で統一されておりちょっと不気味。
派手な装飾がある訳でもなく落ち着いたと言うか心が沈むような寂しさがある。
慣れてしまえばそれまでだがどうも落ち着かない。
一階がフロントと売店。
ここの名物のライジングウオーターと地ビールが売られている。
色はもちろん黄色。
それから雷の落とし物と言うネーミングのドロップキャンディー。
これはなぜか黒と水色。
後はここの名物のまんじゅうとクッキー。
それ以外はどこにでもある定番のものが置いてある。
もちろんすべて自分でやる。
無人販売所と化した土産店。
ここもあと一時間もすれば閉まるので今買うか迷う。まあ今日である必要もないが。
ホテルと言いつつ内部は旅館みたいなものでちょっとがっかり。
二階はレストランとなっており今は大忙し。
何と言ってもここにはシェフが常駐していない。
もちろん支配人なんかもいない。
すべて先に来ていたもう一人の女性に一任。
二階には小さなカフェとバーもあるがどうやら形だけ。
オープンはしてない。
どうやらこのホテルは間違ってしまったようだ。
客が来ないにも関わらず立派なホテルを建ててしまったのが実情。
バブル期に建てたが最近になって建て直し起死回生を図る。
だが当てが外れ幽霊ホテル状態に。そう推測する。
だからこそ営業を止め撤退したのだろう。
そして買い手がつかずに貸ホテルにしたのでは。
こうすれば安さに目をつけた企業が期間を設けて安く借りることが出来る。
福利厚生の一環。
人里離れた山奥どころか完全な山の頂上。
空気も良く自然も豊か。そう言ったところに憧れる者には理想的。
実際は電波も届かず不便なだけだが。
こんなところにホテルを建てられるかと言う建築上の問題もあるがまあそれはそれ。
大体そんなんものだろう。
だからさっきから一人も従業員を見かけない。
旅行会社の者が見よう見まねでやっている。
まあ無料だから仕方がない。
これくらい目を瞑らなくては。
スーパーセルフ状態。
不備があっても一切責任を負わない。
何があっても自己責任。
あーせっかくの旅行が台無しだ。
地下一階には風呂とコインランドリーが。
駐車場もあるが今はバスも出ており一台の車しか見当たらない。
一台はもちろん事前に来ていた旅行会社の者。
彼女は若くしてソムリエと調理師免許を持っている。
だから料理と酒には期待していい。
旅行パンフレットにもそのことが載ってる。
三階が客室だ。
三○五号室。
さっきからテレビの音がうるさい。
文句言ってやろうかと思うが反撃に遭うと嫌だから大人しく我慢。
こういう時きちんとしたホテルなら電話するが生憎フロントには今誰もいない。
会社の二人は今夕食の準備でそれどころではないらしい。
タダですものね。我慢しなくちゃ。
テレビでも見るかね。
もう地元のローカルと一チャンネルしか映らない。
これでは退屈しのぎにならない。
しょうがない電話も…… あら圏外だわ。
これはとんでもないところに来てしまった。
何度目のボヤキでしょう。
ここまで不便だとボヤキが止らなくなる。
仕方がないここは大人しく読書するとしよう。
引き出しにしまってある聖書を読むつもりはない。
最新のミステリー。
ビーチ殺人事件。
こことは反対。
真夏のビーチが舞台の軽い感じのお話。
でも本当によかったのかしら?
いくらご厚意とは言えタダでしょう。
ちょっと悪い気もする。
それに今回見ちゃった。あの女がいるのを。
あの女だけは許さない。
私の大事な息子をたぶらかしたあの女だけは許さない。
偶然? いえ神のお導きによるもの。
私が強く願ったから引き寄せた。
まったく今日だって一日中男とべったり。
もう我慢できない。
さあ二日もある。
あの女を抹殺する計画を考えないとね。
トントン
トントン
あら誰かしら?
もうしょうがないわね。
続く
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